2022-05-10
美容業界の顧客理解のため、スモールM&Aで店舗運営に挑戦!マーケティングスキルを武器に赤字店舗を立て直す
買い手(法人):ヴァンテージIT 株式会社
<中小企業の多角化を目指したM&A・買収事例>
- ➤ 顧客理解がきっかけ、Webマーケ領域を武器に店舗M&Aに挑戦
- ➤ オーナー・店長ともにすぐに信頼できると確信できたことが成功の要因
- ➤ お互いの弱みをカバーできる運命の相手だった
- ➤ M&Aは宝探しのような感覚
東京・銀座の一角にオフィスを構え、美容業界向けの集客サービスを中心に展開するヴァンテージIT株式会社。小規模な店舗から全国展開する美容サロン、あるいは大手化粧品メーカーまで、年間で数億円規模の広告運用を手掛けています。
今回買収したのは、群馬県の好立地にある美容系店舗。既存事業との親和性が高く、新たに店舗事業を始めたいという思いがあったことから、今回のM&Aに至ったそうです。現在は店舗の運営自体はグループ会社に委託して、外から経営改善を図っているそうです。今回の買収の意図やプロセスについて、代表の樹神良和さんとWebマーケティング事業部の佐々木かれんさんにお話を伺いました。
【顧客理解がきっかけ、Webマーケ領域を武器に店舗M&Aに挑戦】
- まずは、ヴァンテージIT株式会社の事業内容について詳しくお聞かせください。
弊社には、Webマーケティング事業部とシステム開発事業部の大きな二つの軸があります。Webマーケティングの方では主に美容系の商材を扱っており、特にInstagram、Facebook、LINE、TikTokといったSNSの広告を手掛けています。システム開発の方では、ベンチャーから大手まで色々なアプリやシステムのサービスを作っているところです。
今回のM&Aは、それぞれの事業に親和性があるだろうという考えからでした。マーケティングの面でもシステムの面でも、色々とノウハウが活かせるでしょうし、特にクライアントの業務を深く理解し、自分たちで的確にニーズを把握したいという思いが強かったです。
- M&Aの手法にはもともとご興味があったのでしょうか?
はい、昔から小型のM&Aは何度か経験しています。人の縁につながったり、新しい業界への入口になったりと、色々と面白いことが起きるのがいいですね。その事業自体がうまくいく場合もあれば、M&Aがきっかけで他の事業がうまくいくこともあります。
色々なM&Aサイトを見ている中で、今回TRANBIを本格的に利用しようと思ったのは、まさに今回の案件が掲載されていたからでした。TRANBIはサブスク型で成約手数料が無料なので、他サイトと同じ案件があった場合には金額面で強みがあると感じます。最終的にはTRANBIで成約する方が、私たちとしても助かります。
- 今回の案件で最も決め手になったポイントは何でしたか?
以前から美容系店舗事業に挑戦してみたいと思っていた中で、ちょうど狙っていた小規模のM&Aだったというところです。
ただ、M&Aの経験はあるものの「人がついてくるM&A」は今回が初めてで少し警戒する面もありました。スタッフを引き継ぐと良い面も苦労する面もあるはずですし、予期せぬ人を一気に受け入れることになれば怖さもあります。
会社としては「人」に一番重きを置いています。採用面接であれば一人ひとりお互いにフィットするかどうかを見て入社してもらいますが、M&Aの場合は複数人まとめて入ってくるため、人数が増えれば増えるだけリスクも高くなるかなと。
結果的に今回はすごく相性のいい方でしたが、やはり人については慎重になるので、規模感が小さい案件で試したい気持ちはありましたね。
(ヴァンテージITで働く社員のみなさま)
【オーナー・店長ともにすぐに信頼できると確信できたことが成功の要因】
- 実際の交渉はどのように進みましたか?
とにかく早く店舗を見てみたかったので、前オーナーさんと、代表の樹神と、実際に事業を見る佐々木の3人でまずは会うことになりました。オーナーの方とは年代も近く、物腰の柔らかい方だったので、比較的早くお互いに信頼関係を築けたと感じています。
店舗自体も、もともと美容院だった場所を改装していましたし、日が浅いこともあってキレイな印象でした。外から見て、意外と目立つことも好感触でしたね。
- お会いになった時には、具体的にどんなお話をされたのでしょうか?
かなりざっくばらんに話ができて、それこそ「どうして売るんですか?」とストレートに質問することもできました。課題となるコアな部分を聞けたのも良かったです。
特に、今回引き継ぐ店長さんについては重点的に聞きました。やっぱり一番不安だったのは「人」の部分でしたから。予約サイトやSNSなどの情報は見てある程度人間性の部分をリサーチしていましたがそれでも見えるのは表側の部分だけであり、直接会ってお話しできるタイミングは事業売却確定後ということだったので、どうしてもリスクを感じていたんです。
でも結果的には、とてもいい方でした。こちらが一方的に決めて依頼するのではなく「一緒にお店を作っていきたい」という意思のある、まさに私たちが求めていた人材です。積極的に意見を言ってくれたり、自分で考えて動いてくれたりと、とても理想的な人材でした。
そういう意味で、当初懸念していた人の面では「成功」と言えそうです。結果オーライではありますが、ただ、やっぱり最初のドキドキ感は忘れられないですね。
- 事業のビジネスモデルや売上などに関しては、どんな印象でしたか?
