運送業のM&A完全ガイド|物流危機を乗り越える事業承継の選択肢|相場・流れ・注意点をわかりやすく解説

運送業のM&A完全ガイド|物流危機を乗り越える事業承継の選択肢|相場・流れ・注意点をわかりやすく解説

運送業のM&Aについて、物流危機や2024年問題を背景に、相場や売却価格の考え方、進め方の流れ、注意点をわかりやすく解説。陸運を中心に、許可・人材・労務など実務面も網羅的に紹介します。

目次
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運送業は、日本の経済活動や人々の暮らしを支える重要な社会インフラであり、なかでも陸運(トラック運送業)は物流の中心的な役割を担っています。しかし現在、2024年問題による労働時間規制、ドライバー不足、物流危機といった複数の課題が同時に進行し、運送業界を取り巻く経営環境は大きく変化しています。
こうした状況の中で、近年注目されているのが運送業のM&A(合併・買収)です。

M&Aは単なる会社売却ではなく、一般貨物自動車運送事業許可や人材、車両、取引関係といった事業基盤を次世代へ引き継ぎ、物流を止めずに事業を存続させるための「事業承継の選択肢」として活用され始めています。
一方で、運送業のM&Aには、一般的な企業M&Aとは異なる注意点も多く存在します。
許可の承継や労務管理、ドライバー定着、事故リスクなど、業界特有の実務を正しく理解していなければ、M&A後に思わぬトラブルが生じる可能性もあります。そのため、「相場はどのくらいなのか」「どのような流れで進めるのか」「何に注意すべきなのか」といった疑問を持つ経営者も少なくありません。

本記事では、運送業の現状から陸運を中心とした業界構造、海運・空運との関係性、M&Aの相場や売却価格の考え方、メリット・デメリット、具体的な進め方、許可・労務面での注意点、そして業界の大型M&A事例までを網羅的に解説します。
運送業のM&Aを具体的に検討している方はもちろん、将来に備えて情報収集を始めたい経営者の方にも参考にしていただける内容です。

運送業の現状― 2024年問題と物流危機がもたらす構造変化

日本の運送業を取り巻く環境

運送業は、日本の経済活動や日常生活を支える重要なインフラ産業です。原材料の輸送から製品の配送、消費者の手元に届くまでのラストワンマイルまで、物流の中心を担っているのが陸運(トラック運送業)です。

一方で、近年の運送業界は、これまでにない大きな転換期を迎えています。
その象徴が、いわゆる2024年問題です。働き方改革関連法の適用により、トラックドライバーの時間外労働に上限が設けられ、従来の長時間労働を前提とした輸送体制の見直しが求められています。

この影響により、「荷物はあるが運べない」「依頼を断らざるを得ない」といった状況が現実のものとなり、物流危機という言葉が一般にも広がり始めました。
運送業は、需要があっても供給が追いつかないという、構造的な課題を抱えています。

2024年問題が運送業に与える影響

2024年問題は、単なる労働時間の制限にとどまりません。ドライバーひとりあたりの稼働時間が減少することで、業界全体の輸送能力が低下し、売上や利益構造にも大きな影響を及ぼします。
特に中小の運送会社では、これまでドライバーの長時間稼働によって成り立っていたビジネスモデルが維持できなくなりつつあります。

その結果、次のような課題が顕在化しています。

  • 既存ドライバーの稼働時間減少による売上低下
  • 新規ドライバー採用の難航
  • 運賃の値上げ交渉が進まないケース

このような状況は、経営者にとって大きなプレッシャーとなっており、事業継続の可否を真剣に考え始めるきっかけにもなっています。

ドライバー確保・車両確保の深刻化

運送業界では、以前からドライバー確保が大きな課題とされてきましたが、2024年問題を機に、その深刻さはさらに増しています。若年層の入職が進まず、ドライバーの高齢化が進行している企業も少なくありません。
また、人材だけでなく、車両確保の問題も無視できません。車両価格や維持費の上昇、環境規制への対応などにより、新車導入の負担が増加しています。
その結果、車両更新が進まず、稼働効率が下がるケースも見られます。

運送業の経営環境は、次のような複合的な課題を抱えています。

  • ドライバーの高齢化と人材不足
  • 採用コストの上昇
  • 車両購入・維持コストの増加

これらは単独では解決が難しく、経営体力の差が企業間で大きく表れる要因となっています。

物流構造の変化と新たな対応策

物流を取り巻く環境も変化しています。
EC市場の拡大により、小口配送や即日配送のニーズが高まり、ラストワンマイルの重要性が増しています。一方で、従来型の大量輸送モデルだけでは、効率的な対応が難しくなっています。
こうした中で注目されているのが、共同配送や物流DXです。複数企業が配送網を共有することで効率を高めたり、デジタル技術を活用して配車・運行管理を最適化したりする動きが広がっています。

具体的には、次のような取り組みが進められています。

  • 配送ルートや積載率の最適化
  • 運行管理システムのデジタル化
  • 労務管理・安全管理の高度化

しかし、これらの対応には一定の投資やノウハウが必要であり、すべての運送会社が単独で取り組めるわけではありません。

運送業界でM&Aが注目される理由

このような厳しい環境の中で、運送業界ではM&A(合併・買収)が現実的な経営選択肢として注目されています。
M&Aは、単なる会社売却ではなく、許可や人材、車両、取引関係を次の担い手へ引き継ぐ手段として活用され始めています。

特に陸運業界では、一般貨物自動車運送事業許可などの許可や、運行管理者を含む人材体制が事業の基盤となっています。これらを一から整えることは容易ではないため、M&Aによって既存の事業基盤を引き継ぐ価値は高まっています。

後継者不在や将来への不安を抱える経営者にとって、M&Aは事業を止めずに次世代へつなぐための、有力な選択肢の一つとなりつつあります。

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陸運(トラック運送業)の特徴と課題― 許可・人材・車両が事業価値を左右する

運送業の中でも、物流の中心を担っているのが陸運(トラック運送業)です。
国内物流の大半はトラックによって支えられており、製造業・小売業・EC事業など、あらゆる産業と密接に関わっています。一方で、陸運業界は制度・人材・設備といった複数の制約を抱えており、経営の難易度が年々高まっています。

この章では、陸運業界の事業構造を整理しながら、M&Aを考えるうえで重要となる特徴と課題について解説します。

陸運における事業許可の種類と特徴

陸運業は、誰でも自由に参入できる業界ではありません。事業内容に応じて、国の許可や届出が必要となり、これが事業の参入障壁となっています。

代表的な許可・制度としては、以下のものがあります。

  • 一般貨物自動車運送事業許可
  • 特定貨物自動車運送事業許可
  • 貨物軽自動車運送事業(届出制)

一般貨物自動車運送事業許可は、不特定多数の荷主から貨物を受託する事業に必要な許可であり、陸運業の中核をなすものです。
一方、特定貨物自動車運送事業許可は、特定の荷主との契約に基づいて輸送を行う場合に取得されます。

