M&Aの最新動向|件数の推移・増加の背景・業界別の動きを解説
M&Aの最新動向を、件数の推移(5年連続で過去最多を更新)や増加の背景(後継者不足・脱ファミリー化)、仲介・FA・プラットフォームなどの業態、IT・調剤薬局・不動産・食品・物流の業界別動向、今後の展望までわかりやすく解説します。
「M&Aという言葉を以前より頻繁に耳にするようになった」と感じている経営者の方は多いのではないでしょうか。実際に国内のM&A件数は年々増加し、いまや過去最多を更新し続けています。その中心にあるのが、後継者不足を背景とした事業承継型のM&Aと、個人や小規模事業者によるスモールM&Aです。
とはいえ、「M&A業界にはどんなプレイヤーがいるのか」「なぜここまで増えているのか」「自分の業界の動向はどうなのか」といった点は、意外と整理されていません。M&Aを検討するうえでは、まず業界全体の動きを俯瞰し、最新の動向をつかんでおくことが大切です。
この記事では、最新のM&A件数の推移、市場が拡大している背景、M&A業界の代表的な業態・支援機関、業界別の動向、そして今後の見通しまでを、最新のデータをもとにわかりやすく解説します。
M&A業界の最新動向|件数は過去最多を更新中
M&A(Mergers and Acquisitions)は「企業の合併と買収」を意味する言葉です。かつては大企業のものというイメージが強くありましたが、現在は中小企業や個人事業主にとっても、事業承継や成長のための一般的な経営戦略として定着しつつあります。
その動きを裏づけるように、国内のM&A件数は増加の一途をたどっています。まずは最新の件数推移から確認していきましょう。
国内M&A件数の最新推移
レコフデータの調べによると、2024年の日本企業のM&A件数(公表ベース)は4,700件となり、過去最多を記録しました。さらに2025年度は5,228件(前年度比10.9%増)に達し、5年連続で過去最多を更新しています。
M&A件数は2011年を底に、2012年以降ほぼ右肩上がりで推移してきました。感染症の影響で一時的に伸びが鈍化した時期もありましたが、大きな落ち込みには至らず、事業承継型のM&Aを中心に増加基調が続いています。1985年当時の件数(約260件)と比べると、その規模は隔世の感があります。
| 区分 | 件数 | ポイント |
|---|---|---|
| 1985年 | 約260件 | 黎明期 |
| 2024年度 | 4,700件(公表ベース) | 過去最多を記録 |
| 2025年度 | 5,228件(前年度比10.9%増) | 5年連続で過去最多を更新 |
件数だけでなく取引金額も拡大しており、日本のM&A市場は世界的に見てもプレゼンスを高めています。中小企業の事業承継から大企業の再編まで、M&Aは経営の選択肢として一段と一般的になっているといえるでしょう。
M&A関連会社・支援機関の広がり
M&Aの増加に伴い、それを支えるM&A関連会社も増えています。M&A関連会社とは、M&A仲介業者やファイナンシャル・アドバイザー(FA)をはじめとするM&A支援機関の総称です。
中小企業庁は、M&Aの担い手の質を確保するためにM&A支援機関登録制度を創設しました。仲介・FA・士業(税理士・公認会計士・弁護士)・金融機関・M&Aプラットフォーマーなど、さまざまな事業者が登録されており、登録数は制度創設以降も増加を続けています。多様なプレイヤーが市場に参入することで、経営者が自社に合った相談先を選びやすい環境が整いつつあります。
M&A件数が増加している背景
なぜこれほどまでにM&Aが増えているのでしょうか。背景には、経営者の高齢化と後継者不足、そして成長戦略としてのM&Aの定着という2つの大きな流れがあります。
深刻化する後継者不足と経営者の高齢化
最大の要因は、中小企業経営者の高齢化と後継者不足です。帝国データバンクの調査によると、社長の平均年齢は2024年時点で60.7歳となり、34年連続で上昇を続けています。経営者が高齢化する一方で、後継者が決まらない企業は依然として多く残っています。
全国の後継者不在率は、2024年に52.1%と調査開始以降で最低を記録し、2025年度はさらに50.1%まで低下しました。改善傾向にはあるものの、いまだおよそ2社に1社が後継者不在という深刻な水準です。後継者が見つからないまま事業継続が難しくなる「後継者難倒産」も、2024年は507件と過去最多を記録しています。
参考:全国「後継者不在率」動向調査(2025年)|帝国データバンク
参考:後継者難倒産の動向調査(2024年度)|帝国データバンク
