2022-08-30

「300万円の個人M&Aで切り拓く新しい働き方」会社員と二足の草鞋で踏み出すキックボクシングジム経営!

買い手(個人):増岡剛さん

<個人のM&A・買収事例>

 

新卒で衆議院議員の秘書に就職した増岡さん。支援者だった中小企業の経営者の多くが、後継者不足で廃業を余儀なくされる姿を目の当たりにしたことをきっかけに、ビジネスの世界へ転身。ベンチャー企業での経営管理を経験、上場企業に転職後は社長秘書を経て、経営企画室で働いています。

起業や事業承継に興味が湧いた増岡さんは、4年ほど前に個人M&Aという選択肢に出会います。それは、会社員を続けながら自分でビジネスをしたいと思っていた増岡さんにとって、ぴったりの道に映りました。そして、2年ほど掛けてさまざまな案件に触れる中で、条件に合致するキックボクシング×パーソナルジムの案件を見つけ、購入を決断します。

事業と売り手様への理解を深めながら、初めてのM&Aを丁寧に進めた増岡さんに、購入検討を進める上でのポイントやビジョンを伺いました。



(今回買収したキックボクシングジム①)

【300万円の個人M&Aで切り拓く新しい働き方】

- まずは増岡さんのキャリアについて教えてください。
大学時代からインターンをしていた流れで、新卒で衆議院議員の秘書に就き、4年ほど働きました。濃い日々を過ごしていましたが、民間の事業会社と違ってものやサービスを売り買いする世界ではないので、ビジネスとはほど遠い世界でした。

そんな中、地元の後援者の方や支援者の方々に中小企業の経営者が多くいまして、後継者不足で廃業する方も多く目の当たりにしたんです。このままでは良くないと漠然と考えていたものの、経営経験のない自分にできることもなくて。かと言って、秘書を続けた先で自分がどうしたいかも定まっていなかった為 、一度民間に出てビジネスを学んでみようと思いました。

そこでベンチャー企業に転職し、経営管理の仕事を中心に行い、経営の面白さを知りました。将来は経営者になりたいという気持ちが強まったんです。

経営を学ぶという観点では、大企業も経験しておきたいという思いから、その後は小売業の上場企業に転職、社長秘書を経て現在は経営企画室で業務を行っています。

- 個人M&Aという選択肢は、いつ、どんなきっかけから知ったのですか。
ベンチャー企業に転職して半年くらい経った頃なので、3~4年ほど前でしょうか、ちょうど三戸政和さんの書籍である「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」が発売された頃で、個人M&Aのブームの走りのような時期だったんです。

あの本を読んで、個人で会社を買うという選択肢があるんだと知り、300万円なら車1台買うようなものだし、自分にもできるかもしれないと思いました。

当面は会社員を続けていく予定なので、いきなりゼロイチで起業は考えづらかったんです。けれどM&Aという手法なら、他の方が育ててきた事業を譲っていただけるのでリーズナブルで効率的ですし、譲り手の方もハッピーになれる、いい選択肢だと思いました。

- 4年ほど前に個人M&Aに興味を持ってから、2022年に初めてM&Aに挑戦したのはどうしてですか。
ここ2年ほどはずっと、TRANBIを閲覧したり事業承継・引継ぎ支援センターに足を運んだりして、案件を探してはいたんです。とはいえ、すぐに自分の条件に合う案件が見つかるわけではなくて。会社員を続けながら事業をするという前提があると、時間的な制約や物理的な制約が発生するので、自ずと選択肢も狭まってしまうんです。

当初は製造業に興味を持っていて、お弁当の容器を製造する工場などを視察に行きました。ただ、「現場で働いてナンボ」と言いますか、売り手様からは会社員と並行して経営を行うことへの理解がなかなか得られなさそうでした。ですので今のタイミングで、製造業のM&Aは難しそうだと判断したんです。

一方時間的に柔軟に対応できるEC運営は、条件に該当する案件数も多く、わりと引き継ぎやすいビジネスだと思います。ただ、これまでのキャリアを考えると、ECよりは店舗などの対面ビジネスの方が自分の視点を入れることによって運営や管理を改善し、バリューアップできるイメージが沸いたのです。

最終的には、今回購入した案件のような、従業員の方を引き継ぐことができて、ある程度自走しているスモールな店舗ビジネスに絞って探していました。それで、たまたまご縁があったのが、今回のタイミングでした。

