事業承継と事業継承の違い|承継と継承の意味・読み方・使い分けを解説

事業承継と事業継承の違い|承継と継承の意味・読み方・使い分けを解説

「事業承継」と「事業継承」の違いをわかりやすく解説します。結論は、迷ったら「事業承継」でよいということ。読み方の違い、「承継」と「継承」という言葉そのものの使われ方、申請書や契約書など場面別の使い分け、間違えると困る制度名の誤表記までを整理しました。

目次

「事業承継」と「事業継承」。事業の引き継ぎについて調べていると、この2つの表記が入り混じって出てきます。どちらが正しいのか、意味が違うのか、社内の資料ではどちらを使うべきか。迷ったまま読み進めている方は少なくないはずです。

結論から言えば、迷ったときは「事業承継」を使えば問題ありません。国の主要な制度や支援策の名称で使われているのが「承継」の字であり、法律でも権利義務が移ることを表す語として「承継」が用いられているためです。一方で「事業継承」も誤りというわけではなく、理念や想いを語る文脈で選ばれることがあります。

本記事では、まず結論と読み方を示したうえで、「承継」と「継承」という言葉そのものの意味の違い、場面ごとの使い分け、そして間違えると実務で困る表記までを整理します。読み終えるころには、どちらを使うか迷わずに判断できるようになっているはずです。

結論|「事業承継」と「事業継承」はどちらを使うべきか

先に答えを出しておきます。そのうえで、読み方と意味の違いを確認していきましょう。

迷ったら「事業承継」を使えばよい

結論として、自分で文章を書く場合は、制度・実務を含む幅広い場面で「事業承継」を選んで差し支えありません。理由は単純で、国の主要な制度や支援策の名称に「承継」の字が使われているからです。

  • 事業承継ガイドライン(中小企業庁が策定した指針)
  • 事業承継・引継ぎ支援センター(国が全国に設置する公的な相談窓口)
  • 事業承継・M&A補助金(承継やM&Aの費用を補助する制度)
  • 事業承継税制(一定の要件のもとで自社株にかかる贈与税・相続税の納税猶予・免除を受けられる制度)
  • 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(略称:経営承継円滑化法)

公的な資料を検索したり、補助金を申請したり、専門家に相談したりする場面で使われるのも「承継」です。したがって「事業承継」に統一しておけば、どの場面でも通じます

逆に「事業継承」で統一すると、制度名を書くときだけ「承継」に切り替えることになり、文書のなかで表記が混ざります。実務上のわずらわしさを避けるという意味でも、最初から「事業承継」にそろえるのが合理的です。

ただし、これは「事業継承」が誤りだという話ではありません。日常の文章として使われる場面はあり、後述するように、理念や連続性を語るときにはむしろ「継承」のほうがなじみます。とくに間違えないよう注意したいのは、制度・法律・機関などの固有名詞です。

読み方は「じぎょうしょうけい」と「じぎょうけいしょう」

読み方は次のように分かれます。字が入れ替わっているだけに見えますが、読みも入れ替わります。

  • 事業承継:じぎょうしょうけい(承継=しょうけい)
  • 事業継承:じぎょうけいしょう(継承=けいしょう)

あわせて押さえておきたいことが、承継の場面でよく出てくる言葉の読み方です。とくに「譲受」は読み間違いが多い言葉です。

  • 事業譲渡:じぎょうじょうと(事業を渡す側から見た言葉)
  • 事業譲受:じぎょうじょうじゅ(事業を受け取る側から見た言葉)
  • 持分もちぶん(合同会社などの出資者の権利)
  • のれん:ブランドや顧客基盤といった無形の価値を指す会計上の言葉

読み方を知っておくと、専門家との打ち合わせでも用語を理解しやすくなります。読み方だけでも先に確認しておけば、相談の場で戸惑いません。

意味に違いはあるのか

「事業承継」と「事業継承」は、どちらも事業を次の代へ引き継ぐことを指します。意味そのものが対立しているわけではなく、どの側面に重きを置くかが違うと整理すると理解しやすくなります。

項目 事業承継 事業継承
読み方 じぎょうしょうけい じぎょうけいしょう
主な使われ方 法律・制度・実務で一般的に使われる表記 一般的な文章で使われ、理念・技術などを受け継ぐ文脈にもなじむ表記
制度・支援策の名称 国の主要な制度・支援策ではこの表記が使われる 主要な制度名としては使われていない
法律の条文 「承継」は民法・会社法などで権利義務の移転を表す語として使われる 権利義務の移転を表す語としては用例が少ない
よく使われる場面 申請書類、契約書、専門家との相談、公的資料 記事やコラム、社史、理念や想いを語る文章

