2023-03-22
地方のレンタルスペースは勝機あり?!次々にスピンオフ事業を生み出すアイデアマン経営者
売り手(法人):株式会社アルル製作所
<中小企業のM&A・売却事例>
- ➤ 地域の潜在ニーズが眠るレンタルスペース
- ➤ 運営自体は誰でも可能!コンセプト決めとデータ分析が利益を出すコツ
- ➤ 将来の時間を売却で確保し、回収費用を次のビジネスへ!
- ➤ M&A成功の鍵を握るのは「自走ビジネス」と「資料の準備」
熊本市でWebマーケティング事業を営む、株式会社アルル製作所。代表の岩永様は、 複数回のM&A経験を持ち、積極的にゼロからイチをつくることを楽しんでいる方です。
今回売却したレンタルスペースも、熊本市内の潜在ニーズを獲得し、 ブランドを確立させたことで事業開始から黒字運営に成功。さらに、レンタルスペースビジネスの経験を生かし、フォトスタジオの運営や新たなサービスへとビジネスを展開。
売却の理由も、今後運営にかける時間で得られる収入を事業売却により前倒しで獲得することで、より本業に集中する時間に充てたいとの思いによるものです。
さらにレンタルスペースは個人の副業として最適だと考えていた通り、個人の買い手様への売却が決定。
常にゴールを念頭に置き、新しいチャレンジを続ける岩永様に、 M&A・事業売却成功のために準備すべき情報や、レンタルスペース運営の秘訣を教えていただきました。
【地域の潜在ニーズが眠るレンタルスペース】
- 岩永様のキャリアと、アルル製作所の設立経緯について教えてください。
もともとは Web制作事業とブライダルグッズのEC事業を行う会社を運営していましたが、株式譲渡を行い、新たに事業を行う受け皿として設立したのがアルル製作所です。
会社の方向性を大きく変え、今はWebマーケティング事業や企業向けのオウンドメディアの運営代行をメインとしています。
- レンタルスペースを始めたきっかけを教えてください。
IT系企業の知人から、 「レンタルスペースの事業が面白いからやってみない?」とお誘いを受けたことです。新規ビジネスというイメージが強かったものの、正直、最初はマイナスイメージがありました。熊本で使う人がそんなにいるのかな?と。
ただ、話を聞くうちに興味本位から始めてみることにしました。試算表やPLを見せてもらったわけではありませんが、 固定費が少なく小リスクで始められる点も良かったです。
- 立ち上げは独学で行われたのでしょうか。
いえ、私を誘った知人に、コンサルを依頼しスポットで入ってもらいました。成功イメージを掴むという意味では、コンサルの存在はすごく大きいと思います。
最初は、一体何が成功か、失敗か、どうしても分かりにくいものです。 月の売上ベースがどれくらいならOKなのか、どういった備品を追加した方が良いのかなど、基準がわかると安心できます。コンサルを入れたことで、最初の商売のスキーム理解に役立ちました。
- 地方は、ニーズがある一方、レンタルスペースの場所探しに苦労するイメージもあります。
そうですね、まず不動産オーナー様からの許可を取り付けることが大変だと思います。転貸するのではなく、「美容サロンのように不特定多数の人が訪れる場所を一室に作るイメージです」と説明するのが良いのではないでしょうか。
無人運営になる点についても「防犯カメラで対策していて、緊急時にはすぐに駆けつけます」と伝えるなど、オーナー様に安心していただくことが大事だと思います。今回の案件については、偶然同じビルに貸し会議室を運営している方が入っていたこともあり、最初からオーナー様の理解があり、スムーズに話が進みました。
- 売上や予約状況についても教えていただけますか。
初月から売り上げが立ち、お客様の入りも安定していて変動をほとんど感じませんでした。2月は多少落ち込むものの、ポータルサイトからの流入、インスタ経由での流入もあります。
実際、利用用途もさまざまです。久しぶりの友達との再会場所やデート、パーティーなど。神社が近くにあるため、お宮参りの準備室としての利用など、想定外のニーズもありました。
- 岩永様に先見の名があったということですね。
当時、 熊本の中でまだレンタルスペース自体が少なかったことも大きな要因だと思います。トレンド的にも上向きで、コロナ禍の中、若い方の遊び場を提供できているという自負もありました。
普段若い方と接する機会がないため、間接的ではありますが、ビジネスでつながる機会を得たことはすごく良かったです。始めたときは、売却の資産価値については全く考えていませんでしたが、今は、非常にいいスキームを見つけたと思っています。
(岩永さんが運営していたレンタルスペース)
【運営自体は誰でも可能!コンセプト決めとデータ分析が利益を出すコツ】
- 本業とレンタルスペース事業の親和性は、いかがでしたか。
本業は、お客様の動向や分析、ターゲティングを徹底的に調査し対策することです。そのため、 レンタルスペースに関しても、予約されたお客様の目的、人数、時間帯をポータルサイトごとにCSVのデータで落とし、自社で解析しました。
