M&Aのアドバイザリー契約とは|専任・非専任の違いと契約書の確認項目
M&Aのアドバイザリー契約とは何かを、契約書の項目に沿って解説します。専任契約と非専任契約の違い、テール条項や直接交渉の禁止の意味、中小M&Aガイドラインが示す契約期間と中途解約の目安まで、署名前に確認したい点を整理しました。
M&Aを専門家に頼もうと調べ始めると、最初に出てくるのがアドバイザリー契約です。ただ、契約書を前にして「どこまでやってもらえるのか」「途中でやめられるのか」がわからないまま押印してしまう方は少なくありません。
この契約は、相手探しから成約まで、一定の期間にわたって支援を受けるための契約です。契約期間や中途解約の条件も定められるため、業務の範囲・報酬の決まり方・やめるときの条件が書面にどう書かれているかで、その後の進み方が大きく変わります。
この記事では、アドバイザリー契約とは何かから、専任契約と非専任契約の違い、契約書に書かれる項目、そして契約前に必ず確認しておきたい点までを整理します。はじめて依頼する売り手・買い手の方が、契約書を自分で読めるようになることを目指した内容です。
M&Aのアドバイザリー契約とは|業務委託契約の一種
まず、この契約が何を指すのか、似た契約とどう違うのかを整理します。
アドバイザリー契約とは何か
M&Aにおけるアドバイザリー契約とは、M&Aの仲介会社やアドバイザリー会社と結ぶ「業務委託契約」です。業務委託契約とは、自社の業務の一部を外部の第三者に任せる契約を指します。
この契約を結ぶと、相手探しから条件交渉、クロージングまでのサポートを受けられます。何をどこまで任せるかは会社ごとに違うため、契約書に書かれた業務の範囲がそのままサービスの中身になります。
なお、アドバイザリー契約という言葉はM&Aに限ったものではありません。経営顧問やITの支援など、外部の専門家に助言を求める場面で幅広く使われます。この記事ではM&Aの場面に絞って解説します。
「アドバイサリー契約」と表記されることもありますが、指しているものは同じです。
業務委託契約・顧問契約・コンサルティング契約との違い
アドバイザリー契約は業務委託契約の一種なので、業務委託契約と対立する概念ではありません。顧問契約やコンサルティング契約とも重なる部分があり、名前だけで中身は決まりません。
| アドバイザリー契約 | 顧問契約 | コンサルティング契約 | |
|---|---|---|---|
| 目的 | 特定の取引(M&A)を成立させる | 継続的に相談に応じる | 課題の分析と解決策の提示 |
| 期間 | 契約ごとに定める(専任条項を置く場合はガイドラインの目安あり) | 期間を定めて自動更新 | 案件ごと |
| 報酬 | 着手金+成功報酬が中心 | 月額の定額が中心 | 月額または案件ごとの定額 |
| 成果との関係 | 成約すると報酬が跳ね上がる | 成果とは連動しないことが多い | 成果物(報告書など)に対して払う |
大きく異なる点は報酬の決まり方です。顧問契約やコンサルティング契約が「時間や成果物に対して払う」のに対し、M&Aのアドバイザリー契約は成約したときにまとまった金額を払うという形態が多くみられます。
そのため契約書を読むときは、どの時点で、いくらの支払い義務が生まれるのかを最初に確認してください。
なお各種手数料に関しては「M&Aの成功報酬とは?」の記事でも詳しく解説しています。
誰と結ぶのか|仲介会社とアドバイザリー会社で立場が変わる
同じアドバイザリー契約でも、相手が仲介会社かアドバイザリー会社かで立場が変わります。
- 仲介会社:売り手と買い手の双方と契約し、双方の意向を把握しながらM&Aの成立に向けて助言・調整を行います。双方から依頼を受けるため、どちらか一方の利益だけを優先して扱うことはできません
- アドバイザリー会社(FA):売り手か買い手の一方と契約し、その依頼者の意向を踏まえて、有利な条件でのM&A成立を目指して支援します
仲介会社と契約する場合は、相手方も同じ会社から支援を受けることになります。どちらか一方の利益だけを優先する立場ではないため、価格やその他の条件についてどこまで交渉を支援してもらえるのかを契約時に確認しておくと安心です。
どちらに頼むかの選び方はFAと仲介の違いの記事、報酬体系の違いはM&Aの仲介手数料の記事で詳しく解説しています。
