株式会社の廃業手続き|7ステップの流れと必要な期間・費用を解説

株式会社の廃業手続き|7ステップの流れと必要な期間・費用を解説

会社の廃業は、官報公告に2か月以上が必要なため最短でも4か月程度かかります。解散の決議から清算結了の登記までの7ステップを期限つきで整理し、提出先ごとの必要書類、登録免許税と官報公告料の内訳、つまずきやすい5つのポイントまで解説します。

目次

会社を廃業すると決めたとき、次に知りたいのは「何をどの順番でやるのか」「どのくらい時間がかかるのか」「いくらかかるのか」の3つだと思います。

廃業の手続きは、思っているより長くかかります。官報での公告に2か月以上の期間が必要と法律で定められているため、どれだけ急いでも数か月は要します。書類の準備や税務申告も複数回発生するので、決めてから終わるまでを逆算して動く必要があります

この記事では、廃業手続きの7つのステップ、それぞれの期限、必要な書類、費用の内訳と相場、そしてつまずきやすいポイントまでを実務の順番どおりに整理します。すでに廃業する方向で固まっている方に向けた内容です。まだ迷っている段階であれば、事業をたたむ・会社をたたむの記事で選択肢の整理から始めることをおすすめします。

廃業・解散・清算の関係を整理する

手続きに入る前に、言葉の関係を押さえておきます。ここが曖昧なままだと、専門家との打ち合わせで話が噛み合いません

廃業は「解散」と「清算」の2段階でできている

廃業は、事業をやめること全般を指す日常的な言葉です。法律で定義された用語ではありません。会社を廃業する場合、実際に行うのは解散清算という2つの手続きです。

【3つの言葉の関係】

  • 解散:会社が営業活動をやめて、清算の段階に入ることです。この時点ではまだ法人格は残っています
  • 清算:財産を換金し、債務を返済し、残った財産を株主に分配する手続きです
  • 清算結了:清算が終わり、法人格が完全に消滅した状態です

ここで誤解されやすいことが、解散した時点では会社はまだ消えていないという点です。解散はゴールではなくスタートで、そこから清算の作業が始まります。会社が法的に消滅するのは、清算結了の登記が完了した時点です。

廃業そのものの意味やメリット・デメリットについては廃業とはの記事で、会社法上の解散の要件や事由については会社の解散手続きの記事で詳しく扱っています。

手続きを始める前に確認しておくこと

登記や申告に着手する前に、次の3点を確認しておきましょう。後から発覚した場合、手続きが止まったりやり直しになる場合があります。

【着手前に確認すること】

  • 債務を返済できるか:清算の途中で債務を完済できないことが明らかになった場合、特別清算や破産といった別の手続きの検討が必要になります
  • 株主の賛同を得られるか:解散の決議は通常の決議より要件が重く、株主の賛同が欠かせません
  • 役員の任期や登記に漏れがないか:登記が長期間放置されていると、解散の登記の前に過去分の登記を入れる必要が生じます

とくに債務については決定的です。債務超過の状態で通常の清算を進めることはできません。資産と負債の状況が微妙な場合は、着手する前に税理士や弁護士に確認してください。

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会社の廃業手続き7つのステップ

ここからは実際の流れを見ていきます。それぞれに法律で定められた期限があるため、順番も日程も自由には決められません

全体の流れと期限を一覧で確認する

まず全体像です。各ステップの期限とあわせて確認してください。

ステップ やること 期限・期間の目安
1. 株主総会の特別決議 解散を決議し、清算人を選任します いつでも可能。ただし決議の要件が通常より重くなります
2. 解散・清算人選任の登記 法務局に解散した旨と清算人を登記します 解散の日から2週間以内
3. 官報公告と債権者への個別催告 債権を申し出るよう官報に載せ、知れている債権者には個別に通知します 解散後すみやかに。公告の期間は2か月以上必要です
4. 解散確定申告 解散日までを1つの事業年度として申告します 解散の日の翌日から2か月以内
5. 財産の換価と債務の弁済 資産を現金に換え、債務を返済します 公告期間の満了後に弁済します
6. 残余財産の分配と決算報告の承認 残った財産を株主に分配し、株主総会の承認を得ます 分配後すみやかに
7. 清算結了の登記 法務局に清算が終わったことを登記します 決算報告の承認から2週間以内

