サーチファンドとは?仕組み・サーチャーの年収・PEファンドとの違いを解説

サーチファンドとは?仕組み・サーチャーの年収・PEファンドとの違いを解説

サーチファンドとは、経営者になりたい個人(サーチャー)が投資家の出資を受けて買収先を探し、経営者として企業価値を高める事業承継の手法です。仕組み、サーチャーの年収・報酬、メリット、PEファンド・VCとの違い、サーチャーになるには、失敗例までわかりやすく解説します。

目次

「いつか会社の経営者になりたい」と考える人にとって、近年注目されている選択肢のひとつが「サーチファンド」です。しかし、「サーチファンドとは何か」「サーチャーの年収はどのくらいか」「PEファンドと何が違うのか」といった点は、まだ十分に知られていません。

サーチファンドとは、簡単にいえば、経営者になりたい個人(サーチャー)が、投資家の出資を受けながら買収先企業を自ら探し、経営者として企業価値を高めていく事業承継の手法です。アメリカで生まれ、日本でも事業承継の担い手として広がりつつあります。

本記事では、サーチファンドの意味や仕組みから、サーチャーの年収・報酬、メリット、PEファンド・VC・事業承継ファンドとの違い、サーチャーになる方法、失敗・問題点までを、わかりやすく解説します。

サーチファンドとは

サーチファンドは、アメリカで生まれた事業承継の手法で、近年は日本でも注目されています。まずは、その意味と「サーチャー」という主役の存在、成り立ちを整理します。

サーチファンドとは(簡単に)

サーチファンドとは、会社を買収して経営者になりたい個人が、投資家の出資を受けながら、自力で買収対象企業を探す(サーチする)仕組みです。

買収後は、その個人が経営者となって企業価値の向上に取り組み、最終的に企業を売却して得られる利益(売却益)によって、投資家に資金を還元します。「人(経営者候補)」を起点に、出資・買収・経営・売却までが一連の流れになっているのが特徴です。

サーチャーとは

経営者を目指して買収先を探す個人のことを、サーチファンドでは「サーチャー(Searcher)」と呼びます。サーチャーは、サーチファンドの主役ともいえる存在です。

サーチャーは、投資家の出資を受けて買収先を探し、買収後はその企業の経営者に就任します。経営経験が乏しくても挑戦できるよう、多くのサーチファンドでは、経営候補者を全面的に支援する仕組みが用意されています。こうしたサーチャーの活動を支援する組織は「サーチファンドアクセラレーター」と呼ばれます。

アメリカで生まれ、日本でも注目されている

サーチファンドは、1980年代にアメリカのビジネススクールで生まれた事業承継モデルとされています。もともとは、ビジネススクールの卒業生や経営に意欲のある若者に対し、経営にチャレンジできる枠組みを提供しようとしたのが始まりです。

日本でも近年、事業承継を目的とした中小企業のM&Aが増えています。後継者不在の企業が増えるなかで、サーチファンドは新たな事業承継の担い手として注目されており、サーチャーを目指す人やサーチファンドに投資する企業も増えつつあります。

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サーチファンドの仕組み

サーチファンドは、「サーチャーが買収先を探す」段階から「企業価値を高めて売却する」段階まで、いくつかのステップで進みます。出資が2段階に分かれている点が、大きな特徴です。

サーチ活動と2段階の出資

サーチファンドは、経営者候補(サーチャー)が存在して初めて動き出す、「人」が軸の事業承継モデルです。サーチャーは、サーチファンド投資会社に登録したうえで、買収先の企業を探していきます。

サーチ活動には時間も費用もかかるため、サーチャーは投資家に「サーチ活動計画書」を提出してプレゼンし、まず活動資金(サーチフィー)の出資を受けます。そして買収先を見つけた後に、改めて買収費用の追加出資を依頼します。このように、出資が2段階に分かれているのがサーチファンドの特徴です。日本ではまだ事例が多くありませんが、買収の規模は1件あたり数億円になるケースもあるとされています。

