美容室をM&Aするには?スキーム、譲渡対価の目安、DDなど

美容室をM&Aするには?スキーム、譲渡対価の目安、DDなど

美容室のM&Aは、どのような方法で実施するのでしょうか?美容室の買収で得られるものやリスクのほか、よく見られる売却理由・買収価格の目安などを紹介します。併せてM&A後の経営に役立つよう、業界全体の動向もチェックしましょう。

TRANBIは、ユーザー登録数10万人以上を誇る国内最大級のM&Aプラットフォームです。常時2,500件以上のM&A案件が掲載されており、気になる売り手に直接アプローチができます。まずは、希望の案件があるかを見てみましょう。

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事業承継・M&A売却案件一覧|トランビ 【M&Aプラットフォーム】

美容室の市場の現状と動向は?

軒数が増え続けている美容室の経営には、何らかの工夫が必要です。戦略を定めないまま始めると、既にシェアを持っている美容室との競争に勝てません。また人材確保の難しさも課題の業界です。

多角化経営など生き残り戦術が必須

長く美容室を経営し続けるには、生き残るための戦術が欠かせません。美容室はコロナ禍の影響を大きく受け、売上が落ち込んだ業界の一つです。加えて年々店舗数が増加し続け、過当競争の状態に陥っています。

その上、質の高い美容家電の増加やヘアスタイルの変化に伴い、単価アップにつながるパーマ離れが起きている点も、売上低下の要因です。

このような状況のため、一般的な美容室としてのサービスのみを提供する業態では、生き残りが難しいでしょう。長く成長し続けることを目指し、多角化経営で収入源を増やす美容室が増えています。

人材確保が難しい業界

美容室の運営にはスタッフが欠かせません。しかし業界全体として、人材の確保が難しいのが現状です。長時間拘束で肉体労働をする厳しさに加え、低賃金である点も理由の一つに挙げられます。時給換算すると平均賃金は1,145円です。

長年働き続けても一般的な会社員と同等の賃金になるケースは少ないため、早い段階で他業種へ転職する人材も少なくありません。またある程度キャリアを積むと、収入を確保するために独立し、自分の店を持つ美容師も多いでしょう。

自分の店を持たなければ十分な収入を得られない業界構造は、店舗数の増加と過当競争につながっています。

参考:令和2年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)

美容室のM&A事情は?

M&Aで美容室を買収したいと考えている買い手は、何を目的にしているのでしょうか?また売り手が売却を考える理由もチェックしましょう。さらに、すぐにM&Aが成立する人気の美容室の特徴や、いくらで買収できるかなど、美容室のM&A事情を解説します。

買い手の特徴

買い手に多いのは、既に美容室を経営しており、規模の拡大を目指して買収を希望しているケースです。例えば東京都内で多店舗展開している美容室が都内でさらに店舗を増やす目的や、関西などの別の地域に進出するために買収しています。

美容室は成功すると大きな利益を得られるため、他業種の企業による買収も珍しくありません。例えばIT・マーケティング・不動産などの企業が参入するために買収します。

美容室のM&A案件は、『TRANBI(トランビ)』やその他のM&Aプラットフォームで検索可能です。買い手はインターネットで手軽に案件探しができるため、企業はもちろん個人の買い手がつくケースもあります。

売却理由と案件数

美容室が売却を希望する理由はさまざまです。中でも多いのは、顧客離れや売上の減少です。十分な収入が得られなければ経営を続けられないため、売却せざるを得ない美容室もあるでしょう。

規模の拡大とともに、スタッフの管理や給与計算・税金の手続きなど、オーナーとしての業務が負担となり、売却を考える売り手もいます。また売却以外にも、居抜き物件を譲渡する『造作譲渡』や『運営委託』といった選択肢もあります。

M&Aプラットフォームの『トランビ』で検索すると、2,500件以上案件がある中で、美容室の案件は40件ほどです。成立済みの案件もあるため、買収を考えているなら積極的な案件探しが必要な業界といえます。

