2023-05-16
東京駅近くのレンタルスペースをM&A!自身のオフィス&宿としても利用してコスト削減!?
買い手(個人):吉田洋介さん(40代)
<個人の多角化を目的としたM&A・買収事例>
- ➤ 目を付けた背景には、東京出張時のコスト削減の狙いも
- ➤ 収支状況を細かく開示している誠実さに安心感
- ➤ 集客・清掃は外部にお任せ。運営に掛かる時間は月1時間のみ
- ➤ 身銭を切って、買いたいレンタルスペースを利用してみるべし
起業して、ベンチャーやスタートアップを対象に人や組織のコンサルティングを手掛けている吉田さん。今回、初めてM&Aに挑戦して、東京・日本橋のレンタルスペースを購入しました。
吉田さんがレンタルスペースを運営する目的は、スペースの貸し出しを行って本業以外の収入源を持つことだけではありません。
主催する交流会の拠点としてや、自身が東京に出張した際のオフィスや宿としての利用も見込んでおり、目的に合うレンタルスペースの購入に成功しました。
運営開始から2か月で黒字化に成功するなど、順調かつ手間を掛けずにレンタルスペース経営をされている吉田さんに、M&Aの流れやレンタルスペース購入時に気を付けるべきポイントなどを伺いました。
【目を付けた背景には、東京出張時のコスト削減の狙いも】
- 吉田さんのご経歴から教えてください。
新卒入社した組織人事コンサルティング会社に、14年ほど勤めていました。
仕事に不満があったわけではありませんが、自分でビジネスをしたり、世界を飛び回りながら自由に生きていたりする友人が周りにいることもあって、1社で働き続けるより、違う経験をして見識を広めていきたいと思うようになりました。
前職の居心地がよかったので、このまま先延ばしにしていると挑戦できなくなると思い、40歳手前で退職して、起業しました。
現在は、前職の経験や培ったスキルを生かして、ベンチャーやスタートアップの組織作りの支援やコンサルティング、採用や人事制度を作るお手伝いなどをしています。
- 会社にいながら副業という選択肢ではなく、退職して独立という道を選んだのはどうしてですか。
退職前から、今の仕事を副業という形で徐々に取り組んでいました。ただ、会社員という守られた立場としてではなく、自分自身が事業の矢面に立っていきたいという思いがあって。
また、当たり前ですが副業である以上、会社で働く中で学んだメソッドや知財を活用できない点が制約になってしまうので、活動の自由度を考えると独立がベストだと感じました。
副業としての月収が本業の月収を超えるようになったので、集中すればより事業を伸ばしていけるだろうと確信できたことも後押しになりました。
- クライアントであるベンチャーやスタートアップとは、どのようにして出会うのですか。
友人・知人が働いているという場合もあれば、M&A関連会社やVCで働いている知人から紹介していただくこともあります。
私自身、決して特別なスキルを持っているわけではありません。書籍で学べる組織人事系の理論と、前職での経験やメソッドを用いて、クライアントが抱える人・組織に関連する困りごとの解決に努めています。
クライアントの社数も増えていますし、特定のクライアントから任せていただく範囲も拡大しています。
社員は私だけですが、1人のキャパシティはたかが知れているので、30人ほどのメンバーとネットワークを形成して、仕事を依頼したり、協力したりしながらクライアントの支援をしています。
- 事業が順調でお忙しそうですが、なぜ今回新たな事業を始めようと思ったのですか。
会社員時代から、さまざまな人と話したり、周りの人同士を繋いでいく活動が好きでした。コロナ禍も落ち着いてきたので、そういった機会をオフラインで主催していきたいと思っていて、最初は都度スペースを借りることに目を向けていました。
自分がスペースの運営者となって特定のスペースを所有し、そこで会を開く選択肢もあると考えるようになったのは、私自身が小田原在住であることも大きかったです。
東京に出てきた際には毎回、スペースを借りてオンラインミーティングをしていたのですが、拠点があればそうした必要もなくなりますし、宿泊することもできますから。
つまり、私自身の東京での拠点やイベント会場として利用できて、なおかつそれ以外の日はレンタルスペースとして貸し出しもできるという点にメリットを感じて、レンタルスペース購入に目を向けるようになりました。
(吉田さんが運営するレンタルスペース①)
【収支状況を細かく開示している誠実さに安心感】
- 今回購入した、日本橋のレンタルスペースのどんなところに魅力を感じましたか。
まず、案件の紹介文に「自宅兼用レンタルスペースとして使っていましたが、勤務先変更に伴い利用しづらくなったため」と記載されていたため、私の用途に近いと思って興味を持ちました。
感心したのは、とても詳細に収支・収益状況を公開されていたことです。収支は±0ほどという情報にあわせて、細部の数字も教えてくださって、とても信頼できると感じました。
