事業の後継者になりたいなら?具体的な方法やメリット、注意点を解説
高齢化や身近な後継者の不在などにより、第三者への事業譲渡を検討する経営者が増えています。経営者として事業を引き継ぎたい人にとっては、自分に合った事業を選択できる可能性が高まっているので、積極的に引き継ぎを検討してみましょう。
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後継者の不在に悩む事業主が増えている?
近年は少子高齢化を背景として、後継者の不在に悩む事業主が増えています。まずは、後継者不足に悩む企業の現状を知っておきましょう。
中小企業や個人事業の後継者不足が顕著
日本国内の急激な少子高齢化に伴い、特に中小企業や個人事業の後継者不足が顕著になっています。
大企業の場合、多くの社員の中から後継者を選んだり、外部から優秀な経営者を呼び込んだりする場合が多いですが、中小企業や個人事業の場合、事業の引き継ぎ手が見つからないケースも多く見られます。
後継者がいない事業主にとっては深刻な状況ですが、逆に他者が運営する事業を引き継いで、これから経営者としてやっていきたい人にとっては、追い風が吹いている状況といえるでしょう。
自分の知識や強みを生かせる事業は限られるものの、第三者承継を希望する事業主が増えているため、自分に合う事業と出会える可能性は高まっています。
データで見る「後継者不足」の深刻な現状
実際にどれくらいの企業が後継者不足に悩んでいるのでしょうか。
帝国データバンクの「全国企業『後継者不在率』動向調査(2024年)」によると、国内企業の後継者不在率は52.1%となっています。改善傾向にはあるものの、依然として半数以上の企業で後継者が決まっていないのが現状です。
また、経営状態が良いにもかかわらず、後継者が見つからないために廃業を選択する「黒字廃業」も社会的な課題となっています。
これは裏を返せば、「優良な事業であるにもかかわらず、担い手がいないために消滅しかけている企業」が数多く存在するということです。意欲ある個人や企業にとって、後継者として名乗りを上げるチャンスはかつてないほど広がっています。
参考:帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査(2024年)」
事業の後継者になるメリット
事業の後継者になるメリットとしては、すでに基礎ができている事業を引き継げる点や、経営者になることで社会的地位を得られる点などが挙げられます。
基礎のできている事業を引き継げる
まったくのゼロから事業を起業するのは、多額のコストや手間がかかる場合がほとんどで、事業が軌道に乗るまでにかなりの時間を要します。事業によっては、起業後にすぐビジネスとして立ち行かなくなる可能性もあるでしょう。
一方、すでに安定した運営を継続している事業の後継者になれば、従業員や取引先、顧客をそのまま引き継げるので、承継後すぐに安定した利益を生み出せます。
経営者としてしっかり利益を出していく努力が求められますが、ゼロから起業するのに比べると、失敗のリスクはかなり低いといえます。
社会的地位や安定を得られる
安定した事業を引き継いで経営者になれば、社会的地位や信用も得やすくなります。特に好きな分野の事業を引き継げば、好きな仕事に取り組みながら収入アップも期待できます。親族から事業を引き継ぐ場合は、親族内での存在感も高められるでしょう。
事業のトップとして定年やリストラを気にする必要がないため、独立志向が強く、長く働きたい人にとっては魅力的な立場といえます。
事業の方向性やあり方を決められる
事業主・経営者になれば、事業のあり方や方向性、方針を自分で決められます。事業を安定して継続させるためには、周囲と協調し、ある程度は意見を取り入れる必要もあるものの、最終決定権はトップの立場である自分が持てます。
家業を引き継ぐ場合でも、先代とは異なる方向に事業の舵を切れるようになるでしょう。事業主として結果に対する責任を背負うものの、事業の大幅な方向転換や多角化なども可能です。
