学校法人M&Aとは?事業会社の買収との違いと承継方法(理事交代・分離・合併)、注意点を解説
学校法人は買収できる?学校法人M&Aとは何かを解説。事業会社の買収との違いを踏まえ、理事交代・分離・合併による承継方法を紹介します。非営利法人としての制度や所轄庁の認可、手続きの流れ、注意点まで整理します。
- 02 学校法人のM&Aはなぜ「特殊」?事業会社の買収と決定的に違うポイント
- 学校法人は「株」を買って支配する組織ではない(持分がない)
- 所轄庁の認可・届出が前提。合意だけでは完了しない
- 譲渡対価が「退職金」になるケースがある(実質コストの勘所)
- 教育の質と非営利性があるからこそ、DD(調査)が重要になる
- 05 学校法人M&Aの注意点|非営利法人ならではの課題とデメリット
- 注意点① 所轄庁の認可・行政手続きが絡み、意思決定も長期化しやすい
- 注意点② 非営利性により、営利目的の運営や“投資回収”が前提にしにくい
- 注意点③ 財務再建は“経営者が変わるだけ”では進まない
- 注意点④ 教育の質を維持する責任があり、学内外の信頼が成果を左右する
- 注意点⑤ 施設老朽化・将来投資の見落としは“あとから効く”
- 07 学校法人M&Aの流れ|マッチングから承継完了までの基本プロセス
- ① 承継先の探索・マッチング
- ② 基本合意・条件交渉
- ③ デュー・デリジェンス(調査)
- ④ 行政手続き・法人手続き
- ⑤ 承継完了・新体制のスタート
「学校法人は買収できるのだろうか?」と疑問に思う人も多いでしょう。
株式会社なら株式を取得して経営権を移しますが、学校法人は非営利法人であり、株式や持分が存在しません。
結論から言うと、学校法人は“株を買う”形では買収できません。ただし、理事交代・分離・合併といった学校法人特有の方法で、経営体制を承継することは可能です。
本記事では、学校法人M&Aの基本(買収できる?の答え)から、事業会社の買収との違い、3つの承継方法、所轄庁の認可や寄附行為の変更などの手続き、注意点、進め方までを整理します。
学校法人は買収できる?学校法人M&Aの基本
学校法人は株式会社のように株式(持分)を買って支配する仕組みではないため、一般的な「株式譲渡による買収」はできません。
一方で、学校法人でも経営権(実質的な支配権)を承継することは可能です。実務では主に、理事交代(ガバナンスの入れ替え)、分離(学校単位の移管)、合併(法人統合)の3パターンで検討します。
なお学校法人の承継では、所轄庁の認可・届出や寄附行為(定款相当)の変更などが関わることがあり、一般企業のM&Aよりも制度・手続き理解が重要です。
学校法人のM&Aはなぜ「特殊」?事業会社の買収と決定的に違うポイント
「学校法人を買収したい」「学校を引き継ぎたい」と考えたとき、多くの人が最初に戸惑うのが、学校法人のM&Aは事業会社のM&Aと同じ手法で進められない点です。
株式会社であれば株式譲渡で経営権を移すのが一般的ですが、学校法人は非営利法人であり、ガバナンスや手続きのルールが根本から異なります。ここを理解せずに動くと、交渉が前に進まない・想定外の手続きが発生するなど、遠回りになりがちです。
学校法人は「株」を買って支配する組織ではない(持分がない)
学校法人には、株式会社のような「株式(持分)」がありません。つまり、一般的なM&Aのように「株を買えば経営権が移る」という構造ではないのが最大の違いです。
そのため学校法人の承継では、理事長や理事の入れ替えなど、法人の意思決定機関(理事会・評議員会等)の設計を前提に進める必要があります。
ここが理解できると、「何を合意すべきか」「どこが交渉ポイントか」が一気にクリアになります。
所轄庁の認可・届出が前提。合意だけでは完了しない
事業会社同士のM&Aは当事者間で合意すれば成立に近づきますが、学校法人はそう簡単ではありません。学校法人は所轄庁の認可・届出とセットで動くため、当事者の合意だけでは完了しません。
たとえば理事長の退任・就任、寄附行為(定款に相当)の変更、設置者変更など、行政手続きに向けた調整が必要になる場面があります。スケジュールも「いつでも良い」ではなく、新学期(4月)をまたぐかどうかなど、現場の混乱を避ける配慮が重要です。
譲渡対価が「退職金」になるケースがある(実質コストの勘所)
学校法人の承継では、売り手が株式の売却益を得るわけではありません。その代わり、現実的には理事の退職金が「譲渡対価に近い位置づけ」になるケースがあります。
