2021-12-22

「残すべき店を守るため」食べログ百名店に選ばれた讃岐うどん店をM&Aで買収!飲食業界の閉塞感を打破する

株式会社otto

<中小企業の事業拡大を目指したM&A・買収事例>

 

東京都内や関西で、20店舗以上の飲食店を経営する株式会社otto。コロナ禍で閉塞感の漂う飲食業界に危機感を感じ、「営業を続けるべき、価値のある飲食店を救いたい」という思いからM&Aを実施。

買収したのは、食べログ百名店にも選ばれた人気うどん店「讃岐饂飩(さぬきうどん)元喜(げんき)」。入居ビルの取り壊しによる立ち退きを迫られ、店主が年齢を理由に新たな借り入れをしての再出店が難しいという事情を抱えているお店でした。

ottoは、店主を店長として雇い入れ、多額の再出店費用を投じて店の継続をサポートする道を選びました。なぜそこまでしてM&Aを決意したのか、また交渉で気を付けていたポイントについて、M&A経験が豊富な執行役員兼営業本部長の伊勢﨑正雄さんにお話を伺いました。



(人気のある「かしわ天うどん」)

【残るべき飲食店がコロナ禍で失われる…その窮地を救いたかった】

- まずは伊勢﨑さんのご経歴と、執行役員兼営業本部長を勤められている株式会社ottoについて教えてください。
もともとレストランでソムリエをしていたのですが、お客様の中に「お店を開業したい」という方がいらっしゃって。今で言うところの“プロデュース業”のような形で、そのお店の立ち上げ支援をきっかけに独立しました。

株式会社ottoについては、代表の八須とともに2008年に創業しました。居酒屋、中華バル、ワインバル、イタリアンダイニングやフレンチダイニングなど、お酒を提供する業態を中心に東京・大阪・姫路などで、現在21店舗ほどの飲食店を展開しています。

「ここにこんなお店があれば面白そうだ」という思いを起点に、それぞれの土地にまだ無い業態のお店や、その土地に合いそうなお店を開いてきました。人々のちょっとした娯楽や息抜きとなる場所を作ることができればと考えていて、酒類提供を含めた店舗展開を進めてきました。

- 運営されている大阪の飲食店8店舗は、2019年にM&Aをされたそうですね。どのような理由からM&Aに踏み切ったのでしょうか。
2025年に大阪万博が開かれますし、当時大阪はインバウンドの観光客でにぎわっていました。もともとは2020年に東京五輪が開催される予定であったため、五輪以降は大阪の方が活気付くのではないだろうかという目論見もあってM&Aをおこないました。残念ながら、新型コロナウイルスの感染拡大によって想定通りにはいきませんでしたが…。

加えて、私はもともとotto以外の会社にて飲食店のM&Aや経営再生の経験がありました。いずれも、周りからの依頼を受けて取り組んできたことです。そのため振り返ってみると、基本的には受け身の姿勢で事業を拡大してきたように思います。

- ご自身を「受け身」と形容される伊勢﨑さんが、今回自らTRANBIを活用して積極的なM&Aに乗り出したのは、どうしてですか。
コロナ禍に対する反骨心のような気持ちが一番大きいかもしれません。緊急事態宣言の発令と解除が繰り返され、酒類を提供する業態を中心に多くの飲食店の経営がとても厳しい状況です。

当社も厳しい経営を強いられているものの、運転資金の目途はついたので、“価値のある飲食店”に出会えたらM&Aをしようと決めました。

価値のある飲食店とは、コロナ禍などコントロールできないこの状況下に見舞われなければ営業を続けられたはずの、“残す価値のある飲食店”のことです。

飲食業界を見渡すと、月数千万円の売上を挙げていた飲食店の売上が10分の1以上にダウンしています。また、いいお店ほどスキルの高いスタッフさんを抱えていますし、スタッフさんを手放したくないと思うため、雇用を続けて経営がより苦しくなっている状況もあって。

コロナ禍にならなければ順調に営業を続けられていたはずなのに、窮地に陥っているお店があるのならば、われわれが支援をしてそのお店を残したいと思ったのです。

一方で、飲食店側に「続けていきたい」という意志があるかどうかは当然ながら重要です。いくらいいものを持っていても、私たちが価値を見出していても、経営者や店長やシェフがモチベーションを失っていては続けられないからです。



(新しく生まれ変わった、代々木上原にある讃岐饂飩・元喜の店内の様子)

【100点ではないからこそ、伸ばせる余地がある】

- 案件を探される中で、うどん店「讃岐饂飩(さぬきうどん)元喜(げんき)」をM&Aされましたが、どんなところに魅力を感じましたか。
まずは、何より「残す価値のあるお店」だったことです。

