2022-05-17

廃業目前のサンドイッチ専門店、ダメ元でM&Aに挑戦!20件超の申し込みが殺到、200万円で売却に成功

売り手(法人):匿名

<中小企業の事業売却・スモールM&A事例>

 

病院や老人福祉施設向けの配食事業を展開するA社は、2019年に事業拡大のため自社の調理ノウハウを活かしてサンドイッチ専門店を開店します。売上は順調に推移しますが、メインの事業が忙しくなって人手が足りなくなるため、廃業を検討するように。そんな時、銀行から「事業売却」を勧められます。

挑戦してみると、想定より多くの買い申し込みが殺到。スピード重視で交渉を進め、結果的に200万円で事業売却に成功しました。

「以前はM&Aにいいイメージを抱いていなかったが、今回の経験を経て印象が変わった」と語るA社に、売却前後のエピソードを語っていただきました。

【本業のスキルを生かして開業!催事などを活用して売上は順調に推移】

- まずは、サンドイッチ専門店の立ち上げ背景から教えてください。
当社はもともと、病院や老人福祉施設向けの配食をメインの事業として手掛けていました。私を含め調理ができるスタッフが揃っているので、食関連事業を他にも立ち上げてみようかと考えるようになり、当時流行り始めていたフルーツサンドに目を付けて2019年に開店したのです。

店舗を構えることは初めてでしたが、ちょうど家賃がお値打ちの物件も見つかり、不安はありませんでした。集客の課題さえクリアできれば大丈夫だろうと思っていました。

- お店にはどんな特徴がありましたか。
フルーツサンドをはじめとした惣菜のサンドイッチをたくさん揃えていました。イートインスペースもありますがテイクアウト主体で、平均客単価は1,000~2,000円です。営業時間は週5日の10~15時で、私ともう1名のスタッフで運営していました。

- 開店後、どのように売上を伸ばしていきましたか。
人通りの多い地域や駅近に店舗を構えているわけではないため、課題は集客でした。広告宣伝にお金を掛けて認知度を上げましたが、一番効果的だったのは大手スーパーや都心部での販売です。

さまざまなお店のパンを取り揃えて販売しているスーパーのコーナーや、ターミナル駅のパンマルシェに出店しました。特に、スーパーには週6日サンドイッチを置いてもらっていて、往復1時間掛けて500個以上を運んでいました。結果的に完売して、1日最大20万円を売り上げた日もありました

もちろん、実店舗でもサンドイッチを販売しているため、実質2店舗を構えているような状態で順調に売上が伸びたのです。場所や売り方しだいでは、十分に伸びしろがあるビジネスだと感じました。



(※写真はイメージです)

【廃業せず、M&Aに挑戦。買い手の選定基準は人柄とスピード感】

- そんな中、丸2年運営された後、2021年11月に売却を決断されたのはどうしてですか。
本業がとても忙しくなってしまったことが理由です。当社と同じように病院などへの配食を手掛ける企業のコンサルティングも行っているのですが、その仕事がどんどん忙しくなっていきました。

私が店舗に入り、メインでサンドイッチを作っていたのですが、それができなくなる状態までになりました。他のスタッフに任せても店舗は回せたでしょうが、クオリティを落とさずに提供できる自信はなくて。かといって、経験豊富なスタッフを新たに雇ってまで続けるほど、潤沢な利益が出ていたかというと微妙でした。

実は、廃業しようと思っていたんです。ただ、銀行と話をしていく中で「M&Aのマッチングプラットフォームがあるので、検討されてはどうですか」と紹介されて。売却できる可能性があるなら挑戦してみようと思ったんです。

- M&Aのマッチングプラットフォームを活用してみていかがでしたか。
銀行から複数のプラットフォームを紹介されたのですが、実際に利用したのはTRANBIだけです。他のプラットフォームに比べて、売り手が利用前に入力すべき項目がシンプルで、ステップも明確だったからです。そこで手間が掛かってしまうと、どうしても面倒になってしまうので…。

案件情報を掲載するのは、初めてで勝手がわからなかったため、まずは同じ飲食店の売り案件をTRANBIで検索しました。どんな内容が書かれているのかを調べた上で、案件情報がわかりやすく伝わるように心掛けて作成しました。

- 掲載してみて、買い手様からの反応はいかがでしたか。
驚くことに、20件以上の買い申し込みがありました。想定以上だったので、少し戸惑ったほどです。希望譲渡価格はこちら側で設定しているため、気持ちよく買っていただける方を多くの中から選ぶ必要がありますから。

私自身は人柄重視のため、早めにお会いして交渉を進めたいという希望がありました。そのため、「細かい情報や詳細な資料がまず欲しい」とおっしゃる方や経営経験のない方、熱意が伝わりづらい方に対してのお返事は戦略的にゆっくりめにして、「会って話をしましょう」という買い手様を優先しました。

- 複数人の候補の中から、今回の買い手様を選ばれた決め手はどこにありましたか。
4人の方とお会いする予定を立てていたのですが、今回の買い手様は一番最初に面談をさせていただいた方でした。Web制作を手掛けている企業ですが、事業多角化で飲食業にも進出しており、今回のM&Aを検討していただいたそうです。

