2023-10-03

英会話教室を600万円でM&A!アンティークコイン販売業者が抱く野望とは

買い手(法人):ソブリンパートナーズ株式会社

<中小企業の新規事業を目的としたM&A・買収事例>

 

アンティークコイン販売業を手掛けている、ソブリンパートナーズ株式会社。代表の髙橋さんは、アンティークコイン事業の主要顧客である経営者と多く出会う中で、「世界で戦える経営者」を育成する必要性を感じ、その手段として英会話教室に目を付けます。

本業が忙しいため時間とノウハウを買おうと、初めてM&Aに挑戦。スムーズに都内の英会話教室のM&Aに成功しました。

髙橋さんならではの経営者との接し方や、引き継ぎ後に力を入れている教室の改善業務、M&Aを行う上でのアドバイスについて、お話を伺いました。

【引きこもりから一流のアンティークコイン商へ】

- まずは、髙橋さんのキャリアについて教えてください。
商社などで勤務していた時期もありましたが、もともと「できれば一生働きたくない」と思っていたこともあり、30代で3年間引きこもりを経験しました。引きこもりにも飽きて、「そろそろ働くか」と思ったときに偶然見つけたのが、アンティークコインを販売する会社の求人で、珍しくて面白そうな仕事だと思いました。

アンティークコインというとイギリスがメインなのですが、昔イギリスに1年間住んでいたこともあったので、仕事でイギリスに行けるかもしれないという単純な理由で入社を決めました。

深い理由もなく足を踏み入れたわけですが、アンティークコインの世界は面白かったです。特に、アンティークコイン業界は世界で唯一、信頼関係で成り立っていると言えるような独特の商慣習もありました。

というのもアンティークコイン業界は、信頼してもらえたら、5000万円や1億円を先に振り込まずに現物であるコインを渡してもらえるという独特な世界です。私の会社名や名前を知らない人が、知り合いから「あの人は信頼できる人だよ」と教えてもらった情報だけを頼りに、私に多額のコインを渡してもらえることも多々あります。

こうした世界に惹き込まれて、2017年に独立して、ソブリンパートナーズ株式会社というアンティークコイン販売業の会社を立ち上げました。競合他社を見ても、英語を話せる人がほとんどいないからこそ、英語が話せるだけで圧倒的に勝算があると見込めたからです。

- アンティークコイン販売業のビジネスモデルについて教えてください。
コインは、アメリカの鑑定会社に出して評価をしてもらい、状態によりグレード(評価)が行われ、プラスチックケース(スラブ)に入れられ、販売する流れになります。これは、ポケモンカードなどと同じ流れです。

ただ、鑑定を終えてプラスチックケースに入れるまでに、半年ほど掛かることも。そこからオークションに掛けていると、現金化までに1年~2年半を要することもあります。

通常は、鑑定後に販売したほうが海外のコレクターは利益を得られるのですが、鑑定の結果に時間がかかることや、鑑定結果も読めないこともあり、一部のコレクターは早く買い取ってくれるのであれば裸コインの状態で将来期待できる金額よりより安く販売してもいいと考えているコレクターも1部存在します。

この裸コインの状態を見極めることで、より大きな利益を確保する、これが本来のコイン商の姿であり、当社もそのやり方を行っております。

- まだ鑑定会社の評価が付いていない時点で、髙橋さんご自身の眼力で見極めて値段を付け、買い取っているんですね。
経験によって眼力を磨いてきたので、私が想定した通りのグレードが付けられることが多いです。

コインは製造されてから長い年月が経っているので、当然ながら1枚1枚状態が違います。それらを何千枚、何万枚と見てきたことで、傷や鋳造状態を総合して「これくらいの評価が付くだろう」という予測ができるようになったのです。

とは言え、会社員時代の眼力は大したものではなかったと思います。独立して身銭を切り、アンティークコイン事業に賭けたからこそだなと。自分のお金となると、真剣になりますし、鑑定が想定より低かった場合、数十万円~数百万円の損が目の中に焼き付いて眼力となるのです。

- 2017年に創業されて、業績はいかがですか。
業績は毎年順調に伸びてきました。ただ、今年は落ちるかもしれません。というのは、コインの流通枚数が減っているからです。

アンティークコインは、現在の世界の金融不安に伴い、富裕層をはじめ、一定の資産を保有している人が、一部の資産をコインに替えています。そのため、コインを一度入手した後は、手放さない人が多くなっていることが大きな要因です。



(アンティークコイン展示会に訪れる高橋さん)

【「英語力を携えて、世界で戦える経営者を増やしたい」という思いから英会話教室に興味】

- 今回、英会話教室のM&Aに踏み切った理由を教えてください。
アンティークコイン事業の顧客である経営者のほとんどが、英語を話すことが得意ではありませんでした。これでは、外国人と交渉して、世界で戦っていくことができません。

私にとっての、アンティークコイン以外の得意領域が英語だからこそ、エントランスとして英会話教室を作り、世界でビジネスができる経営者を育てたいと思ったのです。「英会話教室を運営しているのが、世界でビジネスをしているソブリンパートナーズです」という後ろ盾があれば、説得力もあるかなと。

そこで、埼玉県草加市のマンションの1室を買い、そこで英会話教室を開こうと看板まで作りました。ただ頓挫してしまい、M&Aで英会話教室を買うという選択肢に目を向けるようになったのです。

