会社をたたむ方法は?必要な手続きや、廃業前に検討すべき点を解説

会社をたたむ方法は?必要な手続きや、廃業前に検討すべき点を解説

倒産や自主的な廃業などで会社をたたむ事業主が、毎年一定数はいます。現在、会社をたたもうかと考えている人は、必要な手続きや費用を知っておきましょう。加えて、廃業前に検討したい休業や事業承継という選択肢も、頭に入れておく必要があります。

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会社をたたむとは?

会社を『たたむ』という言葉は日本語ならではの表現であり、さまざまな意味を含んでいます。人によってイメージが異なる言葉なので、まずは一般的な定義を明確にしておきましょう。

一般的には事業を辞めることを意味する

会社をたたむとは、一般的には事業を辞めることを意味します。

営業活動を辞めて事業をたたむには、株式会社なら株主総会での承認を得た上で、さまざまな手続きを経なければいけません。有限会社や個人事業などの場合でも、債権・債務関係をしっかり整理・弁済した上で、廃業の手続きを行う必要があります。

廃業手続きは経営者自身でも行えますが、解散登記や官報への公告など、さまざまな手続きが必要となるため、税理士や司法書士、弁護士などの専門家に依頼する場合も多いでしょう。

会社をたたむ理由として多いのは?

経営者が会社をたたむ理由はさまざまです。近年は経営者自身の年齢(高齢化)や跡継ぎの不在を理由に、会社をたたむことを考える人が多いですが、債務超過で事業を辞める経営者も毎年一定数います。

経営者には事業を継続する意思があるものの、債務超過で継続が難しく、倒産してしまうケースもある一方で、自主的に廃業を選ぶ人も増えています

例えば、一般的なリタイアの年齢に至ったことや病気などの理由、あるいは別の事業を始めるために、既存の事業を廃業するといった場合も少なくありません。

いずれの理由で会社をたたむにせよ、事業を辞めるならばタイミングを見極めた上で、適切な手続きを経る必要があります。

会社をたたむ方法は?

会社をたたむ具体的な方法としては、債務超過で事業を継続できなくなった場合の『倒産』や、経営者自らが事業を辞める『廃業』などの方法があります。

倒産

債務超過を解消できず事業が続けられなくなったことで、倒産に至る企業は数多くあります。例えば、帝国データバンクの調査によれば、2022年8月の倒産件数は493件で、7月は499件といったように、毎月500社程度が倒産している状況です。

2021年における企業の倒産件数は累計6,015件で、2019年は8,354件、2020年は7,809件となっています。近年は徐々に件数が減っているものの、それでも毎年多くの企業が債務超過をはじめとした理由で倒産しています。

『倒産』という言葉に法的な定義はありませんが、一般的には法的な手続きを経て会社を消滅させる法律上の倒産と、債務超過などによって営業が難しくなっている事実上の倒産に分類が可能です。

さらに、法律上の倒産は、会社を消滅させる『破産』と、事業の存続を前提とした『民事再生』などに分けられます。

出典: 全国企業倒産集計2022年8月報|帝国データバンク

廃業

『廃業』とは、経営者が自らの意思で事業を辞めることです。事業が実際に続けられない状況にある『倒産』とは違い、本来は問題なく事業を続けられるものの、跡継ぎの問題や事業主のモチベーションの低下などで、廃業を選択する場合が多々あります。

特に、少子高齢化が急激に進む日本において、経営者の高齢化問題は深刻になっており、事業を若手に引き継がせたいものの、後継者がいない事業は珍しくありません。

安定した利益を出しているものの、後継者が見つからないため、やむなく廃業に至る事業も多い状況です。

解散

『解散』は、会社を清算し、消滅させるための手続きを指します。解散の条件は会社法で定められており、次の事由が発生した際に事業の清算を行い、解散に至ります。

  • 定款で定めた存続期間の満了
  • 定款で定めた解散の事由の発生
  • 株主総会の決議
  • 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合)
  • 破産手続き開始の決定
  • 裁判所による解散命令
  • 休眠会社のみなし解散

このように、存続期間の満了や株主総会での(特別)決議、合併や破産手続きなどの自由により、会社は清算手続きをした上で解散することになります。

参考: 会社法 | e-Gov法令検索

会社をたたむまでの流れ

会社をたたむまでの基本的な流れを解説します。法的に定められているので、それぞれの具体的な手続きや期限など、しっかりと押さえておきましょう。

利害関係者への通知

会社をたたむことを決意したら、まずは従業員や取引先などの利害関係者に事情を説明し、理解を求める必要があります。

特に従業員は、解雇を行う必要があります。この解雇をいつ従業員に伝えるのかが重要となります。従業員の中には、新たな職場を探さなければならない人もいるでしょう。従業員が問題なく転職の準備ができるように、経営陣は可能な限り早く、倒産や廃業の旨を知らせなければいけません。