とても熱量の高い経営者の方だったので、好印象でした。かつ、よくメディアにも出演されている地元では有名な方だったので、お店の集客・宣伝力にも期待が持てました。事業を譲渡する以上、「売上が上がらず、すぐに閉店してしまう」ことは避けたいですし、成功していただきたい気持ちが強いからです。

初回の交渉後、その買い手様から「ぜひ購入したいので、私に決めていただけませんか」と熱烈なアプローチがありました。もともと他の買い手候補の方には「面談前に決定してしまう可能性があります」と伝えていたので、3番目と4番目に面談を予定していた方にお会いする前にお断りを入れて、譲渡先を決定しました。



(※写真はイメージです)

【200万円で事業を売却!TRANBIを利用しなければ廃業で「0円」だった】

- 譲渡希望金額を200万円に設定したのはどうしてですか。
店舗をオープンする時に掛かった費用が200万円ほどだったので、初期費用の回収ができればという思いで設定しました。1月から本業がより忙しくなる関係で、11月に掲載して年内に譲渡先を決定しなければいけない状況だったので、なるべく手頃な金額にしておきたい気持ちもありました。

想定以上の買い申し込みをいただいたので、今となっては「あと100万円高く設定していてもきっと売れただろう」と思います。ただ、TRANBIに出会わなければそのまま廃業して得られるお金が0円だったと考えると、無事売却できただけで満足です。

- 交渉はスムーズに進みましたか。
特に苦労なく進みました。契約書もTRANBIで用意されている雛形を活用しました。買い手様からの、「譲渡金額を2ヵ月に分割して支払わせてくれないか」という要望にも柔軟に対応しました。中小企業同士だからこそ、融通を利かせて互いのやりやすい方法で契約を進められたと思います。

- 引き継ぎはどのようにされましたか。
店舗にある機械や備品はすべて引き継ぎました。

サンドイッチの作り方を細かく書いたレシピも引き継いでいますし、店舗の運営マニュアルも渡しています。また、実際にお店で一緒にサンドイッチを作って、私が作る様子をビデオで撮影されていました。買い手様は、パートの方を雇ってサンドイッチ専門店を運営されるので、彼らへの指導も私から行いました

- 現在、お店はどのように運営されているかご存じですか。
売上の状況まで細かくは知りません。ただ、買い手様とは連絡を取っていますし、Instagramで情報発信をしているので気に掛けて見ていています。

現在はスタッフが不足していたり、まだサンドイッチ作りに慣れていないこともあり、金土日の3日間だけ営業しているようです。

私が運営していた時代も、スーパーでの販売や催事での出店で多く利益を出していたので、早くイベント会社の方と繋げてあげたくて。ただ、買い手様から「イベントに持って行けるほど、たくさん生産できる余裕がまだないので少し待ってほしい」と言われているところです。

おそらく、サンドイッチの生産スピードが私ともう1人のスタッフでやっていた頃の半分くらいなのかなと思うので、今後慣れて、販促拡大ができるようになることを期待して見守っています。



(※写真はイメージです)

【「M&Aは株と似ている」未知数で怖いけど、挑戦してみると難しくない】

- 今回のM&Aを振り返ってみていかがですか。
M&Aのイメージが大きく変わりました。

実は5~6年前に、重要な取引先から経営者の交代を機に、契約取引量に物を言わせて予期せぬ敵対的買収にあい、当時売上の7割ほどを占めていたメイン事業を買い取られてしまった経験がありました。だからM&Aに対していい印象を持ってなかったんです。

ただ、今回初めて主体的に事業を売る経験をしてみて、売る側は利用料や成約手数料も掛からないし、交渉過程もスムーズだったので、すごく満足度が高くて。最近は周りの経営者に、「もし事業の撤退を考えるタイミングがあれば、ダメ元でTRANBIに出してみた方がいいよ」と勧めています。

- 事業の売却を検討している方に向けてアドバイスをお願いします。
M&Aは、たとえ周りがやっていたり、いい評判を聞いたりしていても、未知数で怖いから挑戦しづらいという点で株と似ていると思います。やってみたらそんなに難しくないし、リスクもないから挑戦した方がお得なんです。

もし事業を辞めよう、お店を閉めようと考えているなら、試しに一度売りに出してみてください。思いがけず、その事業を必要としている人に出会えることがあると思います。

また、売りに出す上でのアドバイスとしては、「早く売りたいなら、無理に儲けようと思わない」ことです。もちろん、利益が出ている案件を仕方ない理由で手放す場合は高値を付けて当然ですが、業績が厳しい事業を売る場合には「儲けよう」などと思わず、買い手様が購入を検討しやすい金額帯を打ち出す方が、スピーディーに交渉が進むと思います。

 

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  • 倉本祐美加
  • ライター紹介倉本祐美加

    関西学院大学卒業後、クラウド製品を扱うIT企業のインサイドセールス職を経て2016年にライターとして独立。企業取材を中心としたインタビュー原稿の制作に従事していますが、エンタメ・スポーツ・文化等幅広く好みます。

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