ここを知らずに検討すると、表面上は「買収金額が小さそう」に見えても、実際には退職金・手続き費用・再生投資が積み上がり、想定より負担が大きくなることがあります。
学校法人M&Aは、“価格”より“実質負担”で比較するのが鉄則です。
教育の質と非営利性があるからこそ、DD(調査)が重要になる
少子化や定員割れで苦しい法人も多い一方、学校は「止められない」事業です。
だからこそ、学校法人のM&Aでは財務再建だけでなく、教育の質の維持や運営体制の安定がセットで問われます。
財務の数字だけでは見えないリスクもあるため、デュー・デリジェンス(DD)では、簿外債務や修繕負担、運営体制、ガバナンス(理事会・評議員会の実態)など、“学校法人特有の論点”を丁寧に確認する必要があります。
次章では、学校法人M&Aでよく使われる3つの方法(理事交代/分離/合併)を整理します。
学校法人M&Aの方法(スキーム)|理事交代・分離・合併の3パターン
学校法人のM&Aは、株式会社の買収とは仕組みが大きく異なります。学校法人は非営利法人であり、株式会社のような株式や持分が存在しないため、株式譲渡によって経営権を移転することはできません。
そのため学校法人の承継では、主に次の3つの方法が用いられます。
- 理事長・理事の交代(ガバナンスの入れ替え)
- 分離(学校単位の移管)
- 合併(学校法人の統合)
いずれの方法でも、所轄庁の認可や寄附行為(定款)の変更などの手続きが必要になるケースがあり、一般企業のM&Aよりも制度面の理解が重要になります。
ここでは、学校法人M&Aで実際に用いられる代表的なスキームを整理します。
理事交代によるM&A(最も一般的な承継方法)
学校法人M&Aで最も多いのが、理事長や理事の入れ替えによる経営権の承継です。学校法人には株式がないため、理事会の構成が変わることで実質的な支配権が移転します。
学校法人の主な組織は次の通りです。
- 理事会:学校法人の意思決定機関
- 監事:財務や運営を監査する機関
- 評議員会:重要事項について意見を述べる諮問機関
一般的には理事の過半数が交代することで、新しい経営体制のもとで学校運営が可能になります。
また実務では、退任する理事に対して退職金が実質的な譲渡対価として支払われるケースもあります。ただし学校法人には特別の利益供与の禁止などの規定があるため、退職金は法人規程に基づき適正に算定する必要があります。
そのため実際の承継コストは、退職金に加えて施設修繕・募集強化・教育投資なども含めて総合的に検討することが重要です。
分離による学校承継
学校法人が複数の学校(大学・高校・中学校など)を運営している場合、その一部を別の法人へ移管する分離という方法が用いられることがあります。これは企業でいう事業譲渡に近いスキームです。
例えば大学・高校・中学校など複数の学校を持つ法人が、そのうち一校のみを別の学校法人へ移管するケースが該当します。この場合は学校の設置者変更手続きなどが必要になります。
分離には主に次の二つの方法があります。
- 吸収分離:既存の学校法人に学校を移管する
- 新設分離:新たな学校法人を設立して学校を移管する
少子化による定員割れや学費収入の減少などにより、学校単体での運営が難しくなった場合、教育機関の再編手法として検討されることがあります。
学校法人の合併
学校法人同士が統合する形で再編を行う方法が合併です。少子化による学生数減少や教育業界の競争激化を背景に、法人統合によって経営基盤を強化するケースも見られます。
合併には次の2種類があります。
- 吸収合併:既存の学校法人が別法人を引き継ぐ
- 新設合併:複数の学校法人が統合し新法人を設立する
合併によって学部・施設・教育資源を再編することで、教育の質の維持や経営基盤の強化につながる可能性があります。
ただし合併では、所轄庁の認可や法人手続き、理事会・評議員会の体制など多くの調整が必要になります。
教育現場への影響も考慮しながら、慎重に進めることが重要です。
どれを選ぶべき?判断の早見ポイント
3パターンの使い分けは、まず次の軸で整理するとスムーズです。
- 買い手が学校法人か/事業会社か(分離・合併は学校法人が関与する形になりやすい)
- 引き継ぎ対象が「法人全体」か「学校単位」か(学校単位なら分離が有力)
- 所轄庁との調整の重さ(手続き・スケジュールの制約)