専任契約と非専任契約|どちらを選ぶか
契約方式には専任契約と非専任契約の2つがあります。ここは後から変えにくい部分なので、違いを理解してから決めてください。
専任契約とは
専任契約とは、1社の仲介会社・アドバイザリー会社とだけ契約する方式です。契約書には、他の会社への依頼などを一定の範囲で制限する専任条項が入ります。何がどこまで制限されるかは条項の書き方によって変わります。
中小M&Aガイドラインは、専任条項について対象範囲をできるかぎり限定すること、そして妨げる合理的な理由がなければ他の支援機関にセカンド・オピニオンを求めることを認めることを求めています。
依頼を受けた側からすると、成約すれば報酬が確実に入るため、工数をかけて相手を探す判断がしやすくなります。担当者が動きやすいことが専任契約の利点です。
窓口がひとつで済むので、経営者の負担も軽くなり、また情報を渡す相手が1社だけであるため、情報が漏れるリスクを抑えやすいという面もあります。
一方で、その1社が相手を見つけられなければ時間だけが過ぎます。その間は他社に頼れません。
中小企業庁の中小M&Aガイドラインは、専任条項を設ける場合について契約期間を最長でも6か月〜1年以内を目安として定めるべきとしています。これより長い期間を提示されたときは、理由を確認してください。
非専任契約とは
非専任契約とは、依頼先を1社に限定せず、必要に応じて複数の会社へ依頼できる方式です。それぞれの会社が持つルートを使えるため、候補先を探す経路を広げられます。
ただし、自社の情報を渡す先が増えるぶん、情報が漏れるリスクが高まります。同じ買い手を複数の会社から紹介されることもあり、そのときにどの会社の紹介として扱うかで揉めることがあります。
各社の担当者とやりとりする手間もかかります。本業と並行して進める中小企業の経営者にとっては、この工数が想像以上の負担になることがあります。
専任と非専任の比較
| 専任契約 | 非専任契約 | |
|---|---|---|
| 契約する会社 | 1社のみ | 複数社 |
| 相手が見つかる速さ | その1社のルート次第 | 複数ルートから探せる |
| 担当者の動き | 成約すれば報酬が入るため工数をかけやすい | 各社の対応方針による |
| 情報漏えいのリスク | 渡す先が1社なので抑えやすい | 渡す先が増えるぶん高まる |
| 経営者の手間 | 窓口が1つで済む | 各社とのやりとりが発生 |
どちらが正しいという話ではありません。1社に窓口を集約して支援を受けるのが専任、手間をかけて選択肢を広げるのが非専任です。
小規模なM&Aではどちらを選ぶか
譲渡価格が数百万円から数千万円の取引では、専任契約を提示されることがあります。報酬の総額が小さいぶん、独占でなければ工数をかけにくいためです。
そのうえで、専任にするのであれば契約期間・中途解約の条件・契約が終わったあとの扱いの3点を必ず確認してください。この3つは次の章で扱う契約書の項目そのものです。
相談先の種類ごとの特徴はM&Aの相談先の記事でまとめています。
アドバイザリー契約書に書かれる項目
ここからが本題です。アドバイザリー契約書は会社ごとに書式が違いますが、入っている項目はほぼ共通しています。ひとつずつ見ていきます。
業務の範囲
最初に書かれるのが、何をどこまでやってもらえるのかです。契約書では「委託業務」「本件業務」といった見出しで、次のような内容が並びます。
- M&Aの進行管理とスケジュールの作成
- 候補先の選定と打診
- 企業概要書(IM)など資料作成の支援
- 企業価値の算定
- 面談の日程調整と同席
- 条件交渉に関する助言
- デューデリジェンスの手続き支援
- 契約書のやりとりの調整とクロージングの支援(法的な内容の審査は弁護士が担当します)
ここに具体的に書かれていない業務は、契約の対象に含まれるかどうかがあいまいになります。「その他本件M&Aに付随する業務」といった包括的な書き方がされていることもあるので、注意が必要です。たとえば企業価値の算定が入っていなければ、別料金になったり、そもそも対応してもらえなかったりします。
自社がいちばん任せたい部分が範囲に入っているかは、契約前に口頭で確認したうえで書面に足してもらってください。
契約期間と更新
