2022-06-07

ブーム期待の甘酒カフェを300万円で買収!売上絶好調の林業会社ならではのM&A戦略とは?

買い手(法人):匿名

<中小企業の新規事業立ち上げを目指したM&A・買収事例>

 

東京都世田谷区・千歳烏山駅近くにあるカフェ「あまざけと乳酸菌 kara-sara(からさら)」麹と乳酸菌を組み合わせた健康・美容効果の高いドリンクや、季節のフルーツをふんだんに使ったフルーツサンドが好評です。

今年4月にこのカフェ事業を買収したのは、宮崎県で林業を営むA社。東京のカフェと地方の林業、どこに接点があるんだろう? と感じるかもしれません。しかし実は、林業ならではの事情や今後の狙いなど、そこには納得の背景がありました。今回は経営企画のYさんに、過去のM&Aの経験も含めてその詳細を語っていただきます。



(甘酒カフェで提供されている商品)

【林業の繁閑差をカバーする!在籍する多様なスキル人材を活かして飲食業へ】

- まずはじめに、御社の事業内容について教えてください。
ビジネスモデルとしては非常にシンプルで、山を土地ごと購入し、その山の木を切って丸太にして、それを市場に納品するという形です。

木は、植えてから切れるようになるまで40年かかります。ですので、まずは成長した木(立木)が生えている山を買い、木を切った後はまた種をまいて、その山は一度終了。土地は再び自分たちで切るために取っておくか、売却するかになります。

当社はもともとオーナーが個人事業でやっていましたが、売上が立ってきたため、1年前に法人化しました。事業が伸びている要因には「ウッドショック」もあります。外国から木が入ってこないことで、国産の木の価値が2倍、3倍になったんですよ。そのタイミングで能力の高い“エース社員”も入ってきて、さらに売上が伸びることになりました。

- Yさんご自身はどのようなお仕事をされているのでしょう?
僕は経営企画としてM&Aを担当しましたが、普段は経理の仕事がメインです。今回はたまたまオーナーが新規事業を立ち上げようということで、だったらゼロからよりもM&Aの方がいいのでは、と僕から提案しました。買収の経験は何度かあったので、特にハードルを感じなかったんですね。

- TRANBIを使ったきっかけを覚えていらっしゃいますか?
ネットで「M&A 個人」「M&A 法人」と調べていたらTRANBIが出てきました。他社のサイトも見ていましたが、そちらは案件が少なく、結果的にTRANBIでマッチングしたということになります。

TRANBIは以前から個人的に結構使っていたんですよ。5年ほど前に比べたら、ずいぶん使いやすくなっている印象です。チャットルームには契約書のテンプレートがあり、かなり便利になりましたね。

他には商工会や銀行、政策金融公庫でもM&Aの案件を出していますし、わりと幅広くチェックしていました。一日一時間ほど見て、次の日もまた新規案件増えているかな、とこまめに見ていた感じです。

【事業承継・M&Aプラットフォーム『TRANBI』はこちら】

- 今回M&Aに挑戦しようと思った背景は、どんなところにありましたか?
そもそも林業は安定しないんです。例えば梅雨の時期は、雨が降ったら木を切れないので現場が止まるんですね。売上の幅が1000万円を切る時もあれば、4000万円以上になる時もあって。そして売上が伸びるほど、このギャップは大きくなっていくわけです。

人も増えていて固定費はかかるし、かといって林業は危険も多く、きちんとした研修体制がないままスポットだけ人を雇うような体制は難しい。あとは日々の天候によって必要な労働力の差が急激に起こってしまうので、日ごとでの調整が難しいという問題もあります。繁閑の差をカバーしたいけれど、この先林業一本ではちょっと怖い。そういった思いがあり、別の事業に手を伸ばしてみようということになりました。

- 新規事業を選ぶ上で、意識したことはありますか?
実は林業ってすごく転職率が高くて、コックやエンジニア、デザイナーなど、まったく違う業界の方も転職してきます。というのも、林業は危険が伴う分、給料が高いんですね。だから数年しっかり稼いでまた別の業種へ行くようなことも多く、結果的に弊社では色々なスキルを持つ人材が集まるんです。

当社にはWeb広告に強い人材や、食品衛生責任者の資格を持っている人材がいたので、飲食関係はどうかなと。林業の重機があるので建設関係も良さそうですし、ある程度関連性がある分野で絞りましたね。



(甘酒カフェの店内①)

【売上は0でいい、欲しいのはすぐに開業できるパッケージ】

- この事業に魅力を感じた点、第一印象で気になったポイントはどこでしょうか?
やっぱり甘酒という新規性ですね。注目される要素があり、かつまだ大きなブームになっていないものに先行投資したということです。店舗の場所は東京ですが、弊社のオーナーが名古屋にも拠点を置いているということもあり、距離の面では特に問題ありませんでした。

