レーマン方式の仕組みと注意点。M&A仲介会社を選ぶポイントも解説

レーマン方式の仕組みと注意点。M&A仲介会社を選ぶポイントも解説

レーマン方式は報酬基準額に料率をかけて報酬額を算出する計算方法です。多くのM&A仲介会社で使われていますが、基準額も料率も会社ごとに異なります。提示された報酬額が妥当なのか、必ずチェックしましょう。主な手数料も紹介します。

M&Aでかかる主な手数料の種類

M&A仲介会社の利用には手数料がかかります。『着手金』『中間金』『成功報酬』など、代表的な手数料はどのタイミングで支払うものなのか見ていきましょう。

着手金

着手金はM&A仲介会社への依頼が決まったときに支払う手数料です。金額は会社の規模や取引の難易度によって決まるため、一定ではありません。M&Aの成否にかかわらず支払う手数料です。

ただし着手金は仲介会社ごとに扱いが異なり、着手金が必要な仲介会社もあれば、不要な仲介会社もあります。

どちらのケースであっても、なぜその金額なのか?なぜ必要なのか?を確認すると妥当な手数料なのか否かを判断できるはずです。

中間金やリテーナーフィー

『中間金』はその名の通り、M&Aの中間地点で支払う手数料です。基本合意書の締結時が一般的ですが、トップ面談や意向表明書・デューデリジェンスのタイミングで支払うケースもあります。

仲介会社が中間金を設定するのは、成果報酬だけでは報酬が0円になる可能性があるからです。成約寸前まで話がまとまっていても、破談になればそれまでの働きに対する報酬を得られません。

そこで、成果報酬を基準に算出した中間金を設定している仲介会社もあります。また契約期間中に毎月支払う『リテーナーフィー』が必要な場合、交渉が長期化するほどコストがかさむのが特徴です。

長く時間がかかりそうであれば、リテーナーフィーのない仲介会社を選ぶとよいでしょう。

成功報酬

最終契約締結し、クロージング後に支払うのが『成功報酬』です。レーマン方式で報酬額を計算するケースが多いでしょう。他の手数料を設定しておらず、成功報酬のみの『完全成功報酬』という仲介会社は、成約を急がせる場合もあります。

成約しなければ報酬が発生しないからです。中には相手方の問題点を隠したり、不利な条件のまま契約を推し進めようとしたりする仲介会社もあるため注意しましょう。

納得しないまま契約を締結すると、M&Aが成立しても期待していた効果が得られないかもしれません。

M&Aマッチングサイトの場合

さまざまな手数料がかかる仲介会社を利用すると、M&Aのコストは膨らみがちです。小規模なM&Aを低コストで実施するなら『M&Aマッチングサイト』を利用するとよいでしょう。

交渉相手を自分で探せるため、自社の目的に合う相手を探しやすいはずです。経営改善に役立つ機能を提供している『TRANBI』でも、M&Aのマッチング機能を備えています。

売り手であれば月額報酬も成約報酬も無料で利用可能です。買い手であっても必要なのは月額報酬の4378円(税込)のみのため、低コストでM&Aを実施できます。


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成功報酬の計算方法、レーマン方式とは

レーマン方式は成功報酬を計算する際に、一般的に用いられるものです。どのような計算方法なのか確認しておけば、かかるコストを予測しやすくなります。

報酬基準額に料率をかける

レーマン方式では、報酬基準額に定められている料率をかけて計算します。報酬基準額は株式譲渡金額・事業譲渡金額・増資金額など、取引金額を用いて決められるものです。

仲介会社によって報酬基準額の求め方が異なる点に注意しましょう。料率は一般的に、取引金額が大きくなるほど下がるように設定されています。

計算が簡単でM&Aの費用を予測しやすい

報酬の相場について仲介会社に質問しても、思うような返答を得られないケースが多いでしょう。相場をはっきり答えられないのは、各仲介会社がそれぞれの基準で自由に報酬を設定しているからです。

