事業承継で株式譲渡を選ぶ理由は?贈与・相続・売買の違いと税金を解説
事業承継で株式譲渡を選ぶ理由と、自社株の渡し方の選び方を解説。生前贈与・相続・売買の違い、贈与税・相続税・譲渡所得税の考え方、事業承継税制の期限、売買で譲渡する場合のメリット・デメリット、手続きの流れと注意点を、TRANBIの成約事例とあわせて紹介します。
- 06 株式譲渡による事業承継を成功させるポイント
- ①株式の価値を把握して価格を決める
- ②従業員と取引先の不安をできるだけ抑える
- ③承継先と税負担を踏まえて承継の方法を選ぶ
- ④専門家の助言を活用してリスクを減らす
- ⑤買い手と早期に信頼関係を構築する
- 07 株式譲渡による事業承継の手順・実施フロー
- STEP1:承継スキームと譲渡方法の決定
- STEP2:企業評価(バリュエーション)の実施
- STEP3:買い手候補の選定・交渉
- STEP4:株式譲渡契約の締結
- STEP5:クロージングと株主名簿・役員変更などの手続き
- STEP6:経営統合(PMI)と従業員対応
- 11 事業承継における株式譲渡の成功事例
- 事例1:余命2か月の工場が「廃墟スタジオ」へ再生~DDと市場調査を踏まえた価格改定と遊休建物の活用~
- 事例2:後継者不足の電気工事会社、空白の半年を超えて~突然の交渉中断からの大逆転。地域密着企業の技術を次代へ~
- 事例3:16年育てた英会話スクールの未来を拓く~「廃業」ではなく「発展」を選ぶ。想いをつなぐ株式譲渡~
「事業承継の時期が近づいているが、自社株をどのように引き継ぐのがよいか分からない」と悩む経営者は少なくありません。事業承継では、後継者に経営を任せるだけでなく、自社株式をどう引き継ぐかも大切です。株式を承継する主な方法には、生前贈与・相続・売買があり、それぞれ手続きや税負担が異なります。
本記事では、事業承継で株式を引き継ぐ3つの方法の違い、売買で株式を譲渡する場合のメリット・デメリット、贈与税・相続税・譲渡所得税の考え方と事業承継税制、手続きの流れと注意点を、事例とあわせて解説します。親族や従業員に会社を継がせたい経営者の方や、第三者への株式譲渡を考えている方に向けた内容です。
事業承継における株式譲渡とは
事業承継とは、現経営者から後継者へ、経営と事業を引き継ぐことです。株式会社の事業承継では、誰に経営を任せるかに加え、株式を誰が保有し、議決権をどう確保するかを検討することが大切です。株主は、株主総会で取締役の選任などに関わるためです。
株式譲渡とは、株主が保有する株式を、売買や贈与によって他の人や企業へ移すことです。後継者や買い手が、経営を支配できる議決権を取得することで、経営権の移行につながります。一方、相続による株式の取得は、株式譲渡とは異なる承継方法で、譲渡の契約や会社の譲渡承認は不要です。株式譲渡の手続きそのもの(譲渡承認・株券・株主名簿など)は、「株式譲渡とは」の記事で詳しく解説しています。
事業承継で株式を引き継ぐ3つの方法
事業承継で株式を引き継ぐ方法は、大きく分けて「生前贈与」「相続」「売買」の3つです。方法ごとに、株式が移る時期、税金、後継者が用意する資金が異なるため、自社の株価や後継者の状況に応じて選びます。主な違いを表にまとめました。
| 項目 | 生前贈与 | 相続 | 売買 |
|---|---|---|---|
| 株式が移るとき | 現経営者が決めた時期 | 現経営者が亡くなったとき | 売り手と買い手が合意した時期 |
| 対価 | なし(無償) | なし | あり(後継者や買い手が代金を払う) |
| 主な税金 | 受け取った人の贈与税(基礎控除などの範囲ならかからない場合もある) | 相続税(遺産全体が基礎控除以下ならかからない) | 売り手(個人)の譲渡益への所得税・住民税 |
| 後継者の資金 | 贈与税の納税資金 | 相続税の納税資金 | 株式の購入資金 |
| 主な注意点 | 相続時精算課税・事業承継税制などの制度の選び方 | 株式の分散、遺産分割、他の相続人の遺留分 | 価格の決め方(低すぎると贈与税の問題)、資金調達 |
①生前贈与による株式の承継
現経営者が元気なうちに、後継者に自社株式を無償で渡す方法です。渡す時期を自分で決められるため、後継者の育成の状況に合わせて、計画的に承継を進められるのが特徴です。
個人から株式の贈与を受けた後継者には、贈与税がかかる場合があります。暦年課税では、その年に受けた贈与の合計額が基礎控除の110万円以下であれば、原則として贈与税はかかりません。自社株の評価額が高いと納税資金が問題になるため、相続時精算課税や事業承継税制などの制度が使えるかを事前に確認しておきましょう(税金の章で解説します)。
②相続による株式の承継
経営者が亡くなったとき、保有していた株式が相続の対象になる方法です。複数の相続人がいる場合、遺言の内容などによっては、遺産分割まで株式が共同相続人の準共有となり、議決権の行使に調整が必要になることがあります。
相続した株式は、ほかの相続財産とあわせて相続税の計算の対象になります。遺産分割では法定相続分が基準になりますが、相続人全員の合意があれば、株式を後継者に集中させることもできます。経営に関わらない親族に株式が分散すると、意思決定が滞るおそれがあるため、遺言書の作成や種類株式の活用、代償金の準備などを検討し、他の相続人の遺留分にも配慮した対策を早めに立てておくことが大切です。
③売買による株式譲渡