今は食品衛生責任者の社員を現場に派遣して、マネージャー兼調理スタッフとして働いてもらっています。しばらく軌道に乗るまでは、常駐して頑張ってもらう予定です。

- 今回の甘酒カフェ事業は、開業後3日ほどですぐに売却に出された案件です。この点に関して、不安はありませんでしたか?
ないですね。事業譲渡ということで、僕からすれば単純に「開業セット」のようにパッケージングされたものを購入した感覚なんです。だから売上の有無も関係ありませんでした。

商品もあるし、レイアウトもできていて、開業までの準備が全て揃っている状態。むしろ開業間もなく売却に出されていることは、当社にとって大きなメリットでした。設備も新品・未使用のものが多かったですから。エアコンすら未使用だったので、買えば20~30万円はしますし、その時点で一部ペイできるわけです。買った時点で逆にプラスですよね。

もちろん売却の理由は面談の時に確認しました。聞くと、向こうのオーナーは他にもレストランを営んでいて、そちらがすごく繁盛してきていると。そのため、開業までこぎつけたものの経営全体の視点で考えると、甘酒カフェよりもその店舗に社員を配置した方が良いと判断し、オープン早々に売却を決めたそうです。特にネガティブな背景ではなかったことにも安心しました。

- 甘酒カフェというビジネスモデルや、強みについてはどう考えていますか?
甘酒の可能性に加え、あとは立地の良さでしょうか。店舗は東京の千歳烏山駅から徒歩20秒の場所にありますし、このエリアは都市開発も進んでいて今後の発展も見込めます。今のところ家賃はそう高くないので、1年後、2年後に今の固定費を維持できれば、いい流れが作れるんじゃないかなと。

甘酒については一般的な流通で手に入るものを使用しているので、特殊な仕入れルートがあるわけではありません。正直、参入障壁は低いかもしれない。だからこそ、まだ他がやっていないものにいち早く挑戦していること自体が強みです。かつ、ほとんど新品の状態で店舗を取得できたので、その点でのアドバンテージは大きいと思っています。



(甘酒カフェの店内②)

【オーナーも、店も、金額もいい。買わない理由がなかった】

- 交渉が進み、実際に現地に行った時の印象を教えてください。
現地に2回行ったところ、カフェ自体はすごくキレイで「この値段なら欲しい!」と思いましたね。実際に商品も美味しかったですし、これなら新しい事業としていけるんじゃないか、という手応えがありました。

店舗のターゲットとしては完全に女性向けです。甘酒は「飲む点滴」「飲む美容液」とも言われますから、美容や健康意識の高い20代後半〜40代前半くらいの女性には流行るんじゃないかなと。

平日に行った時でも通りはとても賑わっていたんです。これなら初動でも20〜30万円程度は見込めるんじゃないかなと考えました。目標としては月50万円、将来的には月100万円を目指したいですね。

- 実際にこの事業を買おうと決めたタイミングはいつだったのでしょう?
向こうのオーナーが結構ユニークで、会ってみて面白かったんです。今までM&Aでお会いしてきた社長さんは60代、70代といった年配の方ばかりでしたが、今回の相手は30代前半くらいの若くて気さくな方でした。話をしていてすごく馬が合いましたね。

その時には、例の繁盛しているレストランにも行きました。「本当に甘酒カフェに人員を割けないほど人気なのかな」という気持ちもあって。実際に行ってみると、やっぱり本当に美味しい! お客様もすごく多かったんですよ。

それで「ああ、この人が言っているなら間違いない」と。オーナーもいい、店もいい、金額もいいなら、もう買わない理由がないということで決断しました。

とはいえ、他にも交渉中の会社が5、6社いたので「もう少し考えさせてほしい」ということになり、そこから1ヶ月半〜2ヶ月後にようやく連絡をいただけました。

- 相手から選んでもらうために工夫したことはありましたか?
ひとえに、向こうの要望にどれだけ応えられるかどうかだと思うんです。これまでのM&Aでも全てそうでした。

今回のオーナーが求めていたのは「甘酒を売ってほしい」ということです。売却希望価格は300万円で、明らかに資産でプラスが見込める案件ですし、当然500万円、600万円でも欲しいと言う方々がいました。けれど、甘酒カフェを継続してくれる人はいなかったそうなんです。

開業間もないため、売上も立っていなければ固定のお客さんもいないので、本当は設備だけ買って自分たちの好きなものを売ってもいいんですよね。例えば、他社ではかき氷屋や、和食屋としての展開を想定していたようで。

