M&Aの資金調達はどうする?資金が必要な場面や調達方法を解説

M&Aの資金調達はどうする?資金が必要な場面や調達方法を解説

企業買収を検討する企業が最初に直面する壁が『資金調達』です。資金が少ない場合、どのような方法で資金を確保すればよいのでしょうか?M&Aにおける資金調達の重要性や、代表的な資金調達方法について解説します。

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M&Aにおける資金調達の必要性

M&Aで企業買収を行う際、多くの企業は『資金調達』を行います。自己資金のみでM&Aを進めるケースと比較して、どのような利点があるのでしょうか?

M&Aで資金を必要とする場面は?

M&Aでは、企業の買収費用のほかにさまざまな費用がかかります。大企業でも自己資金以外にも、何らかの手段で資金調達を行っています。以下は、M&Aに必要な費用の一例です。

  • 買収費用
  • M&A仲介会社への手数料
  • 買収調査(デュー・デリジェンス)の費用
  • 各種税金
  • そのほかの経費(M&Aに関する人件費・交通費など)

買収費用に次いで、費用が高額になりやすいのが『M&A仲介会社への手数料』です。M&Aの取引金額に応じた成功報酬のほかに、着手金や中間報酬がかかるケースも珍しくありません。

デュー・デリジェンスの費用は、調査範囲や企業の規模によって異なります。中小企業の場合は、数十万~数百万円と見ておきましょう。

また、事業譲渡で課税対象となる資産(有形固定資産や営業権など)を取得した場合は『消費税』、不動産を直接取得した場合は『不動産取得税』や『登録免許税』が課税されます。

自己資金のみでM&Aを行った場合

余剰資金でM&Aの全費用を賄えるのが理想ですが、企業が保有するキャッシュのほとんどがM&Aにより流出すれば、万が一のときに財政状態が逼迫する恐れがあり、手元資金の全てをM&Aに充てるのはリスクが高いといえます。

また自己資金のみで賄おうとすると、『自己資金で買収できる範囲』でしかM&Aが行えなくなるのがデメリットです。自己資金に借入資金などを加えれば、手元の資金の流出が抑えられるだけでなく、より規模の大きな案件にも挑戦できるでしょう。

M&Aの代表的な資金調達方法

M&Aの資金調達方法は大きく『直接金融』と『間接金融』に大別されます。ほかにも、『資産の現金化』や『公的な補助金・助成金の活用』などの方法があり、選択肢は豊富です。

直接金融

直接金融は増資を目的とした資金調達方法で、株主や投資家から直接的に資金を得ることを指します。

株式会社の場合は、既存株主から出資を募ったり、新たな株主を募集したりして増資を行うのが一般的です。後述しますが、直接金融には大きく以下の種類があります。

  • 第三者割当増資
  • 株主割当増資
  • 公募増資

直接金融のメリットは、返済義務のない資金が手に入る点です。金融機関から融資を受けた場合、借入金額に利子を上乗せした額を期限までに返済しなければなりません。

一方で、株式の発行に伴い、経営陣の持株比率が下がったり、1株当たりの価値が低下したりする恐れがある点に注意が必要です。

間接金融

間接金融は、貸し手(資金提供者)と借り手(資金需要者)の間に第三者が介在する資金調達方法です。最も代表的なのが、『金融機関からの融資』です。

株式を市場に公開していない中小企業の場合、一般の投資家から広く出資を募るのは困難です。他方、間接金融は金融機関の審査をクリアしさえすれば、ほぼ誰でも資金調達ができるため、中小企業にとっては選択しやすい方法といえるでしょう。

直接金融は、株式の取得割合によっては第三者に経営権をコントロールされるリスクが高まりますが、間接金融ではその心配がありません。

資産売却で資金を確保

自社の資産を売却し、資金を確保する方法は『アセットファイナンス』と呼ばれます。具体的には、不動産の売却や債権の回収、ファクタリングサービスの活用などによって資金を短期間で調達します。

『ファクタリングサービス』とは、企業が保有する売掛債権をファクタリング業者に買い取ってもらうサービスです。

通常、取引先から売上代金が入金されるまでには1カ月以上の期間を要しますが、ファクタリングサービスを利用すれば、期日よりも早く資金が確保できます。ただし、買取金額に応じた手数料が発生するため、資金調達のベストな方法とはいえないでしょう。

公的な補助金・助成金の活用

国や地方自治体は、事業者に向けたさまざまな補助金・助成金の制度を設けています。基本的に補助金や助成金には返済義務がないため、資金に余裕がない中小企業や小規模事業者は積極的に活用したいところです。

M&Aに利用できる代表的なものとして、以下が挙げられます。

  • 事業承継・引継ぎ補助金
  • 小規模事業者持続化補助金

『事業承継・引継ぎ補助金』は、事業承継や事業再編、事業統合などを行う中小企業に対する補助金制度です。制度は『経営革新』『専門家活用』『廃業・再チャレンジ』の三つに分かれており、それぞれに要件があります。

『小規模事業者持続化補助金』は、小規模事業者の販路開拓を支援する補助金制度です。補助対象経費はチラシ作成や広告掲載、店舗改装などで、補助率は2/3、補助額は最大200万円です。

