2023-12-26

「売上や利益は8掛けや6掛けで考える」カメラ機器のECを買収したM&A経験者のアドバイス

買い手(法人):合同会社峰雪

<中小企業の新規事業を目的としたM&A・買収事例>

 

合同会社峰雪は、電動ガンやガスガンといったミリタリー商品を扱うEC事業を手掛けています。売上の低下により新しいビジネスを探す中で、代表の古賀さんが目を付けたのはニッチなカメラ機材を扱うEC事業でした。

その理由は、顧客のほとんどが30~50代の男性で、既存のECと重なっていたから。リンクを置くことで、それぞれの商品に誘導し合うことも可能だと考えたのです。興味を持ち交渉に臨んだところ、約480万円で事業の購入に成功しました。

防衛省海上自衛隊員からの起業という異質なキャリア、EC事業で取り扱うものを“ニッチ商品に絞る”理由、M&Aの売り手側と買い手側がそれぞれ心掛けるべきことについて、古賀さんに伺いました。

【ミリタリー商品のECの売上が伸び悩み、新たな事業の柱を作るべくM&Aに挑戦】

- まずは、会社立ち上げの経緯や事業内容から教えてください。
5年ほど防衛省海上自衛隊で勤めていましたが、昇進することが難しいとわかったため、それなら自分で事業をしようと起業に踏み切りました。

事業は、創業当初から不動産賃貸業とEC事業を手掛けています。大学時代に中国から商品を輸入販売する事業をしていたので、ノウハウは持っていました。

株式投資などもしており、2000万円ほどの資金があったので、それを元手に事業を始めました。今年で9年目になります。

- どんな商品を扱うECを運営されていますか。
電動ガンやガスガンといったミリタリー商品です。客単価が1万円前後で競合も少なく、サバイバルゲーム好きのファンから好まれる商品で、これまでは順調に売上を伸ばしてきました。

ただ、今年は売上が10%ほど下がる見込みで。こうしたEC事業の伸び悩みもあったからこそ、M&Aで新しい事業を買うことに踏み切りました。

実は、今回のカメラ機材EC事業をM&Aする前に、レンタルスペースも2か所M&Aしていました。ただ、OEMで商品を作るための運転資金を賄う必要が出てきたため、そのうち1か所はすでに売却しました。

- 案件を探すにあたって、どのような選定基準を持っていましたか。
一番は、EC事業もしくは不動産賃貸業に関連するものです。レンタルスペースをM&Aしたのも、「不動産賃貸業の横展開」という考えからだったので。

なぜなら、Amazonで行うECビジネスにおいては広告を運用して購入に繋げるノウハウを確立していますし、不動産賃貸業に関してもポータルサイトで目を惹く写真の載せ方をわかっているなど、長年手掛けてきた事業ならすでにノウハウがあり、勝ち筋を理解しているからです。

- 改めて、今回購入した案件の概要を教えてください。
カメラ機材専門のECサイトです。2013年から運営を始められて、プロ向け機材と一般顧客向けの小型機材を中心に販売していて、自社ECとAmazonで販売している他に、業者への卸販売も行っています。

具体的に説明すると、GoProやドローンのカメラ部分にフィルターを付けることで、映画みたいに横長にしたり、霧がかかっていても晴れてくっきり見えるように画質を良くしたりといったことができる、カメラのフィルムのような商品です。

海外メーカー2社の日本における独占販売権も保有していて、売上は約130万円、営業利益は20万円ほど。ニッチな商材を販売しているので、リピート購入をするファンも多く、全体の4割ほどが法人や個人事業主からの注文です。

自社ECサイトはshopifyを利用していて、直接流入が4割、リスティング流入が4割、SNS流入が2割程度で、広告費は月30万円ほどでした。



(販売しているミリタリーグッズ)

【ニッチ商品は目的来店型の顧客が多いため、導線を整備すれば「売れる」】

- この案件のどんなところに魅力を感じましたか。
一番は、今運営しているEC事業とのターゲット層の重なりです。EC事業の顧客のほとんどが30~50代の男性ですが、今回のカメラ機材専門ECの顧客も40~60代の男性がメインということだったので。