けれどオーナーには「甘酒が流行る世界を見てみたい」「このお店が流行の始まりになってほしい」という思いがありました。だからこそ、買収金額は多少安くても甘酒を継いでくれるところに譲りたいと。僕らはもともと林業ですし、甘酒で挑戦してみたいと伝えたことで、お互いうまく嚙み合ったんです。もし金額だけを見るオーナーであれば、今回マッチングしなかったでしょう。

- 今回の交渉や引き継ぎの中で、イレギュラーなことやトラブルなどはありましたか?
店舗を引き渡すまでに必要な段取りが、お互いに分かっていませんでした。僕らとしては設備も食品衛生責任者もいて、すぐにお店をオープンできるものだと思っていましたが、飲食店の営業許可申請や不動産の契約変更など、色々と手続きが必要なことがわかりました。前オーナーは大家に賃貸契約の変更の話をまだしていなかったので、その分時間もかかりました。

営業許可は保健所に申請するのですが、地域によってスピード感も全然違います。例えば宮崎なら3日ほどで対応してもらえますが、世田谷では3週間ほど待つことになり、そこでのタイムロスもありました。

実際にオープンできるまで1ヶ月半ほど遅れてしまいました。本当はもう少し早く開業したかったのですが。リサーチ不足だった部分がありました。

他には特に大きなトラブルはなかったです。契約書の取り交わしは1時間ほどで終え、その後レシピの引き継ぎを2日間かけて行いました。オーナーと店舗にいた社員の方と一緒に、1日4時間ずつ、商品を全部作れるまで研修をしました。あとは営業に必要なものを確認して完了、といった感じです。

【食事では勝負しない!コンセプトは”化粧品”】

- 店舗オープン後、お客様の反応はどうでしょうか?
そうですね、まだあまり時間が経っていないので、これからといった感じでしょうか。お越しいただいた方からは、商品の味やお店の雰囲気、スタッフの接客など、嬉しい口コミが寄せられています。

集客については、今はSNSならInstagramとTikTokぐらいです。ホームページを作ったりビラを配ったりも考えましたが、今はHotPepperや食べログ、Googleビジネスプロフィールなどを使って、愚直に評判を上げていくことから始めようと思っています。

お近くにお住まいの方、ご興味を持たれた方は、ぜひお立ち寄りいただければ嬉しく思います!

- 今後の展開について、現時点での計画があれば教えてください。
千歳烏山はチェーン店をはじめとして、気軽に立ち寄れるカフェが多いエリアです。だから、普通のいちカフェとして甘酒を提供してもきっと勝てません。やはり「甘酒を求めて」来ていただくには、食品というよりも“化粧品”を売るようなコンセプトで訴求していきたいなと。

となると、ドリンクだけでは難しいので、新規メニュー開発は必須です。今はサンドイッチを出していますが、例えば甘酒ソースを使ったケーキやパフェなど、魅力的なメニューをどんどん増やしていきたいですね。

- 今回のM&Aで、当初の目的が達成された実感はありますか?
もともと林業における繁閑の差をカバーしたいという思いがありました。1店舗目で完全にカバーすることは難しくても、これから軌道に乗せて店舗を増やしていけば、労働力も売上もいい形で平準化できそうだと考えています。

また、東京のレシピを宮崎に持ってきたかったという目的もあるんです。僕らは土地をたくさん持っているので、半分はまた木を育てるとしても、残り半分の土地には建物を建てる計画もあって。

もし東京の1店舗目がうまくいけば、宮崎で余っている土地にカフェを作り、雨の日にオープンしてはどうかなと。山の近くには結構人が住んでいますし、社員も派遣できますから、労働力の平準化と一定の売上確保につながってくれると思います。

- 今後M&Aに挑戦される方に向けて、最後にアドバイスがあればお願いします。
事業譲渡の場合は、やっぱり向こうのオーナーと馬が合うかどうかが一番重要です。どれだけ決算書が良くても、相性が悪ければうまく引き継ぎもできません。M&Aって、M&A自体がゴールじゃないですよね。買ってからがむしろスタート。購入した瞬間に縁が切れるわけではないですし、そこから1〜2年は引き継ぎその他で関わっていくことになります。

僕自身も、実は過去に大失敗しています。当初売り手様と、譲渡を終えてから引継ぎ期間を6ヶ月間と合意していたのに、3ヶ月間でやめたいと言われ、泣く泣く譲ることになった苦い経験があります。

だからこそ「この人と一緒に仕事できそうだな」と思えればOKですが、少しでも違和感を抱いたり「売って終わり」「お金の話ばかりする」と感じたりする場合、やめた方がいいと思います。

あとは年齢・経験問わず、対等に話してくれる相手かどうかも、その後の関係性が決まってくる大切なポイントです。最初から完璧なM&Aなんてないので、お互いに協力し合える、補い合える方を選びたいですね。

**今回A社が買収した案件はこちら**

「流行を繰り返す甘酒が題材のカフェ」

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