この表で注目したいのはステップ3の「2か月以上」です。これは法律で定められた最低限の期間なので、どれだけ急いでも短縮できません。廃業に時間がかかる最大の理由がここにあります。

そしてステップ2と7には「2週間以内」という期限があります。うっかり過ぎると過料の対象になり得るので、日程管理が必要です。

STEP1|株主総会の特別決議と清算人の選任

会社の解散は、株主総会の特別決議で決めます。特別決議とは通常より要件が重い決議で、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です(定款でこれと異なる定めを置いている場合はそれによります)。

同じ株主総会で清算人も選任します。清算人は清算の実務を担う役割です。定款に定めがなく、株主総会でも選任しない場合は、それまでの取締役が清算人になるのが原則です。取締役が複数いる場合は、全員が清算人になります。

実務では、株主総会であらかじめ清算人を定めておくことが多く、従来の代表取締役が就任するケースもよく見られます。

この決議の内容は議事録に残します。以降の登記手続きで必ず求められる書類なので、日付や決議の内容を正確に記載してください。

STEP2|解散登記と清算人選任登記

解散を決議したら、法務局で登記します。解散の日から2週間以内という期限があります。

登記するのは2つです。解散の登記清算人選任の登記で、これらは同時に申請できます。登記が完了すると、会社の登記事項証明書に解散した旨と清算人の氏名が記載されます。

この登記が済むと、登記事項証明書に解散した旨と清算人の氏名が記録されます。取引先や金融機関がこれを確認できるようになるため、説明はこの前後で行うことになります。

STEP3|官報公告と債権者への個別催告

ここがもっとも時間を要するステップです。

会社は解散後すみやかに、債権を持っている人に対して一定の期間内に申し出るよう官報で公告しなければなりません。この期間は2か月を下回ることができないと定められています。

あわせて、会社が把握している債権者には個別に通知する必要があります。公告だけで済ませることはできません。取引先、金融機関、リース会社など、債務が残っている相手を漏れなく洗い出す必要があります。

この2か月の間、清算人は原則として債務を弁済できません。すべての債権者を把握してから、公平に返済するためです。財産の換価や債権の回収といった整理は並行して進められますが、債務の弁済に制限がかかるため、清算を完了させることはできません。廃業を決めたらまず官報公告を出す、というのが日程を短くする要になります。

STEP4|解散確定申告

税務上、解散の日で事業年度が区切られます。事業年度の開始日から解散の日までを1つの事業年度として、確定申告を行います。

期限は解散の日の翌日から2か月以内です。通常の決算とは別のタイミングで発生するので、顧問税理士がいる場合は早めの共有が必要です。

注意したいことが、申告はこれで終わりではないという点です。解散から清算結了までが1年を超える場合は、その間も1年ごとに清算事業年度の確定申告が必要になります。

さらに清算が終わったときには残余財産確定事業年度の申告があります。この申告の期限は残余財産が確定した日の翌日から1か月以内とされており、ほかの申告の2か月とは扱いが異なります。残余財産の最後の分配を行う場合は、その日の前日までが期限です。廃業までに税務申告が3回以上発生することも珍しくありません。

STEP5|財産の換価と債務の弁済

財産を現金に換え、公告期間の満了後に債務を弁済していきます。

不動産や機械設備、車両、在庫などを売却して現金化しますが、処分価格は帳簿の価額を下回るのが通常です。とくに専用性の高い設備は買い手が限られるため、想定より安くなることがあります。処分に費用がかかる資産もあります。