企業価値を高めてエグジットする

投資家の最終的な目的は、サーチャーに対象企業の価値を高めてもらい、企業を売却してその売却益(値上がり益)を得ることです。投資家が投資資金を回収する行為はエグジット(出口)と呼ばれます。

出資を受けたサーチャーは、対象企業の経営者に就任し、おおむね5〜7年ほどかけて企業価値の向上に取り組みます。エグジットの方法には、第三者への売却、IPO(株式上場)、MBO(経営陣による買収)などがあります。サーチャー自身が活動期間中に受け取る給与や成功報酬については、次の章で詳しく解説します。

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サーチャーの年収・報酬

サーチャーを目指すうえで気になるのが、年収や報酬の仕組みです。サーチャーの収入は、「サーチ活動中」「経営者就任後」「エグジット時」の3つの段階に分けて考えると、全体像がつかみやすくなります。

①サーチ活動中の収入(サーチフィー)

買収先を探すサーチ活動の期間中も、サーチャーは無収入というわけではありません。多くのサーチファンドでは、活動資金(サーチフィー)として一定の資金が支給され、その一部が当面の生活費にあてられるケースもあります。

ただし、この段階で支給される金額は限定的で、主眼は「収入を得る」ことよりも「買収先を見つける」ことにあります。サーチ活動の期間は半年〜2年程度が目安とされています。

②経営者就任後の年収(給与)

買収先の経営者に就任した後、企業価値の向上に取り組む期間(おおむね5〜7年)にわたって、サーチャーは投資家から給与を受け取ります

年収の目安は1,000万〜1,500万円前後とされることもありますが、これはあくまで一例です。実際の金額は、サーチファンドの方針や契約内容、対象企業の規模などによって異なります。「経営経験を積みながら収入も得られる」点が、サーチャーという働き方の特徴です。

③エグジット時の成功報酬・ストックオプション

サーチャーの収入で最も大きな意味を持つのが、エグジット(企業売却)に成功した際の成功報酬です。事業を拡大し、企業価値を高めてエグジットを実現できれば、成果に応じた報酬が支払われるのが一般的です。

海外では、金銭の代わりにストックオプション(新株予約権)(自社株をあらかじめ決められた価格で取得できる権利)が付与されるケースも少なくありません。これにより、企業価値の向上がサーチャー自身の利益に直結するため、経営へのモチベーションが高まります。具体的な報酬の設計はサーチファンドによって異なるため、契約前によく確認することが大切です。

サーチファンドを活用するメリット

自分の会社を持つ方法には、「ゼロから起業する」「M&Aで会社を買収する」「サーチファンドを活用する」などがあります。このうちサーチファンドには、次のようなメリットがあります。

経験がなくても経営者を目指せる

組織のなかで出世して経営者になるには、長い年月がかかります。ゼロから起業する方法もありますが、経験が乏しい場合はリスクが大きくなりがちです。

サーチファンドの大きなメリットは、経営経験がなくても、経営者への挑戦がしやすい点です。「やる気や素質はあるが経験が乏しい」という人をサポートする仕組みがあるため、サーチャーは支援を受けながら経験を積み、事業を成長させていけます。

完成されたビジネスを買収できる

もうひとつのメリットは、ゼロから事業を立ち上げる必要がない点です。新規事業の立ち上げには、市場調査・事業計画・商品開発・人材育成など多くの工程が必要で、軌道に乗るまで赤字が続くことも珍しくありません。

サーチファンドでは、すでに事業として成立している会社を買収するため、立ち上げにかかる時間や労力を大きく省けるのが強みです。元オーナーや事業承継の専門家の支援を受けながら、企業価値の向上に集中できます。M&Aによる起業とも近い考え方といえるでしょう。

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PEファンド・VC・事業承継ファンドとの違い

サーチファンドは、PEファンドやVC(ベンチャーキャピタル)、事業承継ファンドと混同されがちです。それぞれの違いを整理しておきましょう。

PEファンドとの違い

PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)は、企業に投資して価値を高め、売却益を得るファンドです。サーチファンドとの大きな違いは、次の2点です。