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(今回買収したキックボクシングジム②)

【元K-1選手が立ち上げたジム。安過ぎる譲渡金額の理由を直球で確認】

- 今回購入した案件のどんなところに惹かれましたか。
購入したのは、群馬県の前橋にあるキックボクシングフィットネスに特化したパーソナルジムですが、まずスモールな店舗ビジネスで従業員の方の引き継ぎも可能、という条件にはまりました。

また、この案件が売りに出されたのが2022年1月でしたが、私自身が3月から勤務先の都合で群馬県の高崎に転勤になることが決まっていたため、エリアもタイミングも幸運なほどぴったりだったんです。

パーソナルジムは最近増えているものの、キックボクシングとパーソナルトレーニングを掛け合わせたジムは、周辺に競合がいません。また、すでに会員が40名ほどいて、収益も安定しており、地方なので固定費が安いところもポイントでした。

かつ、会員の9割ほどが女性だったので、男性向けのメニューを充実させれば売上を伸ばせる余地があると思いました。広告費用も掛けていなかったので集客強化にも取り組めるなど、さらにビジネスを拡大させるチャンスがあると思えたことも大きかったです。

- 安定したビジネスなのに、なぜ売り手様は手放されたのですか。
他の事業に専念するためです。売り手様は、もともと第一線で活躍していたプロの格闘家選手で、引退後に今回の店舗を含めたパーソナルジムを6店舗ほど展開していました。ジムは従業員に任せて自身は他の事業に挑戦し始めたところ、そちらへの熱意が増したので、売ろうということになったそうです。

「収益が安定していて自走しているなら、手放す必要がないのでは?」と気になったので、初回面談でなぜ売るのかと聞いたところ、「もうやり切った。やりがいを得るためにも、新しいことをやりたい」という純粋な気持ちからのようでした。

「売上が厳しい」という理由なら仕方ないところはありますが、価値があって、お客様のニーズに応えている事業を、こうした事情から廃業にするのはもったいないですよね。でもTRANBIに掲載してくださったことで、私のようなニーズを持った買い手とマッチングして引き継ぐ道ができるわけです。これこそ、事業承継の価値なのではと実感しました。

- 「元プロ格闘家が運営しているパーソナルジム」というネームバリューでの集客もあったんですか。
いえ、まったくそういった訴求はしていませんでした。売り手様は元K-1選手ですが、K-1とも格闘家とも一言も出さずに、キックボクシングでフィットネスが体験できるパーソナルジムとしてだけイメージを打ち出していました

その理由を聞くと、「そこに惹かれて来る層は、本格派を求める限りなくコアな一定数。楽しくキックボクシングをやってみたいという大多数のお客様に来てもらう上で、あえて打ち出す意味はない」とおっしゃっていて。経営的な視点がすごく近いと思いました。

もし大々的に訴求がされていたら、私がオーナーに代わった時に会員が離れてしまうので、購入は諦めていたと思います。

- トレーニングメニューは売り手様が考案されたんですか。
はい。とはいっても30分間なので、ストレッチ、縄跳び、筋トレ、ミット打ち、パンチ、キックなど、そんなに複雑なメニューではないんです。もともとは従業員1人で運営していましたが、研修をしっかり行えば他のスタッフでも教えられそうなメニューですし、スタッフが増えたら定休日をなくして稼働を増やせると思いました。

- キックボクシング×パーソナルジムという形態や、トレーニングメニューを競合に真似される恐れもあると思いますか。
真似しようと思えばできるでしょうし、隣町に競合店ができる可能性がないとは言えません。ただ、どこで差を付けるかと考えた時に、サービスは事業の一部でしかないと思っています。裏側の運営や管理の部分で、真似できない仕組みを作れば勝算はあります

また、今回は300万円で事業を譲っていただきましたが、ゼロイチでこの事業をするには300万円ではまず難しいのではないかとも思います。

- 売り手様との面談では、どのような話をされましたか。
なぜ売る行為に至ったのかは、一番の関心事だったので詳しく聞きました。売り手様がこれまでの人生をどのように歩んでこられたのかや、どういった思いで事業を作られたのかも、気になったので質問しました。

