不動産目的のM&Aの特徴を解説。メリットやスキーム、リスクは?

不動産目的のM&Aの特徴を解説。メリットやスキーム、リスクは?

不動産M&Aは会社の持つ不動産の取得を目指すM&Aの一種で、主に株式譲渡や会社分割により行われます。買い手・売り手双方にメリットやデメリットがあるほか、リスクもある手法です。実施する取引が不動産M&Aに該当するか確認した上で実施しましょう。

不動産目的のM&Aの特徴

M&Aの中でも、会社の持つ不動産を目的として実施する取引を、不動産M&Aといいます。不動産M&Aのメリットや注意点を理解するために、まずは基本的な特徴をチェックしましょう。

不動産を保有する会社を売買する

不動産M&Aとは、企業が保有する不動産の取得を目的としてM&Aを行うことです。そのために不動産を持つ会社の株式を取得して子会社化する方法などがあります。

不動産M&Aは不動産の取得だけでなく、会社の事業やそのほかの資産を買収することもあります。

ただし従来のM&Aとは違い、不動産M&Aといった場合は、あくまで売却側の企業が持っている不動産の取得が目的です。

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売り手にはどのようなメリットが?

売り手にとって、不動産とともに会社も売却する手法は、どのようなメリットがあるのでしょうか?代表的なメリットである税負担の軽減について確認します。

不動産を個別に売却するより税負担が軽減

不動産そのものを譲渡しようとした場合、法人経営の場合は売却益に対して法人税が課せられます。また、法人税等を控除した残額が不動産オーナーに分配されますが、この金額に対しても所得税が課せられるのです。

また個人経営の場合には課税所得が課され、収入によっては50%以上も課税されることがあります。

一方、M&Aによって株式の譲渡を行った場合は税金を安く抑えられます。株式の譲渡の場合は、所得税および復興特別所得税15.315%、地方税5%の20.315%のみしかかかりません。

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不動産M&Aで用いられるスキーム

保有している不動産を目的として会社そのものを取引する不動産M&Aを実施するには、『株式譲渡』や『会社分割』のスキームを用いるのが一般的です。それぞれの特徴をチェックしておくと、自社が行う取引に合う手法を選びやすくなります。

株主の変更で済む株式譲渡

売却会社の所有する株式の一部または全部を取得するのが株式譲渡です。売却企業の株式を100%取得することで、会社の支配権を全て取得できます。

株式を譲渡譲渡するだけなので手続きが他のスキームと比べて簡単な点や、他のM&Aと比べて短時間で会社を買い取れるのがメリットです。また他の資産や設備についても、取得時の税金がかかりません。

子会社を作り会社を譲渡する会社分割

不動産は売却したいけれど、会社の営む事業は継続したいと考える売り手であれば『会社分割』が向いているでしょう。会社を新しく設立し事業を引き継がせる『新設分割』が向いています。

まずは不動産を保有する会社を新しく作りましょう。新しく作った会社のM&Aを株式譲渡で実施すれば、売り手は事業を続けながら不動産を手放せます

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売り手は早期に準備する必要がある

税負担を抑えやすい不動産M&Aは、売り手にとってメリットの大きい取引といえます。ただしデメリットもある点には要注意です。不動産だけを売買する場合と比べ、準備に手間がかかります。

通常の不動産取引よりも時間がかかる

M&Aを実施するには、会社そのものを売却するための準備を整えなければいけません。また、不動産取引と比べてM&Aでは、取引相手を探すのにも苦労するかもしれません。

M&Aの中では株式譲渡が比較的早めに行うことはできますが、不動産取引と比べれば、どうしても時間と手間がかかってしまいます

簿外債務などのリスク解消が求められる

不動産取引とは異なり、M&Aは会社・事業そのものを引き継ぎます。そのため、買い手にとってみれば買い手にとってみれば相手先の持っている負の資産も引き継いでしまう可能性があるのです。 例えば帳簿に記載されない債務である『簿外債務』は、そうした負の資産のひとつです。

簿外債務には、未払い残業代や社会保険料、買掛金、あるいは訴訟リスクなどがあります。こうした負の資産を知らないうちに引き継がないためにも、デューデリジェンス(対象企業を事前調査すること)が必要です。

そのため売り手にとってリスクの解消は必須といえます。

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不動産M&Aで気を付けたいポイント

売り手にとっての不動産M&Aは、デメリットもあると分かりました。同時に買い手にとっても注意しておきたい点があります。代表的な三つのポイントをチェックしましょう。

M&A会社や専門家への費用が発生する

不動産M&Aを実施するときに注意すべきなのは『費用』がかかる点です。買い手であれば、弁護士といった専門家に交渉や売り手の調査を依頼するケースもあるでしょう。M&A会社を利用すれば、下記のような手数料も必要です。

  • 相談料
  • 着手金
  • 中間金
  • リテイナーフィー
  • デューデリジェンス費用
  • 成功報酬

成功報酬は、取引の規模が大きくなるにつれ料率が下がる『レーマン方式』を採用する会社がほとんどです。そのためM&Aの規模によって費用が大きく異なります。

買い手の場合、費用の節約を意識するなら、M&AをサポートするTRANBIの利用を検討するとよいでしょう。レーマン方式では数百万円の成功報酬が必要な案件でも、TRANBIなら下記の通り月額料金のみで利用可能です。売り手の場合は、利用料は無料です。

  • 売却希望価格500万円以内:ベーシック3980円/月
  • 売却希望価格3000万円以内:ビジネス9800円/月
  • 売却希望価格無制限:エンタープライズ1万9800円/月
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まとめ

不動産M&Aは、売り手の持つ不動産を目的に実施するM&Aです。会社を丸ごと取得する株式譲渡や、新しく作った会社へ不動産を引き継がせ株式譲渡を実施する会社分割で行われます。

買い手は市場に出回りにくい不動産を取得できる可能性がありますが、買収以外にかかる費用や時間、手間については考慮しておかなければなりません。

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記事監修: 株式会社トランビ 代表取締役CEO 高橋 聡
【プロフィール】
アスクホールディングス株式会社代表取締役社長、中小企業庁中小M&Aガイドライン作成委員。アクセンチュアを経てアスクホールディングス株式会社を先代から事業承継。中小企業におけるM&A活性化の必要性を痛感しトランビを創業。
著書: 「起業するより会社は買いなさい」サラリーマン・中小企業のためのミニM&Aのススメ
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