他のレンタルスペースの案件には収支がグレーなものも多く、初めてレンタルスペースを経営する上で、不安を感じるものはやめておこうと思っていたからです。
場所も、たとえば渋谷や秋葉原といった街よりは、ビジネス街の印象が強いエリアがいいと思っていたので、東京駅近辺の日本橋という立地は理想的でした。
内装がパーティールーム向きという感じではなく、落ち着いていたことも良かったポイントです。
加えて、金額感の条件が合うことも大きかったです。もともと予算100万円ほどで案件を探していたのですが、今回購入した案件を最初に見かけたときは譲渡希望金額が180万円で。
当時は予算オーバーでしたが、1ヵ月後にもう一度見ると「100万円値下げして、希望譲渡価格は80万円にしました」と書かれていたので、すぐ交渉を申し込みました。
- M&Aの交渉はどのように進みましたか。
現地で実際のレンタルスペースを見ながら、説明を受けたり、条件の交渉をさせていただいたりしました。
売り手様は、イメージ通り誠実で率直にお話いただける方だったので、お会いしてとても安心できました。
これは余談ですが、私の前職のグループ会社で勤務しつつレンタルスペースを運営されている方だったので、「同じビルで働いていたんですね」といった話でも盛り上がり、親近感も湧いて。
売り手様は、会社員でありながら40箇所以上のスペースを運営されている方なので、不安なことやわからないことを質問すると丁寧に答えてくれて、かつ「1か月間、LINEで質問に答えるサポートも付けるので、未経験でも大丈夫ですよ」とフォローしていただきました。
(吉田さんが運営するレンタルスペース②)
- 売り手様が、もともとの譲渡希望金額から100万円値下げをしたのは、どうしてだったのでしょうか。
最初に掲載された際は、不動産賃貸契約の巻き直しに伴う費用を加味していなかったようです。
以前、別の方への譲渡が決まりかけた際に、「不動産取得費用が譲渡金額とは別に発生しますよね」とお互いに気付いたことで、 その買い手様が辞退されたようで。
180万円にプラスで最大数十万が必要、かつ黒字案件ではないという条件では、なかなか買い手様が決まりづらかったようで、思い切って譲渡希望譲渡を値下げされたそうです。
ただ、名義変更は無事に進み、かつ物件のオーナー様がとても良い方だったので、 敷金と礼金も一部免除していただき、結果的には想定よりも初期費用を抑えることができました。
譲渡金額は一部修理が必要だった部分を売り手様に負担していただいたり、敷金・礼金も按分したりと、売り手様にも協力していただきながら、恵まれた条件で契約を締結することができました。
(吉田さんが運営するレンタルスペース③)
【集客・清掃は外部にお任せ。運営に掛かる時間は月1時間のみ】
- 2023年2月から引き継がれて、現在で2か月ほどですが、状況はいかがですか。
もともと伺っていた利用状況よりも、多くのお客様に利用していただけていて、とても好調です。
以前は毎月少し赤字で、繁忙期に大きく黒字になって最終的には±0に落ち着いていたようですが、現在は毎月±0もしくは少し黒字と、順調に推移しています。
- お客様はどんな用途で利用されていますか。
ベッドもある広めのワンルームなので、ご友人同士でゆったり映画を観る方や、Instagram用の撮影をする方が多いようです。
また、テレビのロケにも使われていて。この前は、ドキュメンタリー番組のインタビュー映像撮影の用途で利用されました。売り手様が、シンプルで落ち着いた内装のスペースにしてくださっていたおかげで、そうした用途でも使いやすいようです。
私もすでに10数回ほど個人利用をしていますが、とても快適ですし、東京に行く度にスペースを借りたり宿を予約したりする必要がなくなって、金銭面でのメリットもあり、助かっています。
- 本業と並行して、どのようにスペース運営を行っていますか。
運営は、レンタルスペース予約サイト『スペースマーケット』のグループ会社である 『スペースモール』に依頼しています。
そのため、私がすべきことは利用したお客様に書いていただいた レビューの確認や、1ヵ月の収支状況の整理くらいで、1ヵ月で1時間も掛かりません。
スペースマーケット経由で予約が入ると利用料金の3割をお支払いするのですが、 かつ運営代行を依頼していることでプラス1割かかるため、売上の40%をお支払いする必要があります。
なかなかインパクトの大きい金額に見えますが、 集客のための広告費用や清掃に掛かる時間などを加味すると、リーズナブルだと感じます。
もちろん、自社のHPで集客をしてコストを抑える手法もありますが、たとえ順調な集客に成功しても、予約をカレンダーに登録したり、お客様に請求したりといった手間が発生してしまうので、 別で本業を持ちつつレンタルスペースを運営するのであれば、スペース予約サイトと代行業者を活用することが最適解ではないでしょうか。