- ご自身で英会話教室をイチから立ち上げるにあたっては、どのようなハードルがあったのですか。
講師をどのようにして確保すればいいのかわからず、躓きました。もっとしっかり調べれば、いい講師を採用できるルートを開拓できたのでしょうが、アンティークコイン事業で手一杯で英会話講師の採用に時間を割けませんでした。それで、時間を節約するためにも、ノウハウを買おうと思ってM&Aに目を向けたのです。

インターネット上で事業を売買できるM&Aプラットフォームの存在は知っていたので、案件の掲載件数が多かったTRANBIに登録しました。

- どのように案件を探し、交渉に移りましたか。
予算は特に設けていなくて、「関東圏の英会話教室」という条件に合致した3つほどの案件に交渉を申し込みました。

今回買収に至った案件は、東京・高田馬場にある英会話教室です。当時、講師はアメリカ人男性1名、オーストラリア人男性2名、ベラルーシ人女性1人で、ネイティブスピーカーが多いことが特徴でした。売り手様はオーナーとして経営をしており、もともとは、ロシア人の奥様が英会話教室事業に興味を持っていて、教室を立ち上げたとも聞きました。

開講して9か月目でしたが、生徒は1か月2~3人のペースで増えて徐々に業績が伸びており、黒字化目前という状況でした。この案件の交渉が一番スムーズに進んだため、買収を決めました。
 



(※写真はイメージです)

【ライバルが値下げを要求する中、希望譲渡金額を承諾。スムーズに成約へ】

- 交渉の過程はいかがでしたか。
実際に英会話教室に視察に行き、お話を伺いました。事業は軌道に乗ってきたところでしたが、オーナーの奥様の希望によりロシア移住を予定しているため、売却に至ったそうです。

オーナー様は、600万円での譲渡を希望されていました。個人的には、500万円ほどが妥当な金額だと思ったものの、成約確度を上げるために600万円で承諾しました。他のライバルの方は、500万円での譲渡を希望されていたようなので、先方の希望金額に従ったことで選んでいただけたのだと思います。

- 8月から事業を運営されるようになって、現状はいかがですか。
講師は、これまで働いてくれていた方4名を継続して雇用しつつ、新たに2名を採用して、全員と業務委託契約を結んでいます。生徒数は現在35名ほどですが、教室のキャパシティからすると、今の倍くらいの生徒数を抱えることが可能です。

生徒を集めるためには、やはり講師の力が重要で。特に人気なのが、ネイティブスピーカーの女性です。実は、英会話教室の講師の募集を掛けると、応募の大半は50~60代の男性で、ネイティブスピーカーの女性はゼロに等しいほど稀有な人材なのです。

- 集客のためのマーケティング活動は行われていますか。
YouTubeやブログやInstagramは、今後活用できればと思っていますが、広告も出すつもりはありません。

ただ、検索エンジンで上位に表示されるようになっていることは、うちの強みだと思います。これは、前のオーナー様の奥様が運営していたYouTubeのおかげです。YouTubeの企画内容は英会話教室とは無関係であるものの、かなり再生回数の多い動画内で英会話教室を紹介するため、検索数が増えて、結果的にSEO対策に繋がったようなのです。



(※写真はイメージです)

【講師と生徒にとって快適な空間を作るため、小さなことから改善を実施】

- 引き継いで、新たに変えたことはありますか。
先生にとって働きやすい環境、あるいは生徒にとって快適に学べる環境にするために必要だと思うことは、小さなことから一つひとつ改善に取り掛かっています。

たとえば、エアコン。以前は講師が出勤時にスイッチをつけて退勤時に切るルールだったため、夏場は出勤直後の講師が汗だくでした。そこで、エアコンは24時間つけっぱなしにしました。

他には、トイレ掃除を徹底したり、カーペットを新調したり、子どもが座る席の頭上にあった観葉植物や本棚を撤去して、落下事故が起きる危険性をなくしたりといったことを行いました。床が傷んでいるのも気になるので、リフォーム業者にお願いして直そうとしています。

こうした教室の運営は私としても初めてですが、「自分が講師や生徒だったらどう思うだろうか」という視点で、些細なことから改善しています。

引き継ぎ当初は、自分の時間を削ってでもがっつり入り込んで改善したいと思っていたので、2日に一度くらいのペースで英会話教室に足を運んで、体験入学の方の受付対応なども行っています。

- 今後のビジョンを教えてください。
現在のやり方を草加の教室でも展開するため、ホームページ制作に取り組みました。

また、世界に通用する経営者を育てたいという目標があるので、経営者人材の育成に特化したコースを英会話教室内に新しく作りたいと考えています。

- M&Aに挑戦しようとされている方に向けて、アドバイスをお願いします。
私は今回、先方希望金額の600万円で即決できたからこそ、交渉が成立したと思っています。

そういった意味でも、ある程度予算に余裕を持って、「この事業を買うなら、これくらいだろう」と自分で想定する金額より多めでも払うつもりで、交渉に臨むべきだと思います。

もう一つのポイントは、売り手様の譲渡理由を確認すること。今回の売り手様のような「移住」や、経営者が高齢で後継者がいないための「廃業」など、本来は続けたいけれどやむおえない事情で事業譲渡を考えているケースの方が、落とし穴が少なく、引き継ぎ後の事業の成功確率が高いように思います。

直近の業績や目先の損益だけにとらわれずに、案件を探すことをおすすめします。

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■今回ソブリンパートナーズさんが買収した案件はこちら

「【山手線駅徒歩3分】開業8ヶ月黒字化目前の英会話教室」

■ソブリンパートナーズさんが運営している英会話教室はこちら

Englishify イングリッシュファイ

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