M&Aの「営業権」とは?のれんとの違い・年買法・計算方法をわかりやすく解説

M&Aの「営業権」とは?のれんとの違い・年買法・計算方法をわかりやすく解説

営業権とは、企業の信用力・ブランド・人材・顧客基盤などにより超過収益力をもたらす権利のことです。のれんとの違い、年買法を含む3つの計算方法、減価償却の仕組み、税務スキーム別の取扱い、減損リスクの回避策、価値を高める戦略まで実務目線で徹底解説します。

目次

M&Aの世界では「営業権」という言葉が頻繁に登場します。会計上の「のれん」と混同されがちですが、実はM&A交渉の現場で実際に使われるのは営業権のほうです。ブランド・顧客基盤・人材などの目に見えない価値を、どう数値化するかは経営者にとって重要な関心事です。

本記事では、営業権の定義から、のれんとの違い、年買法を含む計算方法、減価償却の仕組み、税務スキーム別の取扱い、マイナス評価になるケース、価値を高める戦略、よくある質問まで実務目線で徹底解説します。

営業権を正しく理解し、納得感のあるM&A価格を実現するためのヒントが詰まっています。ぜひ最後まで読み進めてください。

営業権とは?意味・定義とM&Aにおける位置づけ

M&Aにおける営業権とは、企業の信用力・ブランド力・顧客基盤などにより超過収益力をもたらす権利のことです。ブランド・ネームバリュー・人材力といった、目に見えない資産価値を指します。

営業権の定義|超過収益力をもたらす権利

営業権とは、企業が同業他社にはない独自の強みによって、平均以上の利益(超過収益)を生み出す権利のことです。例えば「老舗のラーメン店が長年の固定客で安定した売上を上げている」「ある町工場が独自技術で高単価の受注を獲得し続けている」といったケースで発生します。

営業権は無形固定資産のひとつです。法律上・契約上の権利、独占的権利などが該当し、有形固定資産と同様、一定の条件を満たせば減価償却で会計処理を行います。

営業権を構成する要素(ブランド・人材・顧客基盤)

営業権を構成する要素は多岐にわたりますが、代表的なものを整理すると以下のとおりです。

  • ブランド力・ネームバリュー: 業界・地域での認知度や信頼
  • 顧客基盤・取引先関係: 安定した取引先・常連客・会員ネットワーク
  • 人材・組織力: 熟練の技術者や経験豊富な営業チーム、効率的な業務プロセス
  • 独自技術・ノウハウ: 特許・製造ノウハウ・マニュアル化されていない暗黙知
  • 立地・商圏: 駅前店舗・繁華街の物件・地域での圧倒的シェア

これらは個別に金額をつけにくいため、「営業権」として一括して評価されることが一般的です。中小M&Aでは、こうした無形価値こそが買い手にとっての魅力となります。

営業権が活用されるM&A実務の場面

営業権は、特に以下のような場面でM&Aの中核的な価値として注目されます。

  • 同業他社の事業買収: タクシー業界・運送業界などで台数増・地域ネットワーク確保
  • 飲食店・サービス業の譲渡: 老舗の屋号・常連客・立地の価値
  • 士業・専門家事務所の承継: 顧客リスト・スキル・信頼関係の引継ぎ
  • 業界シェア拡大目的の買収: 競合の市場ポジション・取引先関係の取り込み

近年積極的にM&Aが進められているタクシー業界では、同業他社の営業権を譲り受ける動きが見られます。台数増を図るとともに、買収後も地域でのネームバリューを生かした事業展開を狙うためです。

営業権とのれんの違い|混同しやすい用語を整理

M&Aの現場で頻繁に登場する「営業権」と「のれん」は、混同されがちな用語です。両者は厳密には性質が異なるため、正しく使い分ける必要があります。

のれんとの定義の違い

「のれん」とは、M&Aで買収した際の購入金額から、買収時における売り手の時価純資産を引いた差額のことです。会社法に基づく会計用語で、貸借対照表に計上されます。

一方の営業権は、無形資産そのものの価値を指します。「ブランドはいくら」「顧客基盤はいくら」と無形価値を単独で評価する考え方です。

つまり、両者の関係性は以下のようになります。

  • のれん: 買収価格 − 時価純資産 = 差額(会計上の概念)
  • 営業権: 無形資産の価値そのもの(交渉上の概念)