特に初回の面談には、案件内容や金額のことよりも売り手様の価値観を知りたいという気持ちで臨んだんです。話してみたら、価値観も合いましたし、しっかり考えて経営されてきたことがよくわかったので購入に前向きになれました。

- 売り手様のどんなところに、経営者としての魅力を感じましたか。
初期に緻密な設計で事業を立ち上げられていたことです。

出店場所は、都内だと固定費が高すぎるので地方に絞って場所を探し、テストマーケティングを行った上で選んだようです。かつ、メニューの内容や金額の設定も、しっかり考えて作られていました。

面談の前にいただいた簡易的なPLを見た時は、「こんなに収益がいいなんて本当?」というのが正直な気持ちでしたが、お会いして話を聞けば聞くほど、その数字が出せている根拠が明らかになって納得しました。

ただ、売り手様のやり方で店舗運営をしていると、どうしても凝り固まってしまう部分があったようで。「もっと手を入れられるところがあるはず」と売り手様も思っていたからこそ、私のような第三者に託すことを望んでいたようです。

- 300万円という譲渡金額は、どのようにして決まりましたか。
売り手様の譲渡希望金額が300万円でした。年間の営業利益が約250万円なので、当初は安過ぎるのではと感じていました。資産+営業利益の3~4年分を譲渡希望金額にするセオリーに従えば、5~600万円でも妥当な案件です。面談では直球で値付けの理由について質問しました。

すると、売り手様はこの事業でもう十分に満足してしまったために、「次の事業に移るために、とにかく売りたいだけです。金額的な執着もありません。このお店を作り上げるために掛かった金額から、最低限回収しておきたい金額が300万円でした」とのことでした。

ただ、さすがに 申し訳なさを感じたので、引き継ぎ後に業務委託で残っていただけないかとお願いして追加で少しお支払いをしています。



(今回買収したキックボクシングジム③)

【突然のメイントレーナーからの辞意。一時暗礁に乗り上げた交渉】

- ライバルに勝ち抜くために意識したことはありますか。
非常に条件が良い案件なので、常に競合の買い手の存在を意識していました。たとえば、パーソナルジムのローカルチェーン店を運営している法人がライバルに現れたら、速攻で買われてしまうと思っていました。

すぐにでも買いたいものの、デューデリジェンスもしっかりしなければいけないし手続きのプロセスもある中では、いかに自分に目を向けてもらうかが重要です。

早い段階で誠意を伝え、何度もお会いしたり実際にレッスンの体験をさせてもらったりして信頼関係を築きました。また、「独占交渉」という文言を含んだ基本合意契約も締結させていただき、交渉を進めていきました。

売り手様は、今回私が購入したものと同じキックボクシング×パーソナルジムの店舗を6店舗展開していて、他の店舗は現場を任せていた店長に譲ってきたみたいなんです。1店舗くらいは畑の違う人に譲ってどうバリューアップしていくのかを見たいという思いもあったようで、私を選んでいただきました。

- 苦労したことやトラブルはありましたか。
一番の難関は、従業員の引き継ぎが想定通りにいかなかったことです。

これまで正社員として男性トレーナー1名を雇用していたため、私が引き継ぐにあたっては彼と面談もして、オーナーが交代しても続けてくれる意志を確認していたんです。

ただ交渉を進めていく中で、彼が「辞めたい」と言い出したのです。というのも、彼はもともと独立志向が強くて、地元の茨城でパーソナルジムをオープンしたい夢があり、できるだけ早く叶えたいという考えになったようなんです。

彼がいないと店舗が回らないため、実は一度交渉がペンディングしました。売り手様と相談し、費用を負担いただいてて求人広告を出稿してもらい、新しい方を迎え入れることになりました
 

- 引き継ぎ後は、どんな体制で運営していますか。
7月下旬までは、退職することになった正社員の男性スタッフにも勤務していただけたので、男性スタッフと新しく採用した女性スタッフとアルバイト1人の3名で運営していました。8月からも1人アルバイトを増やすので、今後も3名体制は継続します。

女性スタッフには、男性スタッフがいるうちに仕事を覚えてもらわないといけないので、午前中のレッスンの予約枠を空けて時間を取って研修を実施しました。もともとヨガのインストラクターをされていて接客業の経験も長い方だったので、仕事覚えも早かったです。