一方で、早めに廃業について従業員に伝えると、予定よりも早くに従業員が退職し、本来廃業したい時期よりも早くに事業の継続ができないということも考えられます。そのため、一定の解雇予告手当を払ったうえで、解雇を行うということも実務的には行われています。

また、できるだけ売掛金や買掛金などの整理もしておく必要があります。未払い金がある場合は早々に清算し、従業員への給与もしっかり払っておきましょう。それまで契約していた各種サービスの解約も必要です。

株主総会による決議(特別決議)

株式会社が廃業するには、株主総会による特別決議を要します。特別決議は発行済み株式の過半数にあたる株主が出席した総会において、出席株主の2/3を超える賛成で決議されるものです。

会社に関する案件を総会で決める際には、議決権の過半数を有する株主が出席し、さらに出席株主の議決権の過半数による決議(普通決議)で決定されます。

しかし、会社の解散のような重大な決定においては、より多数の賛成を要する特別決議を経なければいけません。特別決議については、以下の記事でも定義や流れ、注意点まで詳しく解説しています。

 株主総会における特別決議とは?株式の保有割合が重要
用語説明
株主総会における特別決議とは?株式の保有割合が重要

重要度の高い議案について審議する際は、株主総会の特別決議が実施されます。株式の保有割合や株式の種類によっては拒否権が行使でき、提起された事案が覆される場合もあります。特別決議の詳細と株式との関係性について解説します。

清算人の選任と登記

特別決議で会社の解散が決まったら、消滅させる企業の債権・債務を整理する清算人の選任と、解散および清算人選任の登記を行います。解散後の企業は清算会社と呼ばれ、清算人によって債権・債務関係を整理するために存続するだけの組織となります。

取締役は解散の時点で退任しますが、当該企業の取締役が清算人として整理事務を行う場合がほとんどです。ただし、企業によっては、定款であらかじめ清算人が決められているケースもあります。

さらに、株主総会での解散決議から2週間以内に、当該企業の所在地の法務局に対して、解散と清算人選任の登記をしなければいけません。登記手続きは清算人となった取締役でも可能ですが、専門家である司法書士に任せるのが一般的です。

解散の届出と公告・確定申告

法務局での解散登記に加えて、税務署や都道府県税事務所、市区町村役場(東京23区内は不要)などに解散の届出をしなければいけません。

それに加えて、解散登記から5日以内に、年金事務所に対して健康保険および厚生年金保険の『適用事業所全喪届』を提出するとともに、当該事業に従業員がいた場合は『被保険者資格喪失届』の提出なども必要です。

さらに、ハローワークに対しても各種届出が必要な場合もあるので、社会保険に関する手続きに何が必要か、事前によく確認しておきましょう。

解散の届出をしたら、次は債権者に対して解散を知らせるために官報で公告します。これは、債権者の中に解散を知らない人がいる可能性があるためで、債権の回収を促すため、公告から2カ月以上の期間が経過しなければ、次の手続きには進めません。

また、解散時点での財産目録貸借対照表を清算人が作成し、解散日の翌日から起算して2カ月以内に、事業年度の開始日から解散日までの確定申告を行います。これらの決算書類の作成および確定申告は、残余財産が確定した時点で再び必要です。

財産整理と清算結了登記

清算人は清算企業の債権の回収を行うとともに、資産を売却し、回収した資金で当該企業の債権者への弁済に充てていきます。

もし全ての債務の弁済ができない場合、一般的な清算手続きは進められず、その時点で倒産の手続きに進まなければいけません。逆に、債務を完済した後、余った資金があれば株主に分配することになります。

株主への残余財産分配が完了したら、清算人は再び決算報告書を作成して、株主総会で承認を受けなければいけません

さらに、承認を受けたら2週間以内に清算結了登記を行い、清算確定申告をした上で清算結了の届出をすれば、法的に廃業が認められます。これで会社をたたむ手続きの全てが完了します。

会社をたたむための費用は?