後継者や買い手企業が、現経営者から株式を有償で買い取る方法です。親族外の役員・従業員への承継や、M&A(第三者承継)でよく使われ、現経営者は株式の対価として売却代金を受け取ります。親族への承継で使うこともあります。
個人が株式を売却した場合、譲渡益には原則として20.315%の税率で申告分離課税が適用されます。一方、買い手となる後継者には株式を買うための資金が必要になるため、金融機関からの融資などをどう組み立てるかが課題になります。以下のメリット・デメリットと手続きの流れは、主にこの「売買による株式譲渡」の説明です。
売買で株式を譲渡する事業承継のメリット
株式の売買による事業承継には、会社の契約や雇用関係を維持しやすく、個々の資産を移す手続きを抑えられる利点があります。一方、買い手の見つかりやすさや売り手の手取り額は、会社の状況や取引条件によって異なります。
買い手と売り手、それぞれの視点からメリットを整理します。株式譲渡一般のメリット・デメリットは、「株式譲渡とは?」の記事もあわせてご覧ください。
買い手側(後継者・買い手企業)のメリット
買い手にとっての主なメリットは、雇用契約や取引契約が同じ会社との間で続くため、事業の継続性を保ちやすい点です。ただし、契約上のチェンジオブコントロール(COC)条項や許認可の要件によっては、事前の承諾や変更の届出などが必要になります。
【手続きの簡潔性】
株式譲渡では会社の法人格が変わらないため、会社の資産・負債・契約関係は、原則として同じ会社に残ります。個々の資産や契約を、別の事業者へ移す手続きを省ける点が特徴です。
事業譲渡では、移す資産ごとの手続きや、契約の相手方の承諾、労働契約を引き継ぐ従業員本人の承諾などが必要になります。株式譲渡では、こうした承継の手続きの負担を抑えられる場合があります。
【経営権掌握の柔軟性】
すべての株式を取得しなくても、経営を主導できる場合があります。一般的な株式会社では、議決権の過半数(50%超)を確保することが、取締役の選任などを通じて経営を主導する目安になります。また、総議決権の3分の2以上の確保は、定款変更などの「特別決議」を成立させるうえで重要です。ただし、定款で決議の要件が加重されている場合や、種類株式などがある場合は、個別の確認が必要です。後継者の資金に合わせて、段階的に株式を移す設計もできます。
売り手側(現経営者)のメリット
売り手にとっては、長年の経営の成果を売却代金として受け取れる点がメリットです。売り手が個人の場合、譲渡益への課税は申告分離課税となり、役員退職金と組み合わせることも検討できます。
【税務上の優遇性】
個人が株式を売却した場合、売却額から取得費や売却の手数料などを差し引いた譲渡益には、原則として20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税)の税率による申告分離課税が適用されます。ただし、極めて高い所得がある場合には、追加の所得税負担が生じることがあります。
一方、会社が事業を譲渡する場合は、会社の譲渡損益が法人税などの計算に反映され、売却代金を会社から株主へ配当などで移す際には、別に課税が生じることがあります。
このように、個人株主が株式を売る場合と、会社が事業を売る場合では、代金を受け取る人と課税の仕組みが異なります。最終的な手取り額は、取得費や繰越欠損金、代金の受け取り方などによって変わるため、税率だけで判断せず、会社と個人の両方について試算しましょう。役員退職金を組み合わせる場合も、実際に退職しているか、金額が相当か、会社の資金繰りや譲渡価格への影響を確認する必要があります。
【第三者承継の選択肢を広げやすい】
株式譲渡は、中小企業のM&Aで用いられる代表的な手法です。ただし、買い手候補の数は、事業の収益力や希望価格、負債やリスクの内容などによって左右されます。
親族や社内に後継者がいない場合でも、株式を第三者に譲渡できる状態にしておけば、事業承継の選択肢を広げることにつながります。
売買で株式を譲渡する事業承継のデメリット
株式譲渡では会社をそのまま引き継ぐため、会社に残る債務やリスクも、取得した会社の価値に影響します。買い手は「見えない債務」や「資金調達」に、売り手は承継後の「従業員や取引先との関係」や「経営者保証」に注意が必要です。それぞれの視点から、事前に把握しておきたいデメリットと対策を整理します。
買い手側(後継者・買い手企業)のデメリット
主なリスクは、帳簿に載っていない債務などが、取得した会社に残っていることです。また、株式の取得にはまとまった資金が必要で、資金調達のハードルが高い点も課題になります。
【会社に残る簿外債務・偶発債務のリスク】
株式譲渡の後も、借入金や未払いの残業代などの債務は、対象の会社に残ります。買い手がこれらの債務を直接引き受けるわけではありませんが、取得した会社の資金繰りや株式の価値に影響するため、貸借対照表に載っていない「簿外債務」や、将来の訴訟などで生じるおそれのある「偶発債務」の調査が大切です。
未払い残業代や土壌汚染、品質保証問題などが後から発覚すると、買い手側が損害を負う可能性があります。そのため、事前の詳細なデューデリジェンス(買収監査)や、契約書における表明保証条項によるリスクヘッジが重要となります。
【後継者の資金調達負担】
株式を「売買」で譲渡する場合、後継者や買い手企業には株式を取得するためのまとまった資金が必要です。業績のよい会社ほど株価は高くなり、多額の資金が必要になることもあります。
後継者が個人の場合は、自己資金だけでなく金融機関からの借入れを検討することになります。借りる人が後継者個人なのか、後継者が設立する会社なのか、保証が必要かを確認し、取得後の運転資金まで含めた資金計画を立てることが大切です。資金調達の状況によっては、承継の方法や時期を見直す必要が出ることもあります。