自分の好きなように事業を運営したい人にとっては、パフォーマンスが発揮しやすい環境を構築できます。
後継者になりたい場合に考えられる選択肢
事業の後継者になりたい人が取れる選択肢について解説します。会社員の場合は、所属している企業で出世して、経営者に就任する方法もありますが、ほかにもさまざまな手段で事業主を目指すことが可能です。
将来の経営者候補として入社する
将来の経営者を含め、幹部候補生を募集している企業は少なくありません。
まずは社員として業務に精通して結果を出し、現経営者に認められることで、最終的に事業の後継者として指名される方法があります。
事業の引き継ぎまでかなりの期間を要しますが、事業運営に必要な知識を身に付けた上で、かつ周囲に認められる形で経営者になれるのがメリットです。
ただし、ほかの社員が後継者として選ばれる可能性もあるので、必ず事業を引き継いで経営者になりたい場合は、ほかの手段を選んだ方がよいでしょう。
事業のオーナーに経営者として雇用される
事業のオーナーと経営者(管理者)が分かれている場合も多いので、現状でオーナーが事業の運営も担っているのであれば、新たに経営者として採用してもらう方法もあります。
オーナーに認められればスムーズに経営者に就任できますが、最終決定権はオーナー側にあるため、事業の方向性を自由に決められない場面も出てくるでしょう。
事業にオーナーシップを発揮したい人は、初めから事業を完全に所有できる立場で後継者になる必要があります。
親族の事業を引き継ぐ
親族が経営者や個人事業主の場合、親族内承継として、親族の事業を引き継ぐ方法もあります。
両親が事業の引き継ぎを望んでいるケースも多いので、それが自分のやりたい仕事ならば、最もスムーズに後継者になれるでしょう。
近年は子どもへの事業承継を希望しているものの、断られてしまう事業主は少なくありません。身内に引き継いでもらえることが分かれば、喜ぶ事業主は多いはずです。
ただし、その事業が将来にわたって、安定して続けられるとは限りません。後継者が見つかっても経営が成り立たず、結果的に廃業を選択せざるを得ない事業もあります。事業を引き継ぐ前に、将来性や収益性を事前に確認しておきましょう。
M&Aによって事業を買収する
M&Aは大企業のみならず、中小企業や個人事業でも盛んに行われるようになりました。M&Aで希望する事業を買収できれば、すぐに経営を始められます。
収益性が高く安定した事業を引き継げば、ゼロから事業を立ち上げるよりも、圧倒的に利益を出しやすいでしょう。
小規模な事業であれば300万〜500万円程度、個人向けの案件では100万円以下で買収できるケースもあります。
自分の予算レベルに合わせて、どういった事業が買収できるか調べてみましょう。おすすめの案件の探し方については後述しますが、M&Aの手順やポイントは以下の記事で解説しています。こちらも参考にしましょう。
後継者になる企業の選び方
多くの案件の中から、自分が後継者として成功できる企業を選ぶには、いくつかの重要な視点があります。利益だけで判断せず、自分の適性やリスクも踏まえて多角的に判断しましょう。
自分の「強み」や経験が活かせるか
最も成功確率が高いのは、これまでのキャリアで培った経験やスキル、人脈が活かせる事業です。例えば、営業職の経験が長い人が技術力はあるが販売力が弱い製造業を引き継ぐ場合、大きな相乗効果が生まれます。
逆に、全く知見のない異業種に飛び込む場合は、事業を理解するまでに多くの時間を要する覚悟が必要です。
「自分が社長になることで、その会社をどう成長させられるか」というビジョンが描ける企業を選びましょう。
事業の将来性と市場の成長性
その事業が属している市場が、今後伸びていくのか、縮小していくのかを見極めることも大切です。ただし、市場が縮小傾向にあっても、ニッチ分野で高いシェアを持つ企業や固定客の多い店舗は将来性があります。