これらの許可は、車両台数や営業所、運行管理体制などの要件を満たす必要があり、簡単に取得できるものではありません。
そのため、許可を保有していること自体が、陸運業における大きな事業価値となります。

運行管理者が果たす役割と重要性

陸運業の安全運行を支えているのが、運行管理者の存在です。
運行管理者は、ドライバーの労務管理や点呼、運行指示などを担い、法令遵守と安全確保の要となるポジションです。
運行管理者が不在、または要件を満たさない状態では、事業を継続することができません。そのため、陸運業では人材の中でも特に重要な存在といえます。

運行管理者に関して、経営上の課題となりやすい点は次のとおりです。

  • 有資格者が限られており、代替が難しい
  • 特定の個人に業務が集中しやすい
  • 高齢化により将来的な継続が不透明なケースがある

M&Aにおいても、運行管理者が誰で、引き継ぎ後も継続して勤務するのかは、極めて重要な確認ポイントとなります。

ドライバー確保が経営を左右する構造

陸運業における最大の経営課題の一つが、ドライバー確保です。
慢性的な人手不足に加え、2024年問題による労働時間規制の影響で、従来以上に人材確保の難易度が高まっています。
ドライバー不足は、単に人が足りないという問題にとどまりません。ドライバーが確保できなければ、車両があっても稼働できず、売上機会を失うことになります。

具体的には、次のような悪循環が生じやすくなります。

  • ドライバー不足により受注を断る
  • 売上が減少し、待遇改善が難しくなる
  • さらに採用が進まなくなる

この構造は、中小の運送会社ほど影響を受けやすく、経営の持続性を脅かす要因となっています。

車両確保と設備投資の負担

陸運業では、人材と同時に車両確保も重要な経営課題です。トラックは高額な設備投資であり、購入後も維持費や修繕費、保険料などのコストが継続的に発生します。
近年は、環境規制への対応や安全装置の義務化などにより、新車価格が上昇傾向にあります。その結果、車両更新が思うように進まず、老朽化した車両を使い続ける企業も少なくありません。

車両に関する課題としては、次のような点が挙げられます。

  • 車両購入コスト・リース料の増加
  • 車齢の高まりによる故障リスク
  • 稼働効率の低下

M&Aでは、車両台数だけでなく、製造時期や稼働状況も評価の対象となります。

ラストワンマイルと事業モデルの変化

近年の物流では、EC市場の拡大に伴い、ラストワンマイルの重要性が高まっています。消費者の手元まで確実に、迅速に届ける体制が求められるようになり、従来の幹線輸送中心のモデルだけでは対応が難しくなっています。

この変化に対応するため、陸運業界では次のような取り組みが進んでいます。

  • 地域密着型の配送網構築
  • 共同配送による効率化
  • 高付加価値サービスへの転換

ラストワンマイル対応力を持つ運送会社は、今後も一定の需要が見込まれ、M&A市場においても評価されやすい傾向にあります。

陸運業界におけるM&Aの意味合い

このように、陸運業は許可・人材・車両という複数の要素が絡み合う業界です。これらを単独で整備し続けることは、年々難しくなっています。
そのため、陸運業界では、M&Aを通じて既存の事業基盤を引き継ぎ、効率化や規模拡大を図る動きが広がっています。特に、ドライバーや運行管理体制、許可を一括で引き継げる点は、M&Aならではの大きなメリットといえるでしょう。

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海運・空運と陸運の関係性―物流全体から見た運送業の構造

運送業のM&Aを考えるうえでは、主役となる陸運(トラック運送業)だけでなく、海運・空運が物流全体の中でどのような役割を担っているのかを理解しておくことも重要です。
ただし、国内物流においては、あくまで陸運が中心であり、海運・空運はそれを補完する存在と位置づけるのが現実的です。

この章では、海運・空運の特徴を簡潔に整理し、運送業M&Aとの関係性を解説します。

海運の特徴と陸運との関係

海運は、大量輸送や長距離輸送に強みを持つ輸送手段です。
国際物流においては不可欠な存在であり、原材料大量貨物の輸送において重要な役割を果たしています。
一方で、国内物流の現場では、港から倉庫、倉庫から工場・店舗へと貨物を運ぶ最終工程を担うのは陸運です。つまり、海運単体で物流が完結するケースは少なく、陸運との連携が前提となっています。

海運の特徴を整理すると、次のような点が挙げられます。

  • 大量・長距離輸送に適している
  • 単価は比較的低いが、リードタイムは長い
  • 最終的な配送は陸運に依存する

このため、運送業のM&Aにおいて海運は、「主役」というよりも陸運を補完する物流インフラとして語られることが多くなります。

空運の特徴と役割

空運は、スピードを重視した輸送に強みを持つ輸送手段です。高付加価値商品や緊急性の高い貨物、国際的な小口輸送などで活用されています。
しかし、空運はコストが高く、輸送できる貨物量にも限界があります。そのため、国内物流全体に占める割合は決して大きくありません。また、空港から最終配送先までの輸送は、やはり陸運が担うことになります。

空運の位置づけとしては、次のように整理できます。

  • スピード重視・高付加価値貨物向け
  • コストが高く、汎用的な輸送には不向き
  • 最終工程は陸運が不可欠

このように、空運もまた、陸運と切り離して考えることはできない存在です。

貨物利用運送事業という中間的な存在

海運・空運と陸運をつなぐ存在として重要なのが、貨物利用運送事業です。
貨物利用運送事業は、自ら輸送手段を持たず、複数の運送事業者を組み合わせて貨物輸送を手配する事業形態であり、登録制・許可制が設けられています。
この事業は、物流全体を設計・管理する役割を担うため、近年注目度が高まっています。特に、3PL(サードパーティー・ロジスティクス)との親和性が高く、物流の高度化・効率化を進めるうえで重要なポジションを占めています。

貨物利用運送事業の特徴としては、次の点が挙げられます。

  • 輸送手段を組み合わせた最適化が可能
  • 陸運・海運・空運を横断的に活用できる
  • 物流全体のコーディネート力が求められる

M&Aにおいても、陸運事業者が貨物利用運送事業を取り込むことで、事業領域を拡張するケースが見られます。

運送業M&Aにおける海運・空運の扱われ方

運送業のM&Aでは、海運・空運そのものが主対象となるケースは、陸運に比べると多くありません。
多くの場合、海運・空運は、物流機能を補完・強化する要素として位置づけられます。

具体的には、次のような文脈で登場することが一般的です。

  • 陸運事業者による物流機能の多角化
  • 3PL・垂直統合を見据えた体制構築
  • 高付加価値物流への展開

つまり、海運・空運は「単独での事業価値」よりも、「陸運とどう組み合わさるか」という視点で評価されることが多いのが特徴です。

陸運を中心に考えることの重要性

物流全体を俯瞰すると、最終的に貨物を動かし、顧客と直接接点を持つのは陸運です。
そのため、運送業M&Aを検討する際には、まず陸運を軸に据え、そのうえで海運・空運・貨物利用運送事業をどのように組み合わせるかを考えることが重要となります。