実際の用例を見ると、制度や手続きの説明では「承継」が多く、理念や技術などを受け継ぐ文脈では「継承」もよく使われます。ただしこれは使われ方の傾向であって、一般語として両者が厳密に使い分けられているわけではありません。記事や資料の中で両方が混在していても、それ自体が誤りというわけではありません。

なお、事業承継そのものの意味や引き継ぐ対象は「事業承継とは?」の記事で詳しく解説しています。

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「承継」と「継承」の違い

そもそも「承継」と「継承」という言葉自体はどう違うのでしょうか。ここを理解すると、なぜ制度名が「承継」なのかが腑に落ちます。

法律の文脈で使われるのは「承継」

法律の文脈では、承継権利や義務が別の主体へ移ることを表す語として用いられます。実際に条文でも登場します。

民法では、相続について「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と定められています。会社法が吸収合併を定義する条文でも、消滅する会社の権利義務の全部を存続会社に「承継させる」という表現が使われます。

こうした法律上の用法もあり、事業承継に関する制度・税制などでは「承継」という表記が広く用いられています

法律上、承継は移り方によって2つに分けられます。

  • 包括承継(一般承継):権利と義務をまとめて引き継ぐこと。相続や合併がこれにあたります
  • 特定承継:個別の権利や義務を特定して引き継ぐこと。売買や事業譲渡が代表例です。事業譲渡では、契約や債務の移転に相手方などの同意が必要になる場合があります

この区別は実務でも意味を持ちます。相続や合併では原則として権利義務を包括的に承継するのに対し、事業譲渡では承継の対象となる資産・負債・契約などを個別に定めるという違いは、この分類から生まれています。

法律では「経営の承継」という表現も使われる

制度の根拠になっている法律を見ると、この点がよく分かります。事業承継の主要な支援制度を支える経営承継円滑化法の正式名称は「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」です。この名称で使われているのは「経営の承継」という表現であり、「事業承継」という一語ではありません。「事業承継」は、中小企業庁の指針や各種制度でも広く使われている表現だと理解しておけば十分です。

この点を踏まえると、「どちらが法律上正しい表記か」という問いの立て方そのものが、あまり実益のないものだと分かります。問題は法的な正誤ではなく、制度名や書類の表記にそろっているかどうかです。

「継承」は地位や技術、精神を受け継ぐこと

一方の継承は、前の世代や前任者から地位・立場・技術・精神を受け継ぐことを広く指します。使われ方を見ると性質がはっきりします。

  • 皇位を継承する
  • 伝統工芸の技術を継承する
  • 前任者の方針を継承する
  • 創業者の理念を継承する

これらの用例では、権利義務の移転という法律上の側面よりも、地位・技術・理念などを受け継ぐことに焦点があります。

そのため「事業継承」という表記は、手続きよりも「先代から受け継ぐ」という行為そのものを言い表したいときに選ばれやすくなります。社史や周年記念の文章で「継承」が使われるのは、この語感によるものです。

使い分けの具体例

2つの語を並べて比べると、それぞれがどんな目的語をとるかが見えてきます。

「承継」がなじむもの 「継承」がなじむもの
権利と義務を承継する 経営理念を継承する
債務を承継する 職人の技術を継承する
契約上の地位を承継する 屋号や暖簾を継承する
合併により権利義務を承継する 創業以来の価値観を継承する
株式を承継する 前任者の方針を継承する

この対比から分かることは、法的な権利義務の移転や制度を説明する文脈では「承継」が使われ、理念・技術・伝統などを受け継ぐことを表す一般的な文章では「継承」もよく使われるということです。意味の境界が引かれているというより、使われる場面が分かれていると捉えてください。

「相続」「譲渡」「譲受」との関係

承継のまわりには、似た場面で使われる言葉が並んでいます。関係を整理しておきましょう。

  • 相続:人の死亡によって、財産に属する権利義務が相続人へ移ること。包括承継の代表例です
  • 譲渡:権利や財産を相手に渡すこと。渡す側から見た言葉です
  • 譲受:権利や財産を受け取ること。受け取る側から見た言葉です
  • 移転:権利や資産の所在が移ること。原因を問わず使える中立的な語です

これらは同じ「権利や財産が移る場面」で使われますが、表しているものが異なります。相続は死亡を原因とする権利義務の承継、譲渡は権利や財産を移す行為、譲受はそれを受ける側から見た表現です。同じ株式の移動でも、亡くなったことによる移動なら相続、売買による移動なら譲渡(受け取る側から見れば譲受)と呼び分けます。