相場はあってないようなもののため、どのくらいの費用がかかるか知りたいなら自社で計算しましょう。レーマン方式を採用している仲介会社であれば、ホームページに掲載されている情報をもとに、比較的簡単に計算できます。

あらかじめ計算しておけば、予算に合う仲介会社を絞り込みやすいでしょう。

5億円を超える取引の計算例

仲介会社に支払う成功報酬をレーマン方式で計算するには、下記の料率を用いるケースが多いでしょう。

  • 5億円以下の部分:5%
  • 5億円超10億円以下の部分:4%
  • 10億円超50億円以下の部分:3%
  • 50億円超100億円以下の部分:2%
  • 100億円超の部分:1%

この料率に当てはめると、報酬基準額7億円の場合の成功報酬は『(5億円×5%)+(2億円×4%)=3300万円』と計算できます。報酬基準額が15億円であれば『(5億円×5%)+(5億円×4%)+(5億円×3%)=6000万円』です。

『7億円×4%=2800万円』や『15億円×3%=4500万円』ではない点に要注意です。

レーマン方式の特徴

成功報酬の代表的な計算方法であるレーマン方式について、どのように計算すればよいか見てきました。報酬基準額と料率さえ分かれば、計算は比較的簡単なはずです。レーマン方式による計算方法には、どのような特徴があるのでしょうか?

高額部分には低い料率が適用される

レーマン方式というと、通常は高額部分になるほど料率が下がります。先に紹介した一般的な料率でも、5億円以下の部分は5%ですが、100億円超部分は1%です。

仲介会社によっては、独自の割引を実施しているケースもあります。報酬基準額が100億円超なら、100億円より少ない部分の料率も割引されるといった場合もあるでしょう。

小規模な取引も5%程度の手数料が発生

料率を確認すると、5億円以下の取引は全て5%に設定されているのが分かります。そのため5億円を超えない小規模な取引では、報酬の負担が大きくなってしまいがちです。

中小企業に一般的なごく小規模なM&Aでは、レーマン方式ではなく固定報酬を設定している仲介会社の方が低コストに収まるかもしれません。

同じレーマン方式でも会社によって金額が違う

計算しやすいレーマン方式ですが、注意点もあります。それは仲介会社によって報酬率が違う点や、最低報酬が設定されている点です。同じレーマン方式を採用している仲介会社でも、成功報酬に大きな違いが生じるかもしれません。

1%でも違うと大きい、報酬率の違い

同じレーマン方式でも、仲介会社によって報酬率の設定が異なるケースもあります。報酬率の1%の違いにより、成功報酬の金額には数千万円単位の違いが出るケースもあるものです。

例えば先に出てきた報酬基準額7億円の計算では、成功報酬は3300万円でした。この計算の報酬率が1%ずつ高いと『(5億円×6%)+(2億円×5%)=4000万円』です。

報酬基準額が大きくなれば、さらに1%の違いにより生じる差額は大きくなるでしょう。このような違いから、レーマン方式を採用している仲介会社でもコストはさまざまです。

最低報酬が設定されている場合がある

仲介会社によっては『最低報酬』を設定しているかもしれません。一般的に報酬基準額が5億円以下であれば、報酬率は5%です。そのため報酬基準額が8000万円であれば、成功報酬は400万円で済みます。

しかし最低報酬が1500万円と定められている仲介会社では、1500万円の支払いが必要です。8000万円の報酬基準額に対し、実質的な報酬率は約19%にもなる計算です。