契約期間は契約ごとに異なり、満了時に自動更新となる条項が入っている場合があります。なお中小M&Aガイドラインは、専任条項を置く場合の契約期間について最長でも6か月〜1年以内を目安として定めるべきとしています。
自動更新の条項は、期間満了の○日前までに申し出がなければ契約を延長するという形で書かれます。申し出の期限は契約ごとに違うので、延長を断るときの手続きとあわせて確認しておきましょう。
あわせて見ておきたいのが、専任条項そのものに期間が書かれているかどうかです。専任条項に「本契約の締結日から○か月間」と期間が定められている場合、契約の終期が延長されても、専任の縛りはその期間で終わります。逆に専任条項に期間の定めがなければ、契約が続くかぎり縛りも続くことになります。
つまり「契約期間」と「専任でいる期間」は別物として書かれていることがあります。専任契約を結ぶときは、この2つを分けて確認してください。
契約の延長にあわせて専任条項の期間も延びる契約であれば、他社へ依頼できない期間も延びることになります。契約期間だけでなく、専任条項の期間が延長時にどう扱われるかをセットで確認してください。
報酬の種類と支払うタイミング
報酬はいくらかよりも、いつ発生するかのほうが契約書の読みどころです。名称も発生の条件も会社によって異なりますが、代表的には次のような報酬があります。
- 相談料:正式に依頼する前の相談時に発生します
- 着手金:契約を結んで業務を始めるときに発生します
- 月額報酬(リテイナーフィー):契約している間、毎月発生します
- 中間金:基本合意書を結んだ時点で発生します
- 成功報酬:最終契約を結んだとき、または決済が終わったときに発生します
相談料・着手金・中間金を設けず、成功報酬のみとする会社もあります。ただし料金体系だけで総額は判断できないため、最低手数料と報酬の基準額まで確認してください。
成功報酬の計算にはレーマン方式が使われるのが一般的です。金額の相場や計算方法はM&Aの手数料・成功報酬の相場の記事でまとめています。
契約書で確認したいのは、成功報酬が発生する時点・最低手数料(ミニマムフィー)の有無・報酬の基準になる金額の3点です。
直接交渉の禁止
多くの契約書に入っているのが直接交渉の禁止です。紹介を受けた相手と、仲介会社・アドバイザリー会社を通さずに交渉することを禁じる条項を指します。
紹介を受けた相手との連絡や交渉について、仲介会社・アドバイザリー会社を通すことを求められる場合があります。紹介した相手と当事者だけで話をまとめられると報酬が回収できなくなるために置かれている条項です。
会社によっては、書面で承諾を得れば直接のやりとりを認める場合もあります。どのような接触が制限されるのか、担当者の承諾があれば直接連絡できるのかを契約書で確認しておきましょう。
中小M&Aガイドラインは、直接交渉の制限について対象となる候補先・制限される交渉の目的・制限する期間を限定すべきとしています。原則として、支援機関が関与・接触して紹介した候補先との、M&Aに関する交渉について、契約が終了するまでの間に限る、という考え方です。
テール条項|契約が終わったあとの成功報酬
テール条項は見落とされやすいため注意が必要です。契約が終わったあとでも、一定の期間内に契約で定めた相手とM&Aが成立した場合などに、成功報酬の支払い義務が生じることを定めた条項を指します。
たとえば「本契約の終了後2年以内に、本契約期間中に紹介を受けた相手方とM&Aが成立した場合は、成功報酬を支払う」といった書き方になります。
この条項がある理由は、契約を切ってから当事者どうしで成約するという抜け道を防ぐためで、趣旨としては不合理なものではありません。
ただし、期間が長すぎないか、対象になる相手の範囲が広すぎないかは確認してください。中小M&Aガイドラインは、このうち期間と対象について具体的な目安を示しています。
- 期間:最長でも2年〜3年以内が目安。これを超える期間を提示されたら理由を確認する
- 対象:支援機関が関与・接触し、ネームクリア(譲り渡し側の社名などの開示)が行われるなど、実際に紹介された相手に限定すべきとされている
- 証拠:誰を紹介されたかが書面で特定されているか(これはガイドラインの目安ではなく、実務上あわせて確認したい点です)
つまり、ロングリストに名前が載っていただけの会社や、社名を伏せた資料を見せただけの会社は、本来テール条項の対象になりません。