元喜は、コロナ禍の煽りを受けてではないものの、店舗が入居しているビルの取り壊しが決まり、退店しなければいけない状況でした。かつ、店主さんがご高齢ということで、新たに借り入れをして自ら再出店することは難しい状況で。「現店主を店長として雇用することと、再出店を行うことを条件に、売却先を探している」という案件でした。

立ち退きが迫っているため、買い手が決まらなければ廃業も考えなければいけない状況だったと思います。しかし、元喜は食べログ百名店に選ばれた人気のうどん店であることからも、多くのお客様から求められていて「残す価値のあるお店」であることは明白でした。

交渉申し込み当初、店舗の視察も兼ねて客としてお店に伺ったのですが、うどんは美味しく、スタッフの仕事ぶりも丁寧でキビキビしていて好印象を受けました。細かな味の違いを知るために、すぐに本場・香川のうどん店や都内の有名うどん店にも足を運びましたが、元喜のうどんのクオリティの高さも再確認できました。

加えて、経営者仲間である知人数名が、ここ数年有名うどん店を買収したり、自ら開業したりしている姿を見ていたので、うどん店の経営にも興味があって。これまで運営してきた店舗は、酒類を提供する業態がほとんどだったため、食事メインで勝負できる業態があっても面白そうだと感じました。

さらに、「工夫すれば、もっと売上を伸ばせるのではないか」と思えたことも、魅力を感じた大きな理由です。

- 具体的にはどういったところを見て、「もっと売上を伸ばせる」と思われたのですか?
職人独特の厨房の使い方や店内のレイアウトを見て、もっと席数を増やせると思ったんです。また、あわせて人件費の見直しなども行うことで、30%ほどは売上を上げられる余地があると感じて。

経営的に「100点」ではない案件だったからこそ、買収してブランドを引き継ぎ、当社の持っているノウハウを投入することで、まだまだ業績を伸ばすことができると思えたんです。

- 譲渡金額は、どのように評価し、交渉を進められましたか。
今回の譲渡金額自体は大きな金額ではありませんでした。私としては納得できる金額だったので、値下げ交渉などはしていません。ただ、今回の案件の場合、M&A後に新店舗を開店する必要があったので、譲渡金額は手ごろでも大きな投資が必要であることは理解していました。

実際、新店舗開店までには既に4,000万円を超える投資をしています。このリスクを受け入れてでも買いたいお店であると判断しました。



(お客様から愛される一品「元喜盛ざる」)

【トラブルの芽は摘む。事前に行った“20項目”に及ぶ確認とすり合わせ】

- 交渉過程では、どのようなことを心掛けていましたか。
これまでのM&Aの経験から、契約締結後にどんなところで売り手と買い手の認識の齟齬が生まれやすいかは把握していて。そのため、後々トラブルの元になる芽を摘もうと、事前に細部を詰めることを意識しました。

具体的には、売り手様との面談後に、20項目ほどのチェック項目を記載した文書をお送りしたのです。

盛り込んだのは、「新店舗のルール」「既存店舗の確認」「店主さんのアイデンティティ」という3種類についての確認や質問です。

「新店舗のルール」については、想定している新店舗出店エリアや定休日・営業時間を共有しました。また、オペレーションや人員配置、メニュー設定やプライシングなどにおいて、当社側と店主さんのどちらがどれだけ決定権を持つかを明確に記載しました。

「既存店舗の確認」については、残置物がどれだけあっていつまでに撤去が必要かを確認し、「店主さんのアイデンティティ」については、店主さんの個性や意向も新店づくりに取り入れるために「理想のうどん屋経営をされている他店名を聞く」など、とにかくさまざまな確認と質問を重ねたのです。

文書でのやり取りにおいて、こちらが提案した条件に納得していただけたことと、かつ口コミを見たりお店を視察したりした結果を踏まえて、最終的にM&Aを決意しました。

- 売り手の店主様については、どのような印象を持ちましたか。
店主さんは、30年ほどサラリーマンを経験した後にうどん店を開業されています。そのような経歴ゆえに、頑固一徹の職人のようなタイプではなく、ビジネスマンとしての一般常識や「雇用される」側としての感覚もお持ちの方で。これから店主さんを雇用する当社としては安心できる部分でした。

- 今回の交渉では、売り手様には日本政策金融公庫が伴走されていましたが、その座組みについてはいかがでしたか。
私としては交渉が進めやすかったですね。売り手と買い手が直接二者で交渉すると、互いの利害がぶつかり合って、なかなか結論が出ず交渉が止まってしまうこともありますし、本音を直接に伝えづらい場面もあるからです。

今回の交渉においては、私から直接店主さんに要望や質問を送ることはなく、すべて日本政策金融公庫を介して伝えてもらっていました。そのおかげで、本音を話しながらもスムーズなコミュニケーションができました。



(ドリンクメニューも豊富)

