産業廃棄物処理業のM&Aとは?相場・流れ・許可承継の注意点を解説

産業廃棄物処理業のM&Aとは?相場・流れ・許可承継の注意点を解説

産業廃棄物処理業のM&Aは、後継者不足や許可・施設の希少性を背景に増えています。本記事では、相場や企業価値の考え方、売却・買収のメリット、産業廃棄物処理業許可の承継や環境リスクといった特有の論点、デューデリジェンス(DD)の進め方、M&Aの流れまでをわかりやすく解説します。

目次

産業廃棄物処理業を営むなかで、「後継者がいないが、苦労して取得した産業廃棄物処理業の許可をこのまま手放してよいのか」「会社を譲渡したいが、許可や施設はどう引き継がれるのか」と悩んでいませんか。

産業廃棄物処理業のM&Aは、後継者不足や経営者の高齢化を背景に年々増えています。一方でこの業界のM&Aには、産業廃棄物処理業許可の承継や、不法投棄・土壌汚染といった環境リスクなど、他業種にはない独特の論点があり、進め方を誤ると思わぬトラブルにつながります。

本記事では、産業廃棄物処理業のM&Aについて、相場・企業価値の考え方から、売却・買収のメリット、許可承継をはじめとする特有の重要論点、デューデリジェンス(DD)のポイント、M&Aの流れまでを、売り手・買い手の双方にわかりやすく解説します。

産業廃棄物処理業のM&Aの現状

まずは、産業廃棄物処理業を取り巻く現状と、なぜ今この業界でM&Aが活発になっているのかを整理します。後継者不足という共通課題に加え、産業廃棄物処理業ならではの「許可の希少性」が、M&Aを後押しする大きな要因になっています。

後継者不足・経営者の高齢化で承継ニーズが拡大

産業廃棄物処理業は、1970年代の高度経済成長期に創業した会社が多く、創業経営者が高齢化を迎えています。家業として続けてきたものの、子どもが事業を継がず、社内にも後継者がいないというケースは少なくありません。

許可を取得し、施設や車両、取引先を維持してきた会社であっても、後継者が不在であれば、いずれ廃業を検討せざるを得なくなります。しかし廃業すれば、長年かけて築いた許可も施設も取引関係も失われ、従業員の雇用も守れません。こうした状況で、第三者へのM&Aによる事業承継が現実的な選択肢として注目されています。
後継者不足の解決手段としてのM&Aについては、後継者不足をM&Aで解決する方法もあわせてご覧ください。

新規許可・新設施設が増えにくく「既存の許可・施設」の価値が高い

産業廃棄物処理業の大きな特徴は、新規の許可取得や処理施設の新設が容易ではないという点です。とくに中間処理施設や最終処分場は、用地の確保、周辺住民の同意、環境アセスメント、行政の許可など、いくつものハードルを越える必要があり、ゼロから新設するには長い時間と多額のコストがかかります。

その結果、すでに許可と施設を持つ既存の会社は希少価値が高く、新規参入やエリア拡大を狙う企業にとって「許可と施設をまとめて取得できるM&A」は非常に魅力的な選択肢になります。これが、産業廃棄物処理業のM&Aが活発な根本的な理由です。

脱炭素・サーキュラーエコノミーで業界に追い風

近年は、脱炭素資源循環(サーキュラーエコノミー)への社会的な関心が高まり、廃棄物のリサイクルや再資源化のニーズが拡大しています。単純な処分だけでなく、リサイクル・再生材の製造といった付加価値の高い事業へ広げられる会社は、買い手から高く評価される傾向にあります。

こうした構造変化に対応するための設備投資や事業拡大の手段として、M&Aを活用する動きも広がっています。業界再編が進むなかで、規模拡大や技術獲得を目的とした買収も増えています。

産業廃棄物処理業のM&Aの相場・企業価値

「自社(あるいは買収候補先)はいくらで取引されるのか」は、売り手・買い手の双方にとって最大の関心事です。ここでは、中小規模の産業廃棄物処理業のM&Aで一般的に用いられる相場の考え方と、価格を左右する要素を解説します。

相場の基本的な考え方(年買法)