売り手側(現経営者)のデメリット
経営者の交代をきっかけに、従業員の離職や取引先との関係の変化が起きるリスクがあります。また、支配権を買い手に移した場合、売り手が従来どおり単独で経営方針を決めることは難しくなります。ただし、一部の株式を持ち続けたり、役員や顧問として関わったりする形もあり、譲渡後の役割は当事者間で調整できます。
【従業員への不安や離職リスク】
経営者が変わることは、従業員にとって大きな不安のもとになります。「給与が下がるのではないか」「リストラされるのではないか」といった懸念から、組織が動揺することがあります。主要な人材の離職が続くと、事業の運営に影響するおそれがあります。
これらは買い手のリスクであると同時に、手塩にかけて育てた会社や社員を守りたい売り手にとっても重大な懸念事項です。承継後のビジョンを丁寧に説明し、従業員との信頼関係を再構築するプロセスを怠ると、事業の継続性そのものが危うくなる可能性があります。
【取引先との関係変化】
中小企業の場合、取引の多くが現経営者個人の信用や人間関係の上に成り立っていることが少なくありません。会社としては継続していても、「社長が変わるなら取引条件を見直したい」「契約を終了したい」と取引先から申し出られるリスクがあります。
特に、先代社長の人脈に頼っていた仕入先や得意先との関係を保つことは、後継者にとって大きな課題です。承継前から後継者を取引先に紹介し、関係の引継ぎに時間をかける配慮が必要です。
【経営者保証の解除】
売り手が会社の借入れを個人保証している場合、株式譲渡や代表者の交代だけで保証が解除されるわけではありません。金融機関と事前に協議し、保証の解除や借換えなどの方法を確認する必要があります。売り手と買い手の契約で保証の解除を約束しても、それだけで金融機関に対する保証の義務がなくなるわけではないため、保証の解除をクロージングの条件にするなど、確実に実行できるかを確認しましょう。
事業承継で株式を引き継ぐときの税金と優遇制度
自社株を引き継ぐときは、方法によってかかる税金が変わります。売買であれば売り手の譲渡所得への課税、贈与の場合には後継者の贈与税、相続であれば相続税が中心です。親族間の売買では、価格が低すぎると贈与税の問題が生じることもあります。
それぞれの税金の考え方と、事業承継税制などの制度を解説します。具体的な税額は、会社や家族の状況によって大きく変わるため、税理士に試算を依頼しましょう。
1.売買で株式を譲渡したときの税金
個人の譲渡益は原則20.315%の申告分離課税
個人が株式を売却して利益が出た場合、譲渡所得として申告分離課税の対象になります。税率は所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%の合計20.315%です。譲渡益は、売却額から取得費や売却の手数料などを差し引いて計算します。
給与などの所得とは分けて計算するため、売却益が大きい場合でも累進税率はかかりません(極めて高い所得がある場合の追加負担は、メリットの章で触れたとおりです)。会社が事業を売る場合との比較も、会社と個人の両方で試算することが大切です。
【注意】親族間の売買での「低額譲渡」
個人から個人へ、時価よりも著しく低い価格で株式を売った場合、時価との差額について、買い手に贈与税がかかることがあります(みなし贈与)。法人が当事者になる場合は、課税の関係が異なるため、個別に確認が必要です。「家族だから安く譲りたい」と価格を決める前に、税理士に株価を算定してもらいましょう。
2.相続で株式を引き継ぐときの税金
相続税の計算と非上場株式の評価
経営者が亡くなり、後継者が株式を引き継ぐ場合、株式は相続財産になります。非上場株式の評価は、会社の規模などに応じて、類似業種比準方式や純資産価額方式などで行い、業績がよく純資産の多い会社ほど評価額は高くなりやすくなります。
正味の遺産額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下であれば、原則として相続税はかかりません。基礎控除を超える場合は、課税遺産総額を法定相続分に応じて仮に分け、その金額に10~55%の税率を適用して相続税の総額を計算し、実際に取得した割合や各種の税額控除を反映して、一人ひとりの税額を求めます。自社株の評価額が高いと、後継者が納税資金を用意できないことがあるため、早めの試算が大切です。
相続税の納税猶予(事業承継税制)
こうした税負担に備える制度が「事業承継税制」です。法人版の事業承継税制には一般措置と特例措置があり、特例措置では、対象となる非上場株式にかかる贈与税・相続税の全額について、一定の要件のもとで納税の猶予を受けられます。ただし、納税猶予は、すぐに税金が免除される制度ではありません。
特例措置を使うには、2027年9月30日までに特例承継計画を都道府県に提出し、2027年12月31日までに贈与・相続で株式を取得する必要があります(2026年10月時点)。会社・先代経営者・後継者それぞれの要件に加え、都道府県の認定、税務申告、担保の提供などの手続きが必要です。適用後も続けて満たす要件と届出があり、要件を満たさなくなると、猶予された税額と利子税を納める必要が出ることがあります。後継者の死亡など所定の事由にあたれば免除される場合もありますが、将来の株式売却や経営方針への影響も含めて、専門家と判断しましょう。