事業を引き継ぐ手法としての事業譲渡については事業譲渡の記事、株式譲渡については株式譲渡の記事で解説しています。

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場面別|どちらの表記を使うか

語義が分かったところで、実際の場面ごとに判断できるよう整理します。基本は「事業承継」ですが、迷いやすい場面もあります。

補助金・税制の申請書類は「承継」

補助金の申請や税制の適用を受ける手続きでは、制度名や申請書上の用語を、正式名称・様式に合わせて「承継」と表記します。制度名そのものが「事業承継・M&A補助金」「事業承継税制」であり、申請書の様式や記入要領もその表記で作られているためです。

都道府県の認定を受ける手続きでも、根拠となる法律が「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」なので、書類上の用語は「承継」でそろっています。申請書に「事業継承」と書いても受け付けられないわけではありませんが、正式名称は正確に記載することが基本です。

制度の中身については事業承継・M&A補助金事業承継税制の記事にまとめています。

契約書など法的な文書では「承継」が使われる

契約書などで権利義務の移転を表す場合には、「承継」が使われます。「本契約上の地位を承継する」という条項は、権利義務が移ることを法律用語で明確に表したものです。

事業譲渡契約書などで引き継ぐ範囲を定める条項でも、「承継」はよく使われる表現です。どの資産・負債・契約を引き継ぐのかを一つずつ特定していく作業なので、権利義務の移転を指す語が選ばれます。ただし具体的な表現は契約の内容によって異なります。専門家に依頼する場合、こちらから表記を指定する必要はありません。

社内文書・広報・採用ページは文脈で選ぶ

社内向けの資料や、Webサイトの文章では、伝えたい内容によって選べます。判断の目安は次のとおりです。

  • 手続きや計画を説明するとき:事業承継(例:事業承継計画、事業承継の準備)
  • 想いや連続性を語るとき:継承(例:創業の理念を継承する、技術を継承する)

ただし、同じ意味で「事業承継」と「事業継承」を無意識に混在させると、表記揺れに見えてしまいます。文書ごとに基本の表記を決めておく方が実務的です。なお「事業承継を進めながら、創業者の理念を継承する」のように、意味を分けて意図的に使い分けるのは問題ありません。社内の用語集を持っている会社なら、そこに一行加えておくと迷いが減ります。

取引先や金融機関への説明では「承継」でそろえる

社外への説明では、相手が使う言葉に合わせるのが基本です。金融機関や税理士、事業承継・引継ぎ支援センターなど、事業承継を支援する実務の現場では「承継」という表記が広く使われています。制度や税制を前提にした会話になるためです。

取引先への挨拶状や案内文でも、「事業承継のご報告」とすれば一般的で分かりやすい表現になります。

一方、周年記念の冊子や創業家からのメッセージでは「継承」が選ばれることがあります。読み手に伝えたいポイントが手続きではなく、受け継ぐという行為そのものだからです。相手が何を知りたいかで選ぶと考えれば、判断に迷いません。

情報収集のときは両方の表記で調べる

調べる側に立つときは、話が変わります。公的な資料は「承継」で書かれていますが、民間のメディアや士業事務所の記事では「継承」で書かれているものもあるためです。そのため、情報を集める段階では両方の表記で検索してみるほうが、拾える情報が広がります。とくに次のような場合は、表記を変えて調べ直す価値があります。

  • 特定の業種の事例を探しているとき
  • 体験談や実務の細かい話を探しているとき
  • 検索結果が制度の説明ばかりで、実感のわく情報が出てこないとき

一方で、制度や税制の要件を確認したいときは、正式名称である「承継」を使い、公的機関の情報を優先して確認しましょう。制度を調べるなら「承継」、現場の声を探したいなら両方と覚えておくと効率がよくなります。

表記でよくある誤りと、その影響

「どちらでもよい」といっても、明確な誤表記になる場面はあります。制度・法律・機関などの固有名詞を書き換えてしまうケースです。ここだけは押さえておいてください。

制度名を「継承」と書くのは誤り

制度や法律の名称は固有名詞なので、書き換えられません。次の表記は誤りです。

  • ✕ 事業継承税制 → ○ 事業承継税制
  • ✕ 事業継承・M&A補助金 → ○ 事業承継・M&A補助金
  • ✕ 事業継承ガイドライン → ○ 事業承継ガイドライン
  • ✕ 経営継承円滑化法 → ○ 経営承継円滑化法

とくに「事業継承税制」という表記は検索でもよく見かけますが、正しい制度名ではありません。税理士や金融機関に相談するときは、正式名称で伝えたほうが話が早く進みます。

