会社の廃業手続きの流れを解説。必要な期間や費用を知っておこう

会社の廃業手続きの流れを解説。必要な期間や費用を知っておこう

事業がうまくいかず、廃業を考える経営者は少なくないものの、どういった手続きが必要なのか分からない場合もあるでしょう。廃業の流れを説明するとともに、廃業前に考えるべきM&Aについても解説します。事業を辞める前に検討しましょう。

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会社を廃業するには?

債務超過によって事業を続けるのが難しく、会社の廃業を考える経営者は決して少なくありません。一方で、経営状況は安定しているものの、新たにビジネスを始めるために、既存の事業を廃業したいと考える人もいるでしょう。

いずれの場合でも、廃業には会社を解散する手続きが必要です。

廃業には会社解散の手続きが必要

会社の事業活動を停止し廃業することを『解散』といい、解散の登記とともに、清算手続きを完了させなければいけません。また、手続き前に従業員や取引先に対して、廃業の旨を知らせる必要があります。

業績の悪化や後継者不在などの事情により、会社を解散したいと考える経営者は少なくありません。しかし会社側の一方的な都合で解散すると、債権を有する金融機関をはじめ、多くの利害関係者の権利が侵害されてしまう可能性があります。

そこで、当該企業の債権者を保護するため、解散が決まったら清算手続きに入らなければいけません。清算手続きによって債権・債務を整理した後に、企業の場合は法人格が消滅する流れです。

廃業手続きの前に検討すべきこと

会社を廃業すると、その企業では事業活動を再開できないので、本当に廃業すべきか否か、慎重に検討しなければいけません。

詳しくは後述しますが、事業の後継者がいない場合や、経営者が別の事業を始めたいといった理由で廃業を検討している場合は、M&Aによる事業承継を検討してみましょう。

さらに、廃業にあたって補助金や支援金を受けられる場合もあるので、事前に利用可能か調べておくことも大事です。借入金が多い場合、廃業ではなく倒産を選択しなければならない可能性もあるので注意しましょう。

倒産手続きは裁判所の監視下で進めなければならず、一般的な解散よりも手続きが複雑になります。

会社の廃業手続きの流れ

会社の廃業手続きの流れを解説します。会社の廃業を決めたら、まずは廃業の旨を従業員や取引先、顧客などに書面で通知しなければいけません。その後は以下の流れで廃業手続きを進めます。

株主総会の特別決議と清算人の選定

会社を廃業するには、株主総会の特別決議が必要です。特別決議には、過半数の議決権を有する株主が出席する株主総会において、出席株主が保有する議決権の2/3以上の賛成が求められます。

企業の基本的な意思決定に関する案件は、出席株主の過半数の賛成による決議(普通決議)で決められますが、会社の解散をはじめ重要な事柄については、特別決議を経なければいけません。また書面で決議をする場合は、株主全員の賛成が必要です。

なお、株主総会の特別決議に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

 株主総会における特別決議とは?株式の保有割合が重要
用語説明
株主総会における特別決議とは?株式の保有割合が重要

重要度の高い議案について審議する際は、株主総会の特別決議が実施されます。株式の保有割合や株式の種類によっては拒否権が行使でき、提起された事案が覆される場合もあります。特別決議の詳細と株式との関係性について解説します。

解散登記と清算人選任登記

株主総会の特別決議で解散が認められれば、廃業の登記(解散登記)と清算人の選任登記を行います。清算人は解散する企業の債権・債務を整理する役割を担い、株主総会の決議によって選任されるのが一般的です。

あらかじめ定款で定められている場合は別ですが、通常は当該企業の取締役が株主総会で清算人として選ばれます。もし、清算人を担える人がいない場合は、裁判所が法定清算人を選任します。

清算人は解散した後の清算中の会社(清算会社)の財産状況を調査・確認し、債権者に適切に分配するために財産目録や貸借対照表を作成するのが仕事です。さらに、解散時に残っていた債権の取り立てや債務の弁済も行います。

債務を弁済した後、清算会社に残余財産がある場合は、保有する株式数に応じて株主に財産が分配されます。また、税務署や都道府県税事務所、役所などに、廃業や税金・保険関係の届け出も必要です。

債権者に向けて官報で廃業の公告

廃業にあたっては、当該企業の債権者に向けて、官報で廃業の公告をしなければいけません

特に、債権者の多い企業が廃業する場合、その旨を知らない債権者が現れる可能性もあるため、国の機関紙である官報に2カ月以上にわたって情報を掲載する点が法律で決められています。

さらに、各債権者に自らの債権について申し出るように通知します。

決算書類の作成と解散確定申告

会社を廃業するには、決算書類を作成しなければいけません。まずは解散時の決算書類を作成し、財産目録と貸借対照表について株主総会で承認を受けます。さらに、解散の決定日翌日から2カ月以内に確定申告が必要です(廃業にかかる1回目の確定申告)。