- 実質負担(退職金/修繕/募集・広報/人材)
学校法人M&Aのメリット
学校法人M&Aは、少子化や経営環境の変化が続く教育業界において、学校の存続や経営改善の手段として活用されることがあります。
株式会社のM&Aとは制度が異なるものの、学校法人にとってもさまざまなメリットがあります。
学校の存続につながる
少子化の影響により、学生数の減少や定員割れに直面する学校法人は増えています。
経営が厳しくなった場合でも、学校法人M&Aによって新しい運営主体へ承継できれば、学校自体を存続させることが可能になります。
特に地域に根ざした学校の場合、閉校は地域社会への影響も大きくなります。学校法人M&Aによって運営体制を引き継ぐことで、教育環境や地域の教育資源を維持できる点は大きなメリットといえるでしょう。
教育投資や施設整備が進む
新たな運営主体のもとで経営体制が変わることで、教育環境の改善が進むケースもあります。
例えば、施設の改修や設備投資、教育プログラムの刷新などです。
学校法人単独では難しかった投資でも、承継先の法人やグループの資金力や経営ノウハウを活用できれば、教育の質の向上や学校ブランドの再構築につながる可能性があります。
後継者問題の解決につながる
学校法人でも、理事長や理事の高齢化による後継者問題が課題になることがあります。親族や学内で後継者が見つからない場合、学校運営の継続が難しくなることもあります。
学校法人M&Aによって外部の学校法人や教育事業者に承継することで、新しい経営体制のもとで学校運営を続けることが可能になります。結果として、教職員や学生への影響を最小限に抑えながら承継できる点もメリットといえるでしょう。
次章では、買い手・売り手それぞれのメリットと、実際に成立しやすい承継先(学校法人・事業会社・医療法人など)のパターンを整理します。
学校法人M&Aの注意点|非営利法人ならではの課題とデメリット
学校法人のM&Aは、一般的な事業会社の買収とは性質が異なります。
学校法人は非営利法人であり、教育という公共性の高い事業を担うため、経営権の移転や資産の扱いには独自のルールがあります。
近年は、少子化による入学者数減少や定員割れ、施設老朽化による修繕費の高騰などで財務的に厳しい学校法人も増え、M&Aは再建手段として注目されています。
一方で、一般企業のM&Aと同じ感覚で進めるとつまずきやすい点も多く、注意点(=デメリット)を事前に把握することが重要です。
ここでは、学校法人M&Aで特に押さえておきたいリスクや課題を整理します。
注意点① 所轄庁の認可・行政手続きが絡み、意思決定も長期化しやすい
学校法人は私立学校法に基づき設立され、運営には所轄庁(大学であれば文部科学省、高校以下は都道府県)が関わります。
そのため学校法人のM&Aは、売り手・買い手が合意すれば終わりではありません。理事長や理事の変更、学校の設置者変更、合併などを進める場合、行政への届出・事前相談が必要になるケースがあります。
さらに寄附行為(定款に相当)の変更が絡むと、認可が必要になることもあります。
これらのプロセスは一般企業のM&Aより工程が増え、意思決定や手続きが長期化しやすいのが、学校法人M&Aの大きなデメリットです。新学期や募集時期も踏まえ、スケジュールに余裕を持った計画を立てましょう。
注意点② 非営利性により、営利目的の運営や“投資回収”が前提にしにくい
学校法人は非営利法人であり、株式会社のように利益を株主へ配当することはできません。教育活動で得た余剰は、学校運営や教育研究への再投資が前提です。
また私立学校法では特別の利益供与の禁止が定められており、理事や関係者に不当な利益を与える行為は制限されます。したがって一般企業の買収のように、「買ってすぐ収益改善→回収」というモデルは成立しにくく、経営の自由度に一定の制約があります。
買い手側は、教育事業の持続可能性や社会的価値を重視した運営方針を前提に検討する必要があります。
注意点③ 財務再建は“経営者が変わるだけ”では進まない
学校法人がM&Aを検討する背景には、少子化や教育業界の二極化といった構造的課題があります。定員割れが続けば学費収入が落ち、財務基盤が弱くなりやすいのが実情です。
そのため承継後は、中長期の再生計画が不可欠になるケースが多く、短期でのV字回復を想定するとギャップが生まれます。例えば次のような施策が検討対象です。
- 学生募集戦略の見直し
- 教育プログラムの刷新