陸運を基盤とした物流体制を持つ企業は、今後も一定の需要が見込まれ、M&A市場においても安定した評価を受けやすいと考えられます。

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運送業のM&Aの相場・売却価格の決まり方― 許可・人材・車両が評価を左右する

運送業のM&Aを検討する際、多くの経営者が最初に気になるのが「自社はいくらで売却できるのか」という点です。
しかし、運送業の売却価格は、単純に売上や利益だけで決まるものではありません。
特に陸運業界では、許可・人材・車両・取引関係といった要素が複雑に絡み合い、事業価値が評価されます。

この章では、運送業M&Aにおける相場感と、売却価格がどのような考え方で決まるのかを、実務目線で整理します。

運送業M&Aの相場感の基本

運送業のM&Aでは、IT企業やスタートアップのように高い成長倍率が付くケースは多くありません。一方で、安定した事業基盤を持つ会社は、堅実な評価を受けやすい傾向があります。
運送業M&Aの相場を理解するうえで、まず押さえておきたい前提があります。それは、「利益が出ているかどうか」だけでなく、「事業を継続できる体制があるか」が重視されるという点です。

そのため、相場を考える際には、次のような視点が重要となります。

  • 継続的に稼働できるドライバー体制があるか
  • 必要な許可・届出を適切に保有しているか
  • 車両や設備が実際に稼働しているか

これらが揃っている会社は、規模に関係なく評価される可能性があります。

許可の種類が売却価格に与える影響

陸運業では、事業許可の種類が事業価値に大きく影響します。
特に重要なのが、一般貨物自動車運送事業許可です。この許可は取得要件が厳しく、新規取得には時間とコストがかかるため、保有していること自体が大きな価値となります。

また、事業形態によっては、以下のような許可・届出も評価対象となります。

  • 特定貨物自動車運送事業許可
  • 貨物軽自動車運送事業(届出)
  • 貨物利用運送事業(登録・許可)
  • 産業廃棄物収集運搬業許可

これらの許可が整っている場合、対応できる業務範囲が広がるため、買い手からの評価が高まりやすくなります。

ドライバー体制と人材が与える評価

運送業のM&Aにおいて、ドライバー確保は最重要項目の一つです。
どれだけ売上があっても、ドライバーが不足していれば、事業の継続性に疑問が生じます。

評価の際には、単に人数を見るだけでなく、次のような点が確認されます。

  • ドライバーの定着率
  • 年齢構成と将来の継続性
  • 労務管理・残業管理の状況

特定のドライバーに依存している場合や、2024年問題への対応が進んでいない場合は、評価が下がる要因となることもあります。

車両・設備の状況と実態評価

陸運業では、車両確保も事業価値を左右する重要な要素です。
評価においては、車両台数だけでなく、実際に稼働しているかどうか、製造年月日や整備状況も重視されます。

車両に関して、特にチェックされやすいポイントは次のとおりです。

  • 車両の保有形態(自社保有・リース)
  • 製造年月日と更新計画
  • 稼働率と遊休車両の有無

帳簿上の資産価値と、実態としての稼働価値が一致しているかどうかが、評価の分かれ目となります。

取引先・契約内容が評価に与える影響

運送業の売却価格を考えるうえで、取引先との関係性も重要な評価ポイントです。
特に、長期契約や継続取引がある場合、将来の収益見通しが立てやすくなります。

評価されやすい契約の特徴としては、次のような点があります。

  • 長期・継続的な取引関係
  • 特定顧客への依存度が過度でない
  • 運賃改定の交渉余地がある

一方、特定の荷主に依存しすぎている場合や、契約が口約束に近い場合は、リスクとして評価に影響することがあります。

相場を考える際に重要な視点

運送業のM&Aでは、「相場はいくらか」という問いに、明確な正解はありません。
重要なのは、自社の強みと課題を正しく把握し、どの評価軸で見られる業態なのかを理解することです。

売却価格だけに目を向けてしまうと、条件や相手選びを誤る可能性があります。
事業の継続性や従業員の将来も含めて、総合的に判断することが、納得感のあるM&Aにつながります。

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用語説明
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手法
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運送業のM&Aのメリット― 物流危機時代における現実的な経営手段

運送業のM&Aは、「会社を売る・買う」という行為にとどまらず、物流危機や2024年問題に直面する中で、事業を守り、成長させるための経営手段として注目されています。

この章では、運送業M&Aのメリットについて、買い手側・売り手側それぞれの視点から整理します。

買い手側のメリット

【許可・人材・車両を一括で引き継げる】

運送業への新規参入や事業拡大において、大きな障壁となるのが、事業許可の取得、人材確保、車両確保です。これらをすべて一から整えるには、多大な時間とコストがかかります。

M&Aを活用することで、次のような事業基盤を一括で引き継ぐことが可能です。

  • 一般貨物自動車運送事業許可などの各種許可
  • 即戦力となるドライバーや運行管理者
  • 実際に稼働している車両と運行体制

これにより、スピーディーに事業を拡大できる点は、買い手側にとって大きなメリットといえます。

【2024年問題・物流危機への対応力が高まる】

2024年問題により、ドライバー一人あたりの稼働時間が制限される中、輸送能力の確保は喫緊の課題となっています。
M&Aによって輸送リソースを統合することで、より柔軟な配車や人員配置が可能となります。

具体的には、次のような効果が期待できます。

  • ドライバー・車両の最適配置
  • 繁忙期・閑散期の調整
  • 輸送能力の安定確保

単独では難しい対応も、M&Aによる規模拡大によって現実的な選択肢となります。

【垂直統合・3PL展開が可能になる】

運送業M&Aは、単なる輸送力の拡大にとどまりません。
倉庫業や貨物利用運送事業を組み合わせることで、垂直統合3PL(サードパーティー・ロジスティクス)への展開も可能になります。

これにより、次のような付加価値を提供できるようになります。

  • 輸送から保管・管理までの一体提供
  • 荷主の物流業務全体を請け負う体制構築
  • 価格競争に依存しないビジネスモデル

M&Aは、事業モデルを高度化するための足がかりにもなります。

【物流DX・共同配送による効率化が進む】

規模が拡大することで、物流DXへの投資や共同配送の実現がしやすくなります。
配車システムや運行管理のデジタル化は、単独企業では負担が大きい場合もありますが、統合後であれば投資対効果を見込みやすくなります。

結果として、次のような改善が期待できます。

  • 積載率・稼働率の向上
  • 管理業務の効率化
  • 労務・安全管理の高度化

これらは、長期的な競争力の強化につながります。

売り手側のメリット

【後継者問題を解決し、事業を存続できる】

運送業では、経営者の高齢化と後継者不在が深刻な課題となっています。
M&Aを活用することで、廃業という選択を取らずに、事業を次の担い手へ引き継ぐことが可能となります。