1つは投資の対象です。PEファンドが主に「企業」を対象とするのに対し、サーチファンドは「個人(サーチャー)」を対象とします。もう1つは出資のタイミングです。PEファンドはファンド組成時に買収資金が出資されるのに対し、サーチファンドは活動資金と買収資金が2段階に分けて出資されます。出資を2段階にすることで、サーチャーは挑戦しやすくなり、投資家もリスクを抑えられます。

VC・事業承継ファンドとの違い

VC(ベンチャーキャピタル)は、主に成長段階のスタートアップに出資し、その成長を支援するファンドです。一方、事業承継ファンドは、後継者不在の企業の株式を取得し、経営支援で価値を高めたうえで再売却する仕組みです。

これらに対し、サーチファンドは「個人を一人前の経営者に育てながら事業を承継する」点に特徴があります。3つのファンドの主な違いを整理すると、以下のとおりです。

項目 サーチファンド PEファンド VC
主な対象 個人(サーチャー) 企業(成熟企業など) スタートアップ
出資の形 2段階(活動資金+買収資金) 組成時にまとめて 成長段階ごと
主眼 経営者を育てて承継 企業価値の向上 成長の支援
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サーチャーになるには

サーチャーになるための決まった資格はありません。ただし、投資家の出資を受けて買収先を探し、経営者になるという性質上、いくつかのステップと準備が必要です。

サーチファンドに登録してサーチ活動を始める

サーチャーになるには、まずサーチファンド投資会社などにサーチャーとして登録し、サーチ活動を始めるのが一般的な流れです。登録後は、買収先を探す資金を得るために、投資家に向けて「サーチ活動計画書」を作成し、プレゼンを行います。

サーチ活動では、仲介会社が自動的に企業を紹介してくれるわけではありません。サーチャー自身が買収先を探し、経営者にアプローチしていく主体的な動きが求められます。

サーチャーに求められる資質・準備

サーチャーには、経営への強い意欲に加え、投資家や売り手を納得させるプレゼン力、自ら動いて買収先を開拓する行動力などが求められます。海外ではビジネススクールの卒業生が多いとされますが、日本では必須条件というわけではありません。

経営経験が乏しくても、サーチファンドアクセラレーターなどの支援を受けながら経験を積めるのが、この仕組みの利点です。一方で、買収先の発掘や投資家へのプレゼンは自力で乗り越える必要があるため、十分な準備が欠かせません。

サーチファンドの失敗・問題点

投資家や専門家のサポートを受けられるとはいえ、サーチファンドが必ず成功するわけではありません。失敗や問題点は、「サーチ活動の段階」と「買収後の経営の段階」の両方で起こりえます。代表的なものを見ておきましょう。

買収先が見つからない

サポートがあっても、活動の主体はあくまでサーチャー自身です。自分にマッチした買収先を、自らの足で探し出さなければなりません。

多くのサーチャーが、「買収先を見つける段階」でつまずくとされています。サーチ活動の期間は半年〜2年程度が目安で、その期間内に買収先が見つからない場合、サーチファンドはいったん打ち切られることもあります。投資家や売り手を納得させられなければ先に進めない点が、サーチファンドの厳しさです。

出資を受けられない

買収先を見つけても、出資を受けられずに終わる可能性もあります。投資家が出資を見送る理由はさまざまですが、ひとつには期待される利回りが低いと判断されるケースがあります。

また、よい買収先を見つけても、サーチャーが投資の魅力や事業の将来性をうまく伝えられなければ、出資につながりにくいといえます。プレゼンのひな型を公開しているサーチファンド投資会社もあるため、しっかり準備して臨むことが大切です。