例えばこのポータルサイトは土日にパーティー目的でよく集客できるなどが一目でわかるようになります。
ポータルサイトの手数料は、高いところだと35%程度必要です。売上や手数料をデータ化したことで、 自社サイトへの集客を目指したり、手数料が安価になるプロモーションリンクを発行したりと事業改善に役立てました。
- そこまでデータを解析して管理するのは、かなり珍しいイメージです。
レンタルスペースの場合、 自社予約サイトに加え、複数のポータルサイトを2〜3使うのがスタンダードです。ただ、多くのオーナーさんは、用途をあまり気にせず、肌感覚で売上を理解されている印象があります。
一方、当社では、レンタルスペース専用のInstagram運用も行い、スペースの使い方の提案をお伝えしていました。
誕生日やバレンタイン、七五三などの季節イベントではこうやって楽しんでくださいね、こんなカードゲームがありますよ、面白いのでこうやって遊んでくださいねといった形です。そこから興味を持ってもらい実際の予約へどうはねるか、反映率を見ていましたね。
- 部屋のリニューアル情報以上に、細やかな内容の発信ですね。
はい、 同じ部屋でも切り口を変え、使用シーンを想起させるイメージです。本業でインスタ運用代行をしていることもあり、私たちの得意分野でもありました。ある程度頻繁な投稿に加え、広告も少々使いました。
- レンタルスペースの実際の運営についても、コツはありますか?
通常のランニングの運営については、どなたでもできると思います。ただ、最初のコンセプト決定は、すごく大事です。だからこそ、コンサルなど成功者の知見を加えた方が、成功率が上がると思います。
- ちなみに、今回売却されたレンタルルームのコンセプトは何でしょうか?
日常よりもワンランク上がる、おしゃれな遊び場所です。ターゲットは、ママさんよりも年齢層の若い女性たち。そのため、 内装や家電・家具も50万円以上かけて投資を行い、平均よりもリッチな環境を用意しました。
地面に近い場所に座って喋れると、パーティー感が増すと考え、あえてローテーブルを置くなど、かなり細かなところまで意識しました。
(岩永さんが運営していたレンタルスペース)
【将来の時間を売却で確保し、回収費用を次のビジネスへ!】
- 順調に売り上げを伸ばす中で売却を決めた理由について教えてください。
当社はあくまでもデジタル、Webビジネスを得意としている会社です。もう一度、原点に立ち返ろうと、売却を決めました。
もっとわかりやすく言えば、 “将来の時間をお金をもらうことで確保する”イメージです。おそらくこのまま4〜5年経てば、資産をキープしながら利益を出すことができるはず。でも、今すぐ回収し、新たなビジネスに回すことで、実際の利回りはもっと大きくなると考えました。
- 売却で得た利益で、新しい事業を始められるんですね。
はい、特に私はゼロイチが好きなため、 新しい事業をやることに面白さを感じるタイプです。今回、レンタルスペースを運営したことで、新しいアイデアも生まれました。だからこそ、きちんと形にしていきたいとの思いが強いです。
例えば、レンタルスペース利用者様のデータ分析は、実際に役立った上に、結果にもつなげることができました。 この経験からレンタルスペース利用者分析サービスと、レンタルスペース専用のInstagram代行サービス、が生まれました。
せっかくの機会ですから、今回の買い手様にもテストしていただき、お互いに勉強になる感じになればいいなと思っています。
- レンタルスペース運営から派生した事業は、他にもあるんでしょうか。
はい、今回売却したパーティー用途の店舗以外にも、実は無人型の撮影スタジオ「アルルスタジオ」を運営しています。 お客様の利用用途を見る中で、撮影ニーズの高さに気づき、新たにオープンしました。
撮影に特化したスモールサイズの箱は、かなり好調です。一方、まだコロナ禍の影響もあり、大人数が集まることが難しいため、大型のレンタルスペースはなかなか大変ですね。
でも、レンタルスペース自体は、ニーズが増えている印象です。数が増えれば競争は厳しくなるとは思いますが、いつの時代もブランド化し、競争の中で勝っていくことが大事なのではないでしょうか。
(レンタルスペース事業から派生したビジネス)
【M&A成功の鍵を握るのは「自走ビジネス」と「資料の準備」】
- M&Aに対する考え方、イメージについて教えてください。
私はこれまでに2回、会社を譲渡しています。そのため、M&Aに関する抵抗感は全くありません。 むしろ、最初に出口を考え、ビジネスを始めるので、自分はM&Aとの相性は良いと思います。
ただ今回、最初はアナログな方法を選びました。オフラインで熊本の知人、経営者や不動産関係の方、3〜4人に声をかけていたんです。できれば熊本県内で見つかればいいなと思っていたので。
- 反応はいかがでしたか?
