2022-12-13

M&Aは“料理のレシピ”、プロから学んでアレンジすることが正解の近道

買い手(法人):株式会社ヒューマンリソース

<中小企業の事業拡大を目指したM&A・買収事例>

 

新潟県新潟市にあるパソコンスクール「スタディPCネット新潟秋葉校」と、パソコン修理店「パソコン修理24 新潟秋葉店」。 年間50万人が来店するショッピングモール内に店舗を構え、併設による相乗効果もあり、どちらも多くのお客様でにぎわっています。

地域の需要に貢献していた両店舗でしたが、運営本部の不振により譲渡を決定。今回買収したのは、同じ新潟市に拠点を持つ株式会社ヒューマンリソースです。 同社は市内にプログラミング教室などを複数運営しており、親和性の高さからM&Aに初挑戦しました。

同地域の強みを活かして交渉はスムーズに成立するも、未解決の問題も残っているとのこと。交渉の詳細から事業成功のヒントまで、代表の高橋学さんにお話をうかがいました。


(買収したPCスクールとPC修理店の入り口)

【生死の境を経験し「自分で何かを成し遂げたい」と独立】

- はじめに、高橋さんご自身のキャリアと、御社の事業についてお聞かせください。
私はもともと、20年近く自動車ディーラーに勤める普通のサラリーマンでした。約7年前に退職し、個人で独立。その頃ちょうど始まった民泊や、営業・人事系のコンサル事業などに挑戦しましたが、あまりうまくいきませんでした。 自分自身がその事業に熱くなれなかったというのも大きかった気がします。

その後、法人を立ち上げたのが2017年です。元同僚の男性と一緒に、子ども向けのプログラミング教室を始めました。 そこから少しずつ軌道に乗ってきた感じですね。

2018年からは障がい者向けのグループホーム事業をスタートしました。さらに今年4月から、プログラミング特化型の放課後等デイサービス事業を運営しています。 今年で創業5年目を迎え、順調に事業を拡大中です。

- もともと独立志向はあったのでしょうか?
この事業がしたい、と決まっていたわけではありません。ただ、 昔から漠然と「独立したい」「自分自身の力で何かやってみたい」という気持ちはありました。

というのも、過去に一度大きな怪我をしたことがあり、 生きるか死ぬかの境目を経験したからです。このまま人生が終わるかもしれない――という局面に立たされ、自分の中で大きな転機になりました。

「このままサラリーマンで終わるよりも自分で何か成し遂げたい」「好きなことをやっていきたい」と強く思うようになり、その気持ちが今につながっています。

- いくつかの事業を経て、プログラミングに行き着いた理由は何だったのでしょう?
都内でプログラミング教室が流行っていて、フランチャイズも広がり始めた頃だったので、挑戦してみたいなと思ったことがきっかけです。 新潟にはまだあまりなかったので「これはウケるんじゃないか」「あったら面白いな」と考えました。

とはいえ、我々には知識も経験もまったくなかったので、 まずはフランチャイズに加盟して支援を受けつつスタートした形です。今はフランチャイズを解約してオリジナルの教育を届けられるようにしています。

それが軌道に乗ってきたので、グループホームやデイサービスのほうにも参入し、事業を広げてきました。グループホームも、新潟にはあまりなかったことがはじめたきっかけです。こちらもコンサルの方に支援をお願いして、経験ゼロから始めました。

- 事業拡大の手段として、M&Aに対するハードルはありましたか?
フランチャイズも結局、ノウハウを売買しているわけですよね。だから M&Aで「全部できあがった状態」を買うことに抵抗はありませんでした。要はソフトかハードかの違いです。

金額的にも数百万円だったら安いと感じますし、 個人的にも株の売買をしているので、それとあまり変わらないイメージですね。

実際にM&Aを検討し始めたのは、独立当初の民泊事業の時です。「買うなら今がチャンスかも?」と思い、情報量の多かったTRANBIを定期的に見るようになりました。

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(買収したPCスクール)

【「新潟同士」の交渉だから、地域性も悩みもわかり合えた】

- 今回の案件については、どのような条件で探されていましたか?
最優先の条件は「新潟」という地域です。とはいえ、新潟の案件はそれほど多くないので、正直諦めてはいました。 遠方でも自走可能な状態ならリモートでも運営できるので視野に入れるようにしましたが、やっぱり 目の届く範囲のほうが安心感はありますね。その次に業種を見ていました。

今回はまさに新潟の店舗で、スタッフさんもいて、希望譲渡金額も330万円。現在運営している教育事業に近かったこともあって、ほぼ即決でしたね。 情報が掲載されたその日のうちにオファーを出したと思います。

- 交渉は具体的にどのように進みましたか?
最初はテンプレートに近い内容で交渉を申し込みました。同じ新潟ということで先方にも関心を持っていただけて、すぐに連絡を取り合うようになりましたね。 2、3回のメールで会うことになり、必要な情報開示もしていただいて、かなりスムーズに進んだと思います。