これにより、長年築いてきた事業や信用を失わずに済む点は、大きなメリットといえます。

【ドライバーや従業員の雇用を守れる】

運送業の廃業は、ドライバーや事務スタッフ、運行管理者の雇用に大きな影響を与えます。
M&Aによって事業を承継すれば、雇用を維持したまま事業を継続できる可能性が高まります。

特に、次の点は売り手側にとって重要なポイントです。

  • ドライバーの働く場を確保できる
  • 従業員の生活を守れる
  • 取引先との関係を維持できる

社会的な責任を果たすという意味でも、M&Aは有効な選択肢となります。

【車両・許可・事業基盤を無駄にしない】

運送業では、車両や許可、運行体制といった事業基盤を整えるまでに、多くの時間とコストを要します。
M&Aによってこれらを引き継ぐことで、経営者が築いてきた資産や仕組みを無駄にせずに済みます。

特に、一般貨物自動車運送事業許可などは、新規取得が難しいため、価値ある資産として評価されやすい傾向があります。

【経営者のリタイアや次の人生設計が可能】

M&Aによって会社を売却することで、経営者はリタイア後の生活資金や、新たな挑戦のための資金を確保することができます。
また、引き継ぎ期間を設けることで、無理のない形で経営から退くことも可能です。
長年運送業に携わってきた経営者にとって、M&Aは次のステージへ進むための前向きな選択肢となります。

運送業M&Aが持つ業界全体への意義

運送業のM&Aは、個々の企業の問題解決にとどまらず、物流機能を維持し、社会インフラを守るという側面も持っています。
物流危機が叫ばれる中で、事業が適切に引き継がれることは、業界全体にとっても重要な意味を持ちます。

M&Aでスピーディーに起業。予算、具体的な買収の方法を解説
具体的事例
M&Aでスピーディーに起業。予算、具体的な買収の方法を解説

M&Aを活用するとスムーズに起業しやすいでしょう。買収する対象会社の探し方や、買収に必要な準備について解説します。小規模なM&Aでよく用いられる、株式譲渡や事業譲渡の手法についても確認しましょう。買収後の失敗を防ぐ方法も紹介します。

M&Aの成功事例から何が学べる?共通点、戦略の重要性を確認
具体的事例
M&Aの成功事例から何が学べる?共通点、戦略の重要性を確認

M&Aに成功する企業や個人は、案件探しや交渉段階において何を重要視しているのでしょうか?実際の成功事例を見ることで、成功のヒントやリスク回避のポイントが分かります。M&Aの成功・失敗の定義についても解説します。

運送業のM&Aのデメリット― 事前に理解しておくべきリスクと課題

運送業のM&Aは、多くのメリットがある一方で、決して万能な解決策ではありません。
特に陸運業界は、人材・労務・現場運営への依存度が高く、M&A後に想定外の問題が顕在化するケースもあります。

この章では、運送業M&Aにおけるデメリットについて、買い手側・売り手側それぞれの視点から整理します。

買い手側のデメリット

【ドライバー流出による事業リスク】

運送業は、ドライバーがいなければ事業が成立しない業界です。
M&A後の環境変化に不安を感じたドライバーが離職してしまうと、輸送能力が一気に低下するリスクがあります。

特に、次のような状況では注意が必要です。

  • 経営者交代による方針変更への不安
  • 労働条件や配車ルールの変更
  • 職場の人間関係の変化

ドライバーの離職が続くと、受注している案件を維持できず、売上や信用に直接影響を及ぼします。

【労務・残業問題が顕在化する可能性】

運送業界では、労務管理や残業管理が非常に重要なテーマとなっています。
M&A後に過去の運用実態を確認した結果、時間外労働36協定の運用に問題が見つかるケースもあります。

その場合、次のようなリスクが生じる可能性があります。

  • 是正指導や行政対応が必要になる
  • ドライバーの稼働調整による売上減少
  • 管理体制の見直しに追加コストが発生する

2024年問題の影響もあり、労務面のリスクは以前にも増して重要な確認事項となっています。

【車両・事故・保険に関するリスク】

陸運業では、車両管理や事故リスクも無視できません。
M&A後に、車両の老朽化や整備不足、過去の事故履歴が判明することもあります。

特に注意すべき点としては、次のような事項があります。

  • 車両の実際の整備状況
  • 過去の事故・行政処分の有無
  • 任意保険・補償内容の適切性

これらの問題が表面化すると、想定外のコスト負担や信用低下につながる可能性があります。

売り手側のデメリット

【希望条件どおりに売却できない可能性】

運送業のM&Aでは、必ずしも売り手の希望どおりの価格や条件で売却できるとは限りません。
特に、ドライバー不足車両の老朽化収益性の低下が進んでいる場合、条件調整が必要となることがあります。

売り手側が直面しやすい課題としては、次のような点があります。

  • 想定していた売却価格とのギャップ
  • 条件面での妥協が必要になる
  • 売却までに時間がかかるケース

現実的な条件設定と、柔軟な姿勢が求められます。

【経営の自由度が低下する】

M&Aによって会社を譲渡すると、最終的な経営判断は買い手側に移ります。
そのため、売却後も一定期間会社に関与する場合、経営の自由度が下がると感じることもあります。

特に、次のような点で違和感を覚えるケースがあります。

  • 経営方針や価値観の違い
  • 現場運営に対する考え方の差
  • 意思決定スピードの変化

事前に役割や権限を明確にしておくことが重要です。

【従業員・取引先への説明負担】

運送業のM&Aでは、b>ドライバーや運行管理者、取引先への説明が欠かせません。
説明が不十分な場合、不安や誤解から離職や取引解消につながる可能性があります。

説明にあたっては、次の点を意識する必要があります。

  • 雇用条件が大きく変わらないことの説明
  • 事業継続の方針共有
  • 段階的な情報開示

この調整には、売り手側の精神的・時間的な負担が伴う点もデメリットといえます。

デメリットを理解したうえで進める重要性

運送業のM&Aには、買い手・売り手双方にデメリットが存在します。
しかし、これらの多くは、事前の調査と準備、適切な相手選びによって軽減できるものです。
メリットだけで判断するのではなく、リスクを正しく理解したうえで検討することが、後悔しないM&Aにつながります。
専門家と連携しながら進めることで、現実的で納得感のある意思決定が可能となります。

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M&Aの失敗事例。トラブルを回避するためのポイントを解説

日本におけるM&Aの成功率は、かなり低いとされています。M&Aの成功・失敗の定義は難しい面がありますが、想定していた効果が得られなければ、少なくとも成功したとはいえません。多くの失敗事例に触れ、トラブルやリスクを回避する方法を学びましょう。

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運送業のM&Aの流れ― 許可・人材・現場を前提にした進め方

運送業のM&Aは、一般的な企業M&Aと同じ枠組みで進められる一方、事業許可やドライバー、運行管理体制といった業界特有の要素を考慮する必要があります。
特に陸運業では、手順を誤ると事業継続に支障が出る可能性もあるため、段階的に慎重に進めることが重要です。

