2022-11-29

突然の交渉ストップ、空白の半年からの大逆転!債務あり&後継者不足の会社を救った事業承継M&A

買い手(法人):株式会社トライマーク

<中小企業の事業拡大を目指したM&A・買収事例>

 

東大阪エリアを拠点に、約400社の顧客を有する株式会社前田電機。上場企業や官公庁を含む地域の優良企業から安定的な受注があり、長年の実績と信頼を誇る企業です。 今期の売上も好調でしたが、代表の高齢化および後継者不足のため、株式譲渡に踏み切りました。

手を挙げたのは、同じく大阪に拠点を持つ株式会社トライマーク。創立8年目となる同社は、携帯電話基地局の設備工事をメインに成長を続けています。 そんな中、 さらなる事業規模拡大を目指し、電気工事分野を強化するため、今回初めてのM&Aに挑戦しました。

交渉は半年以上の“空白期間”がありながらも、約1年半を経て無事に買収成功。代表の岸田正範さんに、その詳細を語っていただきます。

【安定経営のため、弱電×強電の2本柱を】

- まずは株式会社トライマークの事業と、岸田さんのキャリアについて教えてください。
トライマークは基本的に電気通信工事業をメインに手がける会社です。その中でも、携帯電話の基地局工事が8割〜9割になります。その他、LANケーブルの配線や防犯カメラの工事などもおこなっています。

私はもともとNTTのグループ会社に勤めていて、その後通信業界に転職し、携帯電話の工事などを学んだ後に独立しました。独立してからは今年で10年目になります。

- 会社を立ち上げた後、どのように事業を拡大してきましたか?
最初は本当に右も左も分からない状態で、業績もあまり振るわなかったんです。2年目頃まではずっと赤字で、毎月厳しい状態でした。

当時は従業員も少なかったので、自社で工事ができず外注することで事業を受けていたんですね。 ただ内製化することで利益は高められることがわかっていたので、徐々に社員を雇って外注比率を抑え、自社での施工能力を高めていきました。すると、目に見えて状況が改善されていきましたね。

今は9割ぐらいトライマークの方で工事ができていて、売上は年間2億円、純利益で言うと1500万円〜2000万円ほどになります。初年度は売上6000万円、赤字が600万円ぐらいでした。 現場仕事は離職率が高いので、若い方が入ってもすぐ辞めてしまうという状況はありながらも、 内製化を進めることで着実に成長してきました

- 電気工事のビジネスは、やはり内製化しないと難しいものでしょうか?
そうですね。今は携帯電話関係の基地局工事が中心ですが、競合が増えているせいで単価はここ10年ぐらい徐々に落ちて来ています。携帯電話が出始めた頃は、外注に出しても十分残るような金額だったんですが。

基地局工事は時期によって波があり、年度末はすごく忙しくても、4〜6月頃は暇になってしまいます。基地局工事1本でも利益は出ていますが、飽和状態になりつつあり、今後は難しくなるかもしれません。 だからこそ本当は、 通信関係(弱電)と電気工事(強電)の2本柱を確立したいと思っていました。

*弱電:信号(情報)として電気を送るもの
*強電:エネルギー(動力源)として電気を送るもの

- 今回の買収の意図としては、弱電だけではなく、強電工事に参入していきたかったということですね。
はい、やはり会社を安定的に経営していくために、 弱電と強電の両輪で走っていけたらと どうせなら強電を扱う会社の社員・技術・お客さんも一気に取り込んで、会社を成長させたいと考えました。

M&Aに踏み切ったのは、会社の資金繰りがうまくいくようになり、 余裕が若干出てきたことが一番の理由です。M&Aに対しては、周りからあまり理解されず「本当に大丈夫?」「だまされているのでは?」といった声もありましたけど。

私としては不安もありつつ、ダメだったらダメで仕方ないし、それよりも大きなメリットを感じていました。もし電気工事を一から開拓して人を集めるなら、10年単位で考えなくてはいけません。 それを一気に取り込めれば、成長スピードの早さが全く違いますから。