売掛金の回収もこの段階で行います。取引先に「廃業する」と伝わった後の回収は難しくなることがあるため、回収の見通しは早い段階で立てておくほうが安全です。

債務を返済してもなお財産が残った場合、それを残余財産といいます。

STEP6・7|残余財産の分配と清算結了登記

残余財産があれば、持株数に応じて株主に分配します。株主が経営者本人だけであれば、そのまま経営者が受け取ることになります。

分配が終わったら、清算人が決算報告書を作成し、株主総会で承認を受けます。この承認をもって清算は終了します。

最後に清算結了の登記を行います。期限は決算報告が承認された日から2週間以内です。この登記により、会社の登記記録が閉鎖されます。

なお、清算結了後も帳簿や事業に関する重要書類は10年間の保存義務が残ります。清算人が保存することになるので、廃棄しないよう注意してください。

会社法上の解散の事由や要件については、以下の記事で詳しく解説しています。

会社の解散手続きとは?7つの解散事由と流れ・必要書類・費用を解説
手法
会社の解散手続きとは?7つの解散事由と流れ・必要書類・費用を解説

「解散」と「廃業」「清算」は何が違うのか。会社の解散とは営業活動をやめて清算に入ることで、法人格が消えるのは清算の終了後です。会社法が定める7つの解散事由、手続きの流れ、登記費用と官報公告料、最低2か月以上かかる期間の理由まで整理しました。

廃業手続きにはどのくらいの期間がかかるか

「決めてからどのくらいで終わるのか」は、廃業を検討する方がもっとも知りたい点のひとつだと思います。結論から言えば、順調に進んでも4か月程度、状況によっては1年を超えることもあります

なぜそれだけかかるのか、時期ごとに整理しました。

【廃業までの流れと期間の目安】

  • 1か月目:株主総会で解散を決議し、解散・清算人選任の登記を申請します。あわせて官報公告を手配します(登記の完了までに1週間から10日程度)
  • 1〜3か月目:官報公告の掲載と、債権者への個別の催告。公告期間として2か月以上が必要です
  • 2〜3か月目:解散確定申告(解散日の翌日から2か月以内)。税理士の作業期間として2週間から1か月程度を見込みます
  • 3〜4か月目:公告期間の満了後、財産の換価と債務の弁済。資産の売却先が決まるまでの期間によって変わります
  • 4か月目以降:残余財産の分配、決算報告の承認、清算結了の登記(登記の完了までに1週間から10日程度)

ここで決定的なものが「2か月以上」です。官報公告の期間は法律で定められた最低限のもので、どれだけ費用をかけても、専門家に依頼しても短縮できません

そのうえで登記の完了を待つ期間、申告書の作成期間、資産の売却にかかる期間が積み上がります。結果として最短でも4か月程度、実務上は半年前後を見ておくのが現実的です。

期間が延びる4つの要因

4か月で終わらないケースには、共通する要因があります。

【期間が延びる主な要因】

  • 資産の売却先が決まらない:不動産や専用性の高い設備は、買い手が見つかるまで時間がかかります
  • 売掛金を回収しきれない:取引先の支払いを待つ間、清算を終えられません
  • 債権者との調整が長引く:申し出のあった債権に争いがある場合、決着まで進めません
  • 登記に漏れがあった:役員変更などの登記が放置されていると、解散の登記の前に過去分を入れる必要が生じます

とくに「資産の売却先が決まらない」ケースや「登記に漏れがあった」ケースは着手前に確認できるものです。処分に時間のかかる資産があるか、登記が最新の状態かを先に把握しておけば、スケジュールの見通しがぶれにくくなります

そして期間が1年を超えると、清算事業年度の確定申告が追加で発生します。税理士への報酬もその分増えるため、期間の長さは費用にも直結します。

終わらせたい時期から逆算する

「この時期までに終わらせたい」という希望がある場合は、逆算して着手日を決めてください。

もっとも効く工夫は、解散の決議と同時に官報公告の手配を進めることです。2か月の公告期間が唯一短縮できない部分なので、これを最初に走らせておけば、その間に登記や申告の準備を並行できます。