目先の売上だけでなく、「5年後、10年後も必要とされる事業か」という視点で判断しましょう。
財務状況と「見えない負債」のリスク
決算書上の数字(黒字か赤字か)だけでなく、借入金の総額や返済スケジュール、キャッシュフロー(現金の流れ)を確認します。
特に注意が必要なのは、貸借対照表には載っていない「簿外債務」です。
未払いの残業代や社会保険料、係争中のトラブル、経営者個人と会社の不明瞭な金銭の貸し借りなどがないか、必要に応じて専門家にも確認し、慎重にチェックしましょう。
キーパーソンとなる従業員との相性
中小企業のM&Aにおいて、従業員の離職は最大のリスクの一つです。
特に、現場を回しているキーマン(工場長や店長など)との相性は極めて重要です。
可能であれば、最終契約の前にキーマンと面談する機会を設けたり、現経営者を通じて従業員の雰囲気を確認しておくことをおすすめします。
新しい経営者として受け入れてもらえるか、企業風土が自分に合うか確認しましょう。
現経営者からの引継ぎ条件とビジョン
現経営者が「売却後にどの程度関与してくれるか」も重要な選定基準です。引継ぎ期間(ロックアップ期間)を設け、数ヶ月〜1年程度は顧問などの形でサポートしてもらえる条件であれば、未経験の業務でも安心して引き継ぎやすくなります。
また、経営理念や創業の想いに共感できるかどうかも、現経営者との信頼関係を築き、スムーズにバトンを受け取るための重要な要素です。
事業の後継者になるリスクや注意点
事業の後継者になると、さまざまなメリットを得られる一方で、抱えるべきリスクも出てきます。事業運営に伴う以下のリスクや注意点を理解した上で、事業を引き継がなければいけません。
経営者として事業の全責任を負う必要がある
事業の経営者になれば、当然ながら当該事業に関する全責任を負わなければいけません。従業員がいる事業の場合は、責任者として従業員の生活を守る義務が生じます。
また、事業の業績が悪化してしまうと、周囲からの批判に晒される可能性もあるでしょう。従業員をはじめ、利害関係者が少ない個人事業の場合でも、廃業のリスクは常に伴います。
いかなる事業でも経営が不安定になる可能性はあるので、業績が低迷しても乗り越えられるだけの、金銭的な備えはしておきましょう。
技能の習得が求められる業種もある
ものづくり系や技術系の業種の後継者になる場合、経営者の立場でも技能の習得が必要になる可能性があります。
特に個人事業の場合は、自らの技能で売上を立てなければいけません。現事業主のもとで一定の技術を習得する期間が必要になる場合があります。業種によっては、年単位での修行が求められるケースは少なくありません。
既存の従業員にものづくりや開発などを任せられる事業でも、経営者として必要な知識や素養を身に付けるために、一定期間は社員として学ぶ時間が必要な場合もあります。
引き継いだ事業に問題がある可能性も
後継者となる事業に債務がある場合、そのまま引き継がれるケースが多いので注意しましょう。特に家業を引き継ぐ場合は、資産だけでなく債務や借金も承継しなければいけません。
後から簿外債務が見つかる可能性もあるので、事前に事業に問題がないか、想定外の債務が発生するリスクがないかなど、しっかりと調査しておきましょう。
経営を引き継いですぐに、深刻なトラブルが起きる可能性もあるため、事前の確認を徹底しましょう。
幹部や中核社員が退職することも
前経営者への依存が社内で大きい場合、もしくは前経営者から経営方針を大きく変更した場合、ときには幹部や中核社員からの支持が得られず、離反したり退職してしまう可能性もあります。
後継者候補の方は事業承継後、まずは事業運営の中心となるキーマンとコミュニケーションをとり、自らの経営方針に賛同してもらえるよう取り図りましょう。
事業承継ならマッチングサイトがおすすめ
M&Aによって事業を後継者として引き継ぐならば、マッチングサイトの利用がおすすめです。M&Aマッチングサービスの特徴やメリットを解説します。
M&Aマッチングサイトとは?