- 広報・ブランディングの強化
- 収益事業の導入
- 施設設備への再投資
学校法人M&Aは、「買って終わり」ではなく、買った後の再生投資が本番という前提で進めるのが安全です。
注意点④ 教育の質を維持する責任があり、学内外の信頼が成果を左右する
学校法人は単なるビジネスではなく、教育機関として社会的役割を担います。
M&Aによる体制変更が教育の質の低下につながれば、学生募集や評判に直結し、再建がより難しくなります。
特に次の点はチェックポイントです。
- 教員体制が維持できるか
- カリキュラムの質が保たれるか
- 学生・生徒の学習環境が守られるか
- 学園ブランドが毀損しないか
承継後の運営方針は、早い段階で言語化し共有できる状態にしておくのが実務的です。
注意点⑤ 施設老朽化・将来投資の見落としは“あとから効く”
学校法人では校舎や設備など、施設投資が大きな負担になることがあります。歴史のある学校ほど老朽化が進み、修繕費が高額化しやすい点に注意が必要です。
デュー・デリジェンスでは、次のような点を確認しましょう。
- 校舎や設備の老朽化状況
- 将来の修繕計画
- 借入金や補助金の条件
- 土地や施設の所有関係
見落としがあると、承継後に想定外の投資が必要になり、実質負担が膨らみます。財務面だけでなく施設面の調査も重要です。
次章では、学校法人M&Aを実際に進める場合の基本的な流れを解説します。
マッチングから交渉、デュー・デリジェンス、行政手続きまで、全体像を整理していきましょう。
学校法人M&Aの承継先|学校法人・事業会社・医療法人などのパターン
学校法人のM&Aでは、必ずしも学校法人同士で承継されるとは限りません。実務では、学校法人・事業会社・医療法人など複数の主体が買い手になるケースがあります。
少子化による入学者数減少や定員割れ、施設の老朽化による修繕費の高騰など、学校法人を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。そのため、経営の持続可能性を高めるために、外部の資本や経営ノウハウを取り入れる再編が注目されるようになりました。
ここでは、学校法人M&Aで見られる代表的な承継パターンを整理します。
学校法人が承継するケース
最も一般的なのが、学校法人同士の統合です。
少子化が進む中で教育業界は二極化が進んでおり、学生募集力のある学校とそうでない学校の差が広がっています。
そこで行われるのが、学校法人同士の統合による経営基盤の強化です。
例えば以下のような形です。
- 垂直統合:大学が中学・高校を取得し付属校化する
- 水平統合:同規模の学校法人同士が統合しブランド力を高める
- 学部再編型統合:学部・学科の再編で学生募集力を高める
特に大学では、内部進学ルートを確保する目的で、高校や中学校を運営する学校法人を承継するケースが見られます。内部進学枠を設けることで、安定的に入学者数を確保できるのがメリットです。
また、同規模の学校法人が統合することで、管理部門の効率化や教育投資の集中を実現できる場合もあります。
事業会社が承継するケース
件数は多くありませんが、事業会社が学校法人の運営に関与するケースもあります。
例えば以下のようなケースです。
- 教育サービス企業による学校法人の再建
- IT企業による教育DXの推進
- 人材会社による職業教育機関の運営
事業会社は、民間企業ならではの経営ノウハウやマーケティング力を活用できる点が強みです。学生募集や広報戦略の強化、教育プログラムの改革など、経営視点での改善が期待されることがあります。
ただし学校法人は非営利法人であるため、株式会社のように利益配当を行うことはできません。また、特別の利益供与の禁止など、営利企業とは異なる規制があります。
そのため事業会社が関与する場合は、教育の質の維持と公益性の確保を前提としたガバナンス設計が重要になります。
医療法人などが承継するケース
医療法人や専門職系の法人が学校法人を承継するケースもあります。
特に以下の分野では相性が良いとされています。
- 看護学校
- 医療系大学
- リハビリ専門学校
- 歯科衛生士養成校
医療法人が教育機関を運営すると、現場と教育の連携を強化できるメリットがあります。臨床現場の知見を教育に反映できるため、実践的な教育を提供しやすくなるでしょう。
また人材不足が課題となる医療業界にとっては、人材育成機関を自ら持つことが中長期的な人材戦略になるケースもあります。