会社をたたむには、各種登記や債権者への公告など、さまざまな費用がかかります。どの項目にどれぐらいの費用がかかるのか、大体の目安を覚えておきましょう。

登記や公告にかかる費用

解散手続きでは、次のように清算人の選任登記などの登録免許税や、権利者に対して解散を公告するための費用が発生します。

  • 会社の解散登記費用(登録免許税):3万0,000円
  • 清算人の選任登記の費用(登録免許税):9,000円
  • 官報への公告費用:3万5,000~3万6,000円程度
  • 清算結了登記の費用:2,000円

解散する企業の規模にかかわらず上記の負担は必要なので、期限内に余裕を持って手続きを済ませるようにしましょう。

専門家に手続きを依頼する場合の費用

解散手続きの一部を司法書士や税理士、弁護士などの専門家に依頼する場合は、その費用負担も考えなければいけません。

倒産手続きの場合は主に弁護士への依頼となりますが、通常の解散手続きでは、登記は司法書士に依頼し、財産整理や確定申告に関しては税理士に依頼する企業がほとんどです。

依頼する専門家によって費用に幅があるものの、トータルで20万~50万円ほどの費用がかかります。事前に見積りを依頼し、どれぐらいの負担になるか確認しておきましょう。

会社をたたむ前に検討すべき選択肢

会社をたたんで廃業してしまうと、当然ながらその企業で事業を継続することはできません。債務超過で倒産しなければならない場合は別ですが、経営者の都合で廃業を考えているならば、会社をたたむ前に以下の方法も検討してみましょう。

会社を「休眠」させる

廃業するのではなく、休眠会社として業務を休止する選択肢もあります。

一定期間のみ事業を辞めたい場合の手段で、所定の手続きを経ることでいつでも事業を再開できるのがメリットです。実際、事業を休止している間に、別のビジネスを始める人は少なくありません。

ただし株式会社の場合、役員の任期は最長でも10年であり変更登記がないまま12年が経過すると、会社が休眠中でも事実上廃業しているとみなされ、強制的に解散(みなし解散)させられる可能性があります。会社が休眠中であっても役員登記の定期変更が必要になるので注意しましょう。

事業承継を検討する

事業承継とは事業を親族や従業員、第三者に引き継ぐことです。経営者自身はそれ以上ビジネスを継続したくないものの、事業はそのまま残しておきたい場合もあるでしょう。その際には、できるだけ早く事業承継を検討することをおすすめします。

親族や従業員に事業を任せられる人材がいるならば、引き継ぎ可能か確認してみましょう。廃業すれば、それまで培ってきたノウハウや事業資産がなくなってしまうので、何らかの形で事業を残せないか考えてみることが大事です。

M&Aによる事業の売却も検討しよう

近年、人手不足や後継者の不在によって、M&Aによる事業譲渡(事業売却)の事例が増えています。会社をたたむ選択をする前に、M&Aによる事業譲渡も検討してみましょう。

M&Aのメリット

M&Aによって第三者に事業を譲渡するメリットとして、次の点が挙げられます。

  • 事業の売却で利益(創業者利益)を得られる
  • 事業をそのまま存続できる
  • 従業員の雇用を維持できる
  • 取引先に迷惑をかけず、取引関係を継続できる
  • 廃業手続きの手間が省ける

M&Aによる事業譲渡で利益を得られるほか、事業をそのまま残せるので従業員の雇用を維持できます。

さらに、取引先にも迷惑をかけずに済むでしょう。引き継ぎ相手は慎重に選択する必要がありますが、優秀な事業主に引き継いでもらえれば、事業がさらに成長する可能性もあります。

M&Aの詳しい流れは、以下の記事で解説しています。こちらも参考にしましょう。

 M&Aはどのような流れで進むのか。期間、費用、必要となる書類
用語説明
M&Aはどのような流れで進むのか。期間、費用、必要となる書類

M&Aは一定のプロセスに基づいて実行されます。初めて会社を買収する人は、M&Aのフローやかかる期間、取り交わされる契約書の種類を把握しておきましょう。マッチングサイトで売り手を効率よく見つけるコツや、デュー・デリジェンスの重要性も解説します。

小規模事業でもM&Aの事例が増えている

M&Aというと、主に大企業が行うものというイメージを持っている人も多いものの、近年は中小企業や個人事業でも、M&Aによる事業譲渡の事例が増えている状況です。特に、国内で問題視されている後継者問題の解消に、M&Aが大きく貢献しています。

M&Aの仲介業者やマッチングサイトも多いので、この機会に利用を検討しましょう。例えば、M&Aプラットフォーム『TRANBI』は2700件以上のM&A案件を掲載しており、すぐに交渉できる500万円以下の低価格案件も豊富です。まずは無料で会員登録をしてみましょう。

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まとめ

一般的に『会社をたたむ』とは、事業活動を終了して会社を消滅させることを指します。債務超過によって倒産に至る場合も多いですが、経営者の意思で廃業や解散を選択するケースも珍しくありません。

廃業によって新たな事業を始める人も多くいますが、会社をたたむ前に、休眠会社にする方法やM&Aによる事業譲渡なども検討すべきでしょう

M&Aで事業譲渡に成功すれば、創業者利益を得られるだけでなく、従業員の雇用も維持できます。仲介業者やマッチングサイトなどを利用して、理想的な引き継ぎ先を見つけましょう。