営業権を金額化したものが必ずしものれんと同額になるとは限りませんが、実務上はほぼ同じ意味で使われることも多いです。

会計上は「のれん」、M&A実務では「営業権」

会社法では、有形資産以外の価値を意味する用語として「のれん」を使うことが規定されています。貸借対照表の勘定科目にも「のれん」と記載されるのが一般的です。

しかし、M&Aの交渉現場では現在でも「営業権」のほうが頻繁に使われます。理由は、購入金額と純資産の差額を計算するのではなく、無形資産を単独で評価するほうが売り手・買い手とも納得感を得やすいためです。

M&Aの交渉時に「のれん」を使うと、最終的なM&A価格が前提となるため、無形資産の評価過程が見えにくくなってしまいます。スムーズな交渉のためには、営業権という言葉のほうが実務的といえるのです。

営業権譲渡・営業譲渡・事業譲渡の関係

営業権に関連して、混乱しやすい用語に「営業権譲渡」「営業譲渡」「事業譲渡」があります。

  • 営業権譲渡: 現在の「事業譲渡」のこと(旧称)
  • 営業譲渡: 商法上の用語。事業の引き受け先が個人の場合に使用
  • 事業譲渡: 会社法上の用語。事業の引き受け先が会社の場合に使用

2006年の商法改正で、会社に関する部分が会社法として独立した際に、旧商法の「営業譲渡」が「事業譲渡」の呼称に変更されました。現在の会社法には「営業譲渡」という言葉はないのがポイントです。

事業譲渡では、有形資産だけでなく、営業権・契約・人材・ノウハウなどの無形資産も売却対象にできます。

M&Aの「のれん」とは?計算方法・償却・減損リスクをわかりやすく解説
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M&Aの「のれん」とは、買収価格と時価純資産の差額のことです。営業権との違い、3STEPの計算方法と年買法、日本基準とIFRSの違い、減価償却と減損リスクの回避策、株式譲渡・事業譲渡別の税務メリット、PPAまで実務目線で徹底解説します。

営業権の計算方法【3つの手法】

M&Aのプロセスにおいて、営業権の金額はどのように決定されるのでしょうか。代表的な3つの計算手法と、価格が決まるタイミングについて解説します。

営業権の計算に唯一の正解はない

営業権の価値を決めるための計算方法に、唯一の正解はありません。売り手の無形価値は、あくまでも買い手の見立てによって変わるためです。ひとつの企業に対して複数の買い手候補がいる場合、基本的には買い手ごとに営業権の評価が異なります。

営業権の金額を「価格」ではなく「価額」と呼ぶことが多いのも、企業の価値を客観的に評価する意味合いを込めるためです。営業権に限らず、企業価値を示す金額については、実質的な資産価値を表す「価額」がよく用いられます。

中小企業で多用される年買法(年倍法)

中小企業のM&Aで最も多用される計算方法が年買法(年倍法)です。計算式は以下のとおりです。

  • 営業権 = 年間の営業利益 × n年
  • 買収価格 = 時価純資産 + 営業権

営業利益に掛ける年数(n)は、売り手の業種や業績の安定性により異なります。

  • 2〜3年: 業績が流行に左右されやすい業種(飲食店・アパレル等)
  • 3〜5年: 中小M&Aで最も標準的に使われる年数
  • 5年〜: 長期的に安定した収益が見込める業種(インフラ・士業等)

年買法は計算がシンプルで、売り手・買い手双方が直感的に納得しやすいのが最大のメリットです。中小M&Aの現場では圧倒的に多用される手法といえます。

超過収益還元法による計算

営業権の計算には、年買法以外に超過収益還元法と呼ばれる方法もあります。実際の収益から期待収益を引いた「超過収益」に、一定の年数を掛けて営業権を求める方法です。

計算式で表すと以下のとおりです。

  • 営業権 = 超過収益(実際収益 − 期待収益) × n年

実際収益とは、評価対象企業の無形資産が活用されている事業で生まれる利益を指します。一方、各資産が将来的に得られると想定される利益が期待収益です。期待収益をどう計算するかが、最終的な営業権の金額を大きく左右するのが特徴です。

DCF法による計算

DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー法)は、将来期待されるフリーキャッシュフローを資本コストで割り引いて現在価値を求める方法です。

主に上場企業の大型M&Aやベンチャー企業の評価で使われます。計算が複雑なため中小M&Aでは敬遠されがちですが、成長性のある事業を評価するのに適しているのが特徴です。