承継先選びで重要になる視点
学校法人M&Aでは、単純に価格だけで承継先を決めることは難しい場合があります。
教育機関は社会的影響が大きいため、次のような視点が重要になります。
- 教育の質を維持できるか
- 学生・生徒の学習環境が守られるか
- 教職員の雇用が維持されるか
- 地域社会との関係が継続できるか
特に学校法人は公益性が高い組織であるため、財務再建だけでなく教育機関としての使命を維持できるかが重要な判断材料になります。
次章では、学校法人M&Aを進める際に知っておきたいデメリット・注意点・課題について整理します。所轄庁の認可、寄附行為の変更、ガバナンスの設計など、実務でつまずきやすいポイントを見ていきましょう。
学校法人M&Aの流れ|マッチングから承継完了までの基本プロセス
学校法人のM&Aは、一般的な企業買収と同じく交渉や調査を経て進みます。ただし学校法人は非営利法人であり、さらに所轄庁の認可や寄附行為(定款)の変更など独自の手続きが必要になる点が特徴です。
そのため、通常の企業M&Aよりも行政手続きやガバナンス調整に時間がかかるケースがあります。
ここでは、学校法人M&Aの一般的な流れを整理します。
① 承継先の探索・マッチング
まずは承継先となる学校法人や事業会社などを探します。
学校法人は設立のハードルが高く数が限られているため、案件自体が頻繁には出てこないことが特徴です。
承継先を探す方法としては次のようなものがあります。
- M&A仲介会社
- 金融機関からの紹介
- 教育業界ネットワーク
- M&Aプラットフォーム
例えば3,300件以上の案件が掲載されているM&Aプラットフォーム「TRANBI」でも、教育関連の案件が掲載されることがあります。学校法人案件は希少なため、定期的に情報を確認することが重要です。(※掲載件数は変動があります)
② 基本合意・条件交渉
承継候補が見つかったら、次に基本条件の調整を行います。学校法人のM&Aでは株式譲渡が存在しないため、理事の入れ替えや法人統合などの方法を前提に交渉が進みます。
主な検討事項には次のようなものがあります。
- 理事長や理事の入れ替え
- 学校の運営体制
- 教職員の雇用維持
- 教育方針の継続
- 譲渡対価としての退職金
学校法人では株式が存在しないため、一般企業のM&Aのような譲渡価格は発生しません。その代わり、退任する理事への退職金が実質的な譲渡対価となるケースが多いとされています。
③ デュー・デリジェンス(調査)
条件の大枠が固まったら、対象となる学校法人の状況を詳細に調査します。
これはデュー・デリジェンス(DD)と呼ばれるプロセスです。
学校法人のDDでは、特に次のような点が確認されます。
- 財務状況(収支・負債・補助金)
- 入学者数の推移
- 定員充足率
- 施設設備の状態
- 寄附行為やガバナンス体制
少子化の影響により、学生募集が厳しくなっている学校も多くあります。そのため入学者数の将来見通しは重要な調査項目になります。
④ 行政手続き・法人手続き
学校法人のM&Aでは、行政手続きが重要なポイントになります。理事長の変更や学校の設置者変更などは、所轄庁への届出や認可が必要になることがあります。
例えば次のような手続きが行われます。
- 理事長の退任届
- 理事長の就任届
- 寄附行為の変更
- 学校設置者変更の申請
これらの手続きには理事会や評議員会の承認が必要になることもあり、法人内部の意思決定プロセスを踏む必要があります。
⑤ 承継完了・新体制のスタート
すべての手続きが完了すると、学校法人の新体制がスタートします。新しい理事会のもとで、学校の経営や教育運営が行われることになります。
ただし学校法人のM&Aは、承継して終わりではありません。むしろ重要なことはその後の財務再建と教育改革です。
学生募集の強化、教育プログラムの改善、施設投資などを通じて、学校の魅力を高めていく取り組みが求められます。
次章では、学校法人M&Aでよく見られる「理事の交代による経営権の移転」について詳しく解説します。学校法人特有の承継方法を理解しておきましょう。
学校法人M&Aのよくある質問(FAQ)
学校法人のM&Aは一般企業の買収とは制度が異なるため、「そもそも売買できるのか」「誰でも運営できるのか」など疑問を持つ人も多いでしょう。
ここでは学校法人M&Aに関してよくある質問を整理します。
学校法人は売却できる?学校法人M&Aは可能?