あらためて、地域が近いというのは有利だと感じました。 地域性も理解しているし、お互いの悩みどころもわかりあえる。 何かあればすぐに会いに行けますし、信頼感も違います。県外の仲介会社などオファーは他にも多数来たようですが、途中からはうち1本で話が進んだようです。

先方の印象は、真面目できっちりされている方だなと。お会いした時に、これまでの客層やマーケティング、売り上げや経費、スタッフさんのタイプなど、一通り聞きました。 譲渡にあたって売り手側に不利になりそうな、問題点・悪い点も全部言ってくれたので、信用できると感じましたね。

- 交渉の中で、過去の実績などは確認されましたか?
正直に言うと、金額も大きくなかったので、デューデリジェンスについてはあまり考えませんでした。ただ、契約前には少し心配になり、顧問先の弁護士に相談してアドバイスをもらっています。 借入金があるかどうかと、3期分の決算書だけは確認しました

決算を見ると赤字でしたが、月20万円程度と想定の範囲内。 ニーズをきちんととらえればリカバリーできると判断しました。

- 譲渡金額に関して交渉はしましたか?
いえ、値切るつもりもなかったですし、言い値で成約しました。金額感も妥当、むしろ安いという印象です。先方も簿価(帳簿上に残っている金額)と同じ金額と言っていましたし、それを信じました。

本来であれば、パソコン関係の設備分だけで数百万、フランチャイズの契約金も1件200〜300万円。これまでの内装費なども全部入れると、1000万円を超えると思います。 そのため、330万円なら格安だと思いました。

さらにテナントの保証金60万円が入っているので、実質270万円といえます。 そこからお互いに値段交渉しなかったことも、信頼関係につながったのかもしれません。

- 新しい事業に挑戦する時、どれぐらいの予算を見込んでいますか?
例えば1億~2億円のレベルはとても無理だなと思いますが、1000万円以内なら会社資金でも個人資産でも買えますし、数千万円レベルまでなら可能でしょうか。

我々は創業期以外ずっと黒字ですし、従業員が増えてもとにかく黒字化は必須。 コロナ関連の融資を受けているため、ある程度のキャッシュがあり運転資金の余裕はあります。 今後の成長のためにも、何より今は投資の時期だと考えています。



(買収したPC修理店)

【人を大事にすれば結果は自然とついてくる】

- 今回のM&Aの中で、想定外の事態やトラブルはありましたか?
譲り受けた両店舗とも、フランチャイズに加盟しています。 そのうちパソコン修理店は、まだ本部からフランチャイズの譲渡契約を認めてもらえていないんです。M&A自体の譲渡契約は済んでいるのに、名義変更ができず宙ぶらりんの状態で……。

店舗の運営は問題なく継続できていますが、3ヶ月近く話が進まずちょっと困っています。担当の方からは「問題ない」と言われていて、その先の理由はよくわかりませんが、早めに解決したいところです。

そこまでフランチャイズ側のノウハウを必要しているわけではないので、最悪解約することでも大丈夫かなと思っています。

- 引き継いだ後のスタッフさんの印象はいかがでしたか?
最初は本当に“戦々恐々”というか、オーナーチェンジで「辞めさせられるのでは?」という顔をしていましたね。もちろん私にはそんなつもりはなく「一緒に頑張りましょう」と伝えました。報酬も今まで通りと約束しています。

引き継いだ後もほとんど自走できる状態だったのでよかったです。運営は基本的にこれまで通り。3名のスタッフと面談や会議を重ねつつ、必要に応じて改善しながら動いてもらっています。

- これからマネジメントの部分で変えていきたい部分はありますか?
いえ、運営はうまくいっているので、そんなに大きく変えるつもりはありません。スタッフも非常に優秀な方ばかりで頼もしく思います。

ただ、お店の雰囲気は明るくしていきたいですね。これまでは赤字で、お客様の来店も少ないし、負のスパイラルに入って暗かったんですね。

別に内装をガラッと変えなくても、女性も入りやすいと思ってもらえるインテリアを加える、掃除をしっかりする、身なりをきちんと整える、 そういう基本的なところから整えたい。 お客様にもスタッフにも居心地のいい環境にする。オーナー次第で雰囲気は変えられますし、スタッフの皆さんもアドバイスに素直に応じてくれるので、これからよくなっていくと思います。

サラリーマン時代にも思っていたことですが、人を大事にしない会社はうまくいかないなと感じていました。 やっぱり人間が第一です。社名にもその思いを込めています。 スタッフが楽しく働きやすい場所、お客様も「来たくてしょうがない」場所を作る、それだけですね。私はそのためには何でもしたいと思っています。

基本的に日々の業務は責任者に一任していますし、私からスタッフにいうことは 「とにかく明るく楽しくやってもらって、お客様にも同じ思いを感じてもらえる方を増やしてくださいね」ということだけですね。

