不動産M&Aとは?手法・節税メリット・実務上のリスクと成功事例を網羅
不動産M&Aとは、不動産を保有する会社(株式)を譲渡して資産を移転する手法です。現物売買との違いや法人税・消費税の節税メリット、手取りの考え方、株式譲渡の仕組み、否認リスクや実務上の注意点まで解説します。
所有する収益不動産や自社ビルを売却したいが、多額の法人税支払いや複雑な出口戦略に不安を感じていませんか。
不動産M&Aは、会社(株式)を譲渡する形を取ることで、取引形態によっては税負担や手取りを最適化できる手法です。
本記事では、現物売買との違い、買い手・売り手の利点、代表的なスキーム、そして税務上の留意点と否認リスクの考え方まで詳しく解説します。
この記事を読めば、実務上のリスクを回避しながら、最適な条件で資産を承継・売却するための具体的な手順が明確になるはずです。
将来の安定した資産形成や円滑なリタイアを実現するために、まずは不動産M&Aの基礎から正しく理解していきましょう。
具体的な検討を始める前に、まずはこの手法の定義と現物売買との違いを整理することが、成功への第一歩となります。
不動産M&Aの定義と不動産売買との決定的な違い
この章では、不動産M&Aの基本概念を整理し、通常の不動産現物売買とどのような点が異なるのかを詳しく紐解きます。
法人の権利義務を包括的に引き継ぐ仕組みや、現在この手法が注目されている社会的な背景について、順を追って解説していきましょう。
不動産M&Aの定義
不動産M&Aとは、不動産を所有している「会社(株式)」を売買することで、間接的に不動産の所有権を移転させる手法を指します。
実態としては物件のオーナーチェンジですが、法律上は株主が交代するだけであるため、不動産の登記名義自体を変更する必要がありません。
この手法は、単なる資産の移動ではなく「経営権の譲渡」としての側面が強く、不動産価値に加えて会社の財務状況や将来性も評価対象となります。
不動産投資家だけでなく、事業拡大を狙う法人にとっても、資産取得の手段として広く活用されるようになっています。
譲渡対象の比較
不動産の現物売買が、特定の土地や建物を移転させる「特定承継」であるのに対し、不動産M&A(株式譲渡)は、会社そのものの株主(支配権)が交代する取引です。
会社の法人格はそのまま存続するため、賃貸借契約や許認可などが維持されやすく、手続きを簡略化できるケースがあります。
一方で、取引後も契約上の当事者はあくまで「会社」であり、簿外債務や偶発債務など会社に内在するリスクも含めて引き受ける点には注意が必要です。
課税対象の根本的な違い
現物売買で利益が出た場合、法人では譲渡益が課税所得となり、約30〜35%の法人税等の課税対象となります。
これに対し、不動産M&Aは「株式の譲渡」として扱われるため、個人のオーナーであれば分離課税により一律20.315%の税率が適用されます。
この税率の差が、数億円規模の取引においては数千万円以上の手残り金額の差となって現れることになります。
さらに、売却後に会社を清算して残余財産を分配する場合の所得税負担も回避できるため、出口戦略としての税務効率は極めて高いと言えます。
注目される背景
近年、中小企業の経営者の高齢化に伴う後継者不在問題が深刻化しており、事業承継の有力な選択肢として不動産M&Aが選ばれています。
会社を廃業して不動産だけを売却しようとすると、多額の解体費用や清算コストがかかり、手元に資金が残らないケースが多々あるためです。
また、買い手側にとっても、市場に出回らない優良な事業用不動産を会社ごと取得できるメリットが大きく、需要が高まっています。
こうした売り手と買い手双方のニーズが合致した結果、不動産M&Aは単なる節税策を超えた、重要な経営戦略として定着しつつあります。
不動産M&Aのメリット
不動産M&Aを検討する際に重要なのは、現物売買と比べて税負担や取引構造にどのような違いがあるかを正しく理解することです。
ここでは、買い手と売り手それぞれの立場から、不動産M&Aで得られる具体的なメリットを整理します。
買い手側
買い手側は、不動産を保有する会社の株式を取得することで、現物売買に伴う各種税負担を抑えられます。
コスト面だけでなく、市場に出回らない希少な物件を独占的に獲得できる点も、プロの投資家にとって大きな魅力となります。
【メリット①:不動産取得に関わる諸税(取得税・登録免許税)の回避】
株式売買では不動産の登記名義は変更されないため、不動産取得税や登録免許税は原則として発生しません。
その結果、取得時の初期コストを抑えやすくなり、投資効率の改善につながります。