逆に、公告の手配を後回しにすると、そのぶんだけ全体が丸ごと後ろにずれます。廃業を決めたら、まず官報公告に着手する。これが期間を短くする唯一といっていい方法です。

廃業手続きに必要な書類

廃業では、法務局・税務署・自治体・年金事務所など複数の窓口に、それぞれ別の書類を出す必要があります。提出先ごとに整理しておきましょう。

提出先ごとの書類を確認する

【提出先と主な書類】

  • 法務局(解散・清算人選任の登記):登記申請書、株主総会議事録、清算人の就任承諾書、印鑑届書、定款の写しなど。解散から2週間以内に申請します
  • 法務局(清算結了の登記):登記申請書、決算報告書を承認した株主総会議事録、決算報告書。決算報告の承認から2週間以内に申請します
  • 税務署:異動届出書、解散確定申告書、清算事業年度の申告書、残余財産確定事業年度の申告書。それぞれの申告期限までに提出します
  • 都道府県・市町村:法人住民税・法人事業税に関する異動届出書。解散後すみやかに提出します
  • 年金事務所:健康保険・厚生年金保険の適用事業所全喪届。原則として事実の発生から5日以内
  • ハローワーク:雇用保険の適用事業所廃止届。原則として廃止した日の翌日から10日以内。あわせて被保険者資格喪失届と離職証明書を提出します
  • 労働基準監督署:労働保険の確定保険料申告書など。従業員がいる場合に必要です

上記のとおり、提出先は5系統に分かれます。とくに見落とされやすい手続きが従業員がいる場合の社会保険・労働保険の手続きです。従業員の資格喪失や離職票の交付が絡むため、退職日から逆算して準備してください。

登記書類でつまずきやすい点

法務局に出す書類で、実務上つまずきやすいのは次の2つです。

1つ目は株主総会議事録です。解散の決議は特別決議なので、議事録に定足数と賛成数が要件を満たしていることが読み取れる形で記載されている必要があります。出席株主の議決権数や賛成の状況が曖昧だと、補正を求められることがあります。

2つ目は印鑑届書です。会社を代表する清算人については、従来の代表取締役と同じ人であってもあらためて印鑑を届け出ることになります。書式は法務局で最新のものを確認しましょう。

登記の要件や必要書類の詳細は会社の解散手続きの記事でも扱っています。

清算結了後も残る義務

清算結了の登記が終わっても、すべてが終わるわけではありません。

帳簿資料の保存義務が残ります。清算人は、清算結了の登記の時から10年間、会社の帳簿と事業・清算に関する重要書類を保存しなければなりません。誰がどこで保管するかを決めておいてください。

また、清算結了後に予期しない債権が判明した場合には、清算人が対応を求められることがあります。債権者への催告を漏れなく行っておくことが、後々の負担を避けることにつながります。

廃業にかかる費用の内訳と相場

廃業には費用がかかります。会社をたたむのに、逆にお金が出ていくという点は、意外に感じられるかもしれません。内訳を確認しておきましょう。

登録免許税と実費で7万円台

まず、誰が手続きしても必ずかかる費用です。

費用の種類 金額の目安 備考
解散の登記(登録免許税) 30,000円 法律で定められた金額です
清算人選任の登記(登録免許税) 9,000円 解散の登記と同時に申請します
清算結了の登記(登録免許税) 2,000円 清算がすべて終わった後に納めます
官報の公告掲載料 30,000円程度から 掲載する行数によって変わります。決算公告を同時に行う場合はさらに加算されます
登記事項証明書・印鑑証明書など 2,000〜3,000円程度 必要な通数によって変わります
登録免許税と実費の合計 おおむね75,000円前後 官報の行数や証明書の通数で上下します

登録免許税は法律で決まっているため、金額は動きません。変動するのは官報の掲載料と証明書の実費です。官報は掲載する行数によって料金が変わるので、公告する内容が長くなるほど高くなります。

これらを合計すると、実費だけで7万円台からが目安になります。官報の掲載料は原稿の分量や行数によって変動するため、公告する内容が長くなればその分だけ上がります。またこれは自分で手続きをすべて行った場合の金額です。

専門家に依頼する場合の報酬

実際には、司法書士や税理士に依頼するケースも多くあります。登記も申告も専門性が高く、期限も厳格だからです。

【専門家に支払う報酬の目安】

  • 司法書士(解散・清算結了の登記):数万円から10万円程度
  • 税理士(解散確定申告・清算に関する申告):10万円台から数十万円程度
  • 弁護士(債権者との調整が必要な場合):案件の内容によって大きく変わります

実費とあわせると、総額で数十万円程度になることがあります。ただし会社の規模、資産の状況、申告の回数、依頼する範囲によって大きく異なります。清算が長引いて申告の回数が増えれば、税理士への報酬もその分積み上がります。

