2023-02-21

教員から学習塾オーナーへ!家族の応援を受け、M&Aでキャリアアップ

買い手(個人):伊藤 貴法さん(30代)

<個人の独立を目的とした起業M&A・買収事例>

 

教育関係のキャリアを積み、家族が増えたことを機に自身の働き方を見直した、大阪府在住の伊藤貴法さん。教員として働く中で見えた課題解決を目指し、学習塾のM&Aを検討し始めます。

伊藤さんが見つけたのは、大阪府豊中市にある個別指導塾でした。塾のコンセプトに加え、優位性の高い立地や口コミでの高い集客力、30名を超える生徒数などに魅力を感じ、契約。

想定外の出来事も発生してはいるものの 「ゆくゆくは、2教室目もM&Aで始めたい」と語る伊藤さんに初めてのM&Aストーリーについて語っていただきました。

【人生の節目、30歳。苛烈な働き方を見直し、M&Aで塾経営にチャレンジ】

- まず、伊藤さんのキャリアについて教えてください。
新卒でECCに入社し、営業職を経験しました。その後、兵庫県神戸市の甲南女子大学入試課職員、関西大学附属中学校英語科教員、大阪府の公立中学校英語科教諭と3回転職しています。

2022年4月には第一子が生まれたため、育休を取得していました。次年度に復帰する予定でしたが、子どもが生まれたことで、改めて自分の人生を考えることに。

今、僕は30歳ですが、30歳は人生におけるひとつの節目だと思っています。教員の仕事は残業も多く、土日出勤の連続です。 「働き方を変えたい」「いずれ退職して学習塾をやりたい」と思うようになっていました。

- 学習塾を始めたいと思った理由について教えてください。
これまでに4社を経験し、 人の下で働くことが苦手だと感じていました。指示を待ち、自分で動けないことへのストレスを抱えるなら、1人で何かやってみたいなと。これまで教育畑で生きてきたこともあり、検討し始めたのが学習塾です。

また、公立中学校で働いたときに、 授業や学校の中で、低学力層が置いていかれる現状を目の当たりにしていたんです。カバーしたいと思っても、単純に時間や環境がなく、どうすることもできませんでした。そういった子たちも、一緒に学べるような場所があったらいいなと思ったことが、学習塾を始めようと思ったきっかけです。

- M&Aという手段に興味を持ったきっかけを教えてください。
YouTubeを見ていると、 中田敦彦さんが『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』の本を解説していたんです。M&Aの存在を知り、M&AプラットフォームとしておすすめされていたTRANBIに登録しました。

M&Aに挑戦する登録者数11万人以上、常時M&A案件数は2,700件以上を掲載中
「事業承継・M&Aプラットフォーム TRANBI【トランビ】」

 

(現在買収して運営している学習塾)

【決め手は、立地と塾のコンセプト。誠実さをPRし、契約に至る】

- TRANBIで案件を探すにあたり、重視していた条件はありますか?
まず、形態は、学習塾に絞りました。フランチャイズや大手などさまざまなケースがある中、僕が重視したのは規模感です。 個人塾かつ自分がまわせそうな規模を選びました。自分が英語科の教員として働いてきた経験もあるため、うまく引き継げるような塾がいいなと。

- 今回以外に交渉した案件について教えてください。
TRANBIの中で、今回の成約案件以外に2件交渉しました。 1件は、想定よりも賃料が高く、生徒数が少なかったため、その条件ならリスクを負う必要はないなと。 もう1件は、塾の内容としては申し分なかったものの、場所が遠方のため、現実的に毎日通うことが難しいと思い、お見送りしました。

他のM&A仲介サイトも並行して見ていましたが、重複している案件も多い印象です。文面が違っても、おそらく同じ人だろうと。TRANBIだけで管理した方が楽だと思い、一つに絞って探していました。

- 購入の決め手となったポイントを教えてください。
まずは、立地です。 自宅から30分以内かつ学習塾の周囲に学校があり、にぎわっているため、商圏として最適だと感じました。

2つ目は、塾のコンセプトです。巷で、 今流行っているのは、自立型学習塾。1つの教室に先生が1人、生徒が10人ぐらい。生徒は個々に自分の勉強を進め、つまずいたときに先生がサポートに入る形態です。