営業権だけを単独で算出するというよりも、企業全体の価値を算出した上で時価純資産を控除する形で営業権を導き出します。

営業権の譲渡価格が決まるタイミング

M&Aでは、交渉相手が決まりスキームを選択した後に、買い手が売り手の企業価値評価(バリュエーション)を行います。バリュエーションで算出された評価額をもとに、当事者間で交渉が行われます。

交渉後に決定した譲渡金額などの大まかな条件は、まず基本合意書に記載されるのが一般的です。その後、デューデリジェンス(DD)で売り手に関する調査が行われ、再度交渉を行います。

最終的に譲渡金額が合意に至れば、最終契約書に記載されて譲渡金額が確定します。営業権の評価は、この一連のプロセスの中で繰り返し検討される重要な要素です。

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営業権の会計処理|減価償却の仕組み

営業権は、会計上は「のれん」として処理されます。減価償却の仕組みや、税務上の取扱いを正しく理解しておきましょう。

営業権は無形固定資産として計上

営業権は、貸借対照表上では「無形固定資産」として計上されます。有形固定資産(建物・機械等)と同様、長期にわたって使用される資産として扱われるためです。

計上タイミングは、M&Aのクロージング(決済完了)時点です。買収価格と時価純資産の差額が「のれん」として記載されます。

償却期間は最長20年(日本基準)

日本の会計基準では、営業権(のれん)は最長20年以内の合理的な期間で減価償却することが義務付けられています。

営業権の価値は永遠に続くわけではありません。例えば現時点では人気ブランドであっても、今後ずっとその状態をキープできる保証はないでしょう。流行の移り変わりや市場環境の変化とともに、価値が低減すると考えられているためです。

償却期間の設定例は以下のとおりです。

  • 5年: 業界の変化が激しい・短期的に効果を見込む場合
  • 10年: 中小M&Aで一般的な償却期間
  • 20年: 長期的に安定した価値が見込める場合(最長)

償却期間に定額を割り振り、毎年計上していくのが一般的です。なお、国際財務報告基準(IFRS)では定期償却を行わず、減損テストのみを実施する点が日本基準と異なります。IFRSの会計処理については「のれん」の解説記事で詳しく扱っています。

税務上の取扱い|スキームによる違い

営業権の税務上の取扱いは、M&Aのスキームによって大きく異なります。

  • 株式譲渡: のれん償却費は税務上、損金算入が認められない
  • 事業譲渡: 営業権相当額を「資産調整勘定」として、5年で均等償却・損金算入できる
  • 非適格組織再編: 事業譲渡と同様に資産調整勘定として処理可能

例えば営業権1億円を5年で損金算入できる場合、実効税率30%とすると毎年600万円(合計3,000万円)の節税効果が得られます。スキーム選択次第で大きく異なるため、税理士と相談しながら最適な方法を選びましょう。

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営業権がマイナスになるケース(負ののれん)

譲渡価格の計算が行われる際に、営業権の金額がマイナスになる場合があります。これは「負ののれん」と呼ばれ、買収価格が時価純資産を下回るケースです。どのような状況でマイナスになるのか、主な例を見てみましょう。

簿外債務・損害賠償リスクの存在

売り手に何らかのリスクがある場合は、営業権の金額がマイナスになります。主なリスクは以下の通りです。

  • 簿外債務: 未払いの給与・退職金・債務保証など、帳簿から判断できない債務
  • 損害賠償請求リスク: 訴訟中の案件や、将来的に賠償が発生する可能性
  • 環境債務: 土壌汚染・廃棄物処理など、将来的な対応費用
  • 未払残業代: 過去の労働時間管理の不備による潜在的負債

これらのリスクが顕在化した場合、買収後に確定した費用は買い手が負担することになります。リスクとして残る以上、営業権の金額に反映させざるを得ないのが実務です。

売り手の事情による非合理的取引

M&Aは経済合理性に見合った認識のもとで行われるのが基本です。ただし、すべての取引が経済合理性だけで行われるわけではなく、当事者のさまざまな思惑が絡んで非合理的な取引になるケースもあります。

例えば以下のようなケースです。

  • 従業員の雇用維持: 損をしてでも会社を存続させて従業員の雇用を守りたい
  • 親族・友人間の取引: 経済合理性より関係性を重視した価格設定
  • 廃業コスト回避: 廃業するための資金を用意できない会社が、低価格でも売却を選ぶ
  • 後継者問題: 早期の事業承継を優先し、価格交渉に妥協する