- TRANBIを利用したきっかけはどこにあったんでしょうか?
M&Aを考え始めた時にいくつかサイトは見ましたが、TRANBIの成約時に金額を支払わなくてもいいというのが他と比べてとても魅力的だったので、まずは使ってみようと思いました。 月額制で成約報酬を払わなくていいのはすごいと思いましたね。

TRANBI上では強電関係の案件を探し、今回の前田電機を見つけてすぐに交渉を申し込みました。初めてのM&Aでしたが、1社目の申し込みで決まった形です。

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【負債はあるが十分ペイできる!】

- 今回の案件を見て、特に魅力的だったポイントはどのあたりでしょうか?
やっぱり1番は金額です。もともと予算3000万円〜4000万円の範囲で探していたので、まずはその条件に当てはまりました。

あとは、トライマークと前田電機との 地理的距離がそれほど遠くなかったところですね。車で30分〜40分程度で両社を行き来できることにも魅力を感じました。

また、古くから続いている会社なので、 顧客がすごく多い点も大きな強みでしたね。得意先が約400社あるということで、今回のM&Aの意図にぴったりだと判断しています。

- 交渉時に気を付けたこと、アピールしたことはありましたか?
他に狙っている方もいるでしょうから、 返事をなるべく早くすることは心がけ 他業種の会社よりもお互いに相乗効果がありますよと伝えています。

売り手様としては、他社さんよりも距離が近く、 代表の私が直接行き来してほぼ常駐できる点が刺さってくれたようです。

- 交渉は具体的にどのように進みましたか?
最初の面談では、ホームページを印刷したものや私の略歴といった資料をお持ちしました。まずは先方の要望を聞き、金額や人員面での条件を提示された感じです。そして、トライマークの経営状況も色々と聞かれました。

従業員については3名をそのまま引き継いでほしいと言われました。技術を残すとともに、トライマークにもその技術を受け継いで欲しいと。 ただオーナーだけが変わって今まで通りに経営するのではなく、 積極的に前田電機に関わって事業の改善に力を注いでほしい、という思いを伝えられました。

初めにお会いした印象は、こちらの話もよく聞いてくれて、すごく優しそうな人だなと感じました。交渉も終始良好な関係のまま進められたと思います。

- 希望金額4000万円に対して、どのように妥当性を考えたのでしょう?
負債はあったものの、数年の実績を見るとプラス決算で終わっている事も多く、十分ペイできるなと判断しました。削れる費用も多いと感じましたし、全然負担にはならないだろうと。

例えば、駐車場代や保険代も年間にしたら大きな金額を支払っていましたが、削減できそうです。譲り受ける際には経理担当の方(親戚の方)も辞めていただく話になっていたので、その分の人件費もカットできます。 そういった点を考慮すれば、収支は改善できるなと考えました。



【突然の交渉中断、諦めていたところからの逆転】

- 今回のM&Aでは、一旦交渉が中断した後、また再開しています。このあたりを詳しく聞かせていただけますか?
そうですね、 しばらく話が途切れた時期がありました。他の方と交渉していたのか、原因はよく分かりませんが、しばらく連絡が取れなくなったりして。どういう状況かも見えなかったので、 不安というよりはほぼ諦めていたような感じでした。

ところがまた交渉を再開したいという連絡をいただけることになりました。 交渉が中断した事情は特に聞いていませんし、交渉条件を変えることもしていません

中断した時期を含めると、 最初にお会いしてから最終契約に至るまで、合計1年半ぐらいかかりました。初めはお互いに日程が合わないことも多かったですが、再開してからはスムーズに進んだ印象です。

- 時間がかかったこと以外に、何か大変だった点はありましたか?
いえ、あまりなかったですね。依頼していた税理士からは法務・財務の調査に時間がかかると言われていましたが、特に不審な点もなかったですし。

交渉を開始してからは、 毎月の収支報告や税金関係の支払い、作業員の日報などを見せてもらいました。事業用の車両以外に資産的な設備はほとんどないので、あとは現場で事務所や倉庫を見たくらいです。