中小企業のM&Aでは、譲渡価格を算定する際に年買法(年倍法/ねんばいほう)と呼ばれる方法がよく使われます。これは、次のような考え方で価格の目安を出すものです。

譲渡価格 = 時価純資産 + 営業利益 × 数年分(おおむね2〜5年)

時価純資産とは、資産(施設・車両・土地など)から負債を差し引いた純資産を時価で評価したものです。これに、将来生み出す利益の数年分(営業権・のれんに相当する部分)を上乗せして価格を算定します。産業廃棄物処理業の場合、許可や施設、優良な取引先といった目に見えにくい価値が「営業利益の何年分」に反映されやすいのが特徴です。詳しい価値の算定方法は、企業価値の評価方法もご参照ください。

価格を左右する5つの要素

産業廃棄物処理業のM&A価格は、おもに以下の5つの要素によって大きく変わります。

  1. 許可の種類・範囲:収集運搬のみか、中間処理・最終処分まで持つか。扱える廃棄物の品目数や許可エリアが広いほど高評価。
  2. 施設・設備:中間処理施設や最終処分場の有無、残余容量、設備の新しさ。希少性の高い施設は価格を大きく押し上げます。
  3. 取引先(排出事業者):継続的に委託してくれる優良な排出事業者を多数抱えているか。安定した収益基盤は強い評価材料です。
  4. 人材・体制:収集運搬のドライバーや、施設運転・管理の有資格者など、事業継続に必要な人材が確保できているか。
  5. 財務・環境リスク:利益水準に加え、不法投棄歴や土壌汚染、原状回復義務といった環境リスクの有無。リスクは減額要因になります。

同じ規模でも、許可の範囲や施設の希少性によって評価額は大きく変わります。自社の強みがどこにあるかを整理しておくことが、適正な価格での交渉につながります。

赤字・債務超過でも売却できる理由

「赤字だから売れないのでは」と考える経営者は多いですが、産業廃棄物処理業では赤字や債務超過でも売却できるケースが少なくありません。その最大の理由が、前述した「許可と施設の希少性」です。

買い手にとって、ゼロから許可を取得し施設を新設するには長い時間と多額のコストがかかります。そのため、たとえ足元の業績が赤字でも、許可・施設・許可エリア・取引先といった経営資源そのものに価値を見出して買収するケースがあるのです。赤字会社であっても、磨けば光る資産がある場合は、まず専門家に相談してみる価値があります。

M&Aの価格の相場はいくら?一般的な評価方法や価値を決める要素
具体的事例
M&Aの価格の相場はいくら?一般的な評価方法や価値を決める要素

M&Aの成約価格の相場は、業種や規模によって異なります。価格はどのように決まるのでしょうか?中小企業のM&A価格を決める際、参考として用いられる算出方法や、価格を左右する要素を確認しましょう。買収の可否の判断に役立つ指標も紹介します。

産業廃棄物処理業をM&Aで売却・買収するメリット

産業廃棄物処理業のM&Aには、売り手・買い手の双方に大きなメリットがあります。それぞれの立場から見ていきましょう。

売り手(譲渡側)のメリット

後継者不在の経営者にとって、M&Aは廃業に代わる前向きな出口戦略になります。

【売り手のメリット】

  • 後継者問題を解決できる:第三者へ事業を引き継ぐことで、廃業を避けて事業を存続させられます。
  • 苦労して取得した許可・施設を残せる:長年かけて築いた許可・施設・取引関係を、廃業で失わずに次へ引き継げます。
  • 従業員の雇用を守れる:ドライバーや有資格者など、これまで支えてくれた従業員の雇用を維持できます。
  • 創業者利益(売却益)を得られる:株式譲渡であれば、経営者が引退後の生活資金や次の挑戦への原資を確保できます。
  • 原状回復・廃業コストを回避できる:廃業時に発生しうる施設の解体・原状回復費用などの負担を避けられます。