たとえば、今展開している商品の隣にカメラ機材の導線を引けば、興味を持ってもらえる可能性もあると思いました。

- 交渉はどのように進みましたか。
まず最初に、売上データとAmazonの出品ページを共有いただきました。海外メーカー2社の独占販売権を持っていたこともあり、すでにAmazonのレビューが200くらい付いており、評価も高いものでした。

これはブランドとして強いなと。私はカメラ機材の知識がないものの、「プロダクトが良ければ勝てる」と確信して、面談の申し込みを行いました。

売り手様は隣の県に住んでいたので、私から訪ねて面談を実施しました。

その場では、商品の説明や引き継ぎに向けた具体的な話がメインでした。正直言って、商品は専門的で難しく、その場で説明していただいただけで完全には理解できなかったのですが、ECでものを売るノウハウは持っているので大丈夫だと思いました。

- 「売れる」商品のポイントはありますか。
私は、ニッチなものしか扱わないと決めています。大衆向けの商品は避けて、ひたすらに狭いフィールドに立とうと。レッドオーシャンで戦うノウハウは、持っていませんから。

それに、ニッチな商品を販売しているECに来店される方は「あの商品を購入したい」という明確な目的を持って来店される方が多いので、ターゲットの方に刺さるキーワードをページにしっかりと盛り込めば、購入に繋げやすいからです。

- 譲渡金額の交渉は行いましたか。
していません。売り手様が提示していた約480万円で購入しました。

実は今回の案件は、当初2倍ほどの金額で売りに出されていたもので。当時から案件を見かけたことはあって興味を持っていたので、今回半額に値下げされたタイミングで購入に踏み切ったのです。

そうした経緯もあったので、これ以上の値下げは厳しいだろうと思い、金額交渉は行っていません。



(買収した事業で扱っている商品①)

【売り手側の目線に立つと、「買い手がお得感を感じる」金額設定が大事】

- 無事にM&Aが成立して、引き継ぎ以降はどのような状況ですか。
海外メーカーとの引き継ぎや、自社サイトのサーバー移行に多少時間は掛かったものの、大きなトラブルは起きていません。

現在は引き継いで2~3週間ほどですが、Amazonでは毎日平均2~3個が売れています。一方で自社サイトは2~3日に1個の売れ行きです。

手数料を取られることを考えるとAmazon頼みでは厳しいので、すでに2,000人以上が登録しているメルマガなどを活用しながら、今後は自社サイトの販促を強化していきたいです。

サイト運営に割く時間は1日1時間で、予想としてはこのままいくと年間200~300万円の営業利益を見込んでいますが、ニッチな商品ゆえにパイも限られていて、いつか取り尽くしてしまうと思うので、あと1~2個はECを運営したいと考えています。

- 今後M&Aをお考えの方に、アドバイスをいただけますか。
数字や相手から出された情報を鵜呑みにしない姿勢は、持っておいた方がいいと思います。

というのも、以前無人販売所をM&Aしたとき、事前に売り手様からいただいた売上データは黒字だったにもかかわらず、引き継ぎ後からはずっと赤字のことがありました。もしかしたら、売り手様がデータを粉飾していた可能性もあるのかなと。それは、手痛い失敗となりました。

もちろん、「そのデータが本当なのか」を見極められたらベストですが、100%それができるかというと難しいので、しっかりと確認はした上で、「相手から提示された数字は8掛けや6掛けで考えてみて、それでも購入したいかを考える」など、買い手自身が一度立ち止まることも必要だと思います。

M&Aの売り手側も買い手側も経験していますが、早期に成約するコツは「買い手がお得感を感じるかどうか」だと思っています。だからこそ、売り手側に立ったときは、あえて本来の価値より少し低めの価格で提示しますし、買い手側に立ったときには適正価格になるまで待つようにしています。

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■今回峰雪さんが買収した案件はこちらら

「【最終値下】カメラ機材EC事業 顧客リスト3200名、独占販売権利、営業利益450万円」

■峰雪さんが現在運営している事業はこちら

カメラスタビライザー.com

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