対象が書面で特定されていないと、あとから「あの相手もうちの紹介だ」と主張される余地が残ります。紹介先の一覧を書面で残してもらうように依頼しておくと安全です。
再委託の禁止
再委託の禁止とは、依頼を受けた会社が、こちらの了承なしに業務を別の第三者へ回すことを禁じる条項です。
再委託が自由に行われると、自社の情報を渡した覚えのない相手にまで情報が広がるため、原則禁止としたうえで例外を定めるのが実務的です。
なお、法務や財務の調査については、依頼者自身が弁護士や公認会計士、税理士と別途契約して進めるのが通常です。これは仲介会社・アドバイザリー会社からの再委託ではないので、混同しないよう注意してください。
再委託を認める場合は、例外として条件と責任の所在を書いておきます。
乙は、委託業務の全部または一部を第三者に再委託しようとするときは、あらかじめ甲の書面による承認を得るものとする。承認を得て再委託をする場合、乙は再委託先に対して本契約に定める義務と同等以上の義務を負わせるものとし、再委託先の行為について一切の責任を負うものとする。
ポイントは「再委託先の行為について責任を負う」という一文です。これがない場合には、情報が漏れたときに責任の所在があいまいになります。
秘密保持
アドバイザリー契約とは別に、秘密保持契約(NDA)を結ぶことが一般的です。アドバイザリー契約の中に秘密保持条項として組み込まれることもあります。
M&Aでは決算書や顧客の情報まで渡すことになります。従業員や取引先に知られると、成約前に事業そのものが揺らぐため、この部分は形式的に流さないでください。
確認したいのは、秘密情報の範囲・第三者へ開示できる例外・契約が終わったあとも義務が続く期間の3点です。詳しくは秘密保持契約(NDA)の記事で解説しています。
中途解約と契約解除
専任契約では、途中でやめられるかどうかがとくに確認しておきたい項目です。
1社に任せたまま相手が見つからず、時間だけが過ぎることは実際に起こります。早く譲渡したい売り手にとって、解約できない期間が長いのは大きな負担です。
- どんな場合に解約できるか(いつでも可能か、正当な理由が必要か)
- 解約を申し出てから何日で効力が生じるか
- 違約金や、それまでの実費の精算が発生するか
- 解約後にテール条項が残るか、残るなら何年か
中途解約はできても、目安の上限にあたる3年のテール条項が残る場合、その期間内に対象となる相手と成約すると成功報酬が発生する可能性が残ります。専任条項のように行動が制限されるわけではありませんが、解約したあとにどんな負担が残るかという観点で、両方をセットで確認しましょう。
中小M&Aガイドラインは、依頼者が任意の時点で中途解約できることを明記する条項を設けることが望ましいとしています。解除条項が見当たらない、あるいは会社側からしか解除できない書き方になっている場合は、その場で確認してください。
契約前に確認しておくこと
項目を押さえたところで、署名する前に必ず目を通しておきたい点を整理します。
中小M&Aガイドラインが示している目安と照らす
中小企業庁は、M&Aの支援機関が守るべき行動として中小M&Aガイドライン (2024年8月・第3版)を公表しています。契約条項についても目安が示されているので、提示された契約書と照らし合わせてみてください。
- 専任条項を設ける場合、契約期間は最長でも6か月〜1年以内を目安とする
- テール期間は最長でも2年〜3年以内を目安とする
- テール条項の対象は、ネームクリアが行われ実際に紹介された相手に限定する
- 依頼者が任意の時点で中途解約できることを明記する条項を設けることが望ましいとされている
多くのM&A支援機関がこのガイドラインの遵守を宣言しています。目安から外れた条件が書かれている場合は、その理由を質問する材料になります。
業務の範囲があいまいになっていないか
「M&Aの成約に向けた助言および支援」とだけ書かれている契約書もあります。この書き方だと、どこまでやってもらえるのかも、何が別料金になるのかもが読み取れません。
自社がいちばん不安な工程を具体的に挙げて、それが業務の範囲に入っているかを口頭で確認し、書面に反映してもらうのが確実です。
報酬の基準になる金額が何か
成功報酬をレーマン方式で計算する場合、何を基準額にするかで支払額が大きく変わります。
- 譲渡対価を基準にする:株式譲渡であれば株主が受け取る株式の対価、事業譲渡の場合には会社が受け取る譲渡代金が基準になります