M&Aマッチングサイトとは、オンラインで事業の売り手と買い手をマッチングするサービスです。
M&Aの相手を見つけるには、取引先や金融機関などから紹介してもらう方法や、仲介業者を利用する方法もありますが、マッチングサービスは個人でも気軽に利用しやすいサービスです。
事業の売り手と買い手が直接やり取りして契約するので、ほかの方法に比べてスムーズに話を進められる点がメリットです。さらに、仲介業者に紹介してもらう場合とは異なり、相談料や着手金などもかかりません。
M&Aのマッチングサービスに関しては、以下の記事でも解説しているので、こちらも参考にしましょう。
M&Aのマッチングなら「TRANBI」
M&Aのマッチングサービスなら、2,700件以上のM&A案件が掲載されている『TRANBI』がおすすめです。事業の売り手・買い手が直接交渉できる業界トップクラスのプラットフォームで、プレミアム会員ならば成約手数料も無料で利用できます。
未経験者によるM&A成約率が高いのが特徴で、交渉しやすい500万円以下の小規模案件も多く掲載されています。
大企業向けの案件もありますが、特に中小企業や個人事業におすすめなので、この機会に利用してみましょう。
TRANBIを活用して後継者になった事例
事例1:脱サラ・未経験での挑戦!退路を断って掴んだ「パン屋」オーナーの座
建材メーカーの営業職として長年勤めてきたA氏は、会社に依存する働き方にリスクを感じていました。「自分の裁量で働きたい」という思いが強まり、副業ではなく、退職して退路を断った上でM&Aによる起業を決意します。
A氏がTRANBIで出会ったのは、自宅近くにある地元で人気のパン屋さんでした。飲食業の経験はあるものの、パン作りは全くの未経験。それでも購入を決断できた最大の理由は、ベテラン従業員をそのまま雇い続けられることと、慣れ親しんだエリアの店舗だったことでした。売り手は家庭の事情から譲渡を希望しており、味を守ってくれる後継者を探していました。
「現場のことは、ずっと働いている従業員の方が詳しい。彼らがいてくれれば店は回る」そう判断したA氏は、成約前に従業員一人ひとりと面談し、「今後も一緒に働いてほしい」と熱意を伝えました。売り手もその誠実な姿勢を評価し、スムーズな承継が実現しました。
現在は、コロナ禍でも強いとされるショーケース販売に加え、A氏が経営に専念することで店舗運営を強化しています。「現場に入って初めて分かる苦労もありますが、すでに出来上がった事業を引き継ぐM&Aは、時間的なメリットが本当に大きい」と実感しています。
経営者としての覚悟と既存スタッフへの敬意が、成功につながった事例です。
◆成約インタビュー:建材メーカー営業マンがパン屋オーナーに! 成約前に退職しあえて退路を断った理由とは?
事例2:「300万円」で手に入れた、会社員と経営者の二足のわらじ
上場企業で働くB氏は、将来を見据えて「会社員を続けながら自分でビジネスを持ちたい」と考えていました。
しかし、ゼロからの起業はリスクが高い。そんな時に出会ったのが、「個人M&A」という選択肢でした。300万円なら車を1台購入する程度の金額だと考えたB氏は、自分にも手が届くと感じ、TRANBIで案件探しを始めます。
平日は会社員として働く必要があるため、実務を任せられる従業員がいて、ある程度自走している店舗ビジネスに狙いを定めました。そこで巡り合ったのが、地方にあるキックボクシングジムです。売り手は元プロ選手で、新しい挑戦のために事業譲渡を希望していました。
B氏は現地を訪れ、売り手と対話を重ねる中で、運営体制や収益の安定性を確認しました。決め手となったのは、既存の会員基盤と、現場を任せられるスタッフの引き継ぎが可能だったことです。譲渡価格は希望通りの300万円。
会社員としての安定した給与を基盤としながら、オーナー経営者としての挑戦をスタートさせました。
引き継ぎ後は、本業で培った管理能力やマーケティング視点を活かし、Web広告の強化や顧客管理の徹底など、経営の「仕組み化」に着手。その結果、会員数は順調に増加しています。「会社員としての視点と経営者としての視点、双方が良いシナジーを生んでいます」とB氏は語ります。
◆成約インタビュー:「300万円の個人M&Aで切り拓く新しい働き方」会社員と二足の草鞋で踏み出すキックボクシングジム経営!