M&Aに関する知識や理解が、まだ広がってない印象を受けました。相手の反応は「サービスを買う?何それ?」といったものでした。これは難しいなと感じ、TRANBIを使うことに決めました。
料金改定されて買い手が使いやすかったことや、他のサイトと比べた際の操作性の良さが、決め手でしたね。
- 掲載に対する反応はいかがでしたか。
お問い合わせをいただいたのは、県外の方が多かったですね。何人かZoomを使い、お話しさせていただきました。ただ、実際に一緒に現場まで足を運んだのは、今回の買い手様1人です。
同郷の親近感も理由のひとつですが、これから副業でビジネスを始めようとしている、しかも今回が初めての副業という点に、すごく身近な印象を受けました。あまりビジネスライクになりすぎず、お互いにとって気持ちよく譲渡できればいいなと。
- 現場ではどのような話をされましたか。
買い手様からの質問は、 お客様の利用用途のほか、監視カメラの使い方、入り口の開け方など、運営実務に関することが多かったです。買い手様がWeb関係に詳しい方ということもあり、非常にスムーズに話が進みました。
- 売却価格を決めた理由について教えてください。
価格に関しては、利回り計算で4年くらいかけて回収できることを想定して設定していました。買い手様からは、最初「少し予算が厳しいかな」といった話があり、私の方から少し大きめに下げて提案したことで、契約に至っています。
- 価格を下げることへの抵抗については、いかがでしたか?
今回の案件は、事業の立ち上げから売却まで、非常に短期間です。 M&Aの観点で見ると、不安定要素と感じる方もいると思います。そのため、全く抵抗感はありませんでした。
むしろ、希望に近いところで上手くスライドして、自分たちも新しい事業を始められているといった部分では、すごく良かったと思っています。 個人で「よし、一発やるぞ!」と考えている方に売却するのもいいなと思っていましたから。
- レンタルスペースは、個人向きの事業でもあるのですね。
はい、特に 今回の買い手様は熊本在住です。さらにレンタルスペース事業自体は、 企業規模だと少し足りない、個人ならちょうどいい、さらに副業なら、もっとちょうどいいレベルでと思います。
利回りは結構いいですから、そういった意味では資産性もあります。不動産投資は、「賭け」とまでは言いませんが、利回りも少なめで、下手をすれば赤字になってしまう年も出てくるでしょう。 比較すると、レンタルスペースは非常に手堅く、リスクも非常に少ないため副業にも向いていると思います。
- 最後に、M&A・売却に挑戦しようとしている方へ、アドバイスをお願いします。
買い手様からの質問で多いのは 「ビジネスが自走できるかどうか」です。これは非常に大きなポイントだと考えます。
経営者、要するに売り手本人がいなくても、 外注やディレクター、バイトなどの仕組みができているかどうかが大事です。
だから、売り手側も、自分がいなくても成り立つように設定してから売ると、売りやすくなる。さらに、買い手様も望んでいる形になると思います。
また P/Lなどは売り手側がしっかり用意して当然だと思います。他にも体制、スキーム、いわゆる現場レベルの動きを表す資料はあった方がいいですね。
私は契約後にも、 会社の資料以外に不動産や火災保険など契約者の変更が必要なものは、すべてチェック表を作り、期日や内容を記載した上で、お渡ししました。
M&Aを成功させるには、 買い手側の目線を持ち、売り手として精一杯の強みのPRと、書類などの準備で誠実な姿を見せることが大事だと思います。
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■今回株式会社アルル製作所さんが売却した事業はこちら
「【熊本県】年間利益90万 売上好調SEO万全のレンタルスペース」
■株式会社アルル制作所 サイト
■レンタルスペース分析サービス「レンスタグラム」
https://renpanda.com/renstagram/
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