ここでは、運送業M&Aの一般的な流れを、ステップごとに解説します。

STEP1:M&Aの目的を整理する

運送業のM&Aを検討する際、最初に行うべきなのが目的の整理です。

最初に行うべきことは、なぜM&Aを行うのかという目的を明確にすることです。
目的が曖昧なまま進めてしまうと、相手選びや条件交渉の段階で判断軸がぶれてしまいます。

  • 後継者不在の解消を目的とするのか
  • 2024年問題への対応を急ぐのか
  • 事業拡大やエリア拡張を目指すのか

この段階での整理が不十分だと、途中で判断がぶれやすくなります。

M&A戦略はなぜ重要?自社の課題や目的、資金調達方法の整理を
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M&A戦略は、経営戦略と事業戦略に基づいて策定します。目標を明確にした上で、M&A成立後の経営統合プロセスも含めた戦略を練りましょう。戦略策定に役立つ自社分析のフレームワークや、ターゲット選定のポイントも解説します。

STEP2:案件探し・買い手探し、マッチング

目的が明確になったら、次に行うのが相手探し・マッチングです。
運送業では、単に資金力があるかどうかだけでなく、現場理解や業界経験があるかどうかも重要な判断材料となります。

マッチングの際には、次のような点が重視されます。

  • 陸運業界への理解度
  • ドライバーや運行管理体制への考え方
  • 許可・労務管理に対する姿勢

相性の合わない相手を選んでしまうと、M&A後のトラブルにつながる可能性があります。

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STEP3:交渉開始・秘密保持契約(NDA)の締結

具体的な検討に進む前に、秘密保持契約(NDA)を締結します。
NDAを結ぶことで、財務情報や人材情報、取引先情報などの重要な情報を安全に開示できるようになります。

この段階では、次のような情報が段階的に共有されます。

  • 事業概要や許可の状況
  • ドライバー・運行管理体制
  • 売上・利益の概要

情報開示は慎重に行い、必要以上に広げないことが重要です。

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M&Aにおける秘密保持契約(NDA)とは?情報漏洩を防ぎ安心して交渉するための基本

M&Aにおける秘密保持契約(NDA)とは何かを基礎から解説します。情報漏洩や目的外利用の防止、不正競争防止法との関係、機密情報の管理方法、損害賠償や契約期間の考え方まで、安心してM&A交渉を進めるために知っておきたいポイントを整理します。

STEP4:条件交渉・基本合意

情報開示を進めながら、売却価格や条件についての交渉を行い、基本合意書を締結します。
基本合意は、最終契約ではありませんが、M&Aの大枠を固める重要なステップです。

基本合意では、主に次のような内容が整理されます。

  • 想定される売却価格やスキーム
  • 今後のスケジュール
  • 独占交渉権の有無

この段階での合意内容が、その後の交渉の土台となります。

M&Aにおける基本合意書とは。必要になる理由とタイミングを確認
用語説明
M&Aにおける基本合意書とは。必要になる理由とタイミングを確認

基本合意書は、売り手と買い手との間で交わす合意文書です。合意形成を図るほか、M&Aのスケジュールを確認したり、買い手の交渉力を強化したりする役目もあります。基本合意書を交わすタイミングや他の契約書との違いを解説します。

STEP5:デューデリジェンス(詳細調査)

基本合意後に行われるのが、デューデリジェンス(DD)です。
運送業のM&Aでは、財務面だけでなく、許可・労務・現場運営の実態まで細かく確認されます。

特に重視される調査項目は次のとおりです。

  • 事業許可・届出の適正性
  • 労務管理・残業管理の実態
  • 事故履歴・行政処分の有無

ここで問題が見つかった場合、条件の見直しや追加対応が求められることもあります。

デュー・デリジェンスでM&Aのリスク回避。かかる費用や期間など
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M&Aの最終合意に至る上で、デュー・デリジェンス(DD)は欠かすことのできない重要なプロセスです。資金に限りのある中小企業や個人事業主は、何をどのように実行すればよいのでしょうか?DDの種類や費用、期間について理解を深めましょう。

STEP6:最終契約の締結

デューデリジェンスを経て問題がなければ、最終契約(譲渡契約・株式譲渡契約など)を締結します。
この契約によって、売却価格や引き継ぎ条件が正式に確定します。

最終契約では、次のような点が明文化されます。

  • 譲渡対象と条件
  • 表明保証の内容
  • 競業避止
  • 引き継ぎ期間や役割分担

契約内容は専門家とともに慎重に確認することが重要です。

表明保証の主な三つの目的とは。内容、リスク回避で重要なポイントも
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M&Aにおける表明保証は、主に買い手を保護する目的で最終契約書に記載される条項です。内容を正しく理解しておけば、安心してM&Aを進められるでしょう。表明保証の役割や重要性を、主に買い手の視点から解説します。

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競業避止義務はM&Aの売り手に課せられる義務です。買い手の利益の保護を目的として契約書に盛り込まれるものの、内容によっては有効性が認められない場合もあります。トラブルの事例や書き方のポイントを交えて、競業避止義務をわかりやすく解説します。

STEP7:クロージング・引き継ぎ(PMI)

契約締結後、実際に事業を引き継ぐクロージング・PMI(統合プロセス)に進みます。
運送業では、この引き継ぎ期間がM&A成功の成否を左右するといっても過言ではありません。

特に重要となるポイントは次のとおりです。

  • ドライバーや従業員への説明
  • 配車・運行管理体制の引き継ぎ
  • 取引先との関係維持

現場を混乱させないよう、段階的かつ丁寧な引き継ぎが求められます。

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M&Aは大企業だけでなく、零細企業にとっても事業承継や成長戦略に有効な選択肢です。や具体的な手法、メリット・デメリット、成功に向けた進め方まで、網羅的に解説します。

運送業のM&A成功のポイント― ドライバー・許可・現場統合を制する者が成功する

運送業のM&Aは、契約を締結した時点で終わりではありません。
むしろ、M&A後に事業を安定させ、成長につなげられるかどうかが、本当の意味での成功を左右します。

特に陸運業界では、人材や現場運営への依存度が高いため、一般的な企業M&A以上に「統合後の運営」が重要となります。
この章では、運送業M&Aを成功させるために押さえておきたいポイントを整理します。

ドライバーと運行管理体制を最優先で安定させる

【ドライバー定着を最優先課題として捉える】

運送業のM&Aにおいて、最も重要なのはドライバーの定着です。
ドライバーが安心して働き続けられる環境を維持できなければ、どれだけ条件の良いM&Aであっても、事業は成り立ちません。

M&A後の初期段階では、次のような点を特に丁寧に対応する必要があります。

  • 雇用条件や勤務体系が大きく変わらないことの説明
  • 経営方針や今後の方向性の共有
  • 現場の声を吸い上げる姿勢の明確化

「何が変わり、何が変わらないのか」を早い段階で示すことが、離職リスクの低減につながります。

【運行管理者を軸とした現場統合】

運行管理者は、運送業の現場を支える中核人材です。
M&A後は、運行管理体制が不安定になると、安全管理や労務管理に支障が出る可能性があります。

成功しているケースでは、次のような取り組みが行われています。

  • 既存の運行管理者を尊重した体制づくり
  • 役割や権限の明確化
  • 将来を見据えた後継人材の育成

運行管理者を「管理対象」ではなく「事業の要」として扱う姿勢が重要です。

許可・法令遵守体制を早期に整える

【事業許可・届出の適正運用を再確認する】

運送業は、許可・届出事業である以上、法令遵守が事業継続の前提条件となります。
M&A後は、改めて許可や届出の状況を確認し、運用面に問題がないかを点検することが重要です。