前オーナーさんからは集客が一番の課題だと聞きました。赤字の状態でしたが、ちょうど私たちがWebマーケティングで得意とする分野だったので、そこまで気にならなかったです。なまじ黒字だとかえって買収金額が高くつきますし、改善できる見込みも十分ありました。
もともと新規店舗を出すことも検討していたので、試行錯誤しつつゼロから作るより、小型美容系店舗を購入して黒字化した方がメリットは大きいなと。異業種だからこそ、すでに形があるところからブラッシュアップした方が参入しやすく、ちょうど良かったと思います。
【お互いの弱みをカバーできる運命の相手だった】
- 引き継ぎはどのように進みましたか?トラブルはありませんでしたか?
前オーナーさんも美容系店舗が本業ではなく、ノウハウは店長さんが持っているので、ソフト面での引き継ぎはほぼありませんでした。そのため、引き継ぎ自体は時間もかからず、お互い楽だったかもしれません。
確認したい点が出てきた場合には、今でも「これどうですか」とチャットで聞いて対応していただけるので、安心して運営できています。
全体を通して、今回は特にトラブルもなく、円満に完了することができました。
しいて言えば、店舗M&A初心者ゆえ、不動産契約で想定外の出費があったことでしょうか。前オーナーの入居から2〜3ヶ月程度しか経っていませんでしたが、仲介手数料と礼金はやはりもう一度必要でした。それならもう少し広い別の場所を借りられたかも、と後から少し思った程度です。
- 最初の売却希望価格より、最終的には値下げする形で着地しています。このあたりの経緯を教えてください。
やはり赤字だったことと、事業を早く手放したかったことが反映されたと思っています。店舗もあってスタッフもいて、それで新規客が来なければ、毎月赤字が出続ける状態ですから。店を閉めることなく、雇用を守ってあげたいという思いもあったはずです。
2~3ヶ月やってみて「打つ手なし」の状態で困っていたので、集客に自信のある会社からの提案だからこそ相手に刺さったのかなと思います。
私たちは集客は得意ですが、店舗の作り方や相場感、スタッフの雇い方、マネジメントといったノウハウはありません。ちょうどお互いの弱い部分をすっぽりカバーできるというか、運命の相手、ベストマッチだったのかなと思います。
- 引き継ぎ後の運営や、売上の変化などはいかがでしょうか?
徐々に上がってきています。私たちが得意な手法で集客を行った成果が出てきているのかなと。
一度来店した方の再訪問率は高いので、まずは仮説を立てて格安で体験ができる新しいキャンペーン施策を行い、SNS広告を流しました。まずは新規集客が大きな課題だったので、最初の月で重点的に取り組んだ結果、確実に来店数が増えてきています。
そして、新しくお店の経営が変わったことによる、店長さんのモチベーションの変化も影響しているかもしれません。一緒にお店を作ってくれている感覚がありますし、来店後の成約につなげる部分に大きく貢献してくれていると感じています。
- 今後のビジネスの展開や、戦略はどのように考えていますか?
美容系店舗の事業は、こちらから積極的に攻めないと伸びていかないビジネスだと考えています。集客においても、数を集めるにはWeb広告が適していますが、やはり知識や戦略がなければうまくいきません。きっと前オーナーさんもその点で苦労されたことと思います。
私たちはその点で強みがありますし、その他にも予約サイトや紙のポスティングなど、幅広い手法で改善していくつもりです。競合に埋もれないよう、頭を使って差別化していくことも重要でしょう。
まだ新しい店舗ですし、強みはこれから作っていこうと思います。ひとまず箱があれば、自分たちの得意な部分を活かして改良していけますから。店舗販売の仕入れやメニューの拡大など、具体的な改善の余地は十分あります。主軸の事業とも親和性が高いので、シナジーが得られるような店舗運営を目指していきたいです。
【M&Aは宝探しのような感覚】
- M&Aの案件を探す上で、重視している基準や条件はありますか?
M&Aに対しては「面白いものがあったら買おうかな」と思っているので、TRANBIも新着案件が入ってきたタイミングでよく見ています。すでに習慣というか、新聞を読む感覚に近いかもしれません。
なかでも、お買い得感やお得感がある案件に興味を持ちますね。売却希望価格と売上を見て「面白そうだな」と思えば、それがきっかけになります。今回は美容系店舗のM&Aでしたが、お菓子やファッション、海外ECに発展しそうなものなど、ジャンルは問いません。小型の案件だとなかなか面白い事業も見つかります。
M&Aって、宝探しをしているような感覚がありますね。オーナーさんにとっては手放したいものでも、私たちにとってはすごく魅力的で欲しいもの。どこか遊び心を持って宝物を探しているのだと思います。
- 最後に、今後M&Aに挑戦される方へのメッセージをお願いします。
今回とても実感したのは、新規店舗をゼロから作るより、初期投資もかなり安く収まった上にスピードスタートができたということです。最初に案件を見てから購入までは1ヶ月足らずでしたし、自分たちで物件を探して、人を雇って、設備を用意して……と進めるよりもはるかに楽でした。
新規事業を立ち上げたい時には、やはり小型のM&Aから始めた方がメリットは大きいと思います。
一方で、オーダーメイドというよりは「既製品を買う」という感覚になるので、自分たちのポリシーに合わない部分や、特に人の面でフィットしないリスクも伴います。そのあたりはしっかり見極めて購入を決めた方が怖くありません。
前オーナーさんと信頼関係を築くこともポイントです。色々と快く対応してくれることが分かっていれば、契約や引き継ぎでガチガチに固めなくても、合理的かつスムーズに話が進められます。やり取りをしやすい環境を作ることは、お互いのためにも非常に大切ですね。
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