【業績は悪くて当たり前、自らの手で「いい案件にできるかどうか」という判断基準を大切に】

- もともとの店舗は文京区の千石駅近くにありましたが、新店は代々木上原でオープンされますね。この土地での開店を決めたのはどのような理由からですか。
私は長年このエリアの近所に住んでいるのですが、“いいものであれば、惜しみなくお金を遣ってくださる”方が多く住んでいるエリアだという印象があって。元喜や店主さんのノウハウがどこまで通用するかを試せる、とても挑戦のしがいがあるエリアだと思ったんです。

場所柄も考慮して、フラッグシップ(旗艦店)となるような店舗を目指します。前の店舗に比べて2倍ほどの座席数を設けるレイアウトにするなど、当社のこれまでの知見を店舗づくりに生かしています。

開店当初はオペレーションが大変なことを考慮してメニューを少し減らして運営しますが、初日からお客様を積極的に集めて、実働を行いながらオペレーションの改善点を見出し、ブラッシュアップすることを現状では考えています。

- オペレーションはどのようなメンバーで行うのですか。
店主さんとアルバイトさんに加えて、もう1名社員を配置し、次の店舗の店長になれる人材も育てたいと考えています。

- 今後のうどん店については、どのような期待を寄せていますか。
15年以上、立派にお店を続けられてきた店主さんと組んで出店するので、当社がオーナーであるからこその相乗効果を生んでいきたいと思います。

細かい話になりますが、店主さんが前の店舗を立ち退くときに「引っ越し業者がなかなか見つからなくて困っている」とおっしゃっていて。すぐに業者を手配し、撤退と倉庫への運び込みをサポートしたところ、とても喜んでくださったんです。

こういった動きができるのも、飲食店を多店舗展開する私たちのネットワークやノウハウがあるからこそ。私たちが強みを持っている点はリードしながら、いいお店をつくって、店主さんがもう一花咲かせられるような環境を提供したいですね。

店舗自体について、東京の食べログ評価一位とミシュラン掲載を目指し、それを達成できたら、元喜のセカンドブランド(カジュアルな業態、ハーフセルフやセントラルキッチンの導入、FCなど)の展開と、うどん割烹(場合によっては、うどん酒場)のような形で、2つのコンテンツを広げていきます。うどん割烹に関しては、弊社の直営店ですが、元喜のセカンドブランドに関しては他の企業さんも参加いただきたいと考えております。

- 最後に、事業承継やM&Aを考えている方へ向けてアドバイスをいただけますか。
特にわれわれのような飲食業界においては、オーナーチェンジに伴って売上が下がるケースがよく見られます。飲食業のM&Aをするのであれば、「現状の70%の売上でも経営が成り立つか」もしくは「一定期間、赤字が続いても耐えられる経営基盤があるか」を算段した上で、意思決定をすることをお勧めします。

時に、ものすごく売上や利益が出ている案件もM&A市場に出ることがありますが、そんなに都合のいい話は稀だと思っていて。そんなにいい案件なら売却する理由がないからです。

では、M&Aはやめておいた方がいいのかというと、そうではなく。「自分が関わることで、いい案件にできるか」がすべてだと思うのです。自分たちのリソースを生かして創意工夫を行い、その案件を育てられたら、売上を回復させることも今以上の売上や利益を出すことも可能ですから。

100点の案件なんてありません。70点から始まって、100点を目指す過程こそ楽しいのだと思います。だからこそ、M&Aを検討する際には「自らの手でいい案件にできるかどうか」という判断基準を大切にしてほしいと思います。

***売り手様のインタビュー記事はこちら**********

「食べログ百名店に選ばれた讃岐うどん店の『サバイバル事業承継』を大公開!」

*************************


▶ 250万円以下の案件をご覧になりたい方はコチラ

▶ 飲食店の案件をご覧になりたい方はコチラ
 

<中小企業の事業拡大M&A・買収事例の記事を読みたい方はコチラ>


▶ コロナ禍の飲食店M&A~ワインバル運営企業の狙いとは?

▶ 小規模保育園をM&Aで再生!IT企業が業界に吹き込む新たな風とは?

▶ 海外の大型M&Aをオンラインでほぼ完結!四国の企業がマレーシアの大手人材派遣会社を買収

▶ 夏の”建設”×冬の”融雪マット” シーズン特性が生むM&Aのシナジー

▶ M&Aの目的はエンジニア獲得と事業拡大!13年連続黒字と急成長を続けるIT社長が立て続けに4件の買収に成功
 
 
  • 倉本祐美加
  • ライター紹介倉本祐美加

    関西学院大学卒業後、クラウド製品を扱うIT企業のインサイドセールス職を経て2016年にライターとして独立。企業取材を中心としたインタビュー原稿の制作に従事していますが、エンタメ・スポーツ・文化等幅広く好みます。

無料会員登録