学校法人は株式会社のように株式を売却することはできません。学校法人には株式や持分が存在しないためです。
そのため学校法人のM&Aでは、理事の交代や学校の分離、学校法人同士の合併などの方法によって経営権を承継します。
売却益を得る形ではなく、退任する理事への退職金などが実質的な対価として扱われるケースがあります。
学校法人は買収できる?学校法人M&Aの仕組みは?
学校法人を株式会社のように「買収」することはできませんが、M&Aによって経営権を承継することは可能です。
例えば次のような方法があります。
- 理事長や理事の交代による経営承継
- 学校の分離による移管
- 学校法人同士の合併
ただし学校法人は非営利法人であり、所轄庁の認可や寄附行為の変更など行政手続きが関わるため、一般企業のM&Aよりも制度面の確認が重要になります。
学校法人M&Aの費用はいくら?退職金などの目安は?
学校法人M&Aでは株式譲渡のような買収価格は発生しないケースが多く、主な費用は次のようなものになります。
- 退任理事への退職金
- 専門家費用(弁護士・会計士など)
- デュー・デリジェンス費用
- 行政手続きに関する費用
退職金の金額は法人ごとの規程によって決まるため、数百万円から数千万円程度になるケースもあります。
事業会社でも学校法人を運営できる?
可能なケースもあります。学校法人は株式会社とは異なる法人ですが、理事として経営に関与する形で事業会社が関わることがあります。
例えば、教育サービス企業や医療法人などが学校法人の経営に関与する事例もあります。ただし学校法人は営利目的で運営できないため、教育の質の維持や公益性が重視されます。
学校法人のM&Aはなぜ増えているのか?
背景には少子化による学生数減少があります。入学者数が減ることで学費収入が減少し、財務状況が悪化する学校法人も増えています。
また施設の老朽化による修繕費や教育投資の負担も大きく、単独での運営が難しくなるケースもあります。そのため経営基盤の強化や教育環境の維持を目的として、学校法人同士の統合や承継が検討されることがあります。
まとめ|学校法人M&Aは制度理解と承継先探しが重要
学校法人のM&Aは、一般企業の買収とは仕組みが大きく異なります。学校法人は非営利法人であり、株式譲渡による売買はできないため、理事の交代や学校の分離、学校法人同士の合併などの方法で承継が行われます。
また、学校法人のM&Aでは所轄庁の認可や寄附行為の変更など行政手続きが関わるため、制度の理解や専門家のサポートが重要になります。さらに少子化による定員割れや学費収入の減少などを背景に、教育業界では学校法人の再編や統合が今後も進む可能性があります。
ただし学校法人のM&A案件は数が多くなく、承継先や買い手を見つけることが難しいケースもあります。教育機関の承継を検討している場合は、M&Aプラットフォームなどを活用して情報を幅広く確認することが重要です。
国内最大級のM&Aプラットフォーム「TRANBI(トランビ)」では、常時3,300件以上(※掲載件数に変動があります)のM&A案件が掲載されており、教育関連の案件が掲載されることもあります。
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学校法人や教育事業の承継に関心がある方は、まずはどのような案件が掲載されているのかを確認してみるとよいでしょう。