買収後の経営・統合(PMI)でつまずく

無事に買収できても、そこからが本番です。経営経験の浅いサーチャーにとって、買収後の経営は大きな試練になります。

たとえば、元からいる従業員との信頼関係づくり、既存の取引先との関係維持、投資家との方針のすり合わせなどで、つまずくことがあります。こうした買収後の統合作業(PMI)がうまくいかないと、想定していた企業価値の向上が実現せず、エグジットにも影響しかねません。サーチャーには、買収先を探す力だけでなく、買収後に組織をまとめ、事業を成長させる経営力も求められます。

サーチファンドに関するよくある質問・FAQ

ここでは、サーチファンドやサーチャーに関してよく寄せられる疑問について、検索されやすい論点を中心に整理して解説します。

Q1. サーチャーの年収はどのくらいですか?

A. 活動期間中にサーチャーが受け取る年収は、目安として1,000万〜1,500万円前後とされることがありますが、サーチファンドの方針や契約内容によって異なります。
これに加えて、企業価値を高めてエグジット(売却)に成功した場合には、成果に応じた成功報酬が支払われるのが一般的です。

Q2. サーチャーになるにはどうすればよいですか?

A. まずサーチファンド投資会社などにサーチャーとして登録し、サーチ活動計画書を作成して投資家にプレゼンするのが一般的な流れです。
決まった資格はありませんが、経営への意欲・プレゼン力・自ら買収先を探す行動力などが求められます。

Q3. サーチファンドとPEファンドの違いは何ですか?

A. 大きな違いは、投資の対象と出資のタイミングです。PEファンドが主に「企業」を対象とし、組成時に資金を出資するのに対し、サーチファンドは「個人(サーチャー)」を対象とし、活動資金と買収資金を2段階で出資します。

Q4. サーチファンドの成功事例はありますか?

A. 日本でも、サーチファンドを活用した事業承継の事例は増えつつあります。具体的な事例は、各サーチファンド投資会社が公表している情報などで確認できます。
ただし、成功の裏には買収先探しや出資交渉の難しさもあるため、事例から成功・失敗の両面を学ぶことが大切です。

Q5. サーチ活動の期間はどのくらいですか?

A. サーチ活動の期間は半年〜2年程度が目安とされています。この期間内に買収先が見つからない場合、サーチファンドがいったん打ち切られることもあります。

まとめ|サーチファンドは経営者になる新たな道

サーチファンドは、資金や経営経験が十分でなくても、投資家の支援を受けながら経営者を目指せる事業承継の手法です。後継者不在の企業が増えるなか、新たな担い手として注目されています。

本記事の要点は、以下のとおりです。

  • サーチファンド=個人(サーチャー)が出資を受けて買収先を探し、経営者になる仕組み
  • 出資は活動資金・買収資金の2段階。エグジットで投資家に還元する
  • サーチャーの年収目安は1,000万〜1,500万円前後(+成功報酬)とされる
  • PE(企業対象)・VC(成長支援)・事業承継ファンドとは性格が異なる
  • 買収先が見つからない・出資を受けられないという失敗も多い

一方で、サーチ活動で買収先が見つからず、途中で挫折するサーチャーが多いのも現実です。「小規模でも自分で事業を運営したい」という志がある人は、自己資金で始めるスモールM&Aも選択肢に入れてみるとよいでしょう。

国内最大級の事業承継・M&Aプラットフォーム「TRANBI(トランビ)」なら、ネットを通じて買収先をリサーチでき、M&Aにかかる費用や時間を大きく抑えられます。経営者への第一歩として、まずは案件を探してみてはいかがでしょうか。

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記事監修: 株式会社トランビ 代表取締役CEO 高橋 聡
【プロフィール】
アスクホールディングス株式会社代表取締役社長、中小企業庁中小M&Aガイドライン作成委員。アクセンチュアを経てアスクホールディングス株式会社を先代から事業承継。中小企業におけるM&A活性化の必要性を痛感しトランビを創業。
著書: 「起業するより会社は買いなさい」サラリーマン・中小企業のためのミニM&Aのススメ
「会社は、廃業せずに売りなさい」後継者不在の問題は、ネットで解決!