2022-04-19

映像機器卸会社がリラクゼーションサロン経営に挑戦!セラピストと良好な人間関係を築く秘訣とは?

買い手(法人):mediacamp株式会社

<中小企業の多角化を目指したM&A・買収事例>

 

2009年から業務用映像システムの卸業を展開しているmediacamp株式会社。コロナ禍に伴う本業の売上減少に伴い、新たな柱を作ろうと決意します。既存のリソースを引き継ぐことでスピーディーに収益を挙げられる点に魅力を感じ、M&Aという手法に目を付けました。

mediacampが買収したのは、なんとリラクゼーションサロン。本業とは無関連の事業ですが、あえてこの業種を選んだのはなぜなのでしょうか?なにか親和性はあったのでしょうか?現在は頻繁に店舗へ足を運んでセラピストと一緒に経営改善に取り組んでいる、mediacamp代表の寺島伸一さんにお話を伺いました。



(※あくまでイメージです)

【コロナ禍で本業が不振に。新たな柱としてシングルマザー支援にも繋げられる事業を】

- まずは、寺島様のキャリアから教えてください。
もともとは会社員でしたが、「サラリーマン大家」がブームとなっていた時期に不動産事業を始めて、マンション経営をするようになりました。この時に、お金の流れを掴んで経営するスキルを習得しました。

その後もサラリーマンを続けていたのですが、「〇〇会社の寺島」ではなく寺島個人を評価して、取引や付き合いをしてくれる方が増えてきました。肩書きではなく、自分自身を評価してもらえるとうれしかったんです。

もちろん会社に所属している身なので、いつも「会社にどう貢献できるか」を考えながら仕事に取り組んできました。ただ、どれだけ貢献しても評価に反映されない時期があって

こんなに評価をされないのなら、いっそ自分自身で起業して評価を100%自分のものにしたいと思い、脱サラをして2009年にmediacampを起業しました。mediacampでは、映像機器の卸事業や映像コンテンツの企画事業を展開しています。

- なぜ今回は、mediacampの事業と関連のないリラクゼーションサロンの買収に至ったのでしょうか?
当社の映像事業は宿泊業界に特化していたため、コロナ禍の影響でホテルの稼働率が落ちたことに伴い、売上が目減りしていました。こうした背景があったため、別の事業の柱を立てようと思ったのです。幸い、本業は私がいなくても回る体制が確立できているからこそ、新規事業開発に注力できました

新たな柱は、障害者支援やシングルマザー支援に繋げられる事業が理想でした。TRANBIで案件を探していると、リラクゼーションサロンの売り案件を見つけて、「女性が手に職を付けて活躍できる」という点では魅力的な業種だと思い、売り手様にコンタクトを取ったのです。

- 障害者支援やシングルマザー支援を目指していたのは、何かきっかけがあったのですか。
2級障害者でシングルマザーの者が身近にいるからです。ただ売上を上げるための事業ではなく、障害者支援やシングルマザー支援に繋がる取り組みをしていきたいという思いは以前からありました。

障害者の方が自立した生活を送れる状態を目指して共同生活を行う、「グループホーム」の運営主体になろうと検討したこともあります。しかし、運営にはかなり手を掛けなければならず、本業と並行して手を出せる事業ではないと思い、見送りました。

ただ、できる範囲で何らかの支援ができればと思ったため、当社がグループホームの事業者さんに物件をお貸しするという形で、間接的ですがグループホームに関わりは持っています。



(※あくまでイメージです)

【急成長する取引先を見てM&Aを決意、2年越しの挑戦】

- M&Aという手段に興味を持ったのはどうしてですか。
当社の取引先に、どんどん事業規模を拡大されている企業様がいました。なぜこれほど成長著しいのだろうかと見ていると、M&Aを繰り返して会社を大きくしていて。やはり事業を拡大するためには、すでに自走している会社や事業をグループに引き込むことが大事だと学んだのです。

ゼロから事業を立ち上げる場合に比べると、圧倒的に早く収益を生むことができるため、M&Aという手段に魅力を感じて3年ほど前から情報収集をしていました。

- 案件を探すにあたって、TRANBIのようなM&Aプラットフォームを利用したのはどうしてですか?
対面で相談できるM&A仲介事業者も紹介してもらいました。ただ、個人的にはすばやくM&Aを実行するならM&Aプラットフォームが最適だと思っています。オンライン上ですべて完結できますし、細かいことも聞きやすいからです。