最低報酬は仲介会社によって大きく違います。大手仲介会社は2000万円、中堅は1000万円、小規模なら500万円ほどが目安です。

取引が小規模なら、最低報酬に注目して仲介会社を選ぶとよいでしょう。

特に注意したい報酬基準額の違い

報酬率だけでなく報酬基準額に何を採用しているかも、仲介会社ごとに異なります。報酬基準額が大きければ、成功報酬も高額になるため注意が必要です。

負債が大きい会社は差が出やすい

レーマン方式で用いる報酬基準額は、対象資産の異なる下記の4種類が代表的です。

  • 株式価値基準:株式譲渡対価のみ
  • オーナー受取額基準:株価+役員借入金
  • 企業価値基準:株価+有利子負債
  • 移動総資産基準:株価+負債総額

対象資産を比較すると、株価が対象になるのは共通していますが、負債の対象範囲は異なります。負債の種類や金額が増えるほど、報酬基準額が大きくなる仕組みです。

負債が大きい会社ほど、仲介会社が報酬基準額の算出に何を利用しているのか確認しておくことで、コストを抑えやすくなります。

株式価値基準は費用を抑えられる

最も成功報酬を抑えやすいのは『株式価値基準』を採用している仲介会社です。報酬基準額を決定するのに用いるのは株価のみなので、負債の金額を一切考慮しません。

株式価値基準であれば、負債が大きい会社でも高額の費用負担が発生しにくい仕組みです。低コストでM&Aを実施するなら、報酬基準額が『株価』や『譲渡金額』のみの仲介会社が向いています。

成功報酬が適切な金額か見極めよう

M&A仲介会社の成功報酬は高額です。そのため妥当な金額なのか確認しましょう。他社と比較して高額でも、それだけの理由があるなら妥当といえる可能性もあります。複数の仲介会社へ見積もりを依頼し、内容を比較するのも有効です。

そもそも成功報酬が高いのはなぜ?

高度な専門知識がなければM&Aのサポートはできません。企業価値の算出や契約書作成に関する知識はもちろん、業界ごとの知識も必要です。

そのため仲介会社のアドバイザーは、公認会計士・税理士・弁護士などの専門家が担っているケースもあります。専門家への報酬は高額のため、人件費をまかなうために報酬額も高く設定される傾向です。

加えて手厚いサポートを受けられる点も、成功報酬が高くなるポイントといえます。高度な専門知識による充実したサポートがあるからこそ、それに見合うだけの報酬が求められます。

支払う手数料に見合った会社を選ぶ

手数料に見合うサービスを受けられる仲介会社かも確認しましょう。自社の規模や業種によって適切な仲介会社は異なります

実績豊富で評判の良い仲介会社だとしても、大企業のM&Aを中心に扱っているなら、中小企業が利用するのには向いていません。相手企業との規模感も合いにくいでしょう。

得意な業界にも注目すると、自社に合う仲介会社を選びやすいはずです。業界ごとに考慮すべきポイントを押さえた取引ができスムーズでしょう。

担当するアドバイザーとの相性についても、確認しなければいけません。実務面では十分でも、コミュニケーションがスムーズにできない・どうしても信頼できないとなると、安心して任せられないからです。

複数社に見積もりを依頼する

対象としている企業の規模や業界をチェックし仲介会社を絞り込んだら、見積もりを依頼しましょう。1社の見積もりだけでは、報酬額を比較できず妥当性を判断しづらいため、複数社へ依頼するのもポイントです。

単に報酬額だけで比べるのではなく、どのようなサポートを受けられるのかも確認します。報酬額が高いとしても、サポート面を比較すると割安なケースもあるはずです。

報酬額には消費税もかかります。高額な報酬額は税金の負担も膨らみがちです。必ず税込金額で比較しましょう。

まとめ

レーマン方式とはM&A仲介会社の成功報酬に用いられる計算方法です。報酬基準額に報酬率をかけて計算します。ただし同じレーマン方式でも、会社によって報酬額が違う点に要注意です。

報酬率の1%の違いや報酬基準額に何を用いるかは、報酬額に大きく影響します。仲介会社のホームページに記載されている報酬率をもとに計算すれば、報酬額を低く抑えられる仲介会社を選べるでしょう。

報酬額の妥当性も確認しなければいけません。高額であっても充実したサポートを受けられるなら、妥当な金額といえるでしょう。複数の仲介会社へ見積もりを依頼し、比較するのもポイントです。

コスト面でもサポート面でも自社に合う仲介会社を選べば、希望に合うM&Aを実施できるでしょう。