2022-10-11

M&A経験豊富な白髪染め店元オーナーがTRANBIに語った、事業譲渡を成功させる貴重なノウハウを大公開!

売り手(法人):つなぐみらいファイナンシャル株式会社

<中小企業の事業売却・スモールM&A事例>

 

保険代理業を主軸に、収益の安定化を目指して貸会議室の運営なども行ってきた、つなぐみらいファイナンシャル株式会社。2020年には、神奈川県に白髪染め専門店をオープンします。

しかし、コロナ禍とタイミングが重なり、集客に苦戦します。2年目からは黒字月も出てきたものの、経常的黒字にはあと一歩。テコ入れのためには、業界経験豊富な経営者に事業を譲るべきだと考え、売却を決意します。

案件掲載時から、正直かつ正確な情報記載を心掛けたことで、スピーディーにM&Aが成立した本案件。代表の戸塚康人さんに、売却までの流れや交渉過程でのポイントを伺いました。

【保険代理店、貸会議室、白髪染め店と多角化を推進】

- 戸塚様のキャリアと、つなぐみらいファイナンシャル株式会社の設立経緯について教えてください。
30歳まで銀行で勤めて、そこから保険会社に転職して13年ほど勤めており、その間の2012年に不動産賃貸業で起業しました。並行して、30歳から個人事業も行っています。その事業の一部を法人化すべく、2018年につなぐみらいファイナンシャルを設立したのです。

つなぐみらいファイナンシャルは、もともと生命保険代理店として設立しました。ただ、生命保険の法人契約は、税制改正の影響を大きく受けます。また金利の影響も受けやすく、10年前と比べると、金融商品の魅力も低下してきました。売上をあげるのは容易ではないと予想できたため、保険代理業と並行して別のビジネスを展開することにしました。

そこで、管理に手が掛からなそうな、貸会議室の運営事業を始めることにしました。ピーク時で8か所、現在も7か所を運営しています。今回売却した、白髪染めに特化したカラーリング専門店も、貸会議室に続く事業になればと、2020年に始めました。

ここ数年でぐんと増えましたが、私がカラーリング専門店の開店を考えていた当時は、街を歩いていたり車で走っていたりしても、ときどき見かけるくらいで。まだ認知度もそれほど高くなかったので、始めるなら今のタイミングだと思ったのです。

- FCに加盟してカラーリング専門店を立ち上げたのですか。
はい。FCと聞くと収益が出しづらいイメージがあるかもしれません。確かに、通常は加盟金やロイヤリティ以外に、設備や内装に掛かる費用も含めて初期費用が多く掛かるものです。

ただ、私が選んだFCは良心的で、施工はこちらにお任せしてもらえるように契約を変えることができました。私はマンションやアパートを保有している関係で、施工会社のネットワークはあるので、結果的に施工費を半分くらいに抑えられ、神奈川県内で2店舗を同時に立ち上げることにしました。

- 今回売却されたカラーリング専門店には、どんな特色や魅力がありましたか。
何より、質の高いカラー剤を使って低価格でサービスを提供できることが魅力です。もちろんFCに加盟して仕入れのルートもいただいているので、当店独自というわけではありませんが。

他には、リピーターを獲得しやすいビジネスモデルも魅力でしょうか。リピート率は7割以上だと思います。私はネイルサロンも経営しているのですが、そちらのリピート率は2割弱なので、比べものになりません。来店客層は90%以上が女性で、40~70代の女性のお客様が多い状況でした。



(※写真はイメージです)

【業界未経験ゆえの難しさ…テコ入れのためにプロに譲りたい】

- 神奈川県内のお店のうち一店舗は2021年に売却し、今回のもう一店舗は2022年6月に売却されました。どうして売却に至ったのですか。
最初の一店舗目は黒字になり、完全に軌道に乗ったと思えるタイミングで売却しました。

一方、今回の店舗はなかなか黒字にならなくて。原因はコロナ禍と立地です。人通りの多い商店街に開店したので、当初はお客様がたくさん集まるだろうと思っていました。ただ、開店してすぐにコロナ禍に突入し、商店街をメインで歩いていた、お店のターゲットでもある60~70代の方の人通りがものすごく減ったのです。

厳しい状況下でも、1人体制でお店を回すようにして、赤字を最小限に抑えながらなんとか経営を続けてきました。続けることで雇用を生んでいるし、利益はあがらずとも売上にはなっていて。融資を受ける際にチェックされる、企業の売上規模にも貢献していたからです。

ただ、利益を出すには、白髪染めではなく若年層をターゲットにしたカラーリング専門店に変えたり、カラー剤をより安くて良いものに変えたりといった、テコ入れが必要だと思っていました。ただ、アイデアは思い浮かんでも、業界知識やネットワークのない私にはそれが実現できないため、現状を維持するしかなかったんです。

それなら、テコ入れできる人に売却しようと。設備も新しいし、売却した方が自分にとっても少しはプラスになりますから。

TRANBIを利用したのは、有名なプラットフォームだからです。今回のような、数百万円規模の案件の売り買いも可能であるため、気軽にM&A取引ができそうだと思いました。