従業員の引き継ぎについてはM&Aにおける従業員の扱いも参照ください。

買い手(譲受側)のメリット

買い手にとって、産業廃棄物処理業のM&Aは「時間を買う」効果が非常に大きい投資です。

【買い手のメリット】

  • 許可・施設をまとめて取得できる:取得に長い時間とコストがかかる許可・施設を、M&Aによって一度に獲得できます。
  • 事業エリアを一気に広げられる:許可は都道府県・政令市ごとのため、別エリアの会社を買収することで営業圏を効率よく拡大できます。
  • 取引先(排出事業者)を引き継げる:すでに稼働している取引関係を引き継ぎ、買収初日から安定収益を得られます。
  • 人材・ノウハウを確保できる:施設運転や収集運搬のノウハウを持つ人材を確保し、即戦力として活用できます。
  • 一貫処理体制・垂直統合を実現できる:収集運搬と中間処理、あるいは異なる処理工程を組み合わせ、シナジーを生み出せます。

このように、買い手にとってM&Aは新規参入や事業拡大の時間を大幅に短縮する手段になります。新規事業の立ち上げ時間を短縮する「時間を買う」考え方は、M&Aで新規事業を始めるメリットでも詳しく解説しています。

産業廃棄物処理業のM&Aのデメリット・注意点

メリットの大きい産業廃棄物処理業のM&Aですが、進める際には注意すべき点もあります。売り手・買い手それぞれの立場で、あらかじめ理解しておきたいデメリット・注意点を整理します。

売り手(譲渡側)の注意点

【売り手の注意点】

  • 環境リスクが評価を下げることがある:過去の不法投棄歴や土壌汚染、原状回復義務などがあると、買い手が慎重になり、価格や条件に影響します。
  • 許可・取引先が人や体制に依存している場合は評価が読みにくい:特定の有資格者や一部の排出事業者に依存していると、引き継ぎ後の継続性に不安が残ります。
  • 希望どおりの相手が見つかるとは限らない:許可エリアや施設の条件によっては、買い手が限られる場合もあります。

買い手(譲受側)の注意点

【買い手の注意点】

  • 環境リスク・簿外債務を引き継ぐおそれがある:株式譲渡の場合、過去の不法投棄や土壌汚染に伴う原状回復義務などの簿外債務を引き継いでしまうリスクがあります。
  • 許可の承継・変更手続きに時間がかかる:スキームによっては許可の取り直しが必要となり、その間は事業を行えない期間が生じることもあります。
  • キーパーソンの離職リスク:施設運転や収集運搬を支える有資格者・熟練人材が退職すると、事業継続に支障が出ます。
  • 統合後の体制づくり(PMI):許可の維持や行政対応、安全管理など、買収後の運営体制を整える必要があります。
M&Aの失敗事例。トラブルを回避するためのポイントを解説
具体的事例
M&Aの失敗事例。トラブルを回避するためのポイントを解説

日本におけるM&Aの成功率は、かなり低いとされています。M&Aの成功・失敗の定義は難しい面がありますが、想定していた効果が得られなければ、少なくとも成功したとはいえません。多くの失敗事例に触れ、トラブルやリスクを回避する方法を学びましょう。

産業廃棄物処理業のM&Aで押さえるべき特有の重要論点

ここからは、産業廃棄物処理業のM&Aならではの、特有かつ最重要の論点を4つに整理して解説します。とくに産業廃棄物処理業許可の承継は、この業界のM&A全体の進め方を左右する根幹です。

①産業廃棄物処理業許可の承継(株式譲渡か事業譲渡か)

産業廃棄物処理業を行うには、収集運搬業や処分業(中間処理・最終処分)について、都道府県知事または政令市長の許可を受ける必要があります。この許可をどう引き継ぐかが、M&Aのスキーム選びを決定づけます。

結論からいえば、許可は事業譲渡では原則として引き継げず、株式譲渡であれば法人格ごと引き継ぐため許可も維持されます。だからこそ、産業廃棄物処理業のM&Aでは株式譲渡が選ばれやすいのです。両スキームの違いを表で整理します。

項目 株式譲渡 事業譲渡
許可の承継 法人格ごと引き継ぐため
許可も原則維持
許可は承継されず
買い手が新規取得・変更許可が必要
手続きの負担 比較的シンプル
(役員変更等の届出は必要)
許可の取り直しで
時間・手間がかかる
簿外債務・環境リスク 原則として引き継ぐ
(DDでの精査が重要)
対象資産を選べるため
遮断しやすい
産廃M&Aでの位置づけ 主流
(許可維持のため選ばれやすい)
限定的
(特定事業のみ譲渡する場合等)