人気の美容室M&A案件

数が少ない美容室のM&A案件の中でも特に人気が高いのは、高付加価値のサービスを提供している店です。他店との差別化を目的に、『子ども専門』『訪問専門』『白髪染め専門』など専門性の高いサービスを提供する美容室は、買い手がつきやすいでしょう。

複数店舗をまとめて買収できる案件も魅力的です。美容室業界は人材獲得が課題になりやすく、1店舗のみの運営では人材の入れ替えへの対応が難しいでしょう。複数店舗を買収すれば、店舗間で人材を融通でき、スタッフが集まりにくい状況にも対応できます。

『トランビ』でも専門店や複数店舗の美容室案件は人気があり、公開から数カ月で成約しているケースもあります。美容室の買収を検討しているなら、小まめな案件探しとスピーディーなアプローチが欠かせません。

譲渡対価の目安

譲渡対価は美容室ごとにさまざまです。店舗の立地・集客状況・設備・売上などの要素で変動します。個人経営の1店舗なら数百万円で買収できるかもしれませんが、企業が運営する複数店舗なら、数億円の価格がつくかもしれません。

買い手と売り手がお互いに納得できる価格を設定するには、過去の事例を参考にするとよいでしょう。似た規模や立地の美容室のM&A案件を参考にする『類似会社比準方式』で価格を決めます。その後、双方で交渉を行い最終決定する流れです。

譲渡対価を決定する元となる企業価値評価について解説している以下も、ぜひご覧ください。

企業価値はどのように評価する?企業価値を決める要因と評価方法
手法
企業価値はどのように評価する?企業価値を決める要因と評価方法

企業価値とは、企業の経済的価値を金額で表したものです。上場企業は株式時価総額が明確に算出できますが、非上場企業の場合どのように価値が決まるのでしょうか?投資やM&Aにおける企業価値評価の重要性や、代表的な評価方法を解説します。

美容室のM&Aで得られるもの

M&Aによって美容室を買収すると、店舗や設備・人材・顧客などを得られます。採用するスキームによって扱いは異なりますが、美容室経営に必要なさまざまなものを、最初から得られる可能性があるのが特徴です。

店舗、内装、設備

新しく美容室を作る場合、まずは物件を探さなければいけません。専用の設備を購入し店舗へ設置する必要もあるため、設備や内装工事にコストや時間がかかります。

一方M&Aで美容室を買収した場合、必要な店舗や設備はひと通りそろっている状態です。そのため物件を借りるための保証金や、内装・設備にかかる費用を用意せずに済みます。

譲渡対価次第では新しく出店した方が安いケースもあるため、比較して決定するとよいでしょう。手間がかからずスピーディーに美容室の運営を始められるのもメリットです。

優秀な美容師とその技術

人気の美容室へ成長させるには、技術力のある優秀な美容師の存在が欠かせません。顧客に人気の美容師が多数在籍していれば、安定して大きな売上を得られるでしょう。

M&Aによって美容室を買収すれば、美容師との雇用契約を引き継げる可能性があります。最初から顧客のついている美容師を確保できれば、美容室の経営を安定させやすいはずです。

優良顧客

顧客を引き継げるのもM&Aの魅力といえます。買収の対象である美容室が獲得してきた顧客の情報を引き継げれば、ECサイトを活用した売上アップのアプローチも可能です。

例えば美容室のECサイトやアプリを構築すれば、商品や施術を顧客へ直接紹介する仕組み作りができます。個人情報のため取り扱いには注意が必要ですが、うまく活用することで美容室の売上を伸ばせる可能性があるでしょう。

美容室はどのように承継するのか

M&Aによって美容室を引き継ぐには、どのような方法があるのでしょうか?代表的なM&Aスキームである『事業譲渡』と『株式譲渡』の特徴を見ていきましょう。

事業譲渡の場合

必要な事業の範囲を決めて引き継ぐのが事業譲渡です。例えば複数の事業を運営している企業が、美容室のみを売却する場合には、事業譲渡が用いられます。また個人事業主が運営している美容室も、事業譲渡によって承継します。