その後、債権の回収や財産の売却などを行い、帳簿にある資産の現金化と債務の弁済などの清算業務に入ります。

この段階で債務超過の状態にある場合、一般的な廃業手続きを進めることはできません。裁判所の管理下で、破産手続きを進める必要があります。

決算報告書の承認と清算結了登記

清算が完了したら、その時点で2回目の決算書を作成し、再び株主総会で承認を受けなければいけません。承認を受けられれば清算結了となり、当該企業の法人格が消滅するので、承認から2週間以内に清算結了登記を行います。

その後、廃業に関する2回目の確定申告をした上で、都道府県税事務所や市区町村役場、税務署に清算結了の届け出をすれば、会社の廃業手続きの全てが完了します。

解散の決定から手続きが終わるまで、決算書の作成と確定申告が2回必要なので、それぞれの内容とタイミングに注意しましょう。

また、官報の公告期間に最低2カ月は必要なため、会社の廃業には最低でも2カ月から3カ月以上の期間を想定しておくことが大事です。

会社の廃業に必要な書類と費用

会社の廃業手続きに必要な書類と費用に関しても、大まかなところを押さえておきましょう。提出期限が定められているものが多いので、余裕を持って準備することが重要です。

会社の廃業手続きに必要となる書類

廃業手続きには、さまざまな書類が必要です。株主総会で解散が承認され、清算人を選任したら、まずは法務局に次の書類を提出して解散の登記をします。提出期限は解散の日から2週間以内です。

  • 登記申請書
  • 株主総会の議事録(解散決議をしたもの)
  • 廃業する会社の定款
  • 清算人の就任承諾書
  • 株主のリスト
  • 印鑑届出書
  • 清算人の印鑑証明書

解散登記が完了したら、さらに以下の書類を速やかに税務署や都道府県税事務所、役所などに提出しましょう。また、多くの法人は従業員を雇用しているので、以下の社会保険と雇用保険に関する書類も提出しなければいけません。

  • 異動届出書
  • 登記事項証明書
  • 給与支払事務所等廃止届

その後、官報に公告をしたら、決算書類の作成と確定申告が必要です。上記のように、解散時の決算書類および確定申告に加えて、清算結了時にも再び決算書類の作成と確定申告をしなければいけません。

清算結了登記に必要な書類

決算報告書が株主総会で承認されたら、管轄の法務局に以下の書類を提出して清算結了登記を行います。

  • 登記申請書
  • 株主総会の議事録(決算報告の承認を受けたもの)
  • 決算報告書
  • 株主リスト

さらに税務署や都道府県税事務所、役所に、異動届出書などを提出し、清算結了の届け出を完了させます。

このように、廃業手続きには準備すべき書類が多く提出先もさまざまなので、それぞれの段階で必要な書類を確認し、確実に提出しましょう。

廃業にかかる主な費用と相場

会社の廃業には、次のように登録免許税や各種書類の作成費、官報で公告するための費用などがかかります。

  • 解散登記にかかる費用(登録免許税):30,000円
  • 清算人選任登記の費用(登録免許税):9,000円
  • 清算結了登記の費用:2,000円
  • 官報での公告費用:30,000円程度
  • 登記簿謄本や印鑑証明などにかかる費用:2,000~3,000円程度

あくまでも目安ではありますが、総額で80,000~100,000円程度の費用負担が発生します。さらに、司法書士や税理士に手続きを依頼する費用も必要なので、300,000~400,000円ほど必要な場合も少なくありません。

事前にどの程度の費用が発生するか、専門家への報酬も含めて、できるだけ詳細に算出しておきましょう。

M&Aも選択肢の一つ

会社を廃業する前に、事業を親族や従業員に引き継いでもらったり、第三者にM&Aで売却したりする道も検討しましょう。特に近年は、小規模事業でもM&Aが注目されており、有力な選択肢の一つです。

廃業ではなくM&Aもおすすめ

M&Aとは、事業の『合併』および『買収』を指します。M&Aによって事業を売却すれば、売り手側は自らが培ってきた事業を引き継いでもらえるのに加えて、事業譲渡による利益を得られます

一方で買い手側にも、リスクを抑えて事業を始められるといったメリットがあるため、近年は大企業のみならず、中小企業や個人事業でも案件が増えている状況です。

特に、後継者が見つからない事業や、経営者が引退や新たな事業の開始のために廃業を予定している場合などに有効なので、この機会にM&Aマッチングサービスを利用してみましょう。

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まとめ

会社を廃業するには解散の手続きが必要で、資産状況によっては倒産を選択する必要もあります。解散には株主総会の特別決議が必要なのに加えて、さまざまな手続きを経なければいけません。

全体の流れと必要な書類、費用などを確認し、実際の手続きは税理士や司法書士、弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。廃業を決断する前に、M&Aによる事業売却も検討することをおすすめします。

M&Aの方法と流れについて解説している以下の記事も、ぜひ参考にしましょう。

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近年はM&Aによる会社売却が増えています。売却に当たり、売り手は磨き上げを実施し、企業価値を少しでも高める努力をしましょう。株式譲渡による会社売却の流れや注意点、売れない会社と売れる会社の特徴を解説します。