- お客様からの反応や満足度は、どのように見ていますか?
私自身はあまり現場にいませんが、会員制なら退会率は一つの指標になります。 逆に退会しない、離脱しないということは、満足していただけているのかなと。 あとはスタッフの離職率にも同じことが言えますね。自分の中での一つの目安として捉えています。

それから常に人の顔は見ています。仕事をしている時の表情とか、お客様の雰囲気とか。クレームが多い店舗は、やっぱり表情の変化でわかるものです。

お客様相手の商売は、やっぱり人と人との付き合いです。お客様であろうとスタッフであろうと、相手をよく見て接する大切さは変わりません。 サービスやものを売る場合、まずは自分を気に入ってもらわなければお客様は買わないだろうなと思うので、 相手に与える印象はビジネスの最優先においています。



(買い手となった高橋さん)

【M&Aは“レシピ”、自分が一からこだわるよりよっぽど美味しい料理が作れる】

- 店舗の業績は、これからどのようになっていくと見込んでいますか?
現在はまだ赤字ですが、おそらく半年程度で黒字化すると予想しています。我々ももともとフランチャイズから始めてノウハウを増やしていったので、今回買収したパソコン教室も似たように伸ばせるはずです。 ニーズを正しく捉えながら、 自社で教室をどんどん増やしていきたいと思っています。

サラリーマン時代に20年以上営業を経験してきたので、お客様のニーズを読むのは得意です。ニーズにただ愚直に応えて、「お客様をファン化させる」ことが最優先。これができれば黒字化できると思います。

事業がうまくいかない時に「市場の変化」と言う人もいますが、結局はやっぱり経営次第、全部オーナーの責任ですよね。考え方を変えて人を大事にしていけば、私は何でも必ずうまくいくと考えています。

今回のM&Aは1回目でしたが、また機会があればどんどん買収していくつもりです。県外にも少しずつチャレンジしていきたい。 M&Aなら店舗もあって、スタッフもいて、お客様もついていて、仕組みを変えればいいだけですから。 こんなにいいお話はないですね。

- 会社として、今後どのように事業を展開していく予定ですか?
当社は何か一つの事業に特化しているわけではありません。得意な人がいれば何でもできるし、可能性を限定せず、事業を多角化していきたい

今後もしかしたら飲食店を始めるかもしれないし、自分がやりたいことはやっていきたいと思っています。 そうやって規模を拡大していくことが、将来の理想像ではありますね。逆に辞めたいと思ったら、どんどん切り離して新陳代謝を繰り返していきたい。

もちろん「金もうけのためなら何でもいい」とは思っていません。あくまで「やっていて楽しそう」「この地域にないから面白そう」というところから発想がはじまるんですね。

プログラミング教室がいいなと思ったのは、日本にはIT人材不足という課題があるから。グループホームも、障がい者が住む場所がないと聞いたから。 やっぱり人の役に立つ、課題解決につながる事業にいち早く挑戦していきたいと思っています。

あとは、地域にないものですよね。全国的にはあっても、新潟にないものは結構ありますし。別の地域で実証されていれば、参入リスクも減らせます。

みんながやり始めているものをやるというのはあまり好きではないです。課題があってまだあまり多くの方が手を付けていない分野、かつ一部の方によって成功するモデルが見え始めているものを自分が新潟へ導入して挑戦してみる、これが自分のやり方ですね。

- 事業を成功させ、人生を楽しむための考え方があれば教えてください。
サラリーマン時代はやっぱり言われたことしかやれなかったし、枠にはまってしまいますよね。今は本当に好きなことをやっているし、人生楽しいですよ。

事業に関しても、人さえそろえば本当に何でもできると思っています。弁護士事務所を作りたいなら、弁護士さんを集めればいいわけだし。 人を集めて、きちんと市場調査して挑戦すれば、どこでも成功できるはずです。 そう考えれば “できないことはない”と思っています。

そうした自信を持つには、まずはその道のプロから学ぶこと、私も初めて何かをやるときはコンサルを受けています。 そして自分で挑戦してみて「これは正解だ」「これは不正解だ」と経験することですね。誰かに教わるだけでわかった気になるのではなく、自分の中で「本当にそうなのかな」と実際に試してみる。 そうして自分だけの“レシピ”が出来上がる、そうなれば応用して料理が作れるようになります。

M&Aはレシピをお金で買えると言えるので、時間が無駄になりません。基本料理の仕方を手に入れて、あとは自分たちで好きな料理にアレンジすればいい。 そのほうが一からこだわって作るよりよっぽどいい料理になる、つまり、事業を成功させられると考えています。

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■株式会社ヒューマンリソース様が買収した案件はこちら

「【新潟県】パソコンスクール・修理店事業譲渡」

■株式会社ヒューマンリソース様が運営している事業はこちら

「スタディPCネット新潟秋葉校」

「パソコン修理24 新潟秋葉店」

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