事業譲渡は契約内容によって引き継ぐ範囲がさまざまです。そのため何をどの範囲まで引き継ぐか、契約書内で明らかにします。

また買収対象会社の契約を、引継ぎ後に全て締結し直さなければいけない点も特徴です。例えば引き続き所属している美容師を雇用したい場合、1人ずつ雇用契約を結び直さなければいけません。取引先との契約や、店舗の賃貸借契約なども同様です。

株式譲渡の場合

売り手が企業であれば、株式譲渡によるM&Aでも美容室を引き継げます。株式の売買によって経営権を買い手へ移転する方法のため、会社を丸ごと買収するのが特徴です。

美容室の店舗や設備はもちろん、人材や取引先・顧客なども全て引き継げます。ただし借入金や、帳簿に記載されない負債である簿外債務を引き継ぐ可能性がある点には注意が必要です。

手続きの手間を最小限に減らせますが、十分に注意しなければ思わぬリスクを負う可能性もあります。

M&Aの代表的なスキームを解説している以下も、ぜひご覧ください。

M&Aにはどんな種類がある?株式譲渡、事業譲渡、合併の違い
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M&Aにはどんな種類がある?株式譲渡、事業譲渡、合併の違い

昨今は多くの企業においてM&Aが成長戦略として位置付けられています。M&Aと一口にいっても複数のスキーム(手法)があるため、目的によって最適なものを選択する必要があります。株式譲渡や事業譲渡など、M&Aの種類とその特徴について解説します。

美容室を承継する際の注意点

美容室を引き継ぐ際には、所属している美容師への説明や、思わぬリスクが潜んでいないか調査することが重要です。あらかじめ注意点を押さえておくことで、M&A後の安定した美容室運営につながります。

美容師の離職

個々の美容師が持つスキルや顧客が売上を左右する美容室の運営には、優秀な美容師が欠かせません。そのため、人材獲得を目的としてM&Aを実施するケースもあるでしょう。

この場合、美容師の離職を防ぐために、十分なケアをする必要があります。例えば給料や福利厚生がこれまでの水準より下がれば、美容師はより雇用条件のよい職場を求め転職してしまうでしょう。

また雇用条件を維持したとしても、急激な変化についていけず退職するケースもあります。M&Aを不安に感じる美容師もいるため、丁寧な説明で不利益がないことや、変化する点・しない点などを伝えなければいけません。

簿外債務などのリスク

M&A後にリスクが見つかる場合もあります。想定していなかったリスクが後から見つかると、経営がうまく進まない可能性もあるでしょう。

リスクを回避する方法として、詳細な調査である『デュー・デリジェンス』の実施が挙げられます。調査によって、財務や法務などの問題が潜んでいると判明するかもしれません。

また帳簿に記載されない簿外債務は、資料を見ただけでは見つからないケースがほとんどです。売り手も自覚していない場合もあるため、聞き取りも行い入念に調査しましょう。

事業譲渡によって引き継ぐ範囲を限定すると、判明したリスクの回避が可能です。

まとめ

M&Aで美容室を買収すると、店舗・設備・人材・顧客などがそろった状態で美容室の経営を始められます。新しく出店するのと比べ、スピーディーに始められるのも特徴です。

ただし美容室の案件は少なめで、付加価値の高い業態は特に人気があります。そのため積極的な案件探しとアプローチがポイントです。M&Aプラットフォームの『トランビ』を利用して探すのもよいでしょう。

M&Aを実施するときには、美容師の離職を防ぐよう丁寧な説明が必要な点に加え、思わぬリスクを引き継ぐことのないよう入念な調査も欠かせません。

事業承継・M&Aプラットフォーム TRANBI【トランビ】