- 無事に引き継ぎができ、新しい体制が築けてよかったですね。
トレーナーの仕事は、ものすごく専門的な知識が必要なものではないものの、誰もがすぐにできるものでもなくて。今後、新しい人を採用したり店舗を展開したりすることを考えると、もう少しかみ砕いて平易にして、属人的ではない業務にしていく必要があると交渉段階で感じていたんです。

そう思っていた矢先に、急遽引き継ぎが必要となりました。ある意味、初期の段階でこうした経験を積んでおいてよかったと今は思います。土台が作れたことで、これから新しく入っていただくアルバイトの方にも、しっかり教えることができますから。



(今回買収したキックボクシングジム④)

【出された資料を鵜呑みにせず、一次情報で確認を】

- 店舗運営の面で、改善したことや新しく始めたことはありますか。
最初に手を付けたのは、予約と予約の間の時間の短縮です。これまでは、18時から18時半までAさんの予約が入っていたら、次の予約は30分後の19時から受けるようなコマ取りになっていて。30分間がもったいないので、スタッフを増やして空き時間をどんどん詰めていくことで、稼働率を上げました。

これまで厳密に付けていなかった顧客台帳への記入を徹底したり、退会された会員の方へ再アプローチを行ったり、初めてWeb広告を出稿してみたり、インスタグラムのアカウントも戦略を立てて投稿するようにしたり、内装を変えたりといろんな試みをしています。

何をするにしても、重視しているのはユーザー目線です。これまでは、収益も立っているし、多くの会員さんが辞めずに続けてくれているので、現状維持でいいという意識だったと思います。けれど、今後の拡大を考えると、会員さんの立場に立って何が喜ばれるのかを考えなければいけません。会員さんに愛されるスポットにしていきたいです。

- 成果も順調にあがっていますか。
もともと40名弱の会員さんがいたのですが、引き継いだ初月に8名が入会してくださるなど、順調に増加しています。初月無料キャンペーンも実施しているので、売上に反映されるのはこれからですが、継続収入のビジネスなのでどんどん会員さんを増やしていきたいです。

会員が一定数 を超えそうになったら、近場にもう1店舗構えて補うドミナント戦略を検討しています。

- 今回のM&Aを振り返ってみていかがでしたか。
この先、1社に雇用される時代は続きません。それに、その働き方では自分が楽しくないなと。会社員として上場企業の経営に携わりながら、店舗のオーナーとして経営者目線やお客様目線を体得することは、いいシナジーを生むと思っています。

- 今、経営をする上で役立った経験や知識はありますか。
所属している経営者のコミュニティで、M&Aの一連の流れをしっかり学んだことです。コミュニティ内のメンバーとは、検討している案件についてアドバイスし合える間柄なので、学びがあります。

また、M&Aで買ったお店を運営している人、自分で立ち上げた店舗を運営している人、コンビ二チェーン大手で店舗運営に携わっている人など、店舗の括りだけでもさまざまなビジネスをしている人に出会うことができて。いろんな視点を取り入れ、生かしながら経営ができています。

- M&Aを検討している人にアドバイスをお願いします。
数字の確認はしっかりすべきだと思います。交渉をする中で、一見数字は良く見えたものの実は借入があったり、季節によって売上に変動のある事業なのに数字上は1シーズンの売上を年間の月あたりで均していたりと、現実との乖離があるケースに出会いました。情報を鵜呑みにしないためにも、買い手として最低限のM&A知識は備えておくべきだと感じます。

たとえば入金のログを見せてもらうなど、出された資料を鵜呑みにするのではなく、一次情報を見て根拠をしっかり押さえることも大事ではないでしょうか。ただ、当たり前ですが、いきなりそうしたことを売り手様に頼むのは失礼なので、まずは必要な情報を提供し合うための信頼関係の構築に努めましょう。

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■今回増岡さまが買収した案件はこちら

「新感覚パーソナルジム1店舗 (5年以上営業)」

■増岡さまが運営する実際の店舗はこちら

「NEOKICK前橋店 パーソナルジム」

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  • 倉本祐美加
  • ライター紹介倉本祐美加

    関西学院大学卒業後、クラウド製品を扱うIT企業のインサイドセールス職を経て2016年にライターとして独立。企業取材を中心としたインタビュー原稿の制作に従事していますが、エンタメ・スポーツ・文化等幅広く好みます。

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