実は、2年前にもTRANBIを利用したことがあります。当時はコインランドリー案件の購入を検討していて、契約寸前で多額の設備投資が必要であるとわかったため、お断りさせていただきました。当時は初めて利用したこともあり、TRANBIに使い慣れていなくて戸惑ったこともありましたが、今回は2回目なので大丈夫だろうと思いました。

- 今回購入したリラクゼーションサロン以外の案件にも問い合わせを行いましたか。
他に2件、問い合わせをしました。うち1件は、どんな物件で収益性がどれほどなのかを知りたくてメールしたところ、「金額交渉はできません」という返信があって。私としては金額交渉をするつもりはなく、単に質問をしたいだけだったので、「フィーリングが合わないな…」と思い、こちらからお断りしました。

もう1件は、私以外にも買い手候補の方がいるということで、天秤にかけられて。「こちらから提示している希望譲渡金額に上乗せしてくれたら、交渉の優先権を差し上げます」と言われたんです。そうした交渉手法が合わなかったのと、当初聞いていた内容と異なる事実が見えてきたため、こちらもお断りしました。

今回の案件は、黒字経営で、かつ経験豊富なセラピストの方が7名も揃っており、引き継いですぐに収益を出せる点が魅力でした。

- リラクゼーションサロンの特徴はどんなところにありますか。
フランチャイズ加盟店で、全身もみほぐし、アロマトリートメント、ドライヘッドスパなどのメニューを提供しています。客単価8,000円ほどと競合店に比べれば高めで、最寄駅から徒歩10分と立地が特別いいわけでないにもかかわらず、順調にお客様が入っています。

働いている7名のセラピストは、個人事業主の方で業務委託契約をしています。求人サイトから応募されてきた方や、働いている方の紹介で入った方などがいると聞いています。



(※あくまでイメージです)

【フランチャイズ加盟料が別途必要だと、後で発覚するトラブルも】

- 黒字経営にもかかわらず、どうして売却に至ったのかについて売り手様に伺いましたか。
実は、売り手様もこの事業を引き継いだ立場の方で、オーナーになって半年足らずで売却されているんです。

このお店自体は4~5年前から営業していました。2020年以降、コロナ禍の影響で売上が一時期ぐんと落ち込んでしまって、開店休業状態だった時期もあったと聞いています。

そんな中、2021年9月に売り手様が新しいオーナーとして入られて。予約システムを刷新したり新しいスタッフを採用したりして、お店を少しずつ立て直していき、売上1,000万円、営業利益100万円ほどの黒字経営に持ち直すなど、順調に経営をされていました。

ただ、売り手様は本業が会社員で、副業としてこのビジネスをしていて。時間のやりくりをしながら、理想の店舗作りを進めることが難しく、手放すことを選んだのだと思います。かなりお若い方だったため、もしかすると自分より年上でかつ専門性を持っているセラピストさんのマネジメントに苦労もあったのかもしれません。

- 先方の希望譲渡金額300万円に対して、最終的に230万円で契約がまとまっていますが、この金額はどのように決定しましたか。
もともと、価格交渉をする気はまったくなかったんです。そのため、今後どれだけ店舗改善によって売上を伸ばせる見込みがあるのかを考えながら、先方希望譲渡金額の300万円で購入した場合の収支計画をシミュレーションして、納得できたので購入を決めました。

ただ、後々の交渉過程で、オーナー変更に伴うフランチャイズ加盟料が別途必要になるとわかりました。「加盟料も譲渡金額の中に含まれている」と聞いていたため、売り手様の確認ミスということで金額調整をお願いして。フランチャイズ加盟料分を引いた230万円で着地しました。

- M&A交渉経験はある一方で、成約に至るのは今回が初めてだったようですが、譲渡物の引き継ぎや契約の締結はスムーズに進みましたか。
譲渡物については、売り手様と一緒に店舗に行って確認した上で、「目に見えるものすべてが譲渡物」という契約を締結しました。物品以外のSNSや予約システムのアカウントについては、IDとパスワードを文書化していただき、それを引き継ぎました。