3.生前贈与で株式を引き継ぐときの税金
暦年課税と相続時精算課税制度
生前に株式を贈与する場合、原則は暦年課税(年間110万円の基礎控除)です。基礎控除を超える部分には、10~55%の贈与税がかかります。贈与税は相続税より税率の上がり方が急なため、評価額の高い株式を一度にまとめて移すには向いていません。また、相続などで財産を取得する人への一定期間内の暦年贈与は、贈与税がかからなかったものも相続税の計算に加算される場合があり、加算の対象期間は経過措置を経て最長7年に延びます。
「相続時精算課税」は、原則として60歳以上の父母・祖父母などから、18歳以上の子・孫などへの贈与で選べる制度です。2024年以降の贈与では、年間110万円の基礎控除があり、これとは別に、贈与者ごとに累計2,500万円の特別控除を使えます。両方を控除した残りの額に対する贈与税率は20%です。贈与者が亡くなったときは、原則として、贈与時の評価額から年間110万円の基礎控除を差し引いた金額を相続税の計算に加えます(2,500万円の特別控除を使った部分も加算の対象です)。
将来株価が上がる見込みなら有利になる可能性がありますが、株価が下がった場合は不利になることもあります。また、一度選ぶと、その贈与者からの贈与については暦年課税に戻れません。特別控除を使うには期限内の申告も必要なため、将来の相続まで含めて検討しましょう。
参考:一般社団法人全国銀行協会 「相続時精算課税制度」っていったいどんな制度?
贈与税の納税猶予(事業承継税制)
生前贈与でも、「事業承継税制」を使える場合があります。特例措置では、対象となる非上場株式にかかる贈与税の全額について、一定の要件のもとで納税の猶予を受けられます。期限や要件、猶予が取り消される場合の扱いは、相続税のときと同じく確認が必要です。
株価が高い時期でも、早めに株式を後継者に移せる選択肢のひとつですが、要件を満たし続けられるか、将来の株式売却の予定とぶつからないかも含めて、専門家と検討しましょう。
株式譲渡による事業承継を成功させるポイント
株式の引継ぎを手続きとしてだけでなく、会社の将来を左右する経営の判断として進めることが大切です。価格の決め方から関係者への配慮まで、押さえておきたい5つのポイントを解説します。
①株式の価値を把握して価格を決める
株式の売買価格を考えるときは、純資産や収益力などを踏まえて株式価値の目安を算定します。純資産法や類似会社比準法(マルチプル法)、将来の収益力を加味したDCF法などの評価結果は、採用する前提によって変わり、実際の譲渡価格と一致するとは限りません。最終的な価格は、調査の結果やシナジー、取引条件などを踏まえて、当事者間の交渉で決まります。
贈与・相続や親族間の売買では、取引の内容と当事者に応じた税務上の評価も必要です。M&Aの交渉用に算定した価額を、そのまま税務上の時価として扱えるとは限らないため、目的ごとに税理士に確認しましょう。
②従業員と取引先の不安をできるだけ抑える
M&Aや事業承継の噂が先行すると、従業員や取引先に不要な動揺を与えてしまいます。承継の目的が「企業の存続と発展」であることを明確にし、雇用や取引条件が継続される方針を分かりやすく伝えることが大切です。
特にキーマンとなる従業員や主要取引先には、適切なタイミングで個別に説明を行い、誠意を見せることで信頼をつなぎ止められます。情報は「隠す」のではなく、適切な時期に「正しく開示する」という姿勢が、承継後の組織運営をスムーズにします。
③承継先と税負担を踏まえて承継の方法を選ぶ
「誰に」「いつ」「どのように」株式を渡すかによって、税負担や後継者が用意する資金は大きく変わります。売買であれば譲渡所得税、贈与・相続であれば贈与税・相続税を試算したうえで、事業承継税制の適用の可否や、役員退職金の活用なども比べて検討しましょう。税金の額だけでなく、後継者の資金繰りや経営の自由度も含めて判断することが大切です。承継先ごとの主な選択肢を表にまとめました。
| 承継先 | 株式の主な渡し方 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 親族(子など) | 生前贈与・相続(売買を組み合わせることも) | 贈与税・相続税の試算、事業承継税制、他の相続人とのバランス(遺留分) |
| 役員・従業員 | 売買が中心(一部を贈与することも) | 株式の購入資金と融資、価格の決め方、経営者保証の扱い |
| 第三者(M&A) | 売買(株式譲渡) | 買い手探し、デューデリジェンスへの対応、譲渡所得税と手取り額 |
④専門家の助言を活用してリスクを減らす
事業承継には、法務・税務・財務・経営戦略にわたる知識が求められます。取引の規模や複雑さに応じて、税理士には税金の試算と株価の評価を、弁護士には契約内容の確認を依頼するなど、専門家に相談することが有効です。
また、第三者への承継では、M&A仲介会社やファイナンシャル・アドバイザー(FA)の支援を受ける方法もあります。費用はかかりますが、将来のトラブルを防ぐための準備と考えましょう。
⑤買い手と早期に信頼関係を構築する
特に第三者への譲渡(M&A)の場合、買い手企業との信頼関係が交渉のスピードと質を決定づけます。自社の経営方針や事業の強みだけでなく、課題やリスク情報(ネガティブ情報)も含めて率直に共有する姿勢が信頼を生みます。承継後の経営体制や従業員の処遇について、早い段階から認識をすり合わせておくことで、統合後の摩擦(PMIの失敗)を防げます。互いがWin-Winとなるゴールを目指し、協力体制を築く意識で交渉に臨みましょう。