特に確認すべきポイントは次のとおりです。

  • 一般貨物自動車運送事業許可の維持要件
  • 貨物利用運送事業や産業廃棄物収集運搬業許可の有無
  • 名義・体制変更に伴う届出の必要性

許可面の整理を後回しにすると、行政対応が必要になるリスクがあります。

【労務・残業管理の見直しと2024年問題への対応】

M&Aを機に、労務管理や残業管理を見直すことは、長期的な成功につながります。
2024年問題を見据えると、従来の運用をそのまま引き継ぐことは難しいケースも少なくありません。

成功している企業では、次のような取り組みが進められています。

  • 労働時間の可視化
  • 配車計画の見直し
  • 効率化による稼働時間削減

M&Aを「体制改革のきっかけ」として活用する視点が重要です。

物流DX・共同配送を成長につなげる

【物流DXによる現場負担の軽減】

運送業のM&A後は、物流DXを活用した業務効率化を検討しやすいタイミングでもあります。
配車管理や運行管理、労務管理をデジタル化することで、現場の負担を軽減できます。

物流DXによって期待できる効果としては、次の点が挙げられます。

  • 管理業務の省力化
  • ミスや属人化の防止
  • 経営状況の可視化

現場の理解を得ながら、段階的に導入することが成功のポイントです。

【共同配送・3PLによる高付加価値化】

M&Aによって規模が拡大すると、共同配送や3PL(サードパーティー・ロジスティクス)への展開も視野に入ります。
これにより、単なる輸送業から、物流全体を支える存在へと進化することが可能です。

具体的には、次のような方向性が考えられます。

  • 複数荷主の荷物をまとめた効率的な配送
  • 倉庫業や貨物利用運送事業との連携
  • ラストワンマイル領域でのサービス強化

価格競争に依存しないビジネスモデルを構築できる点は、大きなメリットです。

相手選びと引き継ぎ期間を軽視しない

【価値観や現場理解のある相手を選ぶ】

運送業のM&Aでは、相手の業界理解や価値観が、その後の成否に大きく影響します。
条件面だけで判断せず、現場や人材をどう扱うかを見極めることが重要です。

成功しているケースでは、次のような共通点が見られます。

  • 現場を尊重する経営姿勢
  • ドライバーを単なるリソースとして扱わない
  • 中長期視点での事業運営

数字だけでは測れない部分にも目を向ける必要があります。

【引き継ぎ期間を十分に確保する】

運送業では、引き継ぎ期間(PMI)の質が、その後の安定運営を左右します。
短期間で一気に変革しようとすると、現場の混乱を招く可能性があります。

そのため、次のような姿勢が求められます。

  • 段階的な体制変更
  • 売り手経営者・幹部の関与継続
  • 現場との対話を重視した統合

時間をかけた引き継ぎが、結果的に成功への近道となります。

M&Aが従業員に与える影響と最適な対応策|説明タイミング・退職リスクを徹底解説
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M&Aが従業員に与える影響と最適な対応策|説明タイミング・退職リスクを徹底解説

M&Aで従業員は不安になりがち。雇用承継の基礎、説明のタイミング、待遇や異動の影響、反対への向き合い方、PMIの勘所まで“人”に効く実務をまとめました。

M&Aのメリット・デメリットを徹底解説|売り手・買い手・従業員の視点まで
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M&Aの利点とリスクを売り手・買い手・従業員・取引先の視点で整理。代表的スキームの向き不向きやPMI・DDの要点、実務の対策チェックも紹介。

運送業のM&Aに際して注意点― 許可・労務・法令を軽視すると事業は止まる

運送業のM&Aでは、価格や条件だけで判断してしまうと、M&A後に事業継続が難しくなるリスクがあります。
特に陸運業は、各種許可や労務管理、法令遵守が事業の前提条件となるため、制度面の確認は欠かせません。

この章では、運送業M&Aにおいて見落とされがちな許可・法令・制度面の注意点を整理します。

運送事業許可の承継に関する注意点

【許可はスキームによって扱いが異なる】

運送業のM&Aでは、M&Aの手法(スキーム)によって、事業許可の扱いが大きく異なります。
特に注意が必要なのが、株式譲渡と事業譲渡の違いです。
一般的に、株式譲渡の場合は法人自体が存続するため、一般貨物自動車運送事業許可などの許可は継続されるケースが多くなります。
一方、事業譲渡では、原則として許可は引き継がれず、買い手側が新たに許可を取得する必要があります。