今回の案件は、僕がイメージしていた形態の塾でした。自分が購入した場合も、大きなシステム変更なく進められそうなところも魅力的だと感じました。

またネイティブ英会話については、僕が優先して探していたわけではなく、偶然セットになっていたというところです。もし、自分が英語教員ではなく、英語と無関係な立場なら、見送っていたかもしれません。

- 契約に至るまでの流れについて教えてください。
仲介会社が今回の交渉相手だったのですが、最初に事業概要書のような書類をいただき、規模感や売上の状況を確認しました。内容を確認し、詳しくお話を聞きたいことを告げ、オンラインで売り手様、仲介会社の方、私の三者で話をしています。

2回目は実際に塾の教室へ訪問してお会いしました。 内覧も兼ねていたため、事前にホームページで見ていた内装との見え方の違いや設備、水まわり関係を確認しました。

売り手様からも「条件さえあえば進めて行きたい」と前向きな回答をいただき、 私も話を進めるため、日本政策金融公庫の借入れの申込みをしました。この段階ではまだ育休中でしたが、教員をやめる決意をしたのもこの頃です。退職が決まった後、無事審査が通ったとの連絡があり、ホッとしました。

その後、個人事業主の開業届の提出、最後の事業譲渡の契約締結を行いました。その後、不動産会社と3、4回話をして賃貸契約を結んだといった流れです。

- 売り手様の印象はいかがでしたか?
すごく誠実な方だと感じました。学習塾を経営されている方ということもあり、とてもきっちりされている。 「しっかりやってくださるのであればお譲りします」という感じで、話もスムーズに進みました。子育てなど家庭の事情もあり、どちらかといえば早く手放したいとお考えのようでした。

売り手様が学習塾専門のM&Aの会社に委託していたことも、よかったです。仲介手数料として170万円を負担しました。

- どのような点で仲介会社がいてよかったと思われましたか。
220万円の売値に対しての170万円は、相場から見ても安価とは言えないと思いますが、覚書や都度の基本合意書、譲渡契約書など、必要な書類に関しては、全て仲介会社が「甲」「乙」の形で作成し、クラウドサインができる状態で進めてくれました。

やはり個人売買となると、どうしても「言った・言わない」などが出てくると思います。 その心配がなかったこと、仲介会社が誠実に対応してくださったこと、不動産会社とのやりとりに対するノウハウを伝授してもらえたことは、大きかったです。

- 他の応募者もいる中で、売り手様にPRしたことはありますか?
誠実さです。 教員としての経験や教育に対する熱量に加え、現在の生徒さん、現在の塾のコンセプトや思いに対してはできるだけ継承できるように努力しますといったことをお伝えしました。

譲る側としても、全部変わってしまうとなると、譲る気も失せてしまうと思います。 できるだけ今のオーナー様の気持ちを汲みたいといった話をした記憶があります。

- 大変順調に契約に至った印象ですが、トラブルなどはありませんでしたか。
トラブルとまでは言えませんが、 不動産会社との契約の際に、敷金・礼金の条件面が厳しくなっているなと感じました。私が無職であったことも影響していたようで、かなり強気な交渉を先方からされました。

正直想定している予算を超えてしまったのですが、ただ自己資金でここまで来た以上、もう出すしかないなと。もちろん、少し交渉しましたが、数字自体はそれほど変わっていません。

不動産会社としては、事業譲渡で、自分の知らない間に水面下で入居者が変わることは、あまり好ましくないようです。ただ先に退去を告げてしまうと、不動産会社が別の借り手を探し始めるため、動く順番としてはこうするしかないんだなと。

譲渡契約には、 「締結後も不動産会社がNGと言った場合。契約自体がなくなる」といった内容の条文も付け加えてもらいました。ただ、結果的に、連帯保証人をつけ、無事契約できたことは良かったと思っています。



【相次ぐ問題に直面!キーマンの外国人講師の退職希望】

- 運営するにあたり、売り手様からどのようなサポートがありましたか?
パソコンやiPadといった売り手様の私物以外、たとえば机やオフィスに設置されているようなサイズのプリンタも含め、ほぼすべてのハード面を引き継がせていただきました。