なお、株式譲渡であっても、許可を受けた法人の役員や主要株主が変わるため、行政への変更届出などの手続きは必要です。スキームごとの違いの詳細はM&Aの種類とそれぞれの違いを、株式譲渡そのものの仕組みは株式譲渡の記事をご覧ください。

②施設・許可の希少性(中間処理施設・最終処分場)

中間処理施設や最終処分場は、新設のハードルが非常に高く、既存施設の希少価値が高いことは前述のとおりです。M&Aにあたっては、その施設が持つ許可品目・処理能力・残余容量を正確に把握することが重要です。

とくに最終処分場は、残りの埋立容量(残余容量)が事業価値に直結します。残余容量が少なければ、近い将来に新たな処分先の確保や施設の閉鎖が必要になるため、価格評価に大きく影響します。施設の許可内容と実態が一致しているか、無許可で能力を超えた処理をしていないかも、必ず確認すべきポイントです。

③マニフェスト・委託契約・排出事業者との関係

産業廃棄物の処理では、排出事業者がその処理を委託する際にマニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付し、適正に処理されたことを確認する仕組みになっています。M&Aでは、このマニフェストの運用が適正に行われているか、電子マニフェストへの対応状況はどうかを確認します。

また、収益の源泉である排出事業者との委託契約が、M&A後も継続されるかは極めて重要です。契約上、経営者の交代によって契約解除や見直しができる条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)がないか、特定の大口排出事業者に売上が偏っていないかを精査しておく必要があります。

④収集運搬の人材・車両と「許可の地域性」

収集運搬業では、ドライバーなどの人材と車両が事業の基盤です。人手不足が深刻化するなか、必要な人材を確保できているかは買い手にとって重要な評価ポイントになります。

さらに見落としやすいのが、許可の地域性です。産業廃棄物処理業の許可は都道府県・政令市ごとに必要で、営業したいエリアごとに許可を持っていなければなりません。買収によってエリアを広げられる一方、思っていた地域の許可を持っていなかった、というケースもあります。許可エリアと事業実態が、自社の狙いと合っているかを必ず確認しましょう。

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産業廃棄物処理業のM&Aの流れ

産業廃棄物処理業のM&Aは、一般的なM&Aと同じ流れで進みますが、最大のヤマ場が許可の承継・変更手続きです。ここでは全体の流れと、産廃ならではの注意点を解説します。

M&Aの基本的な5ステップ

中小規模の産業廃棄物処理業のM&Aは、おおむね次の5つのステップで進みます。

  1. 検討・準備:専門家に相談し、自社の許可・施設・取引先・財務を整理します。
  2. 相手探し・マッチング:M&Aプラットフォームなどを活用し、条件の合う相手を探します。
  3. 交渉・基本合意:譲渡価格やスキーム(株式譲渡・事業譲渡など)、条件を交渉し、基本合意を結びます。
  4. デューデリジェンス(DD):買い手が許可・施設・財務・環境リスクなどを詳しく調査します。
  5. 最終契約・クロージング:最終契約を締結し、株式や事業の引き渡し、対価の支払いを行います。許可承継の手続きもここで完了させます。

M&A全体の流れをより詳しく知りたい方は、M&Aの流れの解説もあわせてご覧ください。

許可承継・変更許可のタイミング(最大のヤマ場)

産業廃棄物処理業のM&Aで最も注意すべきは、許可に関する手続きをいつ・どのように行うかです。株式譲渡の場合は法人格が維持されるため許可も継続しますが、役員や株主の変更に伴う変更届出が必要です。一方、事業譲渡や会社分割では、買い手側で許可の新規取得や変更許可が必要となり、許可がおりるまで事業を行えない空白期間が生じるおそれがあります。

そのため、M&Aの検討段階から管轄行政庁への事前相談を行い、必要な手続きと所要期間を確認しておくことが欠かせません。許可の段取りを誤ると、クロージング後に事業が止まってしまう事態にもなりかねないため、専門家と行政を交えた周到な準備が成功の分かれ目になります。