金額は事務所によって幅があるので、着手前に見積もりを取り、どこまでが報酬に含まれるかを確認してください。登記だけなのか、税務申告や各種届出まで含むのかで、必要な依頼先の数が変わります。

費用を抑えるには

費用を減らす方法は限られていますが、次の3点は検討する価値があります。

1つ目は、依頼する範囲を絞ることです。登記だけを司法書士に頼み、税務申告は顧問税理士に任せる、といった分け方ができます。

2つ目は、清算期間を短くすることです。清算が1年を超えると申告が1回増えます。資産の処分と債権の回収を早く終えられれば、そのぶん費用は減ります。

3つ目は、そもそも廃業しないという選択です。会社を清算しない場合、解散・清算に伴う登録免許税や官報の公告費用は不要になります。ただしM&Aには仲介手数料やデューデリジェンス費用など、別の費用が発生する場合があります。それでも対価を受け取れる可能性があり、資産の処分費用や原状回復の費用を抑えられることもあります。

廃業とM&Aのどちらが手元に多く残るかを、税金の違いも含めて比較した内容は廃業とM&Aの比較の記事で扱っています。まだ判断がついていない段階であれば、事業をたたむ・会社をたたむの記事で選択肢を整理してから進めるのが確実です。

廃業手続きでつまずきやすい5つのポイント

実務で日程が遅れたり、やり直しが発生したりする原因は、ある程度決まっています。事前に把握しておけば避けられるものばかりです。

1. 官報公告を後回しにする

つまずきやすいポイントのひとつが、官報公告の手配を先送りにすることです。公告期間の2か月は法定で短縮できないため、着手が遅れた日数がそのまま全体の遅れになります。

解散の登記や税務申告の準備に気を取られ、公告の手配が1か月遅れれば、完了も1か月後ろにずれます。解散を決議したら、真っ先に官報公告の手配に着手する必要があります。掲載までにも早くて1週間、内容によっては1か月程度を要することがあります。

2. 債権者への個別催告が漏れる

官報での公告に加えて、会社が把握している債権者には個別に通知する義務があります。公告を出しただけでは足りません。

漏れやすいのは、取引が止まっている古い仕入先、少額の未払金が残っている相手、リース会社、そして役員からの借入です。催告を怠った債権者に対しては、清算結了後も責任を問われる可能性があります。

総勘定元帳と契約書のファイルを突き合わせ、債務が残っている相手を洗い出しておきましょう。

3. 税務申告の回数を見落とす

廃業では、通常の決算とは別のタイミングで申告が発生します。回数を見落とすと、費用の見積もりも日程も狂います。

【廃業に伴う税務申告】

  • 解散確定申告:事業年度の開始日から解散日までが対象。解散日の翌日から2か月以内
  • 清算事業年度の確定申告:清算が1年を超える場合、1年ごとに必要
  • 残余財産確定事業年度の申告:清算が終わったときに提出

清算が長引くほど申告の回数が増え、税理士への報酬も積み上がります。期間の短縮は費用の削減に直結します。

4. 従業員の社会保険・労働保険の手続きが遅れる

従業員を雇っている場合、廃業では法務局や税務署だけでなく、年金事務所・労働基準監督署・ハローワークへの届出も必要になります。

とくに影響が大きいのは離職票の交付です。交付が遅れると、退職した従業員が失業給付の手続きを進められません。会社の都合で辞めてもらう以上、ここを遅らせるべきではありません

退職日を決めた時点で、社会保険と雇用保険の資格喪失手続きの日程を組んでおきましょう。

5. 過去の登記漏れが見つかる

解散の登記を申請する段階で、役員変更などの登記が長期間放置されていることが判明する場合があります。

この状態では、解散の登記を入れる前に過去分の登記を済ませる必要があります。追加の登録免許税がかかるうえ、登記を怠っていた期間について過料を求められることもあります。

着手する前に登記事項証明書を取り寄せ、役員の任期や本店所在地が現状と合っているかを確認してください。

会社の廃業手続きに関するよくある質問

最後に、廃業を検討する方から多く寄せられる質問をまとめました。

Q1. 株式会社を辞めるにはどうすればよいですか?