M&Aに挑戦する登録者数10万人以上、常時M&A案件数は2,600件以上を掲載中
「事業承継・M&Aプラットフォーム TRANBI【トランビ】」

 

(※写真はイメージです)

【初期費用の回収は目指さず、現実的な価格設定を】

- 譲渡希望金額の250万円は、どのように設定されましたか。
明確な根拠はありません。券売機やオートシャンプー機などの設備を売れば100万円ほどになりますし、スタッフ3名を引き継ぐため、50万円/人×3人の価値と考えて、なんとなく250万円くらいが妥当だろうと設定しました。

私と同じように事業を売却する方の中には、初期費用で掛かった金額を回収するつもりで値付けをしている方もいるでしょう。ただ、回収は難しいですし、買い手様に「失敗した」と思われる事業譲渡もしたくなくて。だから、実際は開業にあたっては譲渡金額の倍以上の費用が掛かっていますが、その金額は考慮せず250万円に設定しました。

- 案件情報を掲載する際には、どのようなことを工夫しましたか。
売却する以上、事業が厳しいことは正直に伝える必要があると思ったため、「2年目からは黒字月もありますが、数万円の赤字月も多く、経常的黒字にはあと一歩」「全くの素人なので、改善の余地あり」と記載しました。「お客様が増えてきました」というような、根拠となる数値がない、ふわりとした表現も使っていません。

また、買い手候補の方には「2回目以降の質問は、電話かZoomでお願いします」と明確に伝えました。電話やZoomなら、質問にまとめてお答えできるからです。それに、すぐに電話やZoomのステップに応じてくれる方は、やはり決断力がある印象でした。

1つ質問されて、回答したらまた次の質問をしてくる方もいました。丁寧なのかもしれませんが、時間と労力が掛かりすぎるので、私とは相性が合いませんでした。

個人的には、「250万円の案件を買うなんて人生の大勝負だから、細かいところまでしっかり詰めたい」という方よりは、「500万円以下ならすぐに挑戦できるか」といったある程度資金力に余裕のある方のほうが相性が合うと思いました。値下げするくらいなら廃業しようと思っていたので、「値下げ交渉は受けない」旨も案件詳細にあらかじめ記載していました。

- 事業を譲渡する買い手様は、どのような方ですか。
京都で美容室を経営されている方です。連絡を貰ってすぐに電話をして、交渉に移りました。

その方は神奈川が好きで、2拠点生活に興味があって、案件を探しておられたようです。ゼロからお店を作るのはハードルが高いと感じていて、すでにあるハコを生かせたらと考えていたようです。

「黒字なら売却しません。私の経営では限界があるから売るのです」と正直に伝えると、「もちろん、わかっています」と言ってくださいました。売上や、客数の月別推移なども特に聞かれませんでした。

一度、店舗も見学に来てくださって、「設備も十分ですし、立地も大丈夫でしょう 」とおっしゃってくれて。売上を上げるためのアイデアやイメージも湧いたようで、スムーズに購入を決断してくれたのです。

【盛らずに数字や実情を正直に伝えるのが成約への近道】

- 引き継ぎ後、変わったことはありますか。
20万円を支払えばFCは継続することはできたのですが、買い手様の希望でFCから抜けられました。業界に独自の仕入れルートを持っておられるようでしたので。

また、白髪染めだけではターゲットが限られてしまうので、若年層もターゲットに含めたカラーリング専門店を謳うようになりました。

さらに、従業員のうちカットにも対応できるスタッフがいたので、「このスキルを生かさなければ、もったいない」という話になって。買い手様と従業員と私で面談した末、その従業員の出勤日は、カットも提供するようになりました。

カットは2000円程度です。もともと、常連のお客様にはご案内して、一部カットも行っていたのですが、きちんとメニューに組み込むことになりました。

- 事業売却を考える方へ、アドバイスをお願いします。
掛かった費用を回収しようと思って値付けをしていては、なかなか買い手様が見つからないように思います。それは売却側の理想でしかありません。

初期費用を回収したいなら、せめて事業を軌道に乗せて売却すべきだと思っていて。あまりうまくいかないために売却するのであれば、「この金額なら買い手様も手が出しやすいだろう」という観点から、値付けを行うことをおすすめします。

また、売却にあたって案件概要を掲載する際には、数字や経営の実情を含めて正直に書いた方がいいと思います。その方が、無駄なやり取りも発生しません。

多くの買い手様に興味を持っていただくために、つい案件を良く見せるために事実を過剰に見せる情報や文言を使いたくなるかもしれません。しかし、M&Aはたった1人のぴったりの買い手様に出会えれば十分なもの。現状を伝えた上で、「こうした工夫をすれば経営が改善できそうだが、自分では難しいため譲渡先を探している」という表現を用いることをおすすめします。

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■今回戸塚さまが売却した案件はこちら

「【内装綺麗・設備は美品揃い】白髪染め店の事業譲渡」

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  • 倉本祐美加
  • ライター紹介倉本祐美加

    関西学院大学卒業後、クラウド製品を扱うIT企業のインサイドセールス職を経て2016年にライターとして独立。企業取材を中心としたインタビュー原稿の制作に従事していますが、エンタメ・スポーツ・文化等幅広く好みます。

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