「脱ファミリー化」とM&Aによる第三者承継
後継者の探し方も、大きく変わってきています。かつて事業承継の中心だった親族内承継は減少し、血縁によらない役員・社員を登用する「内部昇格」や、第三者へ引き継ぐM&Aが存在感を増しています。
帝国データバンクの調査では、2025年度(速報値)の事業承継は「内部昇格」が36.1%となり、これまで最多だった「同族承継」(32.3%)を上回りました。買収や出向を中心とした「M&Aほか」も20.6%に達しています。親族間承継から社内外の第三者へと経営権を移す「脱ファミリー化」が加速しており、その受け皿としてM&Aの重要性が一段と高まっているのです。
M&A業界の代表的な業態・支援機関
M&Aは案件探しから最終契約まで自社だけで進めるのは容易ではありません。ここでは、企業や個人のM&Aを支える代表的な業態・支援機関を整理します。それぞれ役割や報酬体系が異なるため、目的に合わせて選ぶことが重要です。
M&A仲介業者
M&A仲介業者は、売り手と買い手の双方と契約を結ぶ(両手取引)ことが特徴です。ニーズが合う企業同士を引き合わせ、交渉がスムーズに進むよう調整します。片方に肩入れしすぎると利益相反につながるため、マッチングや手続き面のサポートを主軸とするのが一般的です。中小企業の事業承継型M&Aで広く利用されています。
ファイナンシャル・アドバイザー(FA)
FA(ファイナンシャル・アドバイザー)は、売り手・買い手のいずれか一方と契約し、その依頼者の利益が最大化するよう助言する専門家です。戦略立案・交渉・契約書作成など幅広く支援します。仲介業者と混同されがちですが、FAは仲介を行わず、あくまで片側の代理人として動く点が大きな違いです。
銀行・証券会社
M&Aにはまとまった資金が必要になるため、金融機関に相談する経営者も多くいます。大手金融機関では「融資」と「M&Aアドバイザリー業務」の両方を提供しているのが一般的で、専門部署に経験豊富なアドバイザーが在籍しているケースもあります。既存取引先や広いネットワークを活用した相手探しに強みがあります。
M&Aマッチングプラットフォーム
M&Aマッチングプラットフォームは、売り手と買い手をつなぐオンライン上のサービスです。仲介業者を介さないため仲介手数料が発生せず、全体コストを抑えられることが特徴で、小規模案件も多く、24時間いつでも相手を探せます。専門的な交渉や契約は別途専門家に依頼する前提ですが、コストとスピードを重視する個人・小規模事業者を中心に急速に普及しています。
国内最大級のM&A・事業承継プラットフォーム「TRANBI(トランビ)」には、常時3,500件以上の案件が掲載されており、無料登録で最新の案件情報を閲覧できます。
M&A支援機関が提供する主なサービス
M&A支援機関が提供するサービスは、一部業務に特化したものからフルサポートまでさまざまです。代表的な3つのサービスを押さえておきましょう。
案件マッチング
マッチングとは、売り手と買い手の希望を踏まえて最適な相手を探すことです。仲介業者・金融機関・プラットフォームは豊富なデータとネットワークを持ち、地域・業種・取引規模などの条件で候補を絞り込めます。国が設置する「事業承継・引継ぎ支援センター」や日本政策金融公庫でもマッチング支援を行っています。
スキームの提案と契約サポート
M&Aを有利に進めるには、税務・財務・法務の専門知識が欠かせません。支援機関では、最適なスキーム(手法)の提案や交渉・契約手続きのサポートを受けられます。中小企業のM&Aでは株式譲渡・事業譲渡が多く用いられ、手法ごとに税負担や手続きが異なるため、自社に合った選択が重要です。
デューデリジェンス(DD)
デューデリジェンス(DD)は、買い手が売り手に対して行う事前調査です。事業・財務・法務・税務・人事など多面的にリスクや企業価値を精査します。専門性が高いため、公認会計士・税理士・弁護士などの専門家が担当し、仲介業者経由で紹介を受けられるのが一般的です。
業界別に見るM&Aの動向
M&Aの動向は業界によって異なります。ここでは、活発な動きが見られる代表的な業界をピックアップして解説します。
| 業界 | M&Aの主な動向 |
|---|---|
| IT | DX需要と人材不足を背景にM&Aが活発。チームごと獲得できる利点も大きい |
| 調剤薬局 | 後継者不在や度重なる調剤報酬改定に対応するため、チェーン化・再編が進行 |
| 不動産 | 不動産テックによる法人増と後継者不足で、増加傾向。景気に左右されやすい |
| 食品 | 原料高・多角化・海外進出・事業承継など、多様な目的でM&Aを活用 |