譲渡前ですが11月頭ごろからは、私自身がアルバイトとして雇用契約を結んでいます。買収分はすでに支払いを終えた上で、時給を受け取っている状態です。いきなり2月に「僕が塾を引き継ぎます」と話しても、生徒や保護者も戸惑うはず。今は、生徒とコミュニケーションをとったり、授業を教えたりしながら、雰囲気づくりをしています。

- 塾の魅力について教えてください。
売り手様のご主人はヨーロッパの方のため、オーナーである売り手様自身が英語に長けていることに加え、 地元小学校で英語を教えているネイティブのカナダ人の先生がいることが強みだったと思います。

また、大阪府は英検が受験に使われることが多い地域ですが、地域で受験できる場所は、ほとんどありません。 今回購入した塾も、英検の準会場として貴重な存在です。

英検の会場であることやネイティブのカナダ人の先生の存在が口コミで広がっていて、 英語をフックに塾に来てくれる子がいるとの話は聞いています。私も英語専門で教師をしてきたため、この強みごと引き継いでいければと思っています。

- カナダ人の先生も、引き継いで雇用する予定ですか?
そう考えていましたが、 譲渡成立後に転職するかどうか迷っているとの相談をもらいました。事業譲渡でよくあるパターンに直面しています。ただ、転職するなら後任の先生を連れてきてほしいとの話はしています。

今、慰留している最中ですが、大阪大学が目と鼻の先にある地域のため、募集をかければ、留学生を含めた学生や、非常勤の大学教授など、集まりやすい環境ではあると思います。

- 英会話の授業を廃止するといった考えも検討されているのでしょうか?
英会話は、マネジメントの大変さもわかっていましたし、カナダ人の先生がいなくなるのであれば最初は辞めてもいいかなと思っていたんです。

でも、 実際に現場に入り、外から様子を見ていたら、子どもたちが本当に楽しそうに授業を受けているんです。その笑顔を見たら、ちょっとキザですけど「この笑顔をなくしたらアカンな」と感じました。

需要もある、生徒も盛り上がっている。これだけ求められているものは、続けないといけないと思い直し、必要であればすぐに人材採用も検討しなければいけないと思っています。

- 引き継ぎ後、想定外なことはありますか?
アルバイトで来てくれている子のうちの1人の体調が優れないため、僕が正式に引き継ぐ2月1日の時点ではシフトに入れない状態です。 ここでマンパワーが削られることは、想定外でした。

もうひとつは、システムの引き継ぎです。当初、売り手様が使っている生徒管理システム「Comiru(コミル)」を事業譲渡で引き継ぐ予定をしていました。しかし、引き継げたのは、生徒のデータのみ。口座やクレジットカード情報に関しては、1回契約を解除し、再度登録してもらう必要があることが発覚しました。

切り替えが直前になることや、切り替えに1ヵ月程度かかることもあり、1ヵ月は振込を手作業でやることになりそうです。これも想定外でした。もし、今後学習塾を事業譲渡するなら、お金まわりのことに関しては、もっと早く動き出しておきたいと思いました。

あとは、駐輪場です。今回の売り手様の場合、生徒は小学生が中心かつ、徒歩や親の送迎が基本でした。ただ、中学生中心の塾にする場合、駐輪場は必要です。不動産会社との話し合いで、一旦駐輪スペースの妥協点をすり合わせたところではありますが、今後生徒数が増えた場合は、別の方法を考えることになりそうです。

【教材の統一と中学生の入塾を促進し、生徒数を2倍へ】

- 今後どのように経営を進めていかれる予定ですか?
現在の授業は、紙ベースな上、使用している会社もバラバラです。マンパワー的にも厳しいため、 ICT教材を授業の中に導入し、紙教材も1社に絞ることを検討しています。

また、これまでは、フレックスな時間割でかなり自由度の高い受け入れをされていました。生徒数が少ない間は対応できるものの、今後人数が増えたり2教室目を作りたいと考えたりした場合、汎用性がありません。そのため、 学校のように時間割を作成する予定です。