負ののれんは、買い手にとっては割安取引のチャンスでもあります。ただし、背景に重大なリスクが潜んでいる可能性もあるため、慎重な見極めが必要です。

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営業権の価値を高めるためのポイント

売り手として、自社の営業権を適正に評価してもらうことは、M&A成功の重要なポイントです。買収価格には決まった計算方法がない以上、戦略的なアプローチが効果的です。

自社の強みを明確化する

事業を買収した結果、どのようなメリットがあるか明らかになっていなければ、買い手は価値を感じにくいでしょう。その結果、営業権を低く見積もられてしまいます。

まずは売り手が自社の強みを把握することが大切です。以下の観点で自社の価値を整理しましょう。

  • 顧客基盤: 顧客数・継続率・客単価・主要顧客との関係性
  • 市場シェア: 地域での認知度・業界順位
  • 技術・ノウハウ: 特許・独自の製造方法・マニュアル化された業務
  • 人材: キーマンの存在・組織の安定性・教育体制
  • 立地・設備: 商圏の価値・最新設備への投資状況

これらが買い手にとってどう役立つかを具体的に説明できれば、買収価格の上昇につながります。ネガティブな情報も含めて包み隠さず伝えることも、信頼を生み、結果として営業権を高めるポイントです。

入札方式で買い手競争を生む

入札方式を採用するのも、営業権を高める方法です。複数の買い手候補を募集し、最も高額を提示した候補と取引を進める方法です。

買い手は競合を意識するため、1対1で交渉するときのように価格を下げられません。「入札に負けたくない」と考えていれば、競合がどのような価格を提示するのか予測し、それより高い価格を提示するはずです。

結果として全体的にM&Aの買収価格が上がりやすく、営業権の金額もアップします。ただし、入札方式は売り手側の情報開示や交渉プロセスが煩雑になるため、M&Aアドバイザーのサポートを受けながら進めるのが賢明です。

高く評価してくれる買い手を選ぶ

できるだけ自社を高く評価してくれる買い手を探すのもポイントです。買収価格に決まった計算方法がない以上、どのような価値を見出すかは買い手によって異なります。

例えば、欲しかった販路を手に入れられる買い手、技術を活用できる買い手、地域シェアを獲得したい買い手にとっては、数億円の営業権でも安いと感じるかもしれません。

自社を高く評価してくれる買い手に売り込めれば、高い価格でスムーズに売れるはずです。マッチングプラットフォームを活用して幅広く買い手候補と接触するのも、有効な手段といえます。

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営業権の減損リスクと回避策

営業権に対して支払った金額を回収できない場合、貸借対照表に計上したのれんの価格を切り下げる必要があります。これが「のれんの減損」です。買い手にとっては大きな経営リスクとなるため、回避策を理解しておきましょう。

営業権を回収できない場合の減損処理

営業権の価格が本来の価値を超えてしまうと、のれんの減損が発生しやすくなります。具体的には以下のようなケースです。

  • 事業計画の未達: 買収時の事業計画が大幅に未達となった場合
  • シナジー効果の未実現: 期待していたシナジー効果が発揮されない
  • 市場環境の悪化: 業界全体の縮小や競合激化
  • 主要顧客の離脱: 経営権変更を理由とした取引解消

のれんの減損が発生すると、当期における特別損失営業外損失として計上されます。会計上は損金として扱えますが、税務上では損金扱いできないケースもあり、金額によっては企業に大きな影響を与えます。

減損を防ぐためのDD活用

減損を防ぐ第一の防御策は、買収前のデューデリジェンス(DD)です。売り手側のIM(企業概要書)に書かれた情報を鵜呑みにせず、収益性の裏付けを冷静に検証することが重要です。

DDで重点的にチェックすべきは以下の項目です。

  • ビジネスDD: 市場の成長性・競合環境・営業権の持続可能性
  • 財務DD: 簿外債務・実態的な収益力・運転資本の状況
  • 法務DD: 主要契約の継続性・COC条項の有無・係争中の訴訟
  • 労務DD: 未払残業代・キーマンの定着率

DDの結果、リスクが高いと判断されれば、営業権の金額を引き下げる交渉が必要です。「のれん代を交渉のテーブルに乗せる」ことが、減損回避の第一歩です。

PMI成功で営業権の価値を維持

買収後の組織統合プロセス(PMI)の成否は、営業権の価値を維持できるかどうかを左右します。

営業権の源泉であるブランド・人材・顧客基盤は、PMIの失敗で容易に失われます。

  • キーマンの離脱: 技術・営業の中核人材が辞めると価値急落
  • 顧客離れ: 経営方針変更で取引先・常連客が離脱
  • 従業員モチベーション低下: 文化の衝突で組織力が崩壊
  • ブランド毀損: 急激な改革で老舗ブランドの信用を失う

M&Aは契約締結がゴールではなく、PMIによって営業権の価値を守り、シナジーを実現することが真のスタートです。買収後100日プランをしっかり策定し、段階的に統合を進めましょう。

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営業権に関するよくある質問

営業権についてよく寄せられる疑問にお答えします。

営業権と「のれん」「暖簾」の違いは何ですか?