株式譲渡による事業承継の手順・実施フロー
事業承継は短期間で終わるものではなく、準備を含めると数年かかることもあります。以下は、主に売買による株式譲渡の流れです。贈与・相続では、必要な書類や手続きが異なります。株式譲渡そのものの手続きの詳細は、「株式譲渡とは」の記事で解説しています。
STEP1:承継スキームと譲渡方法の決定
まずは「誰に(親族・従業員・第三者)」承継するかを決め、それに合わせた譲渡方法(贈与・相続・売買)を選択します。後継者が決まっていない場合はM&Aを検討し、親族内であれば贈与や相続の準備を始めます。
この段階で、後継者本人の意向を確認します。あわせて、議決権制限株式などの種類株式を使う必要があるかも検討します。初期段階での方向性決定が、その後のすべてのプロセスの指針となります。
STEP2:企業評価(バリュエーション)の実施
自社の株式がいくらになるのか、専門家に依頼して算定します。親族間の売買では税務上の評価、M&Aでは売却価格を考える目安と、目的によって見るべき評価が異なる点に注意しましょう。
買い手候補が現れた際に、根拠のある価格を説明できるよう、客観的な資料を整えておくことが重要です。また、この過程で自社の財務内容を見直し、不要な資産の処分など「磨き上げ」を行うこともあります。
STEP3:買い手候補の選定・交渉
社内承継や第三者承継(M&A)の場合、具体的な相手方との交渉に入ります。M&A仲介会社などを通じてノンネーム(匿名)情報を公開し、興味を持った企業と秘密保持契約(NDA)を結んだ上で詳細情報を開示します。
トップ面談などを通じて、経営理念の適合性やシナジー効果を確認し、譲渡価格や従業員の処遇などの条件を詰めていきます。条件について大筋で合意できた場合は、基本合意書(MOU)を締結し、一定期間の独占交渉権を設けるのが一般的です。
STEP4:株式譲渡契約の締結
買い手によるデューデリジェンス(買収監査)を経て最終的な条件が固まったら、正式に「株式譲渡契約書(SPA)」を締結します。ここには、譲渡する株式数、金額、決済日だけでなく、表明保証や補償条項などの重要な法的取り決めが記載されます。
契約を結ぶ前に、売り手が対象の株式を適法に保有していること、譲渡制限の有無、株券発行会社かどうか、株券の発行・保管の状況などを確認します。譲渡制限株式であれば、定款に応じた機関(株主総会や取締役会など)の承認を得る手続きを進めます。株式譲渡契約は、株式を売る株主と買い手の間で結び、会社や他の株主の承認・同意が必要な場合は、それぞれの手続きも確認します。契約の締結前に、弁護士などに内容の確認を依頼することが望まれます。
STEP5:クロージングと株主名簿・役員変更などの手続き
契約で定めた譲渡承認や取引先の承諾などの前提条件がそろっているかを確認し、代金の支払いと株式の移転に必要な手続きを行います(クロージング)。株券発行会社では原則として株券の交付が必要で、株主名簿の名義書換えも行います。
株式譲渡そのものに商業登記は不要ですが、役員や代表者を変える場合は、会社の機関設計に応じた決議・選定の手続きと変更登記が必要です。金融機関への届出や許認可の変更手続きも、変更の内容に応じて確認しましょう。
STEP6:経営統合(PMI)と従業員対応
手続き上の承継が完了しても、実質的な経営の引き継ぎはここからが本番です。新体制のもとで、経営方針の統合やシステム・ルールの統一(PMI)を進めていきます。
従業員には、既存の労働条件が続くことと、新体制の運営方針を説明します。労働条件や評価制度の変更を検討する場合は、必要な法的手続きや従業員との協議を行います。取引先へのあいさつ回りも行い、新しい経営者を紹介して関係の維持に努めます。
株式譲渡による事業承継の注意点
株式譲渡では、契約を結ぶと契約上の義務が生じ、当事者の判断だけで自由に撤回できるとは限りません。解除の条件や補償の責任を、事前に確認しておくことが大切です。特に、契約後に見つかるリスクはトラブルにつながりやすいため、以下の点に注意しましょう。
簿外債務・偶発債務の存在確認
株式譲渡の後も、会社の債務は会社に残り、取得した会社の価値に影響します。帳簿には載っていない未払い残業代や、将来発生する可能性のある損害賠償請求などがないか、事前に洗い出す必要があります。
売り手側としては、これらを隠して譲渡すると、後から契約解除や損害賠償請求(表明保証違反)を受ける可能性があります。すべての情報を開示し、契約書上で責任範囲を明確にしておくことが、売り手自身の身を守ることにつながります。
契約・許認可の確認(COC条項・役員の要件)
株式譲渡によって経営者が変わっても、法人は同一であるため、多くの契約や許認可はそのまま維持されます。しかし、契約書の中に「経営権の移動があった場合は契約を解除できる(チェンジオブコントロール条項)」が含まれている場合があります。
主要な取引基本契約や賃貸借契約書を確認し、条項の内容に応じて、通知や承諾の取得などを事前に進めます。また、建設業許可など特定の資格者が要件となっている許認可については、役員変更によって要件を満たさなくならないか確認が必要です。
税務リスクの事前評価
対象の会社の過去の税務申告に誤りがあった場合、株式譲渡の後に、対象の会社へ追加の納税負担が生じることがあります。買い手にとっても、取得した会社の資金繰りや株式の価値に影響するリスクで、価格交渉での減額の要因になります。