| 物流 | EC拡大と2024年問題(ドライバー不足・労働時間規制)を背景に再編が加速 |
IT業界
IT業界では技術革新が進む一方、深刻な人材不足が続いています。経済産業省の試算では、2030年に最大で約79万人のIT人材が不足するとされています。人材確保の手段としてM&Aを選ぶ経営者は増えており、開発チームごと獲得できる点も大きな魅力です。DX化の進展により、今後もM&A需要は拡大が見込まれます。
調剤薬局
医薬分業の進展で成長してきた調剤薬局業界では、個人経営の薬局も多く残っています。後継者不在に加え、薬価改定・調剤報酬改定への対応を背景に、チェーン化やM&Aによる事業拡大が進んでいます。異業種からの参入も増えており、再編は今後も続く見通しです。
不動産
不動産業界は景気変動の影響を受けやすい一方、近年はM&A件数が増加傾向にあります。不動産テックの普及や新規参入の増加などを背景に、既存事業者の後継者不足、収益確保を目的とした再編などが要因です。景気次第で増減はあるものの、中長期では活発な動きが続くと見られます。
食品
食品業界は、原料を供給する素材型と、加工・販売を行う加工型に大別されます。原料価格の高騰を背景に、コスト削減やスケールメリット、ノウハウ獲得を目的としたM&Aが見られます。加工型では多角化や海外進出、小規模事業者では高齢化に伴う事業承継型のM&Aも活発です。
物流
EC・通販の拡大で需要が伸びる物流業界ですが、ドライバー不足や長時間労働、いわゆる「2024年問題」に直面しています。競争激化と事業承継の課題も重なり、M&Aによる再編・規模拡大が加速しています。社会インフラを支える業界として、今後も動きが注目されます。
今後のM&A業界の展望
国内のM&A件数は増減を繰り返しながらも、全体では明確な増加基調にあります。今後、M&Aは中小企業や個人事業主の間でさらに一般化していくと考えられます。
第三者承継とスモールM&Aの拡大
少子高齢化と人口減少により国内市場が縮小するなか、成長戦略としてM&Aを選ぶ企業は増え続けています。団塊の世代が全員75歳以上となる「2025年問題」以降も、後継者不在の企業が事業と雇用を守るために第三者へ譲渡するニーズはさらに高まっています。
中小企業庁も事業承継ガイドラインなどを通じてM&Aによる第三者承継を後押ししており、環境整備は着実に進んでいます。今後は、個人や小規模事業者によるスモールM&Aが一段と拡大していくでしょう。
M&A業界の動向に関するよくある質問(FAQ)
最後に、近年のM&A業界の動向についてよく寄せられる疑問を、Q&A形式でまとめました。
日本のM&A件数はどのくらいですか?
レコフデータによると、2024年の日本企業のM&A件数は公表ベースで4,700件、2025年度は5,228件と、5年連続で過去最多を更新しています。中小企業の事業承継型M&Aを中心に、増加基調が続いています。
なぜM&Aが増えているのですか?
最大の要因は、経営者の高齢化と後継者不足です。社長の平均年齢は2024年時点で60.7歳と上昇を続け、後継者不在率も約5割の高水準にあります。廃業を避けて事業と雇用を守る手段として、第三者へ引き継ぐM&Aが選ばれるケースが増えています。
M&A業界にはどんなプレイヤーがいますか?
主に、両手取引を行うM&A仲介業者、片側を代理するFA、融資とアドバイザリーを兼ねる銀行・証券会社、オンラインで相手を探せるM&Aマッチングプラットフォームがあります。加えて、税理士・公認会計士・弁護士などの士業や、公的支援機関も関わります。
どの業界でM&Aが活発ですか?
IT、調剤薬局、不動産、食品、物流などで活発です。人材不足やDX、制度改定、2024年問題(物流)、事業承継など、業界ごとの事情を背景にM&Aが選択されています。
中小企業や個人でもM&Aはできますか?
できます。近年は数百万円規模から取引されるスモールM&Aが広がり、個人事業主でも事業の売買が可能です。M&Aマッチングプラットフォームを使えば、コストを抑えて全国の相手を探せます。
まとめ
M&Aは会社の乗っ取りや身売りではなく、後継者不足や成長といった経営課題を解決するための有力な手段です。国内のM&A件数は5年連続で過去最多を更新し、後継者不在率は約5割、脱ファミリー化の進行など、市場を取り巻く環境は大きく変化しています。
今後も事業承継型のM&AやスモールM&Aは拡大が見込まれます。「実際にどんなM&Aが行われているのか知りたい」という方は、まず案件情報や事例をチェックし、業界の実態に触れてみることをおすすめします。