営業権・のれん・暖簾は、いずれもM&Aで発生する無形資産の価値を指す用語ですが、使われる場面が異なります。会計上は「のれん」、M&Aの交渉実務では「営業権」、古い表記や慣習的な表現として「暖簾」が使われます。意味としてはほぼ同じですが、会計処理上の正式名称は「のれん」です。

個人事業主のM&Aでも営業権はありますか?

はい、あります。事業の規模にかかわらず、地域での認知度(屋号の価値)・長年の常連客・職人の技術・立地などは立派な営業権です。個人事業主の事業譲渡では、「営業権」として価格に乗せられ、慣習的に数年分の利益が加算されることが多いです。小規模な店舗譲渡でも、営業権の価値を見極めることが重要です。

営業権の譲渡に税金はかかりますか?

かかります。事業譲渡で営業権を売却した場合、売り手側では譲渡益に対して法人税がかかります。買い手側では、営業権を「資産調整勘定」として5年で均等償却し、損金算入できます。個人事業主の場合は譲渡所得として課税されます。税務処理は複雑なため、税理士への相談を推奨します。

営業権の計算で最も使われる方法は何ですか?

中小M&Aで圧倒的に多用されるのは年買法(年倍法)です。計算式は「営業利益×n年」というシンプルなもので、年数(n)は2〜5年が一般的です。理論的には粗削りですが、売り手・買い手双方が直感的に納得しやすいため、中小M&Aの実務では標準的な計算方法となっています。

営業権がゼロやマイナスになることはありますか?

はい、あります。簿外債務・損害賠償リスク・主要顧客の離脱リスクなどがある場合、営業権がゼロまたはマイナスに評価されることがあります。マイナスになるケースは「負ののれん」と呼ばれ、買収価格が時価純資産を下回る状態を指します。買い手にとっては割安取引ですが、隠れたリスクの検証が不可欠です。アーンアウト条項を活用すれば、不確実性をコントロールできます。

まとめ|営業権の正しい理解で適正なM&A価格を実現

営業権は、M&Aにおける目に見えない資産価値の中核です。本記事のポイントを整理しておきましょう。

  • 営業権とは、企業の信用力・ブランド・人材・顧客基盤などによる超過収益力をもたらす権利
  • 会計上は「のれん」、M&A実務では「営業権」と使い分ける
  • 営業権譲渡(=事業譲渡)・営業譲渡(個人取引)・事業譲渡(会社取引)を区別する
  • 計算方法は3手法。中小M&Aでは「年買法(営業利益×2〜5年)」が圧倒的に主流
  • 会計上は無形固定資産として最長20年で減価償却
  • 税務上、株式譲渡では損金算入NG、事業譲渡では5年で損金算入可能
  • 負ののれんは簿外債務・損害賠償リスク・売り手事情などで発生
  • 価値を高めるには「強み明確化・入札方式・高評価買い手選定」が有効
  • 減損リスク回避にはDD徹底とPMI成功が不可欠

営業権にかかった費用を回収できない場合、のれんの減損損失が生じて企業経営に大きな影響を与えかねません。営業権の金額が低いケースでは、売り手にリスクがないか慎重な見極めが重要です。

営業権の評価や税務スキームの選定には高度な専門知識が求められます。国内最大級のM&Aマッチングプラットフォーム「TRANBI(トランビ)」では、経験豊富な専門家を無料で紹介しています。適正な営業権評価で、納得感のあるM&Aを実現しましょう。

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記事監修: 株式会社トランビ 代表取締役CEO 高橋 聡
【プロフィール】
アスクホールディングス株式会社代表取締役社長、中小企業庁中小M&Aガイドライン作成委員。アクセンチュアを経てアスクホールディングス株式会社を先代から事業承継。中小企業におけるM&A活性化の必要性を痛感しトランビを創業。
著書: 「起業するより会社は買いなさい」サラリーマン・中小企業のためのミニM&Aのススメ
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