農業M&Aのポイントは?主なスキームや案件の探し方をチェック

農業M&Aのポイントは?主なスキームや案件の探し方をチェック

農業M&Aは後継者が不在の農業経営体にとって、農地や販路といった資産を引き継ぐのに有効な方法です。手続きを進める際には、具体的にどのようなスキームを用いるのでしょうか?案件の探し方やM&Aを実施するメリットを併せて紹介します。

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国内の農業の現状

農業M&Aについて詳しく知るには、まず国内の農業の現状について把握しておくとよいでしょう。農業の状況を知るために、農業経営体や農業法人の動向を確認します。

農業経営体は減少している

国内で農業に従事している農業経営体(栽培面積など一定の条件を満たして農産物を生産または委託を受けて農作業に従事する者)は、減少し続けています。農林水産省が5年ごとに行っている調査である『2020年農林業センサス』によると、経営体の数は以下のように推移しているようです。

  • 2010年:約167万9,000経営体
  • 2015年:約137万7,000経営体
  • 2020年:約107万6,000経営体

2010年と2020年で比較すると約60万経営体、年平均で約6万経営体減少しています。

出典:2020年農林業センサス結果の概要(確定値)(令和2年2月1日現在)|農林水産省

農業法人は増加傾向

同じく『2020年農林業センサス』によると、農業経営体が減少している一方、農業法人は以下の通り増加傾向にあると分かります。2010年と2020年を比較すると、約9,000経営体の増加となります。

  • 2010年:約2万2,000経営体
  • 2015年:約2万7,000経営体
  • 2020年:約3万1,000経営体

加えて経営耕地面積規模別では、北海道で100ha以上、それ以外の都府県で10ha以上を経営する農業経営体が増加傾向です。また農産物販売金額規模別で見ると、3,000万円以上の農業経営体が増えています。

農業経営体は、数が減っている一方で規模の拡大が進んでいるといえるでしょう。

農業の経営体の種類

農業の経営体にはいくつか種類があります。『2020年農業センサス』の分類にのっとり、個人経営体と団体経営体の80%を占める法人経営体について見ていきましょう。

個人経営体

個人事業主として農業を営んでいるのが個人経営体です。『2020年農業センサス』の調査結果では、約103万7,000経営体が個人経営体として農業に従事しています。農業経営体全体の約96%を占める数です。

ただし個人経営体の数は、年々減り続けているのが現状です。従来であれば子どもが農業を引き継ぐケースが大半を占めていました。しかし近年では、子どもは自分の仕事を持っており、農業に従事しないケースも珍しくありません。

後継者がおらず次の世代へ承継できないまま、減少し続けているケースが数多く発生しています。

法人経営体

法人が農業を営む法人経営体は、『会社法人』『農事組合法人』『その他』の3種に分類され、会社法人と農事組合法人の法人経営体は、実施できる事業の幅に違いがあります。

会社法人は会社法に基づき設立される法人で、『株式会社』『合名会社』『合資会社』『合同会社』の4種類です。会社法人であれば農業経営や農作業以外にも、さまざまな事業による経営の多角化が可能です。

一方、農事組合法人では事業の多角化ができません。実施できるのは農業経営や農作業の共同化に限定されています。また『農業協同組合法(第七十二条の十三)』で定められた対象者でなければ、原則的に組合員にはなれません。

参考:農業協同組合法第七十二条の十三 | e-Gov法令検索

農地を所有できる農地所有適格法人

法人が農業に参入するには、農地の確保が不可欠です。農地を確保する方法には『所有する(農地の権利を有する)』と『貸借する』の2パターンがあります。

農地の貸借は一般法人でも可能ですが、農地の所有が可能なのは『農地所有適格法人※』のみです。

例えば、農地の貸借で事業を営んでいた法人が「貸借期間を気にせずに農業を営みたい」「農地所有適格法人にしか適用されない補助金を利用したい」という場合は、以下の要件を全て満たし、農地所有適格法人になる必要があります。

※農地所有適格法人:農地の権利を有して農地を耕作し、農業経営が行える法人のこと

農地所有適格法人の要件
法人形態要件 株式会社(公開会社を除く)・農事組合法人・持分会社のいずれかである
事業形態要件 法人の事業の中心が『農業』である(農畜産物を原材料として行う製造業・加工業・貯蔵業などを含む)
議決権要件 農業関係者が総議決権の過半を占めている
役員要件 半数を超える役員が農業に常時従事している必要があり、役員(もしくは重要な使用人の1人以上)が法人が行う農作業に携わっている

参考:農業法人について|農林水産省

参考:法人が農業に参入する場合の要件|農林水産省

参考:第2条第3項|農地法

参考:「新たに農業分野に参入したい」(企業参入) - 農地法の手続き | 広島県

代表的なM&Aスキーム

農業M&Aでは、どのようなスキームが用いられるのでしょうか?代表的なスキームである事業譲渡と株式譲渡の特徴や、農業M&Aで利用する際の特徴を解説します。

事業や資産を選んで買収する「事業譲渡」

『事業譲渡』とは、事業や資産の一部もしくは全部というように、買い手が何を引き継ぐか選ぶのが特徴のスキームです。売り手、もしくは売り手・買い手ともに個人の農業M&Aでは、事業譲渡によって売買します。

また規模の小さな法人経営体のM&Aも、事業譲渡で行われるケースが多いでしょう。事業譲渡では、引き継ぐ資産や契約は全て個別に手続きをしなければいけません。規模の小さな法人であれば、比較的手間が少なく実施しやすいでしょう。

法人を丸ごと買収する「株式譲渡」

M&Aの対象が法人経営体であれば、『株式譲渡』もよく用いられます。買い手がM&Aの対象となる法人経営体の株式を買収することで、法人の持つ資産・契約・負債などを丸ごと引き継ぐスキームです。

