店舗売却を成功させるには。居抜き売却とM&Aの違いも解説
店舗を売却したいと考えているなら、居抜き売却とM&Aでの売却ができることを知っておきましょう。高く売るコツを理解すれば、新店舗の開店資金を捻出することが可能です。居抜きとM&Aの違いや、店舗売却を成功させるポイントを解説します。
2022-10-25
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店舗を売却するには
店舗を売却するにあたり、物件の貸主への連絡は欠かせません。売却前に相談しておくと、退去時の業者の出入りや新しい借主への引き継ぎなどが円滑に進みます。
店舗の貸主の承諾を得ることが必須
賃貸物件の店舗を売却する場合、まずは物件の貸主に連絡しましょう。賃貸契約の内容によっては、許可を得なければ店舗を売却できないケースもあります。
賃貸物件の退去時には、原状回復により元の状態に戻すのが一般的なルールです。しかし、調度品や設備をそのままの状態にしておく『居抜き』で売却するケースもあります。居抜き売却をする場合は、物件の貸主にその理由を説明しなければなりません。
借主が変わることで不安を感じる貸主が多い点もポイントです。貸主は借主を信頼して物件を貸している側面もあるため、店舗売却時は新しい借主も含めて相談しておくことで、売却後のトラブルを予防できます。
店舗を売却する方法は複数ある
店舗を売却する代表的な方法としては、以下に挙げる3種類があります。それぞれの特徴やメリットを確認しておきましょう。
居抜き売却
一般的に、テナントの賃貸借契約には原状回復義務が定められており、店舗を退去する際は入居時の状態に戻す作業が必要です。
この作業はスケルトン工事と呼ばれ、建物の構造体以外を除いた全てを解体しなければならず、解体や処分に手間と費用がかかります。
居抜き売却は営業設備を残して売却する方法です。居抜き売却を選択すれば、退去に伴う工事費用がかからない上、逆に売却金額を得ることもできます。また売却ぎりぎりまで営業を続けることが可能です。
そのまま店舗を取引する現状引き渡しは、コストを抑えて開店したい買い手にとってもメリットが大きいでしょう。
居抜き売却を行う場合は、居抜き物件を扱う不動産会社を通すのが一般的です。居抜き売却の経験がない不動産会社からは、断られる可能性が高くなります。不動産会社だけでなく、居抜き売却専門の仲介サービスも存在します。
買い取り専門業者に売却
店舗を売却したい場合は、買い取り専門業者への売却も可能です。買い取るかどうかの判断が早いため、スピーディーに店舗を手放したい場合に役立ちます。
ただし、買い取り専門業者への売却はほかの方法と比べ、利益が低くなってしまうのが一般的です。できるだけ安く買い取ろうとするため、利益重視のケースには向きません。
店舗の売却にある程度時間がかかっても、なるべく高く売りたいと考える場合は、買い取り専門業者以外の方法を選択しましょう。
M&Aによる売却
近年注目を集めている店舗売却の方法が、M&Aによる売却です。M&Aなら閉店する必要がない上、従業員やメニューも承継できるため、買い手はすぐに事業を開始できます。
常連客やレシピなどの付加価値も売却できることから、居抜き売却より高く売れる可能性もあります。売り手と買い手の双方にメリットがある売却方法なのです。
店舗の売却を検討している人の中には、やむを得ない事情でお店を手放すことになった人もいるでしょう。M&Aなら従業員やメニューが残るため、自分が築き上げてきたお店がどのように発展していくのか、見守れる点もメリットです。
店舗を居抜き売却する場合
居抜き売却に関する基礎知識を紹介します。売却の大まかな流れや売却価格の相場、高く売るためのポイントを押さえておきましょう。
居抜き売却の流れ
居抜き売却を行う場合は、居抜き売却が可能かどうか店舗の契約書を確認した上で、不動産会社や仲介会社に相談しましょう。貸主の承諾を得られたら、現地調査後に査定額が算出されます。
業者と契約を結んだ後は、業者による買い主の募集が始まります。ネット広告や折り込みチラシなど、買い主を募集する方法は業者によりさまざまです。
買い主候補が決まったら売却条件を交渉し、条件合意に至った段階で造作譲渡契約を締結します。貸主と買い主が賃貸借契約を結び、貸主と売り主が賃貸借契約を解約したら、店舗の引き渡しは完了です。
居抜き売却の相場