【メリット②:建物部分の消費税が非課税】
現物売買では建物価格に対して10%の消費税が課されますが、株式譲渡であれば非課税取引となります。
取引規模が大きい物件では、消費税相当額が数千万円規模になるケースもあります。
【メリット③:市場に出回らない「水面下物件」の取得】
不動産M&Aは、仲介会社や専門家を通じた非公開案件として進められることが一般的です。
自社ビルや希少な立地の事業用不動産など、通常の流通ルートには乗らない優良資産を独占的に獲得できるチャンスがあります。
【メリット④:印紙税の削減】
高額な不動産売買契約書には多額の収入印紙が必要ですが、株式譲渡契約書に貼付する印紙税は定額または不要です。
事務的なコストの積み重ねも、取引規模が大きくなるほど買い手にとって無視できないメリットとなります。
売り手側
売り手側の大きなメリットは、株式譲渡を活用することで税負担を抑え、売却後の手残り資金を増やしやすい点です。
また、金銭的なメリットのみならず、長年経営してきた会社の責任や従業員の雇用を円滑に承継できる安心感も得られます。
【メリット①:手残り金額の最大化】
不動産を法人で売却する場合と比べ、株式譲渡では約20%の譲渡所得課税で済むため、結果として手残りが多くなります。
会社を清算する際の「二重課税」を回避できる点は、リタイア後の資金形成において決定的な優位性をもたらします。
【メリット②:廃業コストの削減】
建物の解体費用、在庫の処分費用、さらには会社清算に伴う諸手続きのコストをかける必要がありません。
会社をそのままの形で譲渡するため、本来であればマイナスとなるはずの「廃業コスト」をゼロに抑えることができます。
【メリット③:借入金・個人保証の解消】
株式譲渡後も、銀行借入金は原則として法人に帰属します。
そのため、売り手オーナーの経営者保証(個人保証)については、金融機関との事前協議を行い、解除や保証人の差替えを条件として交渉することが可能です。
条件が整えば、経営者保証から解放され、個人資産へのリスクを抑えた形で引退を検討できます。
不動産M&Aのデメリット
不動産M&Aには多くのメリットがある一方、法人を承継する特性上、現物売買とは異なるリスクもあります。
取引を成功させるためには、買い手・売り手双方が直面する可能性のあるデメリットを正しく認識し、対策を講じておくことが不可欠です。
買い手側
買い手側が最も懸念すべきは、法人格を承継することによって「予期せぬ負債」を抱え込んでしまう可能性です。
通常の物件調査では見えない財務的、法的なリスクをいかに排除するかが、買収後の成否を分けることになります。
【デメリット①:簿外債務・偶発債務の引き継ぎリスク】
会社を包括承継するため、帳簿に載っていない未払残業代や将来的な訴訟リスクなどの「負の遺産」を引き継ぐ恐れがあります。
これらのリスクを完全にゼロにすることは難しく、取引後に想定外の負債が表面化する可能性を考慮しなければなりません。
【デメリット②:デューデリジェンス費用の発生】
目に見えないリスクを回避するために、弁護士や公認会計士による詳細な買収監査(DD)を行う必要があります。
この調査費用は買い手側の負担となることが一般的であり、通常の不動産売買よりも事前の調査コストが高額になります。
【デメリット③:法人維持・運営コストの継続】
不動産取得後も、その法人を維持するための決算申告費用や法人住民税、社会保険料などのコストが発生し続けます。
単なる不動産管理だけでなく「法人の運営」という管理業務が加わるため、事務負担が増大する点は無視できません。
売り手側
売り手側にとっては、取引が「株式」の形態をとるがゆえに、買い手とのマッチングや交渉プロセスが複雑化する点が課題です。
不動産だけを売るよりも高い専門性と時間的な余裕が求められ、不備が見つかった際の減額リスクも考慮すべきです。
【デメリット①:買い手探しの難易度の高さ】
法人の責任まで引き受ける意欲のある買い手は、通常の不動産投資家よりも数が限られるため、マッチングが難航しがちです。
物件の価値は高くても、法人の財務状態やコンプライアンス状況に懸念があると、買い手が見つからないリスクがあります。
【デメリット②:成約までの期間の長期化】
詳細な物件調査に加え、法人の監査(DD)や条件交渉が必要なため、通常の売却よりも長い期間を要します。
現物売買よりも成約までに時間がかかるため、短期間での現金化を目的とする場合には適さないケースがあります。
【デメリット③:デューデリジェンスによる価格減額の可能性】
調査過程で未払債務や法的な不備が見つかると、