過去数年分の税務申告書を見直し、税務リスクがないか専門家にチェックしてもらうことが重要です。クリアな状態で引き継ぐことが、適正な価格での譲渡を実現するための前提条件です。
株価評価方法の合意
親族間の売買や贈与では、税務上の株価評価と、当事者が考える価格が大きく離れることがあります。個人から個人へ著しく低い価格で売ると、時価との差額について買い手に贈与税がかかることがあり、法人が当事者になる場合は課税の関係が異なります。反対に、高すぎる価格での取引も税務上の問題になる場合があるため、税理士に評価してもらい、根拠の資料を残しておきましょう。
株式譲渡における従業員への対応ポイント
「企業は人なり」と言われるように、従業員のモチベーション維持は事業承継後の会社が成長できるかどうかの生命線です。従業員への配慮を欠いた承継は、組織の混乱や離職につながります。そのため、心理面と労働条件の両面からのケアが欠かせません。
経営者交代の事前通知と説明
株式譲渡が決定した段階で、可能な限り早期に従業員への説明会を実施することが重要です。噂で「会社が売られるらしい」と知るのと、経営者から直接「会社の発展のために決断した」と聞くのとでは、受け止め方が全く異なります。説明会では、なぜ譲渡を選んだのかという背景や、今後のビジョンについて誠実に語ることが求められます。雇用継続、給与水準、福利厚生など、従業員が特に不安に感じる点については、明確かつ具体的な回答を用意しておきましょう。
雇用契約・労働条件の継続確認
株式譲渡では、雇用主である会社が変わらないため、既存の労働契約と労働条件はそのまま続きます。ただし、将来にわたる雇用や待遇が無条件に保証されるわけではありません。解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要で、労働条件の変更には本人の合意や、就業規則の変更の合理性など、労働契約法の要件を満たす必要があります。売り手と買い手は、雇用・処遇を維持する方針や期間、例外、違反したときの対応などを契約で具体的に決め、従業員には合意した内容を正確に説明しましょう。
主要人材の流出防止対策
経営のキーマンとなる幹部や技術者が、経営者の交代をきっかけに退職すると、事業の運営に大きく影響します。これを防ぐため、主要な人材とは個別に面談し、新体制でも欠かせない存在であることを伝えましょう。
必要に応じて、一定期間の継続勤務を条件としたボーナス(リテンションボーナス)や、インセンティブ制度の導入を検討します。彼らのキャリアパスを新体制の中でどう描けるかを具体的に提示することが、定着率向上の鍵です。
株式譲渡による事業承継の相談先と専門家の選択
事業承継は、多くの経営者にとって一度きりの大きな判断です。
自社の課題に合わせて、適切な専門家をパートナーに選ぶことが成功への近道です。
税理士の活用
自社株の評価や、相続税・贈与税のシミュレーション、事業承継税制の適用手続きに強みがあります。特に、顧問税理士が資産税(相続・贈与)に詳しくない場合は、スポットで資産税専門の税理士にセカンドオピニオンを求めるのも有効です。
中小企業診断士の活用
経営面からのアプローチに強く、後継者の育成計画や、承継後の中期経営計画の策定を支援します。「誰に継がせるか」「今後どう事業を伸ばすか」といった経営戦略の相談に適しています。
弁護士の活用
株式譲渡契約書の作成・レビューや、法的リスクの洗い出し、遺言書の作成などに強みがあります。親族間での争いが予想される場合や、複雑な契約条項が必要なM&Aにおいては欠かせない存在です。
M&A仲介会社の活用
第三者への承継(M&A)を検討する場合、買い手候補の探索から条件の調整、クロージングまでを一貫して支援します。売り手と買い手の間に立つ仲介の形では利益相反のおそれもあるため、手数料の体系や支援の範囲を確認して選びましょう。
M&Aプラットフォームの活用(TRANBIなど)
仲介会社に依頼するハードルが高いと感じる場合は、オンライン上で売り手と買い手が直接交渉できる「M&Aプラットフォーム」を利用する方法もあります。「TRANBI(トランビ)」は、会員数20万名以上(業界最大級)のM&Aプラットフォームで、社名を伏せて案件情報を掲載し、全国の買い手候補と直接交渉できます。
TRANBIでは、売り手は無料で利用でき、買い手は交渉を進める際に月額プランが必要で、成約時の手数料はかかりません。
事業承継における株式譲渡の成功事例
手法の理論だけでなく、実際にどのようなスキームで課題を解決したのかを知ることは、事業承継を検討するうえで有用です。
ここでは、TRANBIを通じた第三者との株式譲渡の事例を紹介します。事業の再生や事業の拡大、元オーナーが経営に残る形など、異なる目的で活用された例を見ていきましょう。
事例1:余命2か月の工場が「廃墟スタジオ」へ再生~DDと市場調査を踏まえた価格改定と遊休建物の活用~
群馬県で製造業を営むA社は、業界の厳しさに手を打てないまま売上が落ち、このM&Aがまとまらなければ、あと2か月で会社が立ち行かなくなるという危機的な状況にありました。銀行からTRANBIのようなサイトへの掲載を勧められ、藁にもすがる思いで登録した案件に目を付けたのが、カビ対策事業を展開するB社でした。B社は災害リスクを分散するための新しい拠点を探しており、A社の広い土地と建物に可能性を感じたのです。
デューデリジェンス(買収監査)を担当した会計士からは「絶対に買わない方がいいよ」とまで言われ、社労士や税理士も買収に反対しました。反対の理由は、建物が古く使えそうにないことと、値上げができなければ厳しいことの2点でした。B社代表は、建築の知識から建物は構造的に再生できると判断し、競合の価格を調べて値上げの余地も確かめたうえで、買収を決断。A社にとっても、会社を潰さずに済む起死回生の契約となりました。