契約書はTRANBIの雛形をベースに、適宜内容を変更して契約の締結を進めました。本業でも契約書をやりとりする機会が多く、慣れているのでまったく問題ありませんでした。

【独立を語るだけでは憧れのまま、本気で経営したいなら土台づくりから】

- 2022年1月から引き継がれて以降、どんな改善を進めてきましたか。
週1回は必ずサロンに足を運んでいます。時間に余裕がある時は、自分で予約をして実際に施術を受けながら、セラピストさんと話をしています

セラピストさんはみんな個人事業主ですし、施術においても高い技術をお持ちで、独立願望が強い方もいらっしゃいます。彼女たちに働き続けてもらうためには、いかにセラピストさんにたくさんお金をお支払いできるかということと、セラピストさんがやりたいことを叶えられる環境であることが重要だと思っています。

そのため、マメにコミュニケーションを取って、セラピストさんが何をやりたいかを吸い上げたり、お店の方向性をどうしていくかを話し合ったりしながら、客単価や売上のアップに繋げようと改善を進めています。

業界のトレンドも取り入れていく必要があると思っていて。トレンドは、日々お客様と接しているセラピストさんが一番詳しいからこそ、現場に顔を出して話すようにしています。

- セラピストさんからは、どのような要望が挙がっていますか。
「新しい施術メニューを取り入れたい」「早朝対応のプランを作りたい」などたくさんの要望が挙がっていて、すでに新メニューとして採用したものや検討中のものもあります。

たとえば、今はオールハンドなので、セラピストさんの個々のスキルが如実に表れてしまうんです。「Aさんは〇〇の施術を得意としているけれど、Bさんは苦手」といったことが、指名数にも繋がってしまっています。セラピストさんと、「今後は技術の差を埋めるために、マシーンの導入も検討しましょう」といった話もしています

要望として挙がるものの中には、セラピストさん自身がやりたいことも、お客様から求められていることも両方あって。客単価アップに繋がるものなら導入する一方、特定のセラピストさんにしかできない施術のメニュー追加などの提案は受け入れていません。

- 今後のビジョンを教えてください。
売上が安定している、いい状態で事業を譲っていただきました。ここから、さらに売上を伸長できるイメージはできているので、引き続き改善に取り組んでいきたいです。また、シングルマザー支援事業者さんとの繋がりも、今後作っていき、雇用の増加に貢献したいと思います。

リラクゼーションサロンを経営するにあたり、業界の勉強をするためにセミナーや展示会にも足を運んでいますが、この業界では「リピーターを7割獲得する」ことが必須と言われています。現在のリピーター率は5割ほどのため、新規顧客とリピーターどちらの獲得にも取り組んでいきたいです。

引き継いだばかりなので、当面は店舗の改善が優先事項ですが、今後もM&Aにチャレンジしたいと思っています。リラクゼーションサロンだけにこだわらず、自分が興味を持てる業態を幅広く検討する予定です。

- 今後、起業やM&Aに挑戦しようとしている方に向けてのメッセージをお願いします。
セラピストさんとお話していると、皆さん「独立したい」とおっしゃられます。サラリーマン時代にも、周りに「独立したい」と言う人がたくさんいました。

けれど話を聞いてみると、経営への知見や経営者としての考え方を持っていない方が多くて。準備をせずに願望を口にしているだけでは、独立が憧れのままで終わってしまいます。

独立するにしても、M&Aにチャレンジするにしても、準備が肝心です。きちんと土台を作った上で挑戦しましょう。また、ビジネスにしても他のことにおいても、表面を見るだけではなくて、「裏側の仕組みはどうなっているのだろう」と探索する好奇心を持つことが大切だと思います。

*****今回mediacamp株式会社様が買収した案件はこちら*****

「【黒字経営】埼玉県大宮駅近リラクゼーションサロン」

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  • 倉本祐美加
  • ライター紹介倉本祐美加

    関西学院大学卒業後、クラウド製品を扱うIT企業のインサイドセールス職を経て2016年にライターとして独立。企業取材を中心としたインタビュー原稿の制作に従事していますが、エンタメ・スポーツ・文化等幅広く好みます。

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