当初提示していた希望価格が、監査結果次第で大幅にダウンしたり、最悪の場合は破談になったりする厳しさを伴います。
不動産M&Aの主要な2つのスキーム
不動産M&Aで主に用いられるスキームは、株式をそのまま譲渡する方法と、資産を切り分けて再編する方法の2つです。
それぞれの仕組みと、実務上どのようなケースで選択されるかを整理します。
株式譲渡
株式譲渡は不動産M&Aの中で最も一般的なスキームで、オーナーが保有する株式を買い手に譲渡する方法です。
株主構成のみが変更されるため、契約関係や宅建業免許などの許認可を原則として引き継ぎやすく、手続きも比較的スムーズです。
会社分割(新設分割)+株式譲渡
特定の不動産や事業だけを切り出して譲渡したい場合に有効なのが、会社分割と株式譲渡を組み合わせたスキームです。
不要な事業や負債を旧会社に残し、特定の不動産のみを新設会社に承継した上で株式を譲渡することで、対象範囲を限定した取引が可能になります。
不動産M&Aの税制面で失敗・否認されないための重要ルール
不動産M&Aは税負担を抑えやすい手法ですが、節税のみを目的とした取引と判断されると税務上問題となる可能性があります。
適法かつ安全に取引を完了させるために、絶対に遵守すべき税務上の重要ルールと監視のポイントを解説します。
短期所有土地の譲渡制限(70%ルール)
土地の所有期間が5年以下で一定要件を満たす場合、株式譲渡であっても土地譲渡類似株式として扱われ、短期譲渡所得(分離課税)の高い税率(所得税30%+住民税9%等)が適用されることがあります。
特に、総資産に占める短期保有土地等の割合が70%以上となる法人は、租税回避を防ぐ観点から制度上の判定対象になりやすいため、事前に要件該当性を確認しておくことが不可欠です。
包括的租税回避防止規定(法人税法132条の2)
税務当局は取引に「事業上の合理的な理由」があるかを重視しており、節税だけが目的の不自然な再編は否認される可能性があります。
否認を避けるためには、事業承継や経営の合理化といった正当な目的を論理的に説明できる準備をしておくことが不可欠です。
国税庁 組織再編成に係る行為計算否認規定の解釈・適用を巡る諸問題
不動産M&Aを成功させるための重要ポイント
不動産M&Aは取引金額が大きく、法的責任も伴うため、事前準備の質が成否を左右します。
取引を円滑に進め、売り手・買い手双方が納得できる結果を導き出すための3つの肝を、実務の観点から整理します。
適正な企業価値評価(バリュエーション)
不動産M&Aにおける株価算出は、不動産の含み益を時価評価して純資産に加える「時価純資産法」をベースにするのが一般的です。
客観的なデータに基づいた適正な価格提示を行うことが、買い手からの信頼を獲得し、交渉をスムーズに進めるための第一歩となります。
徹底したデューデリジェンス(買収監査)の実行
買い手にとってリスクを洗い出す調査(DD)は、取引の安全性を担保するための生命線であり、網羅的に行う必要があります。
専門家による調査を通じてリスクを共有し、合意形成を行うことが、譲渡後のトラブル防止につながります。
借入金・個人保証の処理
M&A実行時には、会社が抱える借入金や経営者個人の連帯保証の取り扱いについて金融機関と事前の協議が必要です。
このプロセスを疎かにすると、最終段階で金融機関の承諾が得られず、取引が中断するケースがあります。
不動産M&Aの手続きの流れ
不動産M&Aは、通常の不動産売却よりも工程が多く、完了までに一定の期間を要するプロジェクトです。
全体のロードマップを把握しておくことで、焦らず着実に関係者との交渉を進めることが可能になります。
STEP1:専門家への相談と検討
まずはM&A仲介会社やプラットフォームの専門家へ相談し、不動産M&Aの可否を判断します。
自社の株式価値(バリュエーション)を試算し、匿名で案件を公開するための「ティーザー」作成など、売却の準備を整える重要な段階です。
STEP2:マッチングと秘密保持契約
プラットフォーム等を通じて買い手候補を探し、関心を示した企業と秘密保持契約(NDA)を締結します。
契約締結後、詳細な会社情報を開示し、トップ面談を通じて互いの経営方針や譲渡後のビジョンを共有します。
STEP3:基本合意の締結
交渉が順調に進めば、譲渡価格やスケジュール、スキームの骨子をまとめた「基本合意書(MOU)」を締結します。
この段階で買い手に独占交渉権が付与され、最終的な成約に向けた詳細調査のステージへと移行します。
STEP4:デューデリジェンス(買収監査)