A. 株主総会の特別決議で解散を決議し、清算の手続きを経て清算結了の登記を行います。大きくは解散と清算の2段階です。解散から清算結了までは最短でも4か月程度、実務上は半年前後を見込んでください。登録免許税と実費でおおむね75,000円前後、司法書士と税理士に依頼する場合は総額で30万円から40万円程度が目安になります。

Q2.「会社を閉める」と「廃業する」は違いますか?

A. 日常的にはどちらも同じ意味で使われます。ただし法律上の手続きとしては、解散清算という2つの段階を踏むことになります。「閉める」「閉じる」「たたむ」といった表現も、実務では解散・清算の手続きを指しています。言葉の違いによって必要な手続きが変わるわけではありません

Q3. 債務超過でも廃業できますか?

A. 通常の清算手続きは使えません。会社の財産で債務を返済しきれない場合は、特別清算や破産といった別の手続きを検討することになります。いずれも裁判所が関与するため、費用も期間も通常の清算より大きくなります。資産と負債の状況が微妙な場合は、着手する前に弁護士へ相談してください。

Q4. 休眠と廃業はどちらを選ぶべきですか?

A. 判断の分かれ目は事業を再開する可能性があるかどうかです。体調やタイミングの問題で一時的に止めたいのであれば、休眠のほうが手続きも費用も軽く済みます。一方、再開の予定がないのであれば、休眠中も法人住民税の均等割や申告の負担が残る場合があるため、清算まで進めたほうが区切りがつきます。

Q5. 廃業の手続きは自分だけでできますか?

A. 制度上は自分で行うことも可能です。ただし登記の書類には形式的な要件があり、不備があれば補正を求められます。税務申告も通常の決算とは異なる処理が必要です。期限を過ぎると過料の対象になる登記もあるため、不安がある場合は司法書士や税理士への依頼も検討しましょう。費用を抑えたい場合は、登記だけを依頼して申告は顧問税理士に任せるなど、範囲を分ける方法があります。

Q6. 従業員にはいつ伝えればよいですか?

A. 解雇には原則として30日前までの解雇予告が必要です。予告期間が足りない場合は、不足する日数分の解雇予告手当を支払うことになります。日程から逆算して伝える時期を決めてください。あわせて、離職票の交付や社会保険の資格喪失手続きも遅れないよう準備しておきましょう。

まとめ|官報公告を起点に日程を組む

会社の廃業は、解散と清算という2段階の手続きです。株主総会の特別決議から始まり、解散の登記、官報公告、税務申告、財産の換価と債務の弁済を経て、清算結了の登記で法人格が消滅します。

日程を左右するのは官報公告の2か月です。法定の最低期間なので短縮できません。最短でも4か月程度、実務上は半年前後を見込んでおくのが安全です。費用は登録免許税と実費でおおむね75,000円前後、専門家に依頼する場合は総額30万円から40万円程度が目安になります。

着手する前に、次の3点を確認しておきましょう。

  • 会社の財産で債務を返済できるか(返しきれない場合は別の手続きになります)
  • 役員変更などの登記に放置されている分がないか
  • 債務が残っている相手を漏れなく把握できているか

そのうえで、まだ廃業と決めきっていない段階であれば、譲渡という選択肢も確かめておく価値があります。廃業では費用が出ていきますが、譲渡が成立すれば対価を受け取れる可能性があり、従業員の雇用や取引先との関係も引き継げる場合があります。手残りの金額を税金の違いも含めて比較した内容は廃業とM&Aの比較、選択肢そのものの整理は事業をたたむ・会社をたたむの記事で扱っています。

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記事監修: 株式会社トランビ 代表取締役CEO 高橋 聡
【プロフィール】
アスクホールディングス株式会社代表取締役社長、中小企業庁中小M&Aガイドライン作成委員。アクセンチュアを経てアスクホールディングス株式会社を先代から事業承継。中小企業におけるM&A活性化の必要性を痛感しトランビを創業。
著書: 「起業するより会社は買いなさい」サラリーマン・中小企業のためのミニM&Aのススメ
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