M&Aの資金調達を目的としたものではありませんが、こうした補助金が使える点も覚えておくとよいでしょう。

令和3年度 補正予算 事業承継・引継ぎ補助金|事業承継・引継ぎ補助金事務局

中小企業庁:令和元年度補正予算・令和3年度補正予算「小規模事業者持続化補助金<一般型>」の公募を開始しました|中小企業庁

直接金融の種類と特徴

直接金融は『第三者割当増資』『株主割当増資』『公募増資』の3パターンに区別されます。それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。

第三者割当増資

第三者割当増資とは、株主かどうかに関係なく『特定の第三者』に企業の新株を取得する権利を付与する方法です。

業務上において自社とつながりのある関係者を指定すれば、業務面と資本面の両方で協力関係を築けます(資本業務提携)。

一方で、新株が発行されると企業の発行済株式総数が増え、1株当たりの価値が下がるのが難点です(株式の希薄化)。既存株主は配当が減少したり、議決権割合が低下したりという不利益を被るでしょう。

第三者割当増資については、以下もぜひご覧ください。

第三者割当増資の目的やメリットを解説。株式の希薄化には注意が必要
手法
第三者割当増資の目的やメリットを解説。株式の希薄化には注意が必要

第三者割当増資は、特定の人物や会社に株式を割り当てる手法です。主な目的は資金調達ですが、M&Aや取引先との関係性を築くために実施されるケースもあります。第三者割当増資のメリットやデメリット、株式譲渡との違いについて解説します。

株主割当増資

株主割当増資とは、既存株主に新株を引き受ける権利を付与する方法です。

既存株主の持株数に応じて割り当てられるため、仮に全ての株主が新株を引き受けた場合、株主構成と持株比率に変動はありません。株式の希薄化を防ぎながら資金調達できるのがメリットといえるでしょう。

ただし、出資者が既存株主に限定されるため、M&Aに必要な金額が調達できない可能性があります。加えて、全ての既存株主が新株を引き受けるとも限りません。

公募増資

公募増資とは、新株発行で増資を行うに当たり、不特定多数の投資家に対して出資の申し込みを募ることです。募集価格は、時価よりもやや割安に設定されるのが一般的です。

企業の知名度が高ければ、より多くの投資家から資金が集められる上、株主層の裾野が拡大できるというメリットがあります。ただし、公募増資では発行済株式総数が増えるため、1株当たりの価値は低下します。

この方法は、株式市場に株価が流通している『上場企業』だからこそ通用するやり方で、非上場企業ではほとんど用いられません。知名度のある大企業ほど適している方法です。

間接金融の種類と特徴

間接金融というと『金融機関からの融資』を指すのが一般的です。近年は、M&Aの広がりとともに『LBO(レバレッジド・バイアウト)』と呼ばれる方法にも注目が集まっています。

金融機関からの融資

銀行や信用金庫といった金融機関からの融資は、中小企業のM&Aにおける最もメジャーな資金調達方法です。

金融機関からの融資が『間接』と呼ばれるのは、金融機関に預金している人のお金が銀行を経由して提供されるためです。預金者に支払う利子と、債務者から得る利息の差額が金融機関の利益となります。

融資には審査があり、融資の可否や融資金額は『借り手の信用力』に大きく左右されます。融資に見合う資産がなかったり、売り手企業が大きな赤字を抱えていたりすると、審査のハードルはグッと上がるでしょう。

借入の際は、経営者個人の連帯保証を求められる場合が多く、企業が倒産して返済が困難になった際には、企業に代わって経営者個人が返済をしなければなりません。

LBOの活用

LBOは、売り手企業の資産や将来のキャッシュフローを担保にして、金融機関から融資を受ける手法です。

『レバレッジ』とは、小さな力で大きなものを動かす『てこの原理』を指し、LBOは少ない資金で規模のより大きな企業を買収することを意味します。一般的な融資では、借入をする企業の信用力が審査されますが、LBOは売り手企業が審査の対象となるのが特徴です。

LBOによる資金調達には手間やコストがかかるため、中小企業のM&Aではあまり用いられません。『特別目的会社(SPC)』を設立した上で、SPCが資金調達および対象企業の買収を行います。

LBOの仕組みについては、以下で詳しく説明しています。

LBOの仕組みとは?資金調達や借入返済の流れ、注意点などを解説
手法
LBOの仕組みとは?資金調達や借入返済の流れ、注意点などを解説

LBOとはM&A実施時の資金調達方法の一つです。M&Aの対象となる会社を担保として借入・返済を行う点が、通常のM&Aと異なります。具体的な手順も通常のローンと違うため見ていきましょう。買い手のリスクや注意点についても確認します。

まとめ

中小企業による事業承継やM&Aが増加傾向にある昨今、資金調達の方法も多様化しています。中小企業は銀行からの借入に依存しがちですが、補助金を申請したり、LBOを活用したりといった選択肢もあるでしょう。

企業の資金繰りや資金調達については、M&Aの専門家のアドバイスを参考にしながら進めるのが理想です。『TRANBI(トランビ)』では、事業承継やM&Aの実績が豊富な専門家を紹介しています。情報収集にぜひご活用ください。

事業承継・M&A専門家のご紹介 - TRANBI

記事監修:小木曽公認会計士事務所 小木曽正人(公認会計士、税理士)
【プロフィール】
1999年公認会計士2次試験合格後、大手監査法人にて法定監査、IPO支援等に従事したのち、2004年より東京と名古屋にてM&A専門チームの主力メンバーとして100件以上のM&A案件に従事。2014年12月に独立開業し、M&A、事業承継、株価評価といった特殊案件のみを取り扱った会計事務所を展開している。