承継後、B社は取引先と交渉して25%・30%の値上げを実現し、使われていなかった倉庫をDIYで「廃墟スタジオ」としてリノベーション。建物の一部をシェアオフィスなどとして貸し出し、取材時点では年間約100万円の利益を生んでいると説明しています。取材当時、本業の利益はまだ出ていないとしながらも、インタビューでは、約100日で全体の収支がプラスに転じたと語っています。「潰れそうと言っている会社でも、ちょっと経営を変えるだけで再生できる方法はきっとある」という言葉は、事業承継の新たな可能性を示しています。
一見価値がないと思われる資産でも、異なる視点を持つ経営者にとっては「お宝」になることがあります。TRANBIには多様な業種・背景を持つ買い手が集まっており、思いもよらないシナジーや再生アイデアが生まれる土壌があります。専門家の調査を踏まえたうえでの経営者の見立てと決断が、企業の行方を大きく変えることもあります。
◆成約インタビュー:「余命2か月」廃業寸前の工場を再生!ボロボロの母屋を“廃墟スタジオ”化して新たなビジネスへ
事例2:後継者不足の電気工事会社、空白の半年を超えて~突然の交渉中断からの大逆転。地域密着企業の技術を次代へ~
東大阪で長年実績を積み重ねてきた電気工事会社のA社は、黒字経営である一方、代表の高齢化と後継者不足という課題を抱えていました。一方、携帯電話基地局工事を手掛けるB社は、事業の安定化を目指し、強電工事への参入(事業拡大)を模索していました。B社はTRANBIで強電工事の案件を探し、車で30〜40分ほどの距離にあるA社の案件を見つけて、すぐに交渉を申し込みました。
交渉は順調に進むかと思われましたが、途中で連絡が途絶え、半年以上もの「空白期間」が生まれてしまいます。「ほぼ諦めていた」というB社でしたが、突然の交渉再開連絡にも誠実に対応。一定の負債はありましたが、B社代表は、数年の決算でプラスになっていることが多く、駐車場代や保険料など削れる費用もあることから、十分に採算が取れると判断し、交渉を続けました。
売り手であるA社社長からは、従業員3名をそのまま引き継いでほしいこと、先代から受け継いできた地域のお客様を大事にしてほしいこと、付き合いの長い協力会社にも引き続き仕事を出してほしいことが伝えられました。B社はその思いを受け止め、最終的に約1年半越しで成約に至りました。取材当時、B社は従業員との関係づくりを進めながら、商圏を大阪府内やその先へ広げる計画を立てていました。「怖がらずにどんどんチャレンジしてほしい」と語るB社代表の言葉通り、諦めない姿勢が未来を切り拓きました。
M&A交渉はタイミングや縁も重要ですが、何より「自社の強み(技術や顧客)」を正しく評価してくれる相手を見つけることが成功の鍵です。TRANBIでは、条件検索で自社にマッチする相手を効率的に探せます。一見ネガティブな要素(負債など)があっても、買い手視点では「解決可能な課題」として映り、成約に至ることもあります。
◆成約インタビュー:突然の交渉ストップ、空白の半年からの大逆転!債務あり&後継者不足の会社を救った事業承継M&A
事例3:16年育てた英会話スクールの未来を拓く~「廃業」ではなく「発展」を選ぶ。想いをつなぐ株式譲渡~
創業から16年、地域に愛されてきた英会話スクールを運営するA氏は、自身のライフスタイルの変化とコロナ禍による経営難という二重の壁に直面していました。「従業員の働く場所を失くしたくない」「通い続けてくれた生徒さんを悲しませたくない」。そんな思いと、一人で抱え込む経営の限界との間で葛藤していたA氏が選んだのは、M&Aプラットフォーム「TRANBI」への掲載でした。
「うちみたいな会社、どこも買ってくれないだろう」という不安とは裏腹に、A氏のスクールに対する「こだわり」や「想い」を詳細に綴った募集ページには、掲載直後から想像を超える申し込みが殺到しました。数ある候補の中から出会ったのは、資本力と経営力を持ち、「仲間として一緒にやっていきましょう」と語りかけてくれるC社でした。
C社はA氏の想いを尊重し、従業員の雇用や、生徒が通い続けられる環境の維持を快諾。そのうえで、譲渡の形は株式譲渡とし、C社が過半数の株式(A氏より1株多く)を持ち、A氏が残りの株式を持って事業に関わり続ける形を提案しました。取材時点では、C社の従業員による業務のサポートやデジタル化、オーナーによる広告宣伝への協力が進み、スクールの活気も増したといいます。A氏は、M&Aは事業を辞めるために売るものではなく、売った後に新しい可能性が広がることもあると語ります。
経営に行き詰まったとき、M&Aは「廃業」以外の選択肢のひとつです。自社の「想い」や「歴史」を言葉にして発信することで、TRANBIなら全国の「それを必要とする経営者」と出会える可能性があります。株式譲渡後も元オーナーが経営に関わり、買い手の支援を受けながら事業を続ける選択肢もあることを示す事例です。
◆成約インタビュー:TRANBIはただの「売り買いの場」じゃない!優秀な経営者との出会いで、16年大事に育ててきた英会話教室の未来が開けた
株式譲渡による事業承継に関するよくある質問
ここでは、事業承継を検討中の経営者から頻繁に寄せられる疑問について回答します。基本的なルールや実務上の懸念点をクリアにし、誤解のない状態で検討を進めてください。
従業員に経営権を移す場合、全株式を譲渡する必要があるか?