東京都の場合、居抜き売却の相場は100万~500万円程度が目安です。店舗の広さや設備により、売却相場は異なります。
居抜き売却によりいくらで売れるのか知りたい場合は、オンライン査定を利用するのがおすすめです。いくつかのサイトでオンライン査定による目安額を出せば、自店舗におけるおおよその売却額を把握できるでしょう。
ただし、実際の査定額はさまざまな要素により変動します。査定額をしっかりと知りたい場合は、不動産会社や仲介会社に相談してみましょう。
価格の決まり方
居抜き売却の価格に影響を与えやすい要素には、以下のようなものがあります。
- 立地や交通の便
- 店内の清潔さ
- 設備の利便性・新しさ
- 店舗形状の応用の利きやすさ
- 業種・業態の買い取りニーズ
最も売れやすい店舗サイズは10~20坪程度です。設備のリースの残債も売却価格に影響します。
23区内の場合は、立地の評価が区ごとに異なる点も覚えておきましょう。毎年3月に国土交通省が発表する「地価公示」が一般的な土地評価の目安になります。
参考: 令和4年地価公示 区市町村別用途別平均価格表|東京都財務局
高く売却するポイント
居抜き売却でなるべく高く売るために、気を付けたいポイントを紹介します。買い手候補が内見に来る前にチェックしておきましょう。
- 店舗の入り口付近や看板を掃除する
- エアコンやトイレなど、店内の汚れやすい場所をきれいにする
- 床・壁・窓ガラス・テーブルを拭いておく
- 調理台や棚を整理整頓する
- フロアに余計な物を置かない
- 内見の際は照明をつけて店内を明るくする
- 設備ごとに譲渡対象かリース物件かを説明する
店舗をできるだけ高く売却するためには、とにかく店舗の内外をきれいにしておくことが重要です。明るく開放的な空間に整えて、買収後のイメージを膨らませやすくします。
解約予告のタイミングに注意
解約予告とは、物件を返却する意思を借主(売り手)が貸主に伝えることです。賃貸借契約書には解約予告期間が定められており、解約予告期間中は賃料が発生します。
居抜き売却の際は、解約予告のタイミングに注意しましょう。貸主によっては交渉次第で解約予告期間を短縮できますが、解約を早めることにはリスクもあります。
貸主に解約通知を行うタイミングが早すぎると、店舗の買い主(買い手)がなかなか現れないまま、ぎりぎりになって妥協して格安で売却する結果にもなりかねません。
居抜き売却における解約予告は、十分な長さの売却期間を確保するためにも、店舗の買い主が見つかった後に行いましょう。
業種別、売却価格に影響を与える要素
店舗の売却価格は、影響を受ける要素が業種ごとに異なります。飲食店と美容室の売却価格を左右する要素について解説します。
飲食店
飲食店の中でも、重飲食に分類される業態は価格が高額になりやすい傾向があります。重飲食とは、中華料理・焼肉・焼鳥・お好み焼き・ステーキなどを取り扱う飲食業のことです。
重飲食の売却価格が高くなるのは、電気・ガス・給排気といった設備への投資額が高くなる点が、大きな理由として挙げられます。
重飲食のうち、コロナ禍でも高い人気をキープし続けたのが焼肉店です。焼肉店は換気設備が充実しており、消費者から換気がよい場所と判断されたことが、コロナ禍でも堅調な売上を維持できた理由だと考えられます。
飲食店の売却について詳しく解説している以下も、ぜひご覧ください。
美容室
美容室の売却価格を大きく左右する要素の一つが、スタッフのスキルです。大量の顧客を抱えているスタッフや、受賞歴があるほどの技術力を持つスタッフがいる店舗は、買い取り時に評価が高くなります。
メニューの質も売却価格に影響する要素です。幅広いメニューを展開している上に、それぞれの施術を可能にする設備も充実しているのであれば、高く売れる可能性が高いでしょう。
美容室はさまざまなシーンで水を使うため、排水管の状態も評価のポイントになります。給排水設備の状態が悪い場合、水回りから配管までの工事が必要になるケースもあるため、評価が大きく下がってしまうのです。
美容室の売却について詳しく解説している以下も、ぜひご覧ください。
美容室をM&Aするには?スキーム、譲渡対価の目安、DDなど居抜き売却にかかる費用
居抜き売却を行った際は、手数料と税金が発生します。具体的にどのような費用がかかるのか確認しましょう。
手数料
居抜き売却にかかる費用の一つが仲介手数料です。買い手を自分で見つけた場合は手数料がかかりませんが、不動産会社や仲介会社を通して売却した場合は手数料が発生します。