- 移動総資産を基準にする:譲渡対価に負債などを加えた金額が基準になるため、譲渡対価を基準にする場合より成功報酬が高くなることがあります
- 企業価値を基準にする会社もあります。移動総資産とは算定の範囲が同じではないので、定義を確認してください
負債を抱えた会社では、この違いだけで報酬が数倍になることもあります。基準額の定義と、最低手数料が設定されているかを、契約前に必ず確認してください。
計算の仕組みはレーマン方式の記事で具体例つきで解説しています。
テール条項の期間と対象
前章で触れたとおり、テール条項は契約が終わったあとも効きます。
期間が2〜3年以内で、対象が「実際に紹介を受けた相手」に限定されていれば、ガイドラインの目安の範囲内です。期間がそれより長い、対象が特定されていない場合などは、理由を確認したうえで交渉の余地がないか確認しましょう。
秘密保持契約は先に結ぶ
順番として、秘密保持契約を結んでから自社の情報を出すことが基本です。
相談の段階で決算書を渡してしまい、契約に至らなかった相手に情報だけが残るという事態は避けたいところです。相談だけなら社名を伏せた概要でも成立します。
依頼先を選んで契約するまでの流れ
契約に至るまでの手順を整理します。アドバイザリー契約は、支援を正式に依頼する段階で結ぶ契約です。ここでの判断がその後の進め方を左右します。
M&Aの目的と方向性を決める
依頼先を探す前に、何のために売る(買う)のかを言葉にしておきます。
従業員の雇用を守りたいのか、価格を最優先するのか、事業を残すことが目的なのか。ここがあいまいなまま任せると、提案された条件が良いのか悪いのか自分で判断できないことになります。
専門家はあくまで支援する立場です。丸投げではなく、第三者の意見を取り入れるという姿勢で臨むと、契約書の読み方も変わってきます。
依頼先を選ぶ
選ぶときには、次の3点を確認しましょう。
- 専門分野:自社の業種や規模での支援実績があるか
- 報酬体系:基準額の定義と最低手数料が明示されているか
- 担当者:質問に対して、できないことをできないと言うか
報酬の説明を求めたときに具体的な金額の例を出さない会社は、契約後も同じ対応になりがちです。契約前の質問への答え方は、そのまま相性の判断材料になります。
相談先には仲介会社のほかに、金融機関・公的機関・士業などの選択肢もあります。それぞれの特徴はM&Aの相談先6種類の記事で比較しています。
秘密保持契約とアドバイザリー契約を結ぶ
依頼先が決まったら、秘密保持契約を先に結び、そのうえでアドバイザリー契約を結ぶことが基本的な順番です。
アドバイザリー契約を結ぶと、そこから相手探しが始まります。業務の範囲・報酬の発生時点・中途解約・テール条項の4点を、契約時にもう一度読み返してください。
相手探しの進め方はM&Aのソーシングの記事で解説しています。
アドバイザリー契約を結ばない選択肢
すべてのM&Aで専門家との契約が必要なわけではありません。規模によっては、契約を結ばずに進める方法もあります。
プラットフォームであれば自身で相手を探せる
M&Aのマッチングプラットフォームは、売り手と買い手が直接やりとりできる仕組みです。アドバイザリー契約を結ばなくても、案件を見て打診するところまで自分で進められます。
仲介会社に依頼すると、成功報酬に最低手数料が設定されていることが多く、譲渡価格が数百万円の取引では費用の比率が高くなります。
国内最大級のM&A・事業承継マッチングプラットフォーム「TRANBI(トランビ)」では、売り手は案件の掲載も交渉も無料で、買い手は月額プランのみで直接交渉ができます。
必要なプロセスだけ専門家に頼む
相手探しはプラットフォームで行い、契約書の作成やレビューだけを専門家に依頼するという組み合わせもあります。
この場合は包括的なアドバイザリー契約ではなく、個別の業務についてのスポット契約になります。テール条項や直接交渉の禁止といった条項が置かれないこともありますが、契約書ごとに違うので記載を確認してください。
ただし、最終契約の条項は取引後の責任に直結するため、最終契約の内容確認まで自力で済ませようとしない方が安全です。
アドバイザリー契約に関するよくある質問
アドバイザリー契約について、よく寄せられる疑問にお答えします。
アドバイザリー契約と仲介契約は違うものですか?