買い手側が起用した専門家により、対象会社の財務、法務、不動産の権利関係などに関する徹底的な調査が行われます。
売り手側は求められた資料を全て開示し、簿外債務やリスクの有無を明らかにする誠実な対応が求められます。
STEP5:最終契約締結とクロージング
監査結果を踏まえた最終的な価格・条件の調整を行い、譲渡契約書を締結して決済(クロージング)となります。
株式の譲渡代金が支払われ、経営権が新オーナーに移転することで、不動産M&Aの全工程が完了します。
効率的なマッチングならM&Aプラットフォーム「TRANBI」がおすすめ
不動産M&Aを成功させるための最大の難関は、信頼できる最適なパートナーをいかに迅速に見つけ出すかという点です。
そこで活用したいのが、日本最大級の成約実績を誇るM&Aプラットフォーム「TRANBI(トランビ)」です。
TRANBIの最大の強みは、仲介会社を介さない「直接交渉」を採用しており、仲介手数料を大幅に削減できる点です。
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匿名での案件掲載が可能なため、情報漏洩のリスクを抑えつつ、水面下で着実に買い手を探すことができるのも大きなメリットです。
効率的かつコストを抑えた不動産M&Aを目指すなら、TRANBIは検討から成約までを強力にサポートする最良のパートナーとなるでしょう。
不動産M&Aに関するよくある質問
不動産M&Aを検討する際、経営者の方が特に不安に感じるのは、負債の取り扱い、コスト、そして法的な免許の維持ではないでしょうか。
通常の不動産売却とは異なるルールが多いため、実務上の細かな疑問を解消しておくことは、迅速な意思決定に直結します。
ここでは、現場でよく寄せられる3つの代表的な質問について、専門的な知見から具体的にお答えしていきます。
一歩踏み込んだ知識を身につけることで、取引におけるリスクを最小限に抑えることが可能になります。
借入金や負債があってもM&Aは成立する?
借入金や負債がある状態でも、不動産M&Aを成立させることは十分に可能です。
実務上は、不動産の時価評価額から負債総額を差し引いた金額をベースに株価を算出するため、債務超過でなければ問題ありません。
むしろ、買い手が債務を引き受けることで、売り手オーナーの個人保証が解除されるという大きなメリットを享受できるケースも多いです。
借入金の残債があっても、物件の含み益が十分であれば、一定の資金を確保した上での譲渡も可能です。
仲介手数料の相場は?不動産仲介(3%)と何が違う?
M&Aの仲介手数料は、不動産仲介で一般的な「3%+6万円」という宅建業法上の上限規制とは異なる体系に基づいています。
多くのM&A仲介会社では「レーマン方式」
成功報酬の最低額(ミニマムフィー)が設定されていることも多いため、少額案件の場合は通常の不動産仲介よりも手数料率が高くなる可能性があります。
しかし、M&Aプラットフォームを活用して直接交渉を行えば、これらの高額な仲介手数料を大幅にカットすることも可能です。
宅建業免許はそのまま継続できる?
株式譲渡による不動産M&Aであれば、法人格そのものが存続するため、宅建業免許は原則としてそのまま継続して利用できます。
法人の「役員」や「専任の宅建士」に変更がある場合にのみ、管轄官庁へ変更届を提出するだけで手続きは完了します。
名義変更の必要がないため、取引の途中で免許が途切れるといった営業上のリスクを回避できるのは大きな利点です。
ただし、会社分割を用いる場合などは、新会社での免許取得が必要になる可能性があるため、事前のスキーム設計が非常に重要となります。
まとめ
不動産M&Aは、現物売買と比べて、税務や承継の面で有利に進められるケースが多い手法です。
売り手は株式譲渡益に対する約20%の低税率を享受でき、買い手は取得諸税や消費税を大幅に削減できるため、双方にとって経済的メリットが極めて大きい取引と言えます。
一方で、法人格を丸ごと承継することによるリスク管理や、税務当局から否認されないための正当な事業目的の構築など、専門的な知識も欠かせません。
今回解説した「よくある質問」の通り、借入金があっても調整は可能であり、免許維持などの実務面でも株式譲渡は非常にスピード感のある手法です。
成功のためには、自社の資産状況を客観的に評価した上で、TRANBIのようなプラットフォームを賢く活用して幅広い候補者と出会うことが近道です。
まずは無料の査定やプラットフォームへの登録を通じて、最適な出口戦略としての不動産M&Aについて具体的な検討を開始してみてはいかがでしょうか。