必ずしもすべての株式を譲渡する必要はありません。一般的な株式会社では、議決権の過半数(50%超)を確保することが、取締役の選任などを通じて経営を主導する目安になり、総議決権の3分の2以上は、定款変更などの特別決議を成立させるうえで重要です(定款で決議の要件が加重されている場合などは別途確認が必要です)。まず過半数を渡し、残りは現経営者が持ち続けたり、段階的に渡したりすることで、後継者の初期の資金負担を抑える方法もあります。
株式譲渡と事業譲渡では、どちらが手取りが多くなる?
個人株主が会社の株式を売る場合と、その会社が事業を売る場合では、代金を受け取る人と課税の仕組みが異なります。株式譲渡では個人株主の譲渡益(原則20.315%)が課税の対象になる一方、会社による事業譲渡では会社の譲渡損益が法人税などの計算に反映され、売却代金を会社から株主へ配当などで移す際には、別に課税が生じることがあります。最終的な手取り額は、取得費や繰越欠損金、代金の受け取り方などで変わるため、税率だけで判断せず、会社と個人の両方について試算しましょう。
親族に株式を移すとき、贈与税がかからない方法はある?
親族への株式の移転でも、適正な対価による売買であれば、通常は贈与税の問題は生じません。ただし、売り手の譲渡益への課税や、買い手の購入資金を検討する必要があります。贈与の場合も、暦年課税の基礎控除などによって贈与税がかからないことがあります。
ただし、相続などで財産を取得する人への一定期間内の暦年贈与は、贈与税がかからなかったものも相続税の計算に加算される場合があります(加算の対象期間は、経過措置を経て最長7年に延びます)。相続時精算課税や、事業承継税制も条件しだいで検討できる選択肢です。贈与税だけでなく相続税も含めて、税理士と長期的に計画しましょう。
株式譲渡で、従業員の雇用は守られる?
株式譲渡では雇用主である会社が変わらないため、既存の労働契約と労働条件はそのまま続きます。経営者が変わったことだけを理由に解雇することはできず、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。とはいえ、将来の配置転換や待遇の見直しまで、すべてが約束されるわけではありません。売り手と買い手で、雇用・処遇を維持する方針や期間などを契約で具体的に決めておくことが大切です。
株式譲渡の際、取引先との契約はどうなる?
株式譲渡では契約の当事者である会社が変わらないため、取引先との契約も、原則として同じ会社との間で続きます。事業譲渡のように、契約をひとつずつ移す手続きは基本的に必要ありません。
ただし、契約書に「チェンジオブコントロール条項(経営権の移動に関する条項)」がある場合は、条項の内容に応じた通知や承諾の取得などが必要です。対応を怠ると、契約の解除などにつながるおそれがあるため、主要な契約書を確認しておきましょう。
まとめ|事業承継の株式譲渡は、渡し方と税金の比較から
事業承継で株式を引き継ぐ方法には、生前贈与・相続・売買の3つがあり、株式が移る時期、かかる税金、後継者が用意する資金がそれぞれ異なります。
売買による株式譲渡では、会社の契約や雇用関係が同じ会社に残るため事業を続けやすい一方、会社に残る債務の調査や後継者の資金調達、経営者保証の解除などの課題があります。準備のポイントは次の3つです。
- 方法と税金の比較:贈与・相続・売買のそれぞれで、贈与税・相続税・譲渡所得税を試算する
- 制度の期限:事業承継税制(特例措置)は、特例承継計画の提出が2027年9月30日まで、株式の取得が2027年12月31日まで
- 関係者との調整:従業員・取引先・金融機関と、早めに調整を進める
まずは自社の株価と、後継者の候補・資金の状況を整理し、税理士などの専門家に相談しながら承継の計画を立てることから始めてみてはいかがでしょうか。第三者への承継を考える場合、TRANBIでは、売り手は無料で案件を掲載でき、成約時の手数料もかかりません。