従業員の方には成約直前の段階まで話をしていなかったので、事前に会うことは叶いませんでした。なるべく見られないように、交渉も日曜日を狙ってということが多かったです。 ビルの1階がガラス張りになっているので、近くを通ってなんとなく雰囲気を確認するぐらいはしたでしょうか。

- 売り手様の会社への想いや今後の要望など、そういった話はされましたか?
売り手様は2代目だったので、 先代から大切に受け継いできたお客様が多いこと、地域のお客様をこれからも大事にしてほしいこと、そんな話をずっとされていました。

そして、 付き合いの長い協力会社様も多いので、引き続き少しでも仕事を出してあげてほしいと。前田電機の工事はほぼ外注でしたから、これを機に協力会社様を一切使わないというのはやめてください、と言われました。

ですので、既存の仕事は基本的に前田電機の外注先へ、新規の仕事についてはトライマークの社員も使う、といった感じにしています。

- 引き継ぎについては、どのように進みましたか?
今年いっぱいまでは引き続き期間としています。そして元専務には、今は会長として入ってもらっています。

引き継いだ従業員さんとの関係性もそうですが、 やっぱり長年付き合いのあるお客様とすごく親しいので、いきなり辞められると厳しいなと。 私もできるだけお客様のところへ行っていますが、何十社何百社となってくると、まだ顔も覚えてもらっていないことが多いですからね。

【人を増やし、商圏を広げ、大阪を代表する企業に育てたい】

- 今回のM&A全体を通して、想定外の失敗や反省点があれば教えてください。
特に失敗というほどではないですが、補助金関係をあまり知らなかったので、事前に調べておけばよかったかもしれません。

それから、 従業員の方ともっと早めに話ができていたらと思う部分はあります。急に入ってきて「私が次の社長です」というのは、逆の立場になってみるとやっぱり受け入れにくいですよね。 私は彼らよりも年下ですし、実際に「何者や?」「君で大丈夫なんか?」という雰囲気がありましたね。

少しでも話が進んでいることを伝えられれば、もっとスムーズにいけたかなと思います。一人ひとりと話していても、最初はどうしても距離感がありましたから。もちろん、お互い緊張もあったでしょうけど。

ですので私としては、 まずは自ら進んで一緒に仕事をしようという姿勢を心がけています。従業員の方の仕事を見て、勉強させてもらうような感じですね。おかげさまで、今は関係性もうまくいっている状態です。

- 買収した事業に対して、今後変えていきたいことは何かありますか?
前田電機は長年ずっと「電気」を手がけてきたので、 やはり高い技術力があると実感しています。図面を描くことも、どんなタイプの電気を使うべきかの判断も、非常に素晴らしい。

ただ、これまでは東大阪エリアの地域密着型だったので、 大阪府内やその先に商圏を広げていけばもっと売上が上がるでしょうし、会社も潤うはずだと考えています。 人がいればきっと実現できますから、 今期は何人か従業員を増やそうと計画しているところです。

まったく新しい事業に挑戦することは、現時点では考えていません。今の事業を大切にし、そこから派生していくことが一番重要かなと思っています。 今回のM&Aは非常にうまくいったので、もし同じような業種でチャンスがあれば、今後もM&Aを検討したいですね。

- 最後に、今後の夢やメッセージがあればお願いします。
トライマークや前田電機という名前を聞いたらイメージが湧く、そんな会社にしていきたいですね。どうせやるからには挑戦したい、現状に満足したくないと思っています。

今後M&Aを検討している方にも、 怖がらずにどんどんチャレンジしてほしいと思います。見ているだけじゃなく、どこかで踏ん切りをつけて進むべき時があるはずですから。私もチャレンジし続けていくつもりです。

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■今回トライマークさんが買収した案件はこちら

「大阪府東部。長年に渡り地域で信頼されている電気工事業(黒字)」

■今回トライマークさんが引き継いだ会社はこちら

「株式会社前田電機」

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