この違いを理解せずに進めてしまうと、次のような問題が生じる可能性があります。

  • 一定期間、運送事業を行えなくなる
  • 既存契約の履行に支障が出る
  • 事業引き継ぎが大幅に遅れる

M&A初期段階から、許可の扱いを前提にスキームを検討することが重要です。

【各種運送関連許可・届出の確認】

陸運業では、主たる許可以外にも、業務内容に応じた許可・届出が必要となるケースがあります。
これらが適切に取得・運用されているかは、必ず確認すべきポイントです。

代表的なものとしては、次のような許可・届出があります。

  • 特定貨物自動車運送事業許可
  • 貨物軽自動車運送事業(届出)
  • 貨物利用運送事業(登録・許可)
  • 産業廃棄物収集運搬業許可

これらが未取得、または名義・内容が実態と合っていない場合、M&A後に是正対応が必要となる可能性があります。

労務・働き方改革関連法への対応

【2024年問題を前提とした労務管理の確認】

運送業のM&Aでは、労務管理の実態が非常に重要な確認事項となります。
特に、2024年問題を背景に、時間外労働拘束時間の管理が厳しく見られるようになっています。

デューデリジェンスでは、次のような点が重点的に確認されます。

  • 時間外労働の実態
  • 36協定の締結・運用状況
  • 運行記録や点呼の管理状況

過去の運用に問題がある場合、M&A後に是正指導や追加コストが発生するリスクがあります。

【名ばかり管理職・固定残業代のリスク】

運送業では、管理職の位置づけや給与体系が曖昧になっているケースも見受けられます。
特に、名ばかり管理職や固定残業代の運用については、慎重な確認が必要です。

これらの問題が発覚すると、未払い残業代の請求労務トラブルに発展する可能性があります。
M&Aを機に、制度面を整理し、将来リスクを抑える姿勢が求められます。

事故・行政処分・保険の確認

【過去の事故・違反履歴の把握】

陸運業では、事故や交通違反、行政処分の履歴が事業リスクとして評価されます。
これらの履歴は、M&A後の信用や取引関係にも影響を与える可能性があります。

確認すべきポイントとしては、次のような事項があります。

  • 過去の重大事故の有無
  • 行政処分や改善指導の履歴
  • 再発防止策が講じられているか

単に過去に事故があったかどうかだけでなく、その後の対応姿勢も重要な評価対象となります。

【任意保険・補償内容の適切性】

運送業では、事故発生時のリスクに備えた保険加入状況も重要な確認事項です。
補償内容が不十分な場合、M&A後に想定外の損害が発生する可能性があります。

特に、次の点は事前に確認しておく必要があります。

  • 対人・対物補償の内容
  • 荷物に対する補償範囲
  • 保険契約の名義や条件

事業規模や業務内容に見合った補償が確保されているかを確認することが重要です。

制度面を軽視しないことがM&A成功につながる

運送業のM&Aでは、許可や法令、労務といった制度面を後回しにすると、事業そのものが止まるリスクがあります。
価格やスピードだけを重視するのではなく、制度面を丁寧に確認する姿勢が不可欠です。
専門家と連携しながら、制度・実務を正しく整理したうえで進めることが、安心してM&Aを成功させるための重要なポイントとなります。

M&Aに付随するリスクとは?適切なリスク管理のポイントを解説
手法
M&Aに付随するリスクとは?適切なリスク管理のポイントを解説

M&Aは事業の売り手・買い手どちらにもメリットがあるものの、注意点もあります。M&Aに付随するリスクを把握し、安全に取引できるように準備しておくことが大事です。M&Aにおける代表的なリスクと、リスク管理のポイントを解説します。

M&AにおけるDDとは何か?買収監査の手順、種類、注意点を解説
用語説明
M&AにおけるDDとは何か?買収監査の手順、種類、注意点を解説

『DD』とは、M&Aにおける買収監査を指します。買い手は最終決定を下す前に、買収対象会社が重大なリスクや問題を抱えていないかを調査する必要があるでしょう。DDの手順や、問題が発覚した際の対処法についても解説します。

運送業界の最近の大型M&A事例― 業界再編と物流高度化の流れを読み解く

近年の運送業界では、2024年問題や物流危機を背景に、業界再編を目的とした大型M&Aが相次いでいます。
これらのM&Aは、単なる規模拡大ではなく、物流機能の高度化や付加価値向上を狙った戦略的な動きである点が特徴です。

この章では、運送・物流業界で注目された代表的なM&A事例を取り上げ、その背景と狙いを整理します。

SGホールディングスによるC&Fロジホールディングスの買収

SGホールディングスは、宅配便を中心とする国内有数の物流グループです。同社がC&Fロジホールディングスを買収した背景には、総合物流企業としての機能強化という明確な狙いがあります。
C&Fロジホールディングスは、低温物流や食品物流に強みを持ち、倉庫機能や輸送機能を組み合わせたサービスを展開していました。この買収により、SGホールディングスは従来の宅配・陸運機能に加え、温度帯管理を含む物流サービスを取り込むことになります。

この事例から読み取れるポイントは次のとおりです。

  • 陸運を基盤とした物流機能の拡張
  • 垂直統合によるサービス領域の拡大
  • 価格競争に依存しない高付加価値化

運送業のM&Aが、単なる輸送力確保ではなく、物流全体を設計する力の獲得に向かっていることが分かります。

日本経済新聞 「佐川急便のSGHD、C&Fに1株5740円でTOB 丸和に対抗」

セイノーホールディングスによる三菱電機ロジスティクスの買収

セイノーホールディングスは、路線トラックを中心に全国ネットワークを持つ陸運大手です。同社が三菱電機ロジスティクスを買収した背景には、メーカー物流を取り込むことでの3PL強化という戦略があります。
三菱電機ロジスティクスは、製造業のサプライチェーンに深く関わる物流ノウハウを持っており、単なる輸送だけでなく、保管・管理・流通加工などを含む業務を担っていました。

このM&Aの特徴としては、次の点が挙げられます。

  • 陸運ネットワークとメーカー物流の融合
  • 3PL(サードパーティー・ロジスティクス)の強化
  • 長期的・安定的な取引基盤の獲得

この事例は、運送業が「運ぶだけの業界」から、「物流を一括で支える業界」へと進化していることを象徴しています。

日本経済新聞 「セイノー、三菱電機の物流会社買収 600億円で7割取得」

ロジスティード(旧日立物流)によるアルプス物流の買収

ロジスティードは、グローバルに展開する総合物流企業であり、3PL事業を中核としています。アルプス物流の買収は、高付加価値物流と専門性の強化を目的とした動きといえます。
アルプス物流は、精密機器や電子部品といった、高度な管理が求められる物流分野に強みを持っていました。この買収により、ロジスティードは、より専門性の高い物流サービスを提供できる体制を整えました。

この事例から見えるポイントは次のとおりです。

  • 専門物流領域への対応力強化
  • 高付加価値分野への集中
  • グローバル物流との親和性向上

運送業・物流業のM&Aが、「量の拡大」ではなく「質の向上」を重視する段階に入っていることが分かります。

日本経済新聞 「ロジスティード、アルプス物流にTOB 1051億円で子会社化 」

大型M&A事例から見える運送業界の方向性

これらの大型M&A事例に共通しているのは、単なる輸送能力の拡大ではなく、物流全体の価値を高めることを目的としている点です。
陸運を基盤としながら、倉庫、システム、専門物流を組み合わせることで、競争力のある物流モデルを構築しています。

これらの動きは、大手企業だけの話ではありません。中小の運送会社にとっても、次のような示唆を与えてくれます。

  • 単独経営にこだわらない選択肢
  • M&Aによる役割分担・機能補完
  • 得意分野を活かした事業承継

業界再編が進む中で、M&Aは「守り」と「攻め」の両面を持つ経営戦略として、今後さらに重要性を増していくと考えられます。

運送業のM&Aに関するよくある質問

運送業のM&Aは、2024年問題や物流危機を背景に注目度が高まっている一方で、実際に検討し始めると多くの疑問や不安が出てくる分野でもあります。

この章では、運送業の経営者から特によく寄せられる質問をもとに、基本的な疑問を整理します。

Q1. 小規模な運送会社でもM&Aは可能ですか?

はい、小規模な運送会社であってもM&Aは十分に可能です。
運送業のM&Aでは、売上規模よりも許可・人材・車両・地域性といった要素が重視される傾向があります。

特に、次のような強みを持つ会社は評価されやすくなります。

  • 一般貨物自動車運送事業許可を保有している
  • ドライバーや運行管理者が安定して在籍している
  • 地域に根ざした取引先や配送網を持っている

「会社が小さいから売れない」と決めつける必要はありません。

Q2. 赤字の運送会社でも売却できますか?