事例3:「時間を買う」M&Aで事業拡大。オンライン完結で掴んだ、老舗の信頼と流通網
PR会社を経営するC氏は、クライアントの信頼獲得やブランディングにおいて「書籍の出版」が強力な武器になると感じていました。
しかし、自社でゼロから出版社を立ち上げるには、取次店との口座開設や流通網の構築など、非常に高いハードルがありました。
そこでC氏は「事業を買う」という選択肢に目を向け、TRANBIで案件探しを開始しました。重視したのは、既存事業とのシナジーと、予算1,000万円以下という条件です。TRANBIの使いやすい検索機能で見つけたのは、徳島県にある歴史ある出版事業の譲渡案件でした。
コロナ禍のため、交渉はすべてオンラインで行われました。売り手企業は、事業の整理を考えていたものの、長年築いたブランドを大切にしてくれる後継者を探していました。
C氏は画面越しでも誠意を伝え、わずか計2時間の面談で意気投合。希望通りの600万円という価格で、歴史ある出版社の暖簾(のれん)と書店流通ルートを手に入れることに成功しました。
「オンラインだけでこれほど手軽にM&Aができるとは驚きでした」と語るC氏。
買収後は、自身の人脈である政治家やジャーナリストへの出版企画の提案など、これまでの強みを活かした営業活動を展開しています。本来であればゼロからの立ち上げに数年かかる信用とインフラを、M&Aによって短期間で手に入れた好例です。
◆成約インタビュー:出版事業を600万円で買収!人脈が豊富なベテランPRマンの狙いとは?
後継者になりたい人からのよくある質問
最後に、事業の後継者を目指す方からよく寄せられる疑問にお答えします。
Q. 自己資金はいくら必要ですか?融資は使えますか?
A. 案件規模によりますが、買収資金に加えて運転資金が必要になります。融資を活用できる場合もあります。
数百万円の個人M&A案件から数億円規模の案件まで様々ですが、買収代金に加えて、当面の運転資金(家賃や人件費の数ヶ月分など)を用意する必要があります。
資金調達については、日本政策金融公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」など、事業承継を目的とした融資制度を利用できる場合があります。また、地域の信用保証協会が保証する制度融資などもあるため、早めに金融機関や商工会議所に相談してみると良いでしょう。
Q. 経営の経験がなくても後継者になれますか?
A. 可能ですが、学習意欲と現経営者のサポートが不可欠です。
実際に、会社員から未経験の業種で後継者となり、成功している事例は多く見られます。ただし、経営者としての数字の見方や業界知識など、学ぶべきことは山積みです。
そのため、引継ぎ期間中に現経営者からしっかりとノウハウを教えてもらえる契約にすることや、既存の従業員を尊重し、彼らの力を借りる姿勢が成功の鍵となります。
Q. 従業員が辞めてしまわないか不安です。
A. 誠実な対話と、急激な変化を避けることが重要です。
買収直後に給与体系を大きく変えたり、リストラをほのめかしたりすると、離職を招いてしまいます。
まずはこれまでのやり方を尊重しつつ、従業員一人ひとりと対話を重ねて信頼関係の構築に時間をかけましょう。「この人と一緒に働きたい」「この社長なら安心だ」と思ってもらえるような振る舞いが求められます。
Q. 買収(承継)後に、隠れた借金が見つかったらどうなりますか?
A. 契約書の内容(表明保証条項)によっては、損害賠償請求などが可能な場合があります。
買収後に発覚した簿外債務などのリスクに備えるため、最終契約書(株式譲渡契約書など)には「表明保証条項」を盛り込むのが一般的です。
これは、売り手が開示した情報以外に負債がないことを保証する趣旨の条項です。もし虚偽があった場合は、売り手に損害賠償を請求したり、契約を解除したりできる条項を入れておくことでリスクを軽減できます。
Q. 個人M&Aと「雇われ社長」は、どちらがおすすめですか?
A. 「オーナー権限」を持ちたいか、リスクを抑えたいかで判断しましょう。
個人M&Aで株式を取得してオーナー社長になる場合、自分の好きなように経営判断ができる反面、借金の連帯保証などの全責任を負うことになります。
一方、オーナーに雇われる社長であれば、金銭的なリスクは低いものの、最終決定権はオーナーにあるため、思い通りに経営できないもどかしさを感じる場合もあります。自分が「一国一城の主」になりたいのか、あくまで「経営の実務」をやりたいのかによって選択しましょう。
まとめ
事業の後継者になるには、将来の経営者候補として入社する方法や、事業のオーナーから雇われて社長になる方法、さらにM&Aによる事業買収などの手段があります。
事業承継はすでに基礎ができている事業を引き継げることや、社会的地位をやすいことなど多くのメリットがあります。
一方で、経営者として事業全体の責任を負う義務も生じます。事業の引き継ぎ後にトラブルを抱えないように、事前の調査を徹底することが重要です。