- 経営に関する目標を教えてください。
まずは直近の1、2年で、引き継いだ塾の生徒数を今の倍にすることです。現在の30人を60人にし、単価の高い中学生を増やしたいです。在籍数としては、教室の広さから、実現可能な数字です。

元教員のため、教育の質に関しても、引き続き勉強に努めます。専門教科は英語ですが、数学や理科など僕が弱い部分は、アルバイトの方にカバーしてもらったり、自分も一緒に学んだりしたいです。そしてその先は、5年、10年のスパンで、2教室目を目指していきたいです。

- 生徒の募集方法について教えてください。
売り手様は、ご家庭の事情もあり、週に2日で集中して開講し、残りは振替授業を当てている状態でした。特に生徒募集も行わず、口コミだけで、4年間継続し、現在も30名の生徒さんがいる状態です。

規模を大きくする必要がなく、収支もトントンだったと聞いています。そのため、生徒募集に関しては、まずはチラシやSNSなど、これまでやっていなかったことから始めようと思っています。

あとは英検の会場の継続です。英検は、直接利益を生むわけではありません。ただ、受験会場として提供することで、各級10名ずつとしても60名に無料で塾の存在をリーチできるのは、宣伝活動として魅力的です。

- 今回のM&Aに関して、ご家族の反応はいかがでしたか。
妻は、私が教員時代に休みなく働いている姿を見てくれていたため、 今回も「チャレンジしてみたら」と背中を押して、応援してくれています。

その上でお金の部分の不安を解消するため、自己資金と借り入れ、今後の方向性についても丁寧に話をしました。

また セーフティネットとして、午前中のみ週3日、地元の中学校で英語科の非常勤講師として働くことも決めました。妻も企業で働いていることもあり、「早い段階で軌道に乗せる」との話をし、今に至ります。

私が教員免許を持っていることも、チャレンジできた理由のひとつかなと思います。 現状、教員の成り手が不足している状態のため、潰しが効くかなと。教員に戻りたいかどうかは別として、セーフティネットが存在していることが、 心のどこかで安心感につながっているんだと思います。

- 最後に、M&Aに挑戦しようとしている方へ、アドバイスをお願いします。
資金については、一番いいのは自己資金を貯めておくこと。ただ、資金調達の方法や計画は、どれだけ早く準備しても早すぎることはありません。

年金や健康保険についても、今までは給料からの天引きのため、あまり意識していませんでした。 退職すると、自分で払うことになるため、想像以上の額で驚きました。これは、盲点です。ボディブローのように後々効いてくるので、お金まわりのこと、出費に関しては、把握しておいた方がいいとお伝えしたいです。

*************************

■伊藤さんが買収した事業はこちら

「【黒字案件】大阪府の個別指導塾・ネイティブ英会話事業」

■伊藤さんが運営している学習塾はこちら

「個別指導塾 ミークスクール」

Instagramアカウント「meekschool」

*************************

 

<個人の起業独立・副業を目的としたM&A・買収事例の記事を読みたい方はコチラ>


▶ 現役整形外科医がM&Aで勝負するストレッチ&マッサージ店!独自の監修メニューで大手と個人店に挑む


▶ 経験ゼロでも不安ゼロ!手厚いサポートで家族の看病とビジネスを両立できた個人M&A!

▶ 「大学生の私にもM&Aができた!」理想の自習室を作るべく卒業までの“期間限定”でビジネスに挑戦

▶ 売上帳簿なしでもM&Aを決断!店舗と従業員を引き継げるなら十分価値あり~脱毛サロンを買収した会社員の話~

▶ 【飲食店M&Aから3年】赤字転落から売上2倍超へとV字回復!競合には真似できない最強の集客戦略とは?

▶ 「300万円の個人M&Aで切り拓く新しい働き方」会社員と二足の草鞋で踏み出すキックボクシングジム経営!

▶ 「予備知識のない普通のサラリーマンでも半年でM&Aはできる!」31歳でホワイトニングサロンのオーナーに就任

▶ 「泳げるようになりたいなら、まずプールに飛び込む」行動力に満ちた20代女性のM&Aストーリー

無料会員登録