産業廃棄物処理業のM&Aの注意点・デューデリジェンス(DD)のポイント

産業廃棄物処理業のM&Aで、買い手が必ず行うべきなのがデューデリジェンス(DD)です。とくにこの業界では、財務だけでなく環境リスク許可・法令遵守の調査が成否を分けます。重点的に確認すべきポイントを整理します。

環境リスクのDD(不法投棄歴・土壌汚染・原状回復義務)

産業廃棄物処理業のM&Aで最も注意すべきなのが、目に見えにくい環境リスクです。過去に不法投棄や不適正処理があれば、行政から措置命令を受け、原状回復(汚染の除去・撤去)に多額の費用がかかるおそれがあります。

また、施設の敷地に土壌汚染がある場合、その調査・除去の責任を買い手が負うことにもなりかねません。最終処分場では、埋立終了後も長期にわたる維持管理(廃止までのモニタリング等)の義務が残ります。これらは決算書に表れにくい簿外のリスクであるため、現地調査や行政への照会を含め、徹底的に確認することが重要です。

許可・法令遵守のDD(有効期限・更新・欠格要件)

事業の根幹である許可については、許可の有効期限・更新状況・許可品目・許可エリアを確認します。許可は定期的な更新が必要で、更新を怠ると失効してしまいます。許可の内容と実際の事業範囲が一致しているか、無許可での処理がないかも要確認です。

さらに重要なのが欠格要件です。役員などに一定の法令違反歴や行政処分歴があると、許可が取り消されることがあります。買収後に欠格要件に該当して許可を失うことのないよう、役員構成や過去の処分歴を必ず精査します。許可を守るためのコンプライアンス体制が整っているかも、評価の対象になります。

財務・契約のDD(簿外債務・委託契約・取引先依存)

財務面では、通常のM&Aと同様に簿外債務や偶発債務の有無を確認します。あわせて、収益の柱である排出事業者との委託契約の内容や残存期間、特定の取引先への売上依存度を精査します。経営者の交代を理由に契約解除できる条項がないかも確認が必要です。

こうしたリスクに備える契約上の手当てとして、売り手が一定の事実を保証する表明保証を活用するのが一般的です。「重大な環境問題や法令違反がないこと」を表明保証に盛り込み、万一の際に損害賠償を請求できるようにしておくことで、買い手のリスクを軽減できます。

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産業廃棄物処理業のM&Aの活用パターン

産業廃棄物処理業のM&Aは、目的によってさまざまな活用のしかたがあります。代表的な4つのパターンを紹介します。自社の狙いに近いものがあれば、戦略を考えるヒントにしてください。

①許可・施設を「買って」新規参入する

異業種からの新規参入や、収集運搬のみの会社が処分業へ広げたい場合、ゼロから許可を取得し施設を新設するのは現実的でないことが多くあります。そこで、すでに許可と施設を持つ会社を買収することで、参入までの時間とコストを大幅に短縮できます。「許可と施設を買う」という発想が、この業界のM&Aの典型的な動機です。

②エリア拡大・一貫処理体制を構築する

許可は地域ごとに必要なため、別エリアの会社を買収して営業圏を広げる戦略が有効です。また、収集運搬の会社が中間処理・最終処分の会社を取得し、収集から処分までを自社で完結する一貫処理体制を築くことで、外部委託コストを抑え、収益性を高めることができます。

③後継者不在を解決し、許可と雇用を残す

後継者がいない経営者にとって、M&Aは廃業の代わりに事業を未来へつなぐ手段です。第三者に承継することで、苦労して取得した許可や施設、従業員の雇用、地域の処理インフラとしての役割を残せます。目的別のスキームの選び方は、事業承継M&Aのスキームの選び方も参考になります。

④排出事業者による川下統合(自社廃棄物の内製処理)

製造業や建設業など、大量の産業廃棄物を排出する企業が、処理会社を買収して自社廃棄物の処理を内製化するパターンもあります。処理コストの削減や、適正処理の確実な担保、環境対応のアピールにつながるため、サステナビリティ経営の一環として活用されることもあります。