事業譲渡のように資産や契約ごとに個別に手続きをする必要がないため、比較的シンプルな手続きでM&Aを実施できます。

スキームについて詳しく解説している以下も、ぜひご覧ください。

 M&Aにはどんな種類がある?株式譲渡、事業譲渡、合併の違い
手法
M&Aにはどんな種類がある?株式譲渡、事業譲渡、合併の違い

昨今は多くの企業においてM&Aが成長戦略として位置付けられています。M&Aと一口にいっても複数のスキーム(手法)があるため、目的によって最適なものを選択する必要があります。株式譲渡や事業譲渡など、M&Aの種類とその特徴について解説します。

農地所有適格法人は要件に注意

買収する法人経営体が農地所有適格法人の場合には、M&A後に要件を満たせない場合、農地を手放さなければいけない事態も起こり得ます。M&Aで問題になるのは、総議決権の過半数を農業関係者が保有しなければいけない議決権要件です。

議決権要件を満たしたままM&Aを実施するためには、まず買い手法人に所属する個人が法人経営体の株式を買収します。そして買収した個人が法人経営体で、常時農業に従事する役員になる流れです。

これにより議決権要件を満たしつつ、実質的な支配権は買い手に移行します。

農業のM&A案件の探し方

M&Aで農業経営体を買収するには、案件を探さなければいけません。案件を探せる場所として代表的なプラットフォームと、自治体によるサポートについてチェックしましょう。

プラットフォームを利用する

プラットフォームはインターネット上のサイトで、M&Aの売り手と買い手をマッチングするサービスです。買い手は条件を入力することで、掲載されている案件の中から自社に合うものを見つけられます。

何よりもリーズナブルな料金で利用できるのが魅力です。プラットフォームによっては、別料金で専門家へサポートを依頼できるサービスを提供しているケースもあります。

事業承継・M&Aプラットフォームの『TRANBI(トランビ)』にも、農業M&Aの案件が掲載中です。個人経営体・法人経営体のどちらも掲載されており、中には無償譲渡の案件もあります。農業経営体の買収を検討しているなら、まずはチェックしてみるとよいでしょう。

事業承継・M&Aプラットフォーム TRANBI【トランビ】

自治体が行うサポートもある

各自治体でも農業経営体の事業承継をサポートする仕組みを用意しています。例えば熊本県では『くまもと農業経営継承支援センター』を設立し、農業経営体と新規就農者などのマッチングを支援中です。

また茨城県には『茨城県農業参入等支援センター』があり、第三者承継を後押しする制度が作られています。

自治体のサポートは単にマッチングするだけでなく、研修や引き継ぎの準備はもちろん、引き継いだ後のフォローアップまで実施しているケースも多いのが特徴です。

農業M&Aのメリット

新たに農業へ参入する場合、自力で始める方法もあります。M&Aによって農業を始めるのは、自力で始めるのと比べどのようなメリットがあるのでしょうか?併せてM&Aにより規模が拡大した場合のメリットも紹介します。

農地や販路などを引き継げる

農業を始めるには土地が欠かせません。しかし土地をゼロから取得するには手間と時間がかかります。M&Aで農業経営体を買収すれば、土地はもちろん必要な設備も全てそろった状態で引き継ぎが可能です。

併せて、ノウハウや収穫した作物の販路なども取得できるため、農業経営を軌道に乗せやすいでしょう。有形・無形の必要なものが全てそろった状態で引き継げるため、買収後に早いタイミングで成果を出せる可能性が高まります。

規模の拡大による経営の安定化

既に農業に従事している農業経営体にとっても、M&Aにはメリットがあります。例えば同じ地域内の経営体とM&Aを行えば、規模の拡大が実現可能です。経営体の規模が大きくなれば、コスト削減によって経営を安定させられるでしょう。

また飲食店や食品加工業者など、農業に関連する事業を営む法人が農業M&Aを実施すると、コスト削減や安定供給に加え、ブランド化などのシナジー効果を得られます。このようなシナジー効果も経営の安定化につながるはずです。

M&A実施前のチェック事項

農業M&Aを行う前に確認しておくべき内容を紹介します。事前チェックが不足していると、経営体を引き継いだ後に取り返しのつかない事態も起こり得ます。そのため慎重な確認が必要です。

農地の状態

まずチェックすべきなのが農地の状態です。農地の状態によっては想定していた収量が得られず、思うように利益が出ないかもしれません。

可能であれば買収する1~2年前から、買収予定の農業経営体が所有する農地を確認するとよいでしょう。また農地は春夏秋冬の全ての季節に見ることが必要です。1年を通して確認すれば、季節による変化も分かります。

設備や道具の状態

農業経営体の保有している設備や、そのメンテナンス状況もよく確認しましょう。リストでは十分な設備がそろっているようでも、実際に見てみるとメンテナンスが不十分で、そのままでは使えないケースもあります。

そのまま引き継ぐと、メンテナンスに手間やコストがかかるかもしれません。そのため状態の確認が必要です。

農業へ新規参入する場合には、設備の一覧に簡単な説明文を入れた書類の作成を依頼してもよいでしょう。慣れていない設備について概要を把握しやすくなります。

まとめ

M&Aで農業経営体を買収するには、事業譲渡や株式譲渡のスキームを用います。ただし農地所有適格法人は要件を満たすように引き継がなければいけないため、手順に注意しましょう。

また案件を探すときには、プラットフォームや自治体のサポートを利用します。2,000件以上の案件が掲載されているプラットフォーム『TRANBI(トランビ)』にも、農業経営体のM&A案件が掲載されています。

農業M&Aを検討しているなら、まずは条件に合う案件探しから始めてみましょう。

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