通常の不動産取引においては、法律で仲介手数料が定められています。一方、居抜き売却については法律による規定の範囲外となるため、業者ごとに独自のルールで手数料を定めているのが実情です。
居抜き売却の仲介手数料は、一般的に売り手が負担します。買い手の手数料を無料とすることで、買い手が早く見つかる可能性があるためです。金額の目安は「30万円」または「取引価格の10%」です。
税金
売り手が個人の場合は、居抜き売却で得た利益が譲渡所得となり、譲渡所得税がかかります。譲渡所得税の内訳は、所得税・復興特別所得税・住民税です。ほかにも、事業用物件に課税される消費税や契約書・領収書にかかる印紙税などが発生します。
売り手が法人の場合、売却で得た利益にかかるのは、譲渡所得税ではなく法人税です。法人税以外に、事業税・消費税・印紙税なども発生します。
居抜き売却で土地や建物以外に設備や調度品も譲渡する場合、設備や調度品の売却益は総合課税の譲渡所得とみなされるため、ほかの所得と合算して税額を計算します。土地や建物の売却益は、単独で税額を計算する分離課税の譲渡所得です。
なお、事業譲渡で発生する『消費税』は売り手が納税しますが、実質的に買い手が負担するケースが多く見られています。消費税額は課税資産に消費税率(10%)を掛けて計算します。 以下は課税資産の例です。
- 土地以外の有形固定資産
- 無形固定資産
- 棚卸資産
- のれん(営業権)
参考: No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法|国税庁
店舗をM&Aで売却する場合
M&Aによる店舗売却の基礎知識を紹介します。売却の流れや売却価格の相場、高く売るポイントを見ていきましょう。
M&Aの流れ
M&Aで店舗を売却する場合は、最初にM&Aスキームや基本的な譲渡条件を検討しなければなりません。条件が決まったら、売り手に関する最低限の情報を公開し、買い手を探します。
有力な買い手候補が現れたら、秘密保持契約書を交わして詳細な情報を開示します。基本的な条件やスケジュールについて交渉し、早い段階でトップ面談を行うのが一般的です。
基本条件や譲渡方針の合意が成立したら、基本合意書を締結します。デュー・デリジェンスの実行後に最終条件について交渉し、最終契約書を交わしてクロージングを行ったら、M&Aによる店舗売却取引は完了です。
M&Aで売却する場合の相場
M&Aの売却価格を計算する方法のうち、簡易的な相場の計算に役立つのが年買法です。年買法では『対象会社や事業の純資産+営業利益×3~5年分』と計算します。事業の成長性や安定性によっては、3~5年より短い期間や長い期間で計算する場合もあります。
TRANBIの事例から、M&Aによる店舗売却の相場感をつかんでおきましょう。テイクアウトやデリバリーの需要で黒字が続いていた唐揚げ屋が、500万円で売却されたケースがあります。
オーガニック素材の焼き菓子カフェとオンラインショップが、売却希望価格280万円で成約した事例もあります。詳しくは以下のリンクから確認しましょう。
価格の決まり方
M&Aによる店舗売却の価格に影響を与える主な要素は、以下の通りです。
- 立地
- 店舗数
- 売上高
- ブランド力
居抜き売却と大きく違う点は、売上高やブランド力が重視されている点です。基本的には経営をそのまま引き継ぐ形になるため、お店としての力が売却価格に大きく影響します。
今後の売上見込みや利益率、従業員の有無・人数・熟練度合いも、取引金額を左右する重要な要素です。事業の安定性に加えて成長性も加味して、最終的な売却価格が決まります。
高く売却するポイント
M&Aで店舗を売却する場合、現経営者がいなくなると、顧客が離れたりスタッフが辞めたりするリスクがあります。現在の売上を維持するのが困難であると判断されやすいのです。
年買法で売却価格を計算する際も、通常は営業利益の3~5年を掛けて計算する部分を1年以下にするケースもあります。
M&Aで店舗をできるだけ高く売るためには、引き継ぎしやすい体制を整えたり、現経営者に一定期間残ってもらったりする方法が有効です。そのまま引き継ぐのではなく、できるだけ評価が高くなるような施策を打ち出す必要があります。
M&Aにかかる費用
居抜き売却と同様、M&Aでも売却時に手数料と税金が発生します。それぞれの特徴を理解しておきましょう。
手数料