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産業廃棄物処理業のM&Aに関するよくある質問

産業廃棄物処理業のM&Aについて、よく寄せられる疑問にお答えします。

Q. 産業廃棄物処理業のM&Aの相場はどのくらいですか?

A. 中小規模では「時価純資産+営業利益の2〜5年分」を目安とする年買法がよく使われます。
ただし産業廃棄物処理業では、許可の種類・範囲、施設(とくに中間処理・最終処分場)の希少性、優良な取引先の有無によって評価額が大きく変わります。希少な許可や施設を持つ会社は、相場以上の評価がつくこともあります。

Q. 赤字でも売却できますか?

A. 売却できる可能性は十分にあります。
産業廃棄物処理業では、許可や施設そのものに高い価値があるため、足元が赤字でも、許可・施設・許可エリア・取引先といった経営資源を評価して買収されるケースがあります。まずは専門家に相談し、自社の強みを整理することをおすすめします。

Q. 産業廃棄物処理業の許可は引き継げますか?

A. スキームによって異なります。
株式譲渡であれば法人格ごと引き継ぐため許可も原則維持されますが、役員等の変更届出は必要です。一方、事業譲渡では許可は承継されず、買い手による新規取得・変更許可が必要になります。許可の手続きは時間がかかることもあるため、検討段階から管轄行政庁に事前相談しておくことが重要です。

Q. 過去に行政処分や不法投棄歴があると売却できませんか?

A. 売却が不可能になるわけではありませんが、価格や条件に影響します。
重要なのは、こうした事実を隠さず開示することです。買い手はDDで必ず調べるため、後から発覚すると契約破談や損害賠償につながりかねません。事実を開示したうえで、原状回復の状況や再発防止策を説明し、表明保証などで手当てすることで、M&Aを成立させられる場合があります。

Q. 廃業とM&Aではどちらが得ですか?

A. 多くの場合、M&Aのほうがメリットは大きいといえます。
廃業すると、許可も施設も取引関係も失われ、施設の解体・原状回復に費用がかかることもあります。一方M&Aなら、許可・雇用・取引先を残しつつ、売却益を得られる可能性があります。会社売却時の税金については会社売却時の税金もご確認ください。

まとめ|産業廃棄物処理業のM&Aは「許可承継」がカギ

産業廃棄物処理業のM&Aは、後継者不足の解決策として、また新規参入・事業拡大の手段として、年々注目を集めています。その進め方を左右する最大のポイントが、産業廃棄物処理業許可の承継です。

本記事の要点を整理します。

  • 相場:年買法が目安。許可の範囲・施設の希少性・取引先で評価が大きく変わり、赤字でも売却の可能性がある。
  • 特有の論点:許可は事業譲渡では承継されず、株式譲渡なら維持。だから産廃M&Aは株式譲渡が選ばれやすい。
  • DD:不法投棄・土壌汚染・原状回復義務などの環境リスク、許可の有効期限・欠格要件を徹底的に確認する。
  • 流れ:許可の承継・変更手続きが最大のヤマ場。検討段階から管轄行政庁への事前相談が欠かせない。

許可や施設、環境リスクなど専門的な論点が多いからこそ、産業廃棄物処理業のM&Aは、信頼できる専門家とともに、相手探しから慎重に進めることが成功の近道です。

事業承継やM&Aを検討するなら、国内最大級の事業承継・M&Aマッチングプラットフォーム「TRANBI(トランビ)」をご活用ください。まずは産業廃棄物運搬・処理のM&A案件を見て、どのような会社が取引されているのかを知ることから始めてみてはいかがでしょうか。

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記事監修: 株式会社トランビ 代表取締役CEO 高橋 聡
【プロフィール】
アスクホールディングス株式会社代表取締役社長、中小企業庁中小M&Aガイドライン作成委員。アクセンチュアを経てアスクホールディングス株式会社を先代から事業承継。中小企業におけるM&A活性化の必要性を痛感しトランビを創業。
著書: 「起業するより会社は買いなさい」サラリーマン・中小企業のためのミニM&Aのススメ
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