支援機関の名称も「承継」

相談先となる公的機関の名称も、「承継」で統一されています。

  • ✕ 事業継承・引継ぎ支援センター → ○ 事業承継・引継ぎ支援センター

この機関は国が全国に設置している公的な相談窓口で、相談は無料です。公式情報を確実に探すためにも、正式名称で検索することをおすすめします。

誤表記が実務で影響する場面

表記の誤りが実務上の不便につながりやすいのは、次のような場面です。

  • 公募要領や様式を探すとき:正式名称で検索したほうが、公式の資料を見つけやすくなります
  • 認定申請の書類を作るとき:根拠法や制度名の記載を求められる欄があります
  • 専門家や金融機関に相談するとき:制度名が正確だと前提の説明を省けます
  • 社内で稟議を通すとき:制度名を正確に記載しておくと、内容を確認しやすくなります

逆に言えば、一般的な文章で「事業継承」と書くこと自体を、過度に気にする必要はありません。ただし制度・法律・機関の正式名称だけは、正確に記載してください。

「継承」と書かれた情報はどう扱えばよいか

調べていると、「事業継承の進め方」「事業継承の費用」といったタイトルの記事に行き当たります。これらの情報を疑う必要はありません。表記が「継承」であることと、内容の正確さは別の問題です。

ただし、次の点は確認しておくと安全です。

  • 制度名が正しく書かれているか:正式名称を誤記している場合があるため、制度の要件は一次情報でも確認します
  • いつ書かれた情報か:補助金や税制は改正のたびに要件が変わります
  • 一次情報にあたっているか:中小企業庁や国税庁の資料を参照しているかを見ます

制度や税制の要件を確定させたいときは、最終的に公的機関の資料か専門家に確認するのが確実です。記事は論点を知るために使い、判断は一次情報で固めるという使い方が安全です。

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表記より大事なのは「何を引き継ぐか」

表記の疑問が解けたら、次に確認すべきは中身です。ここでは全体像だけ押さえておきましょう。

引き継ぐのは「人・資産・知的資産」の3要素

中小企業庁の事業承継ガイドラインでは、承継の対象を3つに整理しています。

  • 人(経営):経営権のほか、後継者の選定・育成、社内外からの信頼
  • 資産:自社株式、事業用の不動産・設備、資金、負債
  • 知的資産:経営理念、技術やノウハウ、取引先との関係、信用、ブランド

大切なのは、この3つはいずれも事業承継の対象だということです。株式や事業用資産といった権利関係だけでなく、経営理念、技術、ノウハウ、信用、取引先との関係といった目に見えない経営資源、そして経営を担う人そのものまでを引き継いでいくのが事業承継です。

3要素それぞれの中身と、引き継ぎに何が必要かは事業承継とはの記事で詳しく解説しています。

承継先は親族・従業員・第三者の3つ

誰に引き継ぐかによって、進め方も壁も変わります。

  • 親族内承継:子どもや親族へ引き継ぐ方法。相続税・贈与税が課題になりやすい
  • 従業員承継:役員や従業員へ引き継ぐ方法。株式の買取資金と個人保証が課題になりやすい
  • 第三者承継(M&A):社外の相手へ引き継ぐ方法。相手探しと譲渡条件の調整が課題になりやすい

どれを選ぶかは、継ぐ意思のある適任者がいるか、必要な資金を確保できるか、会社の将来像をどう描くかで決まります。第三者承継は、他の2つが難しかった場合の最後の手段というわけではありません。3つを比べたうえで選ぶものだと考えてください。

第三者への承継については第三者承継、従業員への承継については従業員承継(EBO・MBO)の記事で扱っています。

承継には時間がかかる

もうひとつ押さえておきたい点が、時間の問題です。中小企業庁の2018年版中小企業白書は、事業承継ガイドラインを引用し、後継者の育成期間も含めれば準備に5年〜10年程度を要することから、平均引退年齢が70歳前後であることを踏まえると60歳頃には事業承継に向けた準備に着手する必要があるとしています。

言葉の使い分けを調べている段階であれば、まだ検討の入口にいるということです。表記の疑問は数分で解決しますが、承継そのものは数年単位の準備が要ります。早く着手するほど選べる手段は増えます。

参考中小企業白書・小規模企業白書 第2部第4章第3節 事業承継を契機とした労働生産性の向上|中小企業庁

表記の疑問が解けたら、次に読むところ

ここまでで「どちらを使うか」は解決したはずです。次の一歩として、状況に応じて読み進める先を挙げておきます。

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「事業承継」と「事業継承」に関するよくある質問

表記や読み方について、よく寄せられる疑問にお答えします。

Q. 「事業承継」と「事業継承」、どちらが正しいのですか?

A. 制度や実務の場面では「事業承継」を使います。
国の主要な制度名や支援機関の名称に「承継」が使われており、法律でも権利義務が移ることを表す語として「承継」が用いられているためです。「事業継承」も意味として誤りではなく、理念や連続性を語る文脈で使われますが、迷ったときは「事業承継」を選べば問題ありません。