赤字であっても、運送会社のM&Aが成立するケースはあります。
M&Aでは、現在の損益だけでなく、将来的な改善余地や事業継続性も評価対象となるためです。

例えば、次のような理由による赤字であれば、前向きに検討されることがあります。

  • 一時的なドライバー不足による稼働低下
  • 運賃改定が進んでいないことによる収益悪化
  • 経営管理や配車効率に改善余地がある

赤字の背景を整理し、説明できる状態にしておくことが重要です。

Q3. 運送事業の許可はM&A後も引き継げますか?

運送事業の許可が引き継げるかどうかは、M&Aのスキームによって異なります。
株式譲渡の場合は、法人が存続するため、一般貨物自動車運送事業許可などは継続されるケースが一般的です。
一方で、事業譲渡の場合は、原則として許可は引き継がれず、買い手側が新たに許可を取得する必要があります。

そのため、次の点を事前に確認しておくことが重要です。

  • 採用するM&Aスキーム
  • 許可取得に必要な期間
  • 引き継ぎ期間中の事業運営方法

許可の扱いは、事業継続に直結する重要事項です。

Q4. ドライバーがM&Aをきっかけに辞めてしまわないか心配です

ドライバーの離職は、運送業M&Aにおける最大のリスクの一つです。
ただし、適切な説明と引き継ぎを行うことで、離職リスクを抑えることは可能です。

特に重要なのは、次の点を丁寧に伝えることです。

  • 雇用条件や待遇が大きく変わらないこと
  • 会社や事業を継続していく方針
  • 現場を尊重する姿勢

不安を放置せず、早い段階で対話の場を設けることが重要です。

Q5. M&Aにはどれくらいの期間がかかりますか?

運送業のM&Aにかかる期間は、案件の内容によって異なりますが、おおむね6ヶ月から1年程度が目安となります。
特に、許可や労務の確認が必要な場合は、余裕を持ったスケジュールが求められます。

一般的な流れとしては、次のようなステップを踏みます。

  • 相手探し・マッチング
  • 条件交渉・基本合意
  • デューデリジェンス
  • 最終契約・引き継ぎ

早めに準備を始めることで、選択肢が広がります。

Q6. 2024年問題が本格化してからでもM&Aは間に合いますか?

2024年問題が本格化した後でもM&Aは可能ですが、余力があるうちに検討を始めるほうが有利です。
経営状況が悪化してからでは、条件面で不利になるケースもあります。

将来を見据えて、次のような準備を進めておくことが有効です。

  • 自社の許可・人材・車両の整理
  • 労務管理の現状把握
  • 運送業M&Aの相場感の把握

「まだ大丈夫」と思える段階で動くことが、結果的に選択肢を広げます。

Q7. 売却後、経営者はすぐに引退できますか?

売却後の経営者の関与期間は、契約内容によって異なります。
運送業では、現場や取引先との関係性を引き継ぐため、一定期間関与するケースが一般的です。

多くの場合、次のような理由で引き継ぎ期間が設けられます。

  • ドライバーや運行管理体制の安定
  • 荷主・取引先との関係維持
  • 現場ノウハウの引き継ぎ

希望する引退時期がある場合は、事前に整理して交渉することが重要です。

Q8. 相談はどの段階からしても問題ありませんか?

はい、検討初期の段階から相談することをおすすめします。
実際に売却や買収を決めていなくても、情報収集や選択肢の整理として相談する価値は十分にあります。

早めに相談することで、次のようなメリットがあります。

  • 自社の立ち位置や強みが分かる
  • 将来に向けた準備ができる
  • 判断を急がずに済む

M&Aは「決断の直前」ではなく、「考え始めた時点」から動くのが理想です。

まとめ― 物流を止めないためのM&Aという選択肢

運送業は、日本の経済と暮らしを支える欠かせない社会インフラであり、その中心を担っているのが陸運(トラック運送業)です。
しかし現在、2024年問題や物流危機、ドライバー不足といった複数の課題が同時に進行し、従来の経営モデルを維持することが難しくなっています。

本記事では、運送業の現状から始まり、陸運を中心とした業界構造、海運・空運との関係性、M&Aの相場や売却価格の考え方、メリット・デメリット、具体的な進め方、注意点、そして業界の大型事例までを網羅的に解説してきました。運送業のM&Aが、単なる会社売却ではなく、事業を存続させ、次世代につなぐための現実的な経営手段であることがご理解いただけたのではないでしょうか。
特に、後継者不在や将来への不安を抱える経営者にとって、M&Aは廃業以外の選択肢を提示してくれます。また、買い手側にとっても、許可・人材・車両を一括で引き継ぎ、物流DXや共同配送、3PLなどへ発展させていくための有効な手段となります。
一方で、運送業のM&Aには、許可の承継や労務管理、事故リスク、ドライバー定着といった業界特有の注意点が多く存在します。そのため、メリットだけに目を向けるのではなく、リスクを正しく理解し、準備を整えたうえで進めることが重要です。

運送業のM&Aを検討するうえで、特に意識しておきたいポイントは次のとおりです。

  • 陸運を中心とした事業構造と自社の立ち位置を理解すること
  • 許可・人材・車両といった事業基盤を正しく把握すること
  • 余力のある段階から情報収集と準備を始めること
これらを意識することで、より納得感のある意思決定につながります。

運送業界は今後も大きな変化が続くと考えられます。その中で、自社の事業をどのように守り、どのような形で次へつないでいくのかを考えることは、すべての経営者にとって避けて通れないテーマです。
M&Aは、その選択肢の一つとして、前向きに検討する価値のある手段といえるでしょう。

会社を売りたい経営者が知っておきたい知識。M&Aの方法と流れ
具体的事例
会社を売りたい経営者が知っておきたい知識。M&Aの方法と流れ

近年はM&Aによる会社売却が増えています。売却に当たり、売り手は磨き上げを実施し、企業価値を少しでも高める努力をしましょう。株式譲渡による会社売却の流れや注意点、売れない会社と売れる会社の特徴を解説します。

偶発債務と簿外債務の違いは?具体例、買収価格との関係を解説
用語説明
偶発債務と簿外債務の違いは?具体例、買収価格との関係を解説

M&Aの交渉段階で買い手が注意すべきなのが、対象会社の『偶発債務』です。企業価値の算定や今後の事業計画に大きな影響を与えるため、契約締結前にリスクを洗い出す必要があります。偶発債務の種類や発覚した場合の対処法について解説します。

M&Aの価格の相場はいくら?一般的な評価方法や価値を決める要素
具体的事例
M&Aの価格の相場はいくら?一般的な評価方法や価値を決める要素

M&Aの成約価格の相場は、業種や規模によって異なります。価格はどのように決まるのでしょうか?中小企業のM&A価格を決める際、参考として用いられる算出方法や、価格を左右する要素を確認しましょう。買収の可否の判断に役立つ指標も紹介します。

M&Aソーシングとは?成功に導く手順、手法、最新動向を徹底解説
手法
M&Aソーシングとは?成功に導く手順、手法、最新動向を徹底解説

M&Aソーシングのすべてを1本で。基礎から手順、プル/プッシュ型の違い、ロング/ショートリスト作成、AI・代行・TRANBI活用、仲介会社選びまで徹底解説。