契約の形はどちらも業務委託契約で、違うのは相手の立場です。
仲介会社は売り手と買い手の双方と契約し、双方の意向を把握しながら成立に向けて調整します。アドバイザリー会社(FA)は一方とだけ契約し、その依頼者にとって有利な条件での成立を目指して支援します。会社によって契約書の名称は「仲介契約」「業務委託契約書」などさまざまですが、中身を読んで判断してください。
専任契約の途中で解約できますか?
契約書の解除条項によります。
いつでも書面で申し出れば解約できるとする契約もあれば、正当な理由を必要とする契約もあります。解約した場合でも支払い済みの着手金が返らない契約もあります。返還の可否と実費の精算、そしてテール条項が解約後も残るかを、あわせて確認してください。
契約期間はどのくらいが一般的ですか?
契約ごとに異なりますが、中小M&Aガイドラインは最長でも6か月〜1年以内を目安としています。
この目安は、専任条項を置く場合について示されたものです。自動更新の条項が入っている場合は、更新を断る手続きと期限もあわせて確認しておきましょう。
契約書のひな形はどこで手に入りますか?
実務では、依頼先の会社が用意した書式を使うのが一般的です。
ひな形を探すよりも、提示された契約書を読めるようになるほうが実務的です。この記事の「アドバイザリー契約書に書かれる項目」で挙げた項目を手元に置いて、ひとつずつ照らし合わせてみてください。金額の大きい取引では、署名前に弁護士のレビューを受けることをおすすめします。
契約が終わったあとに成約したら報酬は発生しますか?
テール条項があり、その条項で定めた期間・相手方などの条件に当てはまる場合は発生します。
「契約終了後○年以内に、契約期間中に紹介を受けた相手と成約した場合」といった条件で、成功報酬の支払い義務が残ります。中小M&Aガイドラインは、テール期間を最長でも2年〜3年以内を目安とし、対象は実際に紹介された相手に限定すべきとしています。
複数の会社に相談だけしてもいいですか?
他社との専任契約などによる制約がなければ、契約前に複数の会社へ相談して比較できます。
専任条項が効くのは契約を結んだあとです。ただし相談の段階でも、渡した情報は相手の手元に残ります。社名や詳細な数字を出すのは、秘密保持契約を結んでからにしましょう。
まとめ|アドバイザリー契約は「範囲・報酬・出口」で読む
M&Aのアドバイザリー契約は、仲介会社やアドバイザリー会社と結ぶ業務委託契約です。名前は各社で異なりますが、書かれている項目はおおむね共通しています。
読むときの軸は3つです。業務の範囲は、自社がいちばん任せたい工程が入っているか。報酬は、金額よりも「いつ支払い義務が生まれるか」と「基準額が何か」。そして出口は、途中でやめられるか、やめたあとにテール条項がどれだけ残るか。
専任契約と非専任契約は、どちらが正しいというものではありません。1社に任せる代わりに動いてもらうのが専任、手間をかけて選択肢を広げるのが非専任です。小規模なM&Aほど専任を提示されることがあるので、そのときは解約とテール条項の条件をよく読んでおきましょう。
- アドバイザリー契約は業務委託契約の一種。任せたい業務が契約に含まれているかを確認する
- 報酬は発生する時点と基準額で読む。金額の相場はレーマン方式の記事へ
- テール条項は契約終了後も効く。中小M&Aガイドラインの目安は2年〜3年以内、対象は実際に紹介された相手に限定
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