Q. 読み方はどう違いますか?

A. 「事業承継」はじぎょうしょうけい、「事業継承」はじぎょうけいしょうです。
字の順が入れ替わると読みも入れ替わります。あわせて「事業譲渡(じぎょうじょうと)」と「事業譲受(じぎょうじょうじゅ)」も混同されやすいので、押さえておくと相談の場で戸惑いません。

Q. 「承継」と「継承」の違いを一言でいうと?

A. どちらも受け継ぐことを表す語ですが、使われる場面に違いがあります。
法律や制度の文脈で権利義務の移転を表すときに用いられる用語は「承継」です。一方「継承」は、皇位継承や技術の継承のように、理念・技術・伝統などを受け継ぐ場面でよく使われます。

Q. 事業承継は英語でどう表記しますか?

A. business succession と表記されます。
「succession」は地位や財産を受け継ぐことを指す語で、日本語の「承継」に対応します。後継者は successor です。

Q. 事業承継とM&Aは同じ意味ですか?

A. 違います。
事業承継は「事業を次の代へ引き継ぐ」という目的を指し、M&Aはそれを実現する手段のひとつです。親族内承継や従業員承継はM&Aを使わずに行われますし、M&Aは事業承継以外の目的でも使われます。詳しくは事業承継とM&Aの違いの記事をご覧ください。

Q. 「事業継承」と書かれた記事は間違っているのですか?

A. 表記が「継承」であることと、内容の正確さは別の問題です。
制度名を「事業継承税制」などと書いている場合は正式名称の誤記なので、制度の要件については一次情報でも確認しましょう。地の文が「事業継承」であること自体は誤りではありません。制度名の表記と、情報がいつ更新されたかを見て判断してください。

Q. 事業承継にはどれくらいの期間がかかりますか?

A. ケースによって大きく異なります。
後継者の育成を伴う承継では5〜10年程度の準備が必要になることもあり、第三者承継(M&A)も相手探しや条件交渉によって期間が変わります。詳しくは事業承継の進め方の記事で解説しています。

Q. 社内資料ではどちらを使えばよいですか?

A. 手続きや計画を説明する資料は「事業承継」、理念や想いを語る文章は文脈に応じて選びます。
同じ意味の語を表記揺れとして混在させないことが大切です。文書ごとに基本の表記を決めておきましょう。意味を分けて意図的に使い分けるのは問題ありません。

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まとめ|迷ったら「事業承継」でよい

「事業承継」と「事業継承」は、どちらも事業を次の代へ引き継ぐことを指します。意味が対立しているわけではなく、使われる場面が分かれているだけです。それでも国の主要な制度名では「承継」が使われ、法律でも権利義務の移転を表す語として「承継」が用いられているため、迷ったときは「事業承継」を選んでおけば通じます。

語義まで踏み込むと、この使われ方の理由が見えてきます。法律の文脈で権利義務の移転を表す語として用いられているのが「承継」であり、制度や税制の名称もこの表記でそろっています。一方の「継承」は、理念や技術、伝統を受け継ぐ場面でよく使われる語です。厳密なルールがあるわけではなく、使われる場面が分かれていると理解しておけば十分です。

表記の話が片づいたら、本題は「何を、誰に、どう引き継ぐか」に移ります。引き継ぐ対象は「人・資産・知的資産」の3要素、引き継ぎ先は親族・従業員・第三者の3つ。どちらの言葉を選ぶかより、この中身を具体化していくことのほうが、承継の成否を左右します。

  • 迷ったら「事業承継」。国の主要な制度名や支援機関の名称は「承継」でそろっている
  • 制度・法律・機関の正式名称は間違えない。「事業継承税制」という制度は存在しない
  • 読み方は「じぎょうしょうけい」。譲受は「じょうじゅ」

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記事監修: 株式会社トランビ 代表取締役CEO 高橋 聡
【プロフィール】
アスクホールディングス株式会社代表取締役社長、中小企業庁中小M&Aガイドライン作成委員。アクセンチュアを経てアスクホールディングス株式会社を先代から事業承継。中小企業におけるM&A活性化の必要性を痛感しトランビを創業。
著書: 「起業するより会社は買いなさい」サラリーマン・中小企業のためのミニM&Aのススメ
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