M&A仲介会社を通して店舗を売却する場合は、時価総資産額が5億円以下なら5%程度を成功報酬で支払うのが一般的です。成功報酬とは別に、着手金が必要となるケースもあります。
オンラインで案件探しや交渉を行えるM&Aプラットフォームを利用する場合は、手数料を安く抑えることが可能です。売却金額が大きくなると手数料も高額になるため、手数料が気になる場合はM&Aプラットフォームを利用しましょう。
TRANBIは売り手の手数料が無料です。M&A案件の掲載や買い手との交渉・成約にもお金がかかりません。成約時の追加手数料も支払わずに済みます。
税金
個人株主が株式譲渡で会社を売却した場合は、譲渡所得に対する所得税・復興特別所得税・住民税が発生します。合計税額の計算式は『(譲渡価額-(取得費+譲渡費用))×20.315%』です。
個人が事業譲渡をした場合も、所得税・復興特別所得税・住民税等がかかります。ただし、所得税の計算方法や納税方法は資産の種類(区分)によって異なり、税率も一律ではありません。
例えば、譲渡資産の中に土地や建物などの不動産が含まれる場合は、分離課税(他の所得金額と合計せずに税額を分離して計算すること)で処理するのがルールです。
所有期間が5年を超える場合は『長期譲渡所得』、5年以内の場合は『短期譲渡所得』となり、以下の税率を掛けて計算をします。
- 長期譲渡所得:20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
- 短期譲渡所得:39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)
在庫や機械などは総合課税となるため、他の所得と合算した課税所得に所得税の税率を掛けて所得税額を算出します。税金の計算方法や税率の詳細は、国税庁のホームページで確認しましょう(所得額に応じて税率が5%~45%まで変動)。
なお、法人が売り手になって事業譲渡をする場合は、事業を売却して得た利益に法人税等が課されます。法人税等の税率を合計した実効税率は約30~35%です。
参考: No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)|国税庁
店舗のM&A事例
M&Aによる店舗売却は、実際にどのような経緯で行われているのでしょうか。TRANBIを通して実際に行われた店舗売却の事例を紹介します。
甘酒カフェ
一つ目の事例は、甘酒カフェが300万円で売却された案件です。売り主はほかにもレストランを経営しており、甘酒カフェの開業にはこぎつけたもののレストラン経営を重視する方針を取ったため、甘酒カフェは開業から間もなく売りに出されました。
設備の多くが新品または未使用だったことや、売却の背景にネガティブな要素がなかったことから、買い主は甘酒カフェの買収に踏み切っています。
店舗の立地や甘酒の将来性も、買い主が買収を決めた理由です。「甘酒を流行らせてほしい」という売り手の思いも引き継ぎ、化粧品を買い求めるようなコンセプトでの新たなニーズの開拓を進めています。
サンドイッチ専門店
もう一つの事例は、廃業寸前のサンドイッチ専門店が200万円で売れたケースです。オープン時にかかった費用が200万円程度だったため、初期費用だけでも回収できればと売りに出したところ、20件以上の申し込みがありました。
売り手が売却を決断した理由は、病院や老人福祉施設向けの配食の本業が忙しくなり、クオリティの維持やスタッフ確保などの面から続けていくのが厳しいと感じたためです。
本業が忙しくなる関係で、案件掲載から2カ月間での成立を目指していました。売上は順調であったことから、多くの買い手候補が総合的な魅力を感じたと考えられます。
この事例のように、早く売りたいなら売却時に儲けを重視しないことが重要です。儲けようと思わずに手頃な金額で売りに出せば、よりスピーディーに交渉が進むでしょう。
まとめ
店舗を売却する代表的な方法は、居抜き売却とM&Aによる売却です。これまでは居抜き売却が主流でしたが、近年はM&Aで店舗を売却するケースが増えています。
M&Aなら買い手はすぐに事業を開始できる上、売り手にも居抜きより高く売れやすいというメリットがあります。M&Aで店舗売却を行う場合は、手数料を安く抑えられるM&Aプラットフォームを利用しましょう。
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