- レンタルスペースの改善は行っていますか。
大きくは変えていませんが、私自身がスペースをよく利用してきた立場として「あって便利だった」と思うものは導入しました。
もちろん、お客様の声を受けての改善もしていて、この前は「まな板が見つかりづらいです」という意見をいただいて置き場所を変えました。
1スペースしか運営していないからこそ、すぐに改善に移せることはメリットだと感じているので、ここで運営ノウハウを溜めつつ、またTRANBIで条件に合うスペースに巡り会えたらM&Aを行って、スペースを2つ、3つと増やしていこうと考えています。
- トラブルは起こっていませんか。
あるとき、数件続けて「髪の毛が落ちている」とコメントを寄せられたことがありました。
清掃は代行業者に依頼しているものの頻度は週2回ほどですし、基本的には利用者の方に退出前の片付けを依頼しているものの、徹底されていないケースもあるとそういったことが起こり得るのだと気付きました。
そうした声を受けて、家具を動かして掃除機をかけやすいレイアウトに変えるなど、微調整をしながら、清潔さを保ち続けられるしくみを作ってきました。
また、大きく家具などのレイアウトを変えられて、元の形に戻されていないケースもありました。「行ってみたら、写真とまったく違うスペースだった」ということになると、他のお客様が戸惑われると思うので、原状復帰をせずに帰られた方には追加費用を支払っていただくようお願いをしています。
(吉田さんが運営するレンタルスペース④)
【身銭を切って、買いたいレンタルスペースを利用してみるべし】
- レンタルスペースの優良な売却案件を見つけるコツを教えてください。
どんな意図でレンタルスペース運営を始めたのか、収支状況は戦略や仮説通りなのか否か、仮説が外れてしまった場合はどんな原因が考えられるのかを、売り手様がきっちりと説明できる案件を選ぶべきだと思います。
たとえ赤字だとしても原因がわかれば、自分が引き継ぐことで改善の余地があるのか否かを判断できますし、改善案を考えられますから。
今回購入したもの以外にいくつかレンタルスペースの案件を検討しましたが、中にはなんとなくレンタルスペースの運営を始めてみて、赤字が続いたので「このまま赤字を垂れ流すよりは売却しよう」という案件もあって。
しかも、そうした案件に限って、最初の段階では情報を隠しているんです。
たとえば現地を見に行ったら壁や家具がボロボロで、壁紙の張り替えや家具の買い替え費用を掛けなければ利用が見込めないスペースもありました。
また、スペースは綺麗であるものの、ビル自体が相当老朽化していてお客様の気分が上がらないだろうと想像できるスペースもありました。
そうした要素も含めて正直に開示していただいたり、「こんなことをやってみたけれど、うまくいかなかった」と教えていただけたら、条件面での交渉をしながら前向きに検討することができるかもしれませんが、「自分にとって不利になる情報は隠す」といったスタンスの方だと、やはり信用できないですし、たとえ安価でも踏みとどまってしまいます。
現状分析ができていて、正直に情報を伝えてくれる、誠実な売り手様からスペースを買うことをおすすめします。
- 最後に、レンタルスペースの購入を検討している方にアドバイスをいただけますか。
まず、想定しているレンタルスペースの用途や、レンタルスペース運営に期待するリターンを明確にしてください。ゴールイメージが曖昧だと、どのような物件を選べばいいのかわからなくなってしまうからです。
毎月20万円の利益を生みたいのか、5万円でいいのか、トントンで十分なくらいに別の相乗効果が期待できるのか、をまず整理してください。
次に、必ず現地に足を運んで見学してください。不利になる情報をあえて隠している方も、悪気はないものの必要な情報を伝え切ることができていない売り手様もいるからです。
その際に大事なのは、ユーザーとしてお金を払って実際に利用してみることです。
多くの売り手様は「無料でいいですよ。お好きに見学してください」と言ってくれるかと思いますが、あえて身銭を切ってユーザーの気分を味わい、「これだけの利用料金を払ってでも、この場所を使いたいか」を確認することが重要だと思うからです。
そして最後に、やはり売り手様のお人柄は大切です。率直かつ実直に情報を教えてくださり、こちらの質問に答えてくださる売り手様から購入してください。
後で想定外のトラブルに巻き込まれるのを防ぐためにも、少しでも不安を感じる案件は避けておいた方がベターだと思います。
(吉田さんが運営するレンタルスペース⑤)
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■今回吉田さんが買収した案件はこちら
「【日本橋】住居兼用レンタルスペース譲渡(100万円値